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革命のレイ〜第1話 勧誘〜

「本日の審議はこれまでとする」
議長のその一言に異を唱える者はいない。誰もこの議会に意味を求めていないことはとっくに明確だ。
「今日はどこだったっけ?」
「知るかよ軍部の話なんか」
議事堂の廊下は三股に分岐していて、議会が終わると種族に別れてそれぞれの方向へ帰るのがお決まりだ。
「先日の負傷者は?」
「既に3桁を越えたとの報告が、MIAも含めるとさらに…」
この分岐点は机上の空論を絵に描いたように現場とはかけ離れた会話が飛び交っている。
「1次避難所の首尾は?」
「野良の装甲ですが、奴らの権能には十分耐えうるものになっています」
世界では天使と悪魔の戦争が続いている。人間は両種族の奴隷として軍備や援護をさせられ、いつしかそれに疑問も持たなくなっていた。
「レイ、いつまでこんな議会にこだわるつもりだ」
議事堂を出たところで声をかけてきた男の名ははムーラ。彼はレイの幼なじみであり先代の議員の息子だ。
「さぁな、せめてこの戦争が終わるまでかな」
「それが俺たちにどうこうできることじゃないのはお前の方がよく知ってるだろ」
確かに彼の言うことは事実だ。議会にいる立場では軍部に物を言うことは出来ないし、世界の実情が戦争によって多くを決しているのは否定できない。
「そうだな、でも全く変わらないってわけでもない」
「だからぁ!小さな変化じゃダメなんだよ!」
はぐらかすように軽く返したレイに対してムーラは血相を変えてレイの胸倉を掴んだ。
「離せよ…」
レイの声色は先程と違い重いものだった。ムーラも思わず手を離してしまう。
「とにかく、レイもそろそろこっちに合流してくれ」
彼がココ最近来る理由はこればかりだ。独立した人間の蜂起軍を結成するとの事らしい。
「すまないがそれは出来ない」
「何故だ?なぜそこまで議会にこだわる?」
「ムーラこそなぜ武力にこだわる?武力で抑え込んだところで同じことの繰り返しだ。たとえ今人間の手で戦争を終わらせられたとて、この軋轢はそう変わりはしない」
「それでも…このままよりはいい」
その言葉は人間の苦痛、怒りを込めたようでレイも返すことが出来なかった。

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