面談週間
彼女はわたしを見つけると、にへらっと笑いながらこちらへ来た。肩までの黒髪が左だけはねている。席に着くなり彼女は話し始めた。こんなに喋る子だっただろうか。息をつく間もなく、次から次へと言葉を放つ。私がだまってメニューを広げると、彼女のこだわりであった斜めの前髪についている金色のピンが反射してきらきらと目の縁で光る。アイスコーヒーをふたつと言いかけると、アイスティーにしてと怒られた。ああ、まだ子供だった、しばらく会っていないと、忘れ
てしまうものだ。
たのしいの?と聞かれて、顔を上げると、焦げ茶色の瞳がふたつ、こちらを見ていた。ああ、うん、すごく、といいかけて、さっき言われたことを思い出した。そうだ、できるだけつまらなそうにしろと、言われたのだ。黙って、ストローを弄んでいたら、はああっと彼女はため息をついて、わたしを憐れみのこもった目でゆっくりと見た。聞かないでおく。あんたがそんな風になったのはあたしのせいだもんね。そう、あなたのせいかもね。ニヤリと唇の端を上げてみる。恋人にもらった赤い口紅は、今日のために彼がくれたものだった。わたしががんばる、そう宣言した少女の桜色の唇は、あと少しで彼に奪われる。そう思ったらちょっぴり可笑しな気分になった。大丈夫よ、あなたは、きっとうまくやっていけるから。大丈夫。