横暴狩り その③
ひと気の無い裏路地に、青年を先導するように湊音は入っていった。行き止まりの手前で立ち止まり、両手を広げて青年に振り返る。
「さあ、ここなら邪魔も人目も無い。常識知らずの君に、胸を貸してあげる」
言った瞬間、湊音の胴体は袈裟懸けに両断されていた。
(……なるほど。初手はそう来るのか)
急速に死に向かう中、湊音は冷静に思考を巡らせ、異能を発動した。世界が一瞬歪み、すぐに晴れる。そこには、青年の最初の斬撃を地面に伏せるようにして辛うじて回避した湊音の姿があった。
「……あ? 完全な不意打ちだったろうが……何故生きてやがる?」
「うん、完璧な不意打ちだった。死んだかと思っ」
言い終わる前に次の斬撃が放たれ、湊音の首が刎ね飛ばされた。しかし再び歪みが発生し、やはり湊音は身体を反らすようにして回避していた。
「クソ、ぜってえ捉えたと思ったのに……面倒くせえ!」
青年が駆け出し、体勢を立て直した湊音の首を左手で乱暴に掴み、締め上げた。
「どうやって避けてるのかは知らねえけどよ……これでもう躱せねえよなァ⁉」
「っ……これは、やられたな」
青年の右手が振るわれ、再び湊音は首を切断された。