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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 14

「それは、もう仲間を失いたくないからだよ」
ロディの言葉にアカは目を見開く。ロディは気にせず続けた。
「ロディたちのカテルヴァにはね、前にルベ……エリサクス ルべクラっていう仲間がいたんだ」
「でもある戦闘で死んじゃってさ」とロディは俯く。
「ルべと仲良しだったトログはすごくショックを受けちゃったし、リーダーのクリスはそのことで自分を責めるようになってしまった」
「だから」とロディは顔を上げた。
「ロディたち、アカが新しく仲間になるって聞いたとき、約束したんだ」
「ルべみたいにはしないって」とロディは笑う。アカはなにも言えずに黙り込んでいたが、それを見たモザは「まぁ、そういうことだ」とアカに歩み寄った。
「つまるところ、おいらたちはお前に死んでほしくない」
「人が死ぬのは、誰だって嫌だろ?」とモザはアカに近付き手を差し伸べる。アカは驚いたような顔をしたが、モザが「ほら」と促すとアカはその手を取った。
「さーて、こっからどうすっかね」
アカの腕をぐいと引っ張って立ち上がらせたモザは、上空のアリエヌスの群れを見上げて呟く。アリエヌスたちは他のカテルヴァの攻撃によって要塞都市への襲来を阻まれていたが、群れの中心にいる親玉アリエヌスにはどのカテルヴァのアヴェスも近付けていないようだった。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 13

「⁈」
アカが驚く間に、突然誰かが飛び込んできて彼を抱える。そしてその誰かは一気に飛行してその場を離れた。
アカは何が起きているのか分からず混乱するが、自身を抱えて飛ぶ誰かがアリエヌスの群れから少し離れたところに着地したところで、やっと自分を抱えているのが誰かを判別することができた。
「お前は……」
アカは自身を天蓋の上に降ろす浅黒い肌のアヴェス——モザの顔を見てそう呟く。モザはなにか言いたげな顔をしたが、そこへ「モーザーっ!」と元気な声が響いた。
「やったねー!」
「ロディが落下速度を変えたお陰でアカをキャッチできた‼︎」と黒と桃色のジャケットを着たアヴェス——ロディが嬉しそうにモザとアカの元へ飛び込んでくる。モザは「ロディお前ホントに大丈夫なのか?」と腰に手を当てた。
「物体の落下速度を変えるって相当現実離れしてるぞ?」
「身体に影響とか出てないのか?」とモザはロディの顔を覗き込む。するとロディは照れくさそうに「ちょっとめまいするかも」と答え、モザは「おい」と突っ込んだ。
「お前いくら身体が丈夫だからって無理はすんなよ」
「えー、仲間の大ピンチだったんだし〜」
「もっと自分のこと大事にしろ!」
モザとロディが言い合う中、その場に座り込んでいたアカは「……なぁ」と2人に声をかける。モザとロディは「?」とアカの方を見やった。
「なんで、自分のこと……助けてくれたんだ?」
「あんな風にアリエヌスの群れに突貫したのに」とアカはこぼす。モザとロディは思わず顔を見合わせたが、やがて2人はアカの方に目をやった。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 12

カテルヴァ・サンダーバードの仲間たちの元からアカが離れていって暫く。アカは空より襲来するアリエヌスの群れの中を自在に飛びながら、専用レヴェリテルム“Aurantico Equus”で敵を切り裂いている。周囲では他のカテルヴァに所属するアヴェスたちがそれぞれのレヴェリテルムでアリエヌスを倒していたが、それを気にせずアカはアリエヌスの群れの中心へと飛んでいった。
「……あれは」
時折“Aurantico Equus”でアリエヌスを撃ち落としつつ群れの中を突っ切っていくアカは、群れの中で急にアリエヌスの少ない空間に出て不意に呟く。彼の目の前には、周囲のアリエヌスを従えていると思しき体長15メートルほどの翅のあるハナカマキリのようなアリエヌスが飛んでいた。
「*}‘}“}$]€[>;;’|+|”|!<‼︎」
親玉アリエヌスはアカの姿を見とめると、耳障りな悲鳴を上げる。すると親玉アリエヌスの周囲を守るように飛んでいた体長2メートルほどのアリエヌスたちが、アカに向かって突っ込んできた。
アカは咄嗟に“Aurantico Equus”を構えて相手を両断しようとするが、体当たりしてきたアリエヌスの体表の方が硬いのか、相手は鈍い金属音を立ててアカを弾き飛ばす。アカは驚く間もなく天蓋に向かって落下し始めた。
アカはどうにか空中で体勢を立て直そうと“Aurantico Equus”に念を込めようとするが、重力に引っ張られるままに落ちているために思い通りに頭が働かない。アリエヌスの体当たりを受けたときにレヴェリテルムの飛行効果が途切れてしまったため、落下中にレヴェリテルムの効果を発動させることは至難の業だった。
このままでは天蓋に激突する、そんな思いがアカの頭をよぎり、彼は悔しそうに顔を歪ませる。しかし、これじゃ、あの子を——とアカが思いかけた時、突然ふわりと落下速度が落ちた。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 10

「っ‼︎」
トログは大剣の形に変形させた“Reginae Gladio”をアカとクリスの前に掲げ、光のバリアを展開して飛来してきたアリエヌスを防ぐ。カマキリのような体高数メートルほどのアリエヌスはトログのレヴェリテルムを押し返そうとするが、彼は負けじと“Reginae Gladio”に力を入れて踏みとどまる。それを見たモザとロディはそれぞれのレヴェリテルムを向けてエネルギー弾を発射し、アリエヌスをトログから遠ざけた。
アリエヌスが後方へと飛び退くと、トログは力が抜けたようにへたり込んだ。
「トログ!」
我に返ったクリスは慌ててトログに駆け寄る。
クリスに「大丈夫かお前……」と訊かれるトログは「へーきへーき」と笑うが、その顔は青ざめている。クリスは心配そうに「無理すんなって……」とトログの両肩に手を置いた。
その様子を見るアカは口を真一文字に結んでいたが、悲鳴のような声を上げて突進してくる先ほどのアリエヌスに気づきそちらへ駆け出す。そしてそのアリエヌスが飛びかかる前に“Aurantico Equus”でそのアリエヌスを切り裂いた。
そして仲間たちが驚くことにも気にせず、アカはそのまま天蓋を蹴って宙へ舞い上がる。クリスが呼び留める間もなく、アカは上空より飛来するアリエヌスの群れへと突っ込んでいった。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 9

「アカ‼︎」
近くでレヴェリテルム“Reginae Gladio”を構えていたトログがそう声を上げると、先ほどアリエヌスを両断した人物ことアカはちらと彼の方に気付いて、刀型になっているレヴェリテルム“Aurantico Equus”を握り直す。それを見たクリスは「おい」とマシンガン型に変形させたレヴェリテルム“Caeruleum Diadema”を担いでアカに近付いた。
「アカ、一体どこ行ってたんだ」
「心配したんだぞ」とクリスはアカの襟首を掴んで尋ねる。アカはなにも答えず、それを見ているトログは「ちょっとクリス落ち着いてよ〜」と慌てる。
「ボクたちも出撃命令があったのに上に上がるまで時間がかかっちゃったから……」
「そうじゃない!」
トログの擁護に対し、クリスはそう声を上げる。トログは一瞬驚いて動きを止め、モザやロディも驚いたような顔をする。クリスは続けた。
「勝手な行動で死なれちゃ困るんだよ‼︎」
「もしそうなったらどうするんだ……!」とクリスはアカの目を見る。アカは相変わらず無言のままだ。
「俺は、俺たちは……もう仲間を失いたくないんだ」
「だから1人で勝手に行かないでくれ」とクリスは声を震わせる。トログ、モザ、ロディはその様子を静かに見ていたが、アカは「……そんなの」とポツリと呟く。
「自分には関係ない」
「そんなの!」
「関係ないものは関係な……」
クリスの言葉をアカが遮った時、「危ないっ!」とトログの叫び声が聞こえた。2人がハッとして辺りを見回そうとした時、そばで甲高い金属音が響く。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 8

アリエヌス襲来の一報から約5分、パッセリフォルムズの壁から都市を覆うように光でできた障壁——天蓋が完全に展開したころ。
パッセリフォルムズの壁の中のエレベーターで壁の上に昇っていったトログ、クリス、モザ、ロディは、手持ちのケースから既に取り出したレヴェリテルムを携えて、戦場に飛び出していた。
「ったく、あいつどこ行ったんだ……?」
「勝手に飛び出しやがって」と大太刀型から大砲型に変形させたレヴェリテルム“Viridi Canticum”を撃ちつつモザは呟く。
周囲では天蓋の上で同じカテルヴァ・サンダーバードの仲間たちが飛び道具型に変形させたレヴェリテルムで空から迫り来るアリエヌスを撃ち落としており、上空には既に出撃しているアヴェスたちが宙を舞いながらアリエヌスと戦っていた。
「まだおいらたち、仲間になってから日が浅いのに」
「なぁロディ?」とモザは近くで2つの銃器型レヴェリテルム“Rosea Choro”を空に向けるロディに尋ねる。
「そーだねー」
「でもアカもアカで色々事情があるんだと思うよー」とロディは返す。
「どんな事情だよ」
「そりゃ“戦うこと”しか考えられなくなる事情だよー」
「ふわっとしてんな!」
モザとロディはそう言い合うが、途中で「モザ! ロディ!」というクリスの声が飛んでくる。2人がハッと顔を上げると、上空から体長1メートルほどの蝙蝠のような姿をしたアリエヌスが突っ込んできていた。
2人は咄嗟にそれぞれのレヴェリテルムを構えるが、その瞬間アリエヌスは飛んできた何者かによって真っ二つにされる。モザとロディが驚く間もなく、その人物は天蓋の上に降り立った。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 7

「ボクたちの人生は本当に限られたものだから、やっぱり有意義に使お?」
「ね?」とトログはアカの腕に手を伸ばす。しかしアカはその手を振り払った。
「……人生をどう使うかは、個人の勝手だ」
「ただ、自分は戦いのためにこの命を使う、それだけ」とアカは呟き、トログの横を通り過ぎる。トログは思わず「待って!」とアカに後ろから声をかけた。
アカは思わずぴたと足を止める。
「どうして……どうして、アカはそんな考え方するの?」
「もしかして、前にいた要塞都市でなにか……」とトログは言いかける。しかしその言葉は不気味なサイレンの音によって遮られた。
「⁈」
5人は思わず顔を上げる。すると彼らが手首につけている端末に通信が入った。
『こちらドムス司令部、先程パッセリフォルムズ近傍にアリエヌス出現を確認した』
『出撃対象カテルヴァは以下の通りである』と司令部にいる司令の緊迫した声が続く。
『ルッフ、コカトリス、ハルピュイア、サンダーバード……以上の4隊は直ちに出撃せよ』
『繰り返す!』と通信機の向こうの司令は出撃対象者を宣言していく。“サンダーバード”と自分たちの部隊名が読み上げられたことを確認したアカは、レヴェリテルムの入ったケースの取っ手を握り直すと壁の方へ向けて走り出した。
「あっ待てアカ!」
アカが駆け出したことに気付いたクリスは、「先に行くなっ‼︎」と声を上げて彼を追い始める。それを見たロディも「モザ、トログ!」とあとの2人の方を見た。
「ロディたちも行こう!」
「おうよ!」
ロディの言葉にモザは威勢よく答え、トログもうんと静かに頷く。そして3人は壁に向かって“橋”の上を走り出した。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 6

「ねぇねぇ、クリスとモザはどう?」
「みんなで遊びに行こうよ!」と提案するロディを見て、浅黒い肌のアヴェスことモザは「そうだな!」と頷く。
「おれたちアカのことそんなに知らないし、せっかくなら仲良くなりたい!」
モザの言葉にロディは「でしょでしょ〜?」と明るく続ける。しかしクリスは「どうだかな」と不意に呟く。
トログ、モザ、ロディの3人は思わず不思議そうな顔をした。
「お前ら、アカのことそっちのけにしてるだろ」
クリスはそう言って自身の後ろにいる橙色の詰襟に白い和袖の外套を羽織ったアヴェス、アカの方を見やる。アカはトログたちの方を気にせず“橋”の欄干から見える風景に目をやっていた。
「……」
モザとロディは思わず沈黙し、トログは「アカ」と仲間に近寄って話しかける。
「今度みんなで遊びに行こうよ」
「この街には面白いものがいっぱいあるんだ」とトログは笑いかけるが、アカは「そんなどうでもいい」と帽子深く被った。トログは「どうして?」と首を傾げる。
「アカは世界最大の要塞都市・パッセリフォルムズには興味ないの⁇」
「別に」
トログの質問に、アカは短く答える。
「自分のやることはこの街をアリエヌスから守ることだけだから」
「それに関係ないことは、興味ない」とアカは淡々と答える。その言葉にトログは「それじゃ寂しくない?」と尋ねる。
「確かにボクたちは要塞都市を守るために生み出され、そのために戦ってる、でも……」
「戦うだけの人生じゃ、つまんないよ」とトログは俯く。トログのその様子にアカはちらと目を向けたが、気にせずトログは続ける。