表示件数
0

LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 16

「ま、おれとしては戦えればどうでもいいんだけどよ!」
 「おもしれーことになりそうだし?」とパッションは目の前のディソーダーにエンキドゥを突き立てようとする。だが左側から光の矢が複数飛来し、ディソーダーに突き刺さった。
「⁈」
 急に自分の獲物を取られたパッションは、驚いて矢の飛んできた方を見る。パッションの視線の先にある建物の上からは、弓型ジェミニ・ギルガメッシュを持った金髪ボブカットのリニアーワルツ・グリッタことグリッタリングが飛び降りてきていた。
「ちょっとパッション‼」
 「戦えればどうでもいいとか言わないの!」とグリッタはパッションの服の襟首を掴む。パッションは「ちょ、ちょっと」と慌てるが、グリッタは「ちょっとじゃない!」と言い返す。
「前線都市でディソーダーなんて前代未聞なのよ⁈」
 「フツーに大ピンチなの、あたしのペアならわかるでしょぉ⁈」とグリッタはパッションの襟首を掴んだまま前後に揺さぶる。パッションは「落ち着け落ち着け」とグリッタを止めようとした。しかし不意に二人はなにかの気配を感じ取り、パッと顔を上げる。
 二人の目の前には、体長数メートルほどあるムカデのようなディソーダーが頭部をもたげていた。
「……ひぇっ」
 パッションとグリッタは小さく悲鳴を上げる。ディソーダーに潰される——と二人は青ざめるが、そこへ一つの人影が飛び込んできた。
 人影は近くの建物の上から飛び降りつつ、手に持つ刀のようなものでムカデ型ディソーダーに斬りかかる。ディソーダーは悲鳴を上げてのけぞり、そのまま地面に倒れた。
「……」
 人影は地上に着地すると、刀のようなものを一振りしてから背後を見る。そこにはケンカをしていたパッションとグリッタが呆然と立ち尽くしていた。周囲のリニアーワルツたちも、ポカンとした様子でその人物を見ている。薄桃色の長髪をなびかせたその人物は周囲の者たちを一瞥すると、次々と向かってくるディソーダーたちの方へ駆け出した。
「ねぇ、あの子って……」
 グリッタが恐る恐る口を開くと、パッションは「あ、あぁ……」と呟く。

0

LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 15

 前線都市内でディソーダーの出現が確認されてから暫く。ヘスぺリデスの商店街では派手な色をした体長数メートルほどのディソーダーが、周囲に大小さまざまなディソーダーを引き連れて暴れまわっていた。ディソーダーは口のような器官から光線を放って街を破壊しつつ、ヘスぺリデスの大通りを進んでいる。基地の避難指示によって街中には人影がなく、ディソーダーが侵攻する地鳴りのような音だけが響いていた。
 しかしディソーダーの群れが大通りの交差点にさしかかったとき、群れの横から光の矢や光弾が複数飛んでくる。突然の攻撃に小型のディソーダーは悲鳴を上げてひっくり返り、大型のディソーダーは動きを止めて光の矢や光弾が飛んできた方を見た。
 交差点の角の向こう、商店街の建物の屋根の上や道路上には、華やかな容姿にカラフルな衣装を着込んだコドモたち——リニアーワルツが、弓や銃器の形をした武器——ジェミニを構えて立っている。敵の出現に気づいたディソーダーたちは雄叫びのような声を上げて、リニアーワルツたちの立つ方へ方向転換した。
 しかしそんなディソーダーの目の前に、商店街の細い横道や建物の陰から刃物や鈍器の形をしたジェミニを持ったリニアーワルツたちが現れる。近接武器を持ったリニアーワルツたちは、群れの前方に固まる甲虫のような姿をしたディソーダーに飛びかかっていった。ディソーダーたちは口から光線を吐いたり攻撃を避けようとしたりしたが、次々とリニアーワルツたちに撃破されていく。そんな中で、青い長髪をバンスクリップでまとめたリニアーワルツ・インテことインテリジェントは、三叉矛型ジェミニ・ポセイドンを振り回して小型のディソーダーたちを串刺しにしていた。
「……それにしても、前線都市内でディソーダーが出るなんて、随分妙な話ですよ」
 「ねぇ?」とインテが近くで大剣型ジェミニ・エンキドゥを振り回すリニアーワルツ・パッションことパッショネイトに話しかけると、パッションは「そうだな!」とディソーダーを斬り捨てつつ返す。

0

LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 14

「だってそのキーホルダー落としてった子、リニアーワルツなんでしょ~」
 「ペアもいるみたいだし、きっと平気だよ~」とフォーはニコニコしながら続ける。それでもミラは不安げだったが、「なによりも」とインテは笑みを浮かべた。
「ミラは、それをその子に返すんでしょう?」
 「なら、ここで待っているのが正解だと思いますよ」とインテはミラの頭を撫でる。ミラは「……うん」と苦々しく頷いた。
「じゃ、おれたちも行くかね」
 ミラとインテ、フォーの会話を見てから「早くしねーとこの街が壊されちまう」と、パッションはグリッタの方を見やる。グリッタは「そうね」と返す。
「あたしたちペアで、この街を守りましょ!」
 そう言って、パッションとグリッタはラウンジを飛び出していく。
「では僕たちも」
 「行ってきます、ミラ」と言って、インテはミラの頭から手を離した。そしてフォーとともに、ラウンジを去っていく。
「……」
 再び自分一人になったラウンジで、ミラは再度ポケットからあのキーホルダーを取り出す。照明の光にかざすと、相変わらずきらきらしていた。
「あの子、大丈夫かな」
 一人でディソーダーを軽々と倒していたとはいえ、ペアの話をするとひどく苦しそうにしていたあのリニアーワルツ。
 本当に大丈夫だろうかという思いが、ミラの中をよぎる。
「やっぱり」
 ミラはそう呟いてソファーから立ち上がる。そして、キーホルダーを力強く握りしめて、ラウンジを飛び出していった。

0

LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 13

「なぁミラ、そのディソーダーが出たところってヘスぺリデスのどの辺だ?」
 「管理官たちに報告して、おれたちが……」とパッションがテーブルに身を乗り出したとき、不意にラウンジ内のスピーカーからサイレンが流れ始めた。
「⁈」
 リニアーワルツたちが思わず顔を上げると、ラウンジの出入口から背の高い女性……ウェスト管理官が飛び込んでくる。
「大変よ‼」
 「ヘスぺリデス内で、 ディソーダーの出現が確認されたわ‼」と管理官は大声を上げた。ミラは「実は今その話を……」と言いかけるが、ウェスト管理官は気にせず続ける。
「司令官は、ヘスぺリデス基地所属の全ペアの出撃を命令したわよ‼」
 「だから訓練終わりに悪いけど、あなたたちも出撃しなさい‼」とウェスト管理官は叫ぶと、そのままほかのリニアーワルツを呼びに行くのか廊下へ飛び出していった。ミラは管理官の言葉に思わず青ざめるが、パッションの「……行くか」という言葉を聞いて我に返る。仲間たちの方を見やると、四人は既にソファーから立ち上がったり、ラウンジの出入口の方に向かったりしていた。
「……みんな」
「大丈夫ですよ」
 言いかけるミラに対し、インテは優しく声をかける。
「僕たちは、いつも通り出撃するだけですから」
 「安心してください」とインテはミラの肩に手を置いた。ミラは「だけど……」とインテの顔を見上げる。
「このキーホルダー、あの子にまだ……」
「それもきっと大丈夫だと思うな~」
 ミラの言葉を遮るように、今度はフォーが口を開いた。

0

LINkerWorld LINearWaltz / MIraculous-Ephemeral 12

「街中で落とし物を拾っちゃって」
 ミラの言葉にフォーは「落とし物か〜」と呟く。
「どんな落とし物⁇」
「えっ、あぁ……こういうの」
 ミラはズボンのポケットから、先ほどまで眺めていたキーホルダーを取り出してフォーに見せる。フォーは「へー」と頷いた。
「道端に落ちてたの?」
「あっ、いや、知らないリニアーワルツにぶつかったときに落としていって……」
 ミラがそう言いかけたとき、「えっなにそれ!」とパッションが近寄ってくる。ミラは思わずそちらに目を向けた。
「知らないリニアーワルツって……ミラのペア候補⁈」
「ちょっとパッション、そんなわけないでしょう」
「えーでも知らないリニアーワルツが来てるんだろ〜?」
パッションとパッションに続き近寄ってきたグリッタはそう言い合うが、ミラは「あっでも」と声を上げる。
「ペアがいるのかジェミニを使ってたよ⁇」
 その言葉に、その場にいるリニアーワルツたちは「えっ」と呟いた。ミラは少し不思議そうな顔をするが、グリッタは「それって……」とこぼす。
「ヘスペリデスの中にディソーダーが出たってこと⁇」
「あっ、まぁ、うん」
 ミラが驚いたように頷くと、グリッタは「マジ……?」と呆然とした。ミラは「そんなに驚く⁇」と首を傾げるが、「いやいや驚くとかそういうレベルじゃねーよ」とパッションが腰に両手を当てる。
「防壁に囲まれているこの前線都市にディソーダーが出るとか、かなりヤバい状態だぞ⁈」
 「一般人に被害が出るよ……」とパッションは呟いた。ミラは「確かに」とこぼす。

0

LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 11

「ミラにデリカシーのない発言はダメでしょ〜」
「ちょ、ちょっと待てグリッタ」
 「おれそこまで言ってな……」とリニアーワルツ・パッションはグリッタと呼ぶリニアーワルツから離れようとするが、グリッタはぐいとパッションの襟を引っ張る。
「他人は意外なところで傷つくものなの」
 グリッタがパッションを睨むと、パッションは「ひぇっ」と小さく悲鳴を上げた。
 その様子をミラは苦笑いしながら見ていたが、ふと右隣を見ると紫髪でツインお団子ヘアのリニアーワルツが座ってニマニマしていることに気づく。
「フォー⁇]
ミラが不思議そうに尋ねると、フォーと呼ばれたリニアーワルツは笑顔を崩さぬまま「ミラ」と口を開いた。
「なんかあった?」
「えっ?」
 「どうして急にそんな……」とミラは驚くが、「いつもの勘ですよ」と優しげな声が飛んでくる。ミラが声の主の方を見やると、青い長髪を金色のバンスクリップでまとめたリニアーワルツがミラの左隣に座ろうとしていた。
「フォーは昔から他者の心の機微に敏感ですから」
 「ね?」と青髪のリニアーワルツが訊くと、フォーは「うん」と頷く。
「そしてインテはそんなフォーを理解してくれる」
「そうですね」
 「ラボで造られたころから、僕たちはずっと一緒ですから」とインテと呼ばれたリニアーワルツは、いつの間にか目の前のテーブルの上に用意していたティーカップにティーポットの紅茶を注いだ。ミラはその様子を静かに見ていたが、「あっ、もちろんミラもずっと一緒ですからね?」とインテは思い出したように呟く。ミラは「それはわかってる」と笑った。
「……で、なにかあったんですか?」
 「管理官たちの立ち話を聞く限り、ウェスト管理官に怒られるようなことをしたみたいですが」とインテはティーカップを手に取ってミラに目を向ける。ミラは「ま、まぁ……」と苦々しく頷いた。

0

LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 10

 前線都市・ヘスペリデスの基地内にある、リニアーワルツの居住棟にて。
 リニアーワルツたちがくつろげるように家具が設えられたラウンジのソファーに座りながら、黄緑色の短髪のリニアーワルツ……ミラは退屈そうに足をばたつかせていた。先ほどウェスト管理官の付き添いで外出をしたのに、途中で管理官の元を離れてしまった上、予定していた帰宅時間を過ぎそうになってしまったので無理やり基地に連れ戻されたのである。せっかく外出したのに予定していた買い出しができずに基地に帰されたミラにとって、あまり面白くない状況だった。
「……結局、返せなかったなぁ」
 「これ」とミラはジャケットのポケットの中からキラキラしたキーホルダーを取り出す。外出したときに出会った、薄桃色の髪のリニアーワルツが落としていったキーホルダー……返すつもりだったのにと思いつつ、ミラはそれをラウンジの室内灯にかざして眺めていた。
「……たっだいま〜‼︎」
 突然の大きな声にミラが慌ててキーホルダーをズボンのポケットの中に隠すと、ラウンジの出入り口から色とりどりの髪色とファッションのコドモたち……ヘスペリデス基地所属のリニアーワルツたちが入ってくる。そのうち大きな声でただいまを言いながらラウンジに飛び込んできた短い赤髪のリニアーワルツは、ミラの姿を見ると「おっミラじゃねぇか」と明るく声をかけた。
「台所に行ってるんじゃないのか?」
「あぁ、それは……」
 ミラがそう言いかけると、赤髪のリニアーワルツは自身のジャケットの襟を後ろから掴まれる。「うぐっ」と間抜けな声を上げる赤髪のリニアーワルツに対し、「ちょっとパッション〜」と仲間の後ろ襟を掴む者……金髪をボブカットにしたリニアーワルツは笑顔を浮かべながら眉間にしわを寄せていた。