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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 9

「ってことは、きみ“ペア”がいるの⁈」
 その言葉に、薄桃色の髪の人物は目を見開く。ミラは気にせず「いいなぁー、自分はペアがまだ見つからなくてさ〜」と続けるが、目の前の人物が俯いていることに気づいてハッとする。
「あれ、だいじょ……」
 ミラがそう訊きながら相手の顔を覗き込もうとするが、相手は「来ないで!」と声を上げる。過呼吸になっている薄桃色の髪の人物を見てミラは「えっ」と驚くが、相手は胸に手を当てながら「なんでもない、なんでもないわ」と自らに言い聞かせるように呟いている。ミラは暫く困惑していたが、なにか声をかけようとしたときに薄桃色の髪の人物は路地の奥へと走り出してしまった。
「あっ……」
 「待って!」とミラは追いかけようとする。しかしそんなミラの背後から「見つけたわよ!」と聞き覚えのある声が響く。ミラが振り向くと、一緒に買い出しに出かけていたウェスト管理官が駆け寄ってきていた。
「もう急に走り出さないの‼︎」
 「あとで始末書書かされる私の身にもなりなさいよ!」とウェスト管理官はミラの腕を引っ掴むと、そのまま大通りの方へツカツカと歩き出す。「あちょっと……」とミラは言いかけるが、抵抗も虚しくそのまま引きずられていった。

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LINkerWorld LINearWaltz / MIraculous-Ephemeral 8

「ていうかきみ、この街じゃ見かけない顔だけどどこから来たの?」
「……」
「なんていうか、すごくかわいい服だねそれ」
「……」
「そういえば、さっきの武器、もしかして……」
「うるさい‼︎」
 ミラが背後から一方的に質問攻めにする中、薄桃色の髪の人物は急に立ち止まって叫んだ。その言葉にミラはびくりと身体を震わせるが、「……ごめん」と少しの沈黙ののち謝る。
「この前線都市で見ない顔だったから気になっちゃって」
 「嫌な気持ちにさせてたら……」とミラは言いかけるが、言い終える前に相手は振り向いた。
「どうして、私についてくるのよ」
 薄桃色の髪の人物は冷たい目をミラに向ける。ミラはその目に一瞬どきりとしたが、臆せず「いやだって……」と苦笑いした。
「さっき助けてもらっちゃったからありがとう言わなきゃって思ったし、それに……」
「感謝なら結構」
 ミラの言葉を遮るように相手は冷たく言い放つ。
「私はディソーダーがいたから義務として倒しただけよ」
 「別にあなたを助けようだなんて思ってない」と薄桃色の髪の人物はミラから目を逸らした。その言葉にミラは「えっじゃあもしかして……」と目を見開く。
「きみもリニアーワルツ⁈」
 その声に、薄桃色の髪の人物はびくりとした。ミラは気にせず「すごーい!」と飛び跳ねる。
「だって、ディソーダーを倒せたってことはきみはリニアーワルツで、さっき持ってたのはジェミニってことでしょう⁈」
 「カッコいい〜!」とミラは目を輝かせた。相手はその姿にポカンとするが、ミラは気にせず「あ」と呟く。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 7

「ぜ、前線都市って壁にちゃんと囲まれてるはずだよね……?」
 「なんで都市の外にいるディソーダーがここに……⁈」と、ミラはにじり寄る敵から逃れるため立とうとする。しかし驚きと恐怖の余りうまく立ち上がれず、後ずさるだけで限界だった。それでもディソーダーたちは容赦なく迫り、ミラ自身も後ずさるうちに建物の壁にぶつかってしまう。
 このままでは自分の身が危ない……そうミラは思い、思わず手の中のキーホルダーを握りしめた。そのときだった。
「€;$+|”|‘=・,‼︎」
 不意に目の前に人影が飛び込んできて、手に持つ刀のようなもので目の前のディソーダーを切り伏せる。ディソーダーは不快な悲鳴を上げて真っ二つになった。それとともに周囲のディソーダーたちが目の前の人物に飛びかかってくるが、その人物はディソーダーたちを避けたり、手に持つ刀のようなものでディソーダーたちを両断していく。ミラが呆然と見ている間に、目の前の人物はディソーダーたちを全て倒してしまった。
「……」
 ディソーダーを軽々と斬り捨てた人物は、ちらと座り込むミラの方を見やる。長い薄桃色の髪の一部を桜の形をした髪飾りで結わき、桜色の官帽と軍服のようなワンピースを着たその姿は、ミラが少し前に街中でぶつかった人物と一致していた。
 ミラはそれに気づくと「あっもしかして!」と声を上げる。
「さっきお店の前でぶつかった……」
 ミラがそう言いかけると、相手はミラに背を向けてその場をあとにしようとした。ミラは「ちょっと待って!」と立ち上がる。
「どこに行くのー?」
「あなたには関係ない」
 薄桃色の髪の人物は地面に投げ捨てていたと思しき革製ケースを拾うと、手に持つ刀のようなものをしまった。ミラはその中身をつい覗き込もうとするが、相手はミラの興味を吹き飛ばすように音を立ててケースを閉じる。そしてまたツカツカと歩き出した。
 ミラは思わずその人物を追いかける。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 6

「それにしてもここ……ちょっと怖いなぁ」
 路地裏を歩きつつミラはそう言って辺りを見回す。昼間とはいえ、ひと気がなくしんと静まり返っている小道は、普段表通りしか歩かないようなミラにとって不気味に見えた。
「……」
 ミラはつい立ち止まって、手の中にあるキーホルダーに目を落とす。いくら路地裏が怖くても、先ほどぶつかった人物が落としたキーホルダーを届けなければならない……
 「だからあの子を探さなきゃ」とミラが思い直して顔を上げたとき、目の前の道の角になにかが隠れたような気がした。
「?」
 「なんだろう」と思いつつミラは角の建物に近づく。さっきの子かなと思いつつ角の向こうを覗き込もうとすると、陰からなにかが飛び出してきた。
「‼︎」
 ミラは飛び出してきた“なにか”を避けようとするが、腰を抜かして尻もちをついてしまう。その“なにか”……けばけばしい色合いで多脚の大型節足動物のような生物は、地面の上をガサガサと動く。ミラがつい辺りを見回すと、周囲の建物の壁や地面には体長1メートルほどの節足動物のような生き物が複数うごめいていた。
「こ、これって、ディソーダー⁈」
 自身の周りを囲む奇妙な生き物たちを見て、ミラはつい声を上げる。まだ戦場に出たことのないミラにとっては初めて実際に見るが、自身が生み出され戦闘訓練を受けた“ラボ”の資料や仮想訓練シミュレータの映像で何度もその姿を見せつけられてきたため多少の見覚えはあった。禍々しい見た目をした、奇怪な存在……異界における人類の敵・ディソーダーだ。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 5

 暫くの間その場に微妙な沈黙が流れたが、やがてウェスト管理官が「行くぞ」とミラに声をかける。ミラは「うん……」と再度店内に入ろうとするウェスト管理官のあとに続こうとするが、不意に踏み出した足元になにかが当たる感覚がした。
「?」
 ミラが足元を見ると、そこにはきらきらした桃色の花のキーホルダーが落ちていた。
「これって」
 ミラが思わず拾い上げてそう呟くと、ウェスト管理官が「どうした?」と振り向く。ミラはそれに答えずじっとつまみ上げたキーホルダーを見つめていたが、やがて「ウェスト管理官」と口を開いた。
「ちょっと、行ってきてもいい⁇」
 ウェスト管理官は「は?」と呟いた。

 前線都市・ヘスペリデスの路地裏。ここを1人の小柄なコドモが歩いている。黄緑色の髪のその人物……ミラキュラスことミラは、手の中のきらきらしたキーホルダーを見て「どこ行ったんだろ、あの子」と呟いた。
 というのも、ミラは先ほど街中で不思議な人物とぶつかったときに、ぶつかった相手が落としていったと思われるキーホルダーを拾ったからである。とても綺麗なものだった上、もしかしたら相手の大切なものかもしれないと考えたミラは、監視役のウェスト管理官の制止を振り切ってぶつかった相手を追いかけているのだった。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 4

「ちょ、ちょっとミラキュラス!」
 「なにやってるのよ……」とウェスト管理官は転んでしまったミラに対してツカツカと歩み寄る。ミラは「ご、ごめん……」と苦笑いするが、ウェスト管理官は「謝るならぶつかった方にしなさい」とミラの腕を引っ張り立たせた。そのときになって、初めてミラはぶつかった相手を見る。
 その人物の姿は、どこか奇妙なものだった。
 というのも、薄い桃色の長髪の一部を桜の形をした髪飾りで結わいており、桜色の官帽を被って帽子と同色の軍服のようなワンピースを着た、随分と華のある容貌をしていたからだ。ついでに背丈もそれなりにある上、革と思しき素材でできたなにかのケースを持っていて、このヘスペリデスの街中ではミラと同じくらい目立っていた。
「……」
 ミラとぶつかった桃色の髪の人物はすでに立ち上がっており、ワンピースの裾を、汚れを落とすように少しはたいている。ミラは相手の華やかな容姿にわずかな間見とれてしまったが、相手がその視線に気づいて訝しげな目を向けたことでハッと我に返った。
「あっ、さっきはぶつかってごめんなさい」
 「どこか痛くなかった?」とミラは付け足すが、相手は「別に」と目を逸らす。
「そっか」
 「ならよかった」とミラは言いかけるが、ミラが言い終える前に相手はツカツカと先ほど進んでいた方向に向けて歩き出した。「あっ、ちょっと……」とミラはつい呼び止めようとするが、早歩きする相手はあっという間に通りの横の細い道に入って見えなくなってしまった。ミラはポカンとした様子で言葉を失う。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 3

「私が通行人の道案内をしている隙に、勝手に前へ進むんじゃない」
 「トラブルにでも巻き込まれたらどうするんだ」と厳しい表情で言うウェスト管理官に対し、ミラは「えーいいじゃーん」と笑う。だがウェスト管理官はますます厳しい顔をした。
「リニアーワルツはあくまで異界開発機構が保有する、対ディソーダー戦のための戦力なんだ」
 「だから前線都市内で行動する際は、管理官の監視の下でしか行動できないと……」とウェスト管理官は言いかけるが、ミラは「えー厳しい〜」と口を尖らせる。
「自分はペアがいないから戦力外なのにー?」
「こういうときにその話を持ち出すんじゃない」
「そんな〜」
 ウェスト管理官に諫められて、ミラはついがっかりする。そんなミラを見ても「お前が勝手な行動をすれば、私も処分の対象になりかねないからな」と冷たいことをウェスト管理官は言い、ミラに「ほら、突っ立ってないで」と声をかけた。
「訓練中の仲間たちのために焼き菓子を作るつもりでいたんだろう?」
 「店にさっさと入るんだ」と管理官はミラの肩に手を置いて、店内へ入ろうとする。ミラも「うん」と頷いてウェスト管理官に続こうとした。
 しかし急に歩道を通りに沿って走ってきた人物にぶつかりそうになってしまう。ミラは相手を避けようとしてよろけて尻もちをつき、相手も前方へ転んでしまった。