「どうして……ここに連れてきたの……?」
感情の読み取れない声だった。不思議そうな、それでいて哀しげな、切ないともとれる声のトーン。
「なんとなく……そう、なんとなくよ。でも、どうして?」
そのトーンがあまりにも私の胸に突き刺さるので、思わず質問に質問で返してしまった。
「ここだったんだ……。」
「え?」
「ここ、見たことがあるんだ。来たことがあるんだ、何回も。小さいとき、僕の姉ちゃんがよく連れてきてくれた。」
幼い、とても幼い顔だった。だから、言ってやったんだ、この生意気で憎たらしい男の子に。
「今も十分小さいよ。」
続く
ついた場所は海。宙を連れてきた場所。宙に見せたかった場所。なぜだかわからなかったけれど、宙と接するうちに、ここだけは見せたいと、頭のどこかで自分が叫んでいた。__それはきっと、もうすぐお別れなのだという虫の知らせだったのだろう。
燃え輝く赤色の夕日は、闇に飲み込まれていく。そんな様子を、しばらく黙ってみていた。だが、そろそろ帰らなければ、祖母が心配する。宙に声をかける前に、宙が口を開いた。
続く
あなたの幸せを教えます
あなたは、音楽に囲まれています
あなたは、美味しい食事に囲まれています
あなたは、たくさんの知識に囲まれています
あなたは、あなたを想ってくれる人に囲まれています
なにより、
あなたが貴方であること
それがあなたの最高の幸せです
だいぶ歩いたかな。そう思って、ふと上を見上げる。真っ赤だ。
「……どこへ向かっているの、とかきかないの?」
宙はあくまで平然としていた。
「じゃあ、どこにいくの?」
……ほんと、かわいくないやつ。私は、自分で振ったくせに無視。宙はまたもや憎たらしい顔をして嘲笑った。
「姉ちゃんチケた!その歳でチケた!」
そう言って逃げる。今度は笑いながら。
「ちょ、こら、待ちなさい!宙‼」
叫ぶ私も笑っていた。何だか、弟が出来たみたいで、とっても楽しかった。
続く
ガサ......ガサガサ......。
「なぁ......この本は何だ?」
ある男は樹海の中で不思議な本を見つけた。
『幻想詩』に『白蓮記』、ありとあらゆる本がそこにあった。
「何だ?と言われても俺はそこじゃなくて電話の前にいるからなぁ......何とも言えないぜ。」
そこはある地方の深い森。
こんなところに本などあるだろうか。
普通なら無い、だが実際に目の前にはある。
男はこの時、世の中はやはり捨てたものじゃないと思った。
男は何故この森にいたのか、理由は定かではない。
どうせろくな事ではないが。
「色々と考えたけどこの本は持っていく事にするよ。また会おう。」
「おう、また。」
この後、男の姿を見た者はいない。
P.S.まさかの公式番外でございます。
これで全て文章化されましたね。
改めて書いて下さった方に食べられない感謝を。
(3話目、載ってなかったですね)
ちょっぴり力を入れて叩く。カンカンという音がする。もう少し力を入れて叩く。今度はパンパンという感じだ。もっと強く叩く。鈍い音だ。金属ではない。叩いた感触も違__
「ったいなぁもう!手、どけろよ!」
そこには、宇宙人なんてよべる存在はどこにもなかった。明るい茶色の柔らかい髪を持つ年下の男の子。黒い目は、吸い込まれそうなくらい深い。背は、私より随分と低かった。
「君は、宇宙人なの?」
私は 彼女の中にある 線の向こうに行ってはいけない。
その線は誰でも持っているものだけど、彼女の線は透明で私にはよく見えない…
うっかり足を踏み入れてしまうと激しく突き返されるの…
彼女の中にいる私は、広い世界にいるようで実は 物凄く狭いところに閉じ込められたままなのかもしれない…
"おはよう"
その一言で何かが変わったのだったら
貴方は今、
あの子じゃなくて私の隣にいて
"好き""大好きだよ"って言ってくれてたのかな
今日の僕にはこの世界が
いつになく小さく見えた。
それはきっと、
この痛みを、この苦痛を
味わった人にしか見えない世界。
毎日毎日襲いかかってくるこの恐怖に
僕は当分打ち勝つことはできないだろう。
けど
だからこそわかることがある。
だからこそ見える世界もある。
それが今の僕の
最大の武器だと思っている。
誰かが欲を出すことで
誰かが苦しくなっていき
誰かが成功することで
必ず誰かは負けている
この世界は残酷だけど
そうじゃなきゃ、成り立たない。
__私と同じ名前。もっとも、私は青空の空で"そら"だけど。だが、それで少し親近感が湧いた。
「宙君、どこから来たの?」宙は答えない。
「宙君、これを運転してきたの?」宙は答えない。
「宙君、どうしてここに来たの?」宙は、だんまりを決め込んだようだ。先ほどまでの威勢はどこへいったのだろうか。
態度や様子を見ると、どうやら宇宙人ではないようだ。だとすると、この年頃は難しいのかもしれない。私は小さくため息をつき、宙を引っ張る。
「さっきは叩いて悪かった。痛くない?」
くしゃっと頭を撫でて。
続く
どれほど深く潜ればあなたに会えますか??
もう潰れそうな手先がぼやけて
泡のようにいなくなりそうだよ
何もない地面には、青空がどこよりも広くて。
会ったことのない人たちに思いを馳せて。
こわくて海は見られなかった。
(12月1日に、初めて東北へ行きました。宮城だけだけど、やっと行けた。)
今日が人生最悪の日なら、
明日はきっと今日より素晴らしい日になるはず。
今思えば、随分と馬鹿な質問をしたものだ。他になかったのか自分。すると、男の子は憎たらしい顔で嘲笑った。
「姉ちゃん、馬鹿だろ。もっとマシな質問無いワケ?」
……一言目がそれかい。いや、自分でもそう思ったけど、こんな小さい男の子に馬鹿にされた屈辱。一体、どうしてくれようか。
「君は、どこからどうやって来た、どこの何君なのかなー?」
頬がぴくぴくと張っているのが分かる。こんな子供にムキになるなんて大人げない。そう思って、我慢して優しく聞くよう努める。だが、
「見ればわかんじゃん。これに乗ってきた。やっぱ馬鹿だな、姉ちゃん。」
無理だった。こいつ、可愛いげがない上に生意気だ。優しいお姉さんはやめよう。
「質問に答えきれてないじゃない。まず、名前は?」
男の子は、少し間をおいた。
「宙(そら)。宇宙の宙で"そら"。」
私は驚いた。
続く
~君しか見えない~
告白するって決めた日曜日 明日に備えて早く寝た
夢にも出てきた君のこと しかもフラレた夢
『告白やめようかな』なんて 今まで何回言ってきたか
でも今日は言わない 絶対って決めたから
『おはよう』君から言ってきた 何も言えない私
『どうしたの?元気ないね?』そういうところ全部大好きだから
君と初めて出会い 初めて恋した この気持ちどうすればいい?
この気持ち抑えられない なんにも見えない 君しか見えない
あと三十分で終わる授業 一日中ドキドキしてる
真面目に授業してる 私を見て恥ずかしそうにしてる
ドキドキが増してくる 秒針より早い鼓動
声をかけると返ってくる優しい声 優しい笑顔
君に今すぐ伝えたい この溢れそうなキミへの想い
君と初めて出会い 初めて恋をした この気持ちどうすればいい?
この気持ち抑えられない なんにも見えない 君しか見えない
評価お願いします⁽⁽ଘ( ˙꒳˙ )ଓ⁾⁾
大きさは軽自動車くらい。大人二人は簡単に乗れそうである。……やはり、UFOには宇宙人が乗っているのだろうか。私は、頭でっかちで大きい目を持つ、いわゆるヒューマノイドという宇宙人を想像して、扉が開くのを待った。
しかし、扉はびくともしないどころか、中から物音すら聞こえない。さっぱり訳のわからない物体に、私は好奇心をくすぐられた。縁側から裸足で外に出て近寄った。しばらくは観察のみだったのだが、あまりにも何も起こらないので、つい触ってしまう。
…ひんやりとしている。夏の日差しに当たっていた温度には思えなかった。
甘い飴玉 口の中 水玉模様
私のまぶた 瞳を閉じ込めて 雫模様
ソーダがからだを溶かしていく
いちごが赤い
甘酸っぱくて 見えないだけ
金平糖の夜
『萃霧の言の葉』
ちきちきちきちき......ばんばんばんばん......
【國在りて山河在り
満たされた世の中にも
満たされぬ心在り
ものありても音なければ
満たされぬものより満たされぬ
言の葉一つひらひら散りて
行き着く先は彼方の心
夢幻の音に
幽幻の心をのせ】
ちきちきちきちき......ばんばんばんばん......
「............駄作だなぁ。コレ」
そこは『ネペジ』、真ん中の国。
そのネペジの首都『青木京』、そこの宮殿内に
想起堂主任歌人『渚瀧院 文紡』は居た。
この国の人々は、物語に飢えていた。
飢えというのは怖いものである。
その飢えを和らげるためにこの国には『想起堂』という部門があった。
『想起堂』は1〜2日に一度、国民に向って短い唄を詠う。
そして文紡はそこの主任歌人で毎日の様に唄を創っては演奏している。
これは、たった一歌人のどうしようもない物語。
To be continued #41『ネペジ現御神の位』
P.S.始まりました第5章。
まぁ、いつも通りの事ですが。
昨日の夜、悪夢を見ました。
どんなものかは思い出せませんけど、未だにべっとりと僕の周りに口に出してはいけないような感覚が浮遊しています。
夢は脳の想像とよく言われます。
だとしたら僕はとんでもなくタチの悪い脳の様です笑
UFOが庭に落ちてきた。初めてみた。テレビや本の挿し絵で見るような形のアレ。私は、唖然としてしまった。
夏休みまっただ中、ひぐらしが鳴く頃。私は祖母の家にいて、暑さのあまり居間でへばっていた。うちわ片手に大の字に仰向けとなり、花の女子高生と呼ぶには苦しい、あられもない姿だ。
そうやってごろごろしているときに、ガンというかゴンというか、物音がした。決して、ドカーンとかバーンではない。低くて、金属がぶつかるような音。そうして庭へ出ると、一般的にUFOと呼ばれるような形をした物体が落ちていた、というわけである。
続く
偶然だって必然だ
って 言うんなら
今のこの状況だって
運命だ
っとか 言うんでしょ
見えないないない君の瞳に
みにくいくいくい僕が映って
なんなんなんなんなんでこんな僕に
話しかけようとするの!
「忘れたよ」と あなたが言うような
その視界の隅で生きてるの
「忘れたくない」と あなたが目を凝らす
その世界が 優しくあるように
綺麗な言葉を使う人はなぜ綺麗な言葉を選べるのだろうと思った
それは、綺麗な言葉とその使い方を知っているからだ。
それは、綺麗な言葉を使う人に囲まれているとか、綺麗な言葉を使った本を沢山読んできたとか。
綺麗な言葉は、演じるものではなくて内から自然と溢れるもの。
だから君に似せて精一杯の綺麗な言葉を演じる人や、子供みたいな言葉で君に語りかける人を見て虫酸が走る。
親や先生がよく言う
「怒らないから話してみなさい」って。
その言葉を信じた子供は話しだす。
結果怒られてしまう。
大人は皆賢いよね。
安易な言葉で子供を操るんだ。
子供は皆辛いよね。
信じた大人に騙されて。
堕ちるところまで
堕ちても
どうしようもなく
ダメになってても
愛してくれる
包んでくれる
誰かが
ほしい
夜勤明け、家にはまっすぐ帰らずに、いつものコース。24時間スーパーでビールを買い、公園のベンチ。深く息を吸い込む。何年も変わらぬ毎日。新鮮なのは外の空気だけだな。と、アレクサンドルはつぶやいてビールを開ける。
いまのような空気ができたのは、よくは知らないけど億単位のレベルの昔だ。そんな前からある空気のどこが新鮮なのだろう。
目の奥が痛む。仕事中は、今日はまっすぐ帰り、すぐに寝ようと思うのだが。
妻は子どもができてからすっかり変わってしまった。子どもができる前までは聡明だったのに。いまはなにを言っても通じない。話の内容ではなく、表情や態度にばかり注意を向けるようになった。ちょっとしたことで感情的になり、ぐちと文句ばかり。要するに、すっかりばかになっちまったってことだ。
結局、生きるというのは、理屈ではないのだろう。
子どもができるまでは、ああしようこうしようというビジョンがあった。いまは子どもに振り回されっぱなしだ。結局、生きるというのは、理屈ではないんだ。
相性ばつぐんだって占い師に言われてそれがきっかけで親密になった。どこがばつぐんなんだよ。
相性ばつぐんだって占い師に言われてそれがきっかけで結婚したのに。
そろそろ帰るか。妻が朝食、俺にとっての夕食を用意して、不機嫌な顔で待っている。
そろそろ帰ろう。子どもが起きてしまったかもしれないし。わたしがいなかったら主人が動揺する。
こんな感じで、アレクサンドルとアレクサンドルの妻は公園をあとにする。入れ違いで、アンドレイとアンドレイの妻がべつべつにやってくるのだが、わざわざ描写するまでもないだろう。
自分の悩みなんて、
世界中の人の悩みにしてみれば
ちっぽけだとしても、
今の自分にとっては、やっぱり大きくて
でもこんなことで負けてられるかって
無理やりにでも励まして、頑張るしかない
だって前を向いてれば
いつかはどうにかなるじゃん
悲しいと哀しいって違うよね。 許すと赦すって違うよね。 つまりそういうことなんだよ、なんて。