表示件数
0

蜘蛛の糸

「誰の許しを得てこの糸を登っている!この糸は俺のものだ!下りろ下りろ!」
カンダタがそう叫んだ瞬間、カンダタが居た場所の、ほんの僅かに上の所が、プツッと切れてしまった。
数瞬静止したような感覚の直後、彼らの身体の動作は、重力に従って落下運動に転換していく。
しかし、その数瞬があれば、充分だった。
落下しながらも、糸をものすごい勢いで登ってくるものがいる。名も無き罪人の一人だ。カンダタと一瞬目が合う。それだけで、彼らは互いの意図を理解した。
「俺を踏み台にしろォッ!」
カンダタが叫ぶ。罪人はその言葉に従うように、カンダタの肩を強く踏む。カンダタの肩に、針山に突き刺さるかのような激痛が走る。しかし、カンダタはそれにひたすら耐え、己の役割を全うせんとする。
罪人がカンダタの肩を足場に、登ってきた勢いのまま跳び上がった。その手が、上に残っていた糸を辛うじて掴む。
「ッ………!」
罪人が下に向けて手を伸ばす。しかし、カンダタはもう、その手に届かない程落下していた。
「…………!」
罪人の表情が悲哀と後悔に染まる。自分は、自分を助けてくれた男を文字通り踏み台にして、結局裏切ってしまった卑怯者なのだ、という思考が脳内を支配し始め、糸を掴む手が緩みそうになる。
その瞬間、足に突然質量をかけられ、慌てて手に力を込め直す。
「………!……ッ、………!」
罪人がその顔に喜びの表情を浮かべ見下ろした先には、彼の足、踝の辺りをどうにか掴んでぶら下がる、カンダタの不敵な笑みがあった。
「……!…、ッ………、……!」
「よくやったぞ、罪人!お前は他の奴と違ってなかなか根性がある。しかもあの一瞬で俺と同じことを考えていた。上に行こうという、ただそのことを。ただ俺のおこぼれに与ろうとするだけの怠け者な他の奴など知ったことでは無いが、お前は気に入った!お前の事は極楽浄土で思う存分使ってやる!」
「…………!」
罪人は、そう憎まれ口を叩きながらも、空いたもう片手で、しっかりと他の罪人がまだ取り付いている蜘蛛の糸を掴んでいるカンダタを見て、喉の働きを失い話すこと能わぬ口で、誰に言うでもなく呟いた。
自分はこの男について行こう、それが極楽浄土だろうと、この惨たらしい地獄だろうと。

1

魔法譚キャラクターまとめ1

作者 flactorさん
作品名 霧の魔法譚
・イツキ
願い 空飛ぶ車でドライブしたい
マジックアイテム ミニカー
魔法 ミニカーの巨大化。巨大化したミニカーは実際に運転できるようになる上、空を飛ぶ。

・シオン
願い 不明
マジックアイテム 不明
魔法 不明

作者 白昼夢見人さん
作品名 田中の日常
・田中
願い 目を良くして欲しい
マジックアイテム サングラス(既に破壊)
魔法 不明。戦闘力は高い。

作者 テトモンよ永遠に!さん
作品名 魔法譚〜エンドレスジャーニィ
・前埜アキ
願い 空を飛びたい
マジックアイテム 革製のマント
魔法 空を飛ぶ魔法と思われる。変身後の衣装に付属する刃のついたグローブで攻撃も可能。

作品名 魔法譚〜ウィザードパーティ
・サワラ
願い 不明
マジックアイテム 不明
魔法 治癒魔法の類

・アツマ
願い ここで死にたくない
マジックアイテム おもちゃみたいな銃
魔法 銃が小瓶に変身し、その中の錠剤を飲んだものは最低限死ぬことだけは回避できる

・フリード
願い 不明
マジックアイテム 不明
魔法 不明。戦闘力のある魔法と思われる。

・ユウキ
願い 不明
マジックアイテム 不明
魔法 不明。杖を使用する。状況から補助系の魔法と思われる。

・エリ
願い 不明
マジックアイテム 不明
魔法 不明

・少女
願い 不明
マジックアイテム 鞄
魔法 不明。ある程度の戦闘は可能らしい。 

作品名 因果応報
・センヤ
願い いじめてくる奴らに、同じ痛みを味わせたい
マジックアイテム オルゴール
魔法 自分が受けた痛みをそのまま相手に返す

少し前にテトモンよ永遠に!さんが企画した魔法譚、今も少し続いていますが、個人的興味で登場した魔法使いの皆さんをまとめようと思い立ちました。

2

霧の魔法譚 #6

「……いや、ちょっときついっす」
手伝ってほしいと真剣な面持ちの大賢者に頼まれたイツキは、すがすがしいほど高速で首を横に振った。思わず大賢者が大声で突っ込む。
「なんでだよ! 大賢者がわざわざ頼み込んでんだよ!? ほら君だって私からマジックアイテム貰ったんだからさあ、こういうときはどうすればいいか分かるだろ?」
「『分かるだろ?』じゃねえよ言い方恩着せがましいわ! てか事前にアポも取らずに乗り込んでくるとかお宅のキョーイクどうなってるんですか、キョーイク!」
こうなるともう売り言葉に買い言葉、沈静化に向かいつつあった両者の空気は一瞬にして再加熱し出した。
「仕方ねーだろ緊急性高くてアポ電で確認取ってる暇なんかなかったのこっちは! てかまだ手伝ってほしい内容すら言ってないのになんだその対応! もっと真摯に聞けよ!」
「うっせいきなり転移魔法で場の空気破壊しやがった挙句にふざけた態度ばっか取られてたら聞けるもんも聞けなくなるでしょーが! もうやだ一生手伝ってやらねーからな!」
「ちょっと軽いジョークいくつかぶっこんだだけでしょ!? しかも謝ったし! は? 謝ったんですけど!?」
「謝ったからって何なんだよ! なに、お子様対応でもすればいいの!? ”謝れたねー偉いねー”ってか!? んなもんできるかヴァ―……」

「お二人とも」

過熱しきって頂点を迎える前に呼び止めようとする声。凛として澄んだ声音は、しかし今だけ地獄のそこから這い出でるような緊張感をはらんでいる。
口喧嘩を止めて恐る恐る声の主を見れば、シオンがにっこりと笑んでこちらを見返していた。
「少し頭を冷やされてはいかが?」
顔は可憐に笑っていたが、薄く開いた目だけが笑っていない。
シオンの「さっさとしろ」オーラ全開の冷ややかな視線に二人とも何も言い返すことができず、その後の話の流れで(主にシオンが取り仕切った)結局イツキは大賢者たちを手伝うことになった。

***
お久しぶりです。#6更新です。
ついに大学に一歩も足を踏み入れないまま前期が終わりました。レポートがまだ二つほど終わってませんが締め切りがまだなので大丈夫でしょう←
シオンの圧に負け、イツキは結局お手伝いの話を飲むことに。イツキ君は不憫ですね。かわいそう。

2

魔法譚 ~エンドレスライフ、エンドレスジャーニィ Ⅲ

「…そうかい? でもこの歳になっても魔法使いとして生きられるなんてすごいと思うよ? だって…」
「…ほとんどの魔法使いは、大人になる前に死んでしまうから」
大賢者が先に言う前に私が答えると、…そうね、と少し悲しげに答えた。
「みんな、幸せになるために魔法使いになったのに、みんな、悲劇の死を遂げてしまう…」
大賢者は悲しそうにうつむいた。
「そんな風に悲しむのなら、魔法使いなんて生み出さなきゃいいのに」
どうして生み出し続けるのよ、と私は言った。
それを聞いた大賢者は、私の目を見つめながら答えた。
「…だって、この世で魔法を使えるのが、わたし1人だけじゃ寂しいじゃないか…」
もちろん、魔法を持たないキミ達に魔法を与えて、どんなことをするのか眺めて楽しむってのもあるけど、と彼女は付け足す。
「…わがままね」
私は少しだけため息をついた。
「…でも、どんな願いもわがままと変わらないじゃないか」
「私のはちょっと違うと思いますけど」
大賢者のツッコミに、わたしはさらっと反論した。
「…オカルトなんて、基本信じてなかったから。だからあの時は、適当に『空を飛びたい』と願ったのよ」
私は彼女から目をそらしながら呟いた。
「…まぁ、いいわ」
そう言って、大賢者はふわりと飛翔した。
「わたしはこれからも、誰かのわがままを、自分のわがままを、叶えるために世界を巡るわ」
あなたも頑張るのよ、そう笑って、大賢者は夜空へと消えていった。

0

魔法譚 死にたくない魔法使い5

「アトは、お前ダけカ」
『クククククク……。よくぞあれだけの数を倒したものよ。褒めてくれる』
「じゃあ、ツイでにあんたモ消エテくれまセンカねェ?」
『ああ……。そうだな……』
〈ケットシー〉が塀に飛び乗り、捨て台詞を吐く。
『ええい、今回だけは見逃してくれる!次は気付かせる間もなく一瞬のうちに始末してくれるから覚悟しな!アバヨ!』
そう言って向こう側へ飛び降りた。しかし、
「オット、ドコへ行くンだ?」
その壁をすり抜けて、『死神』が追いかけてきた。
『な、馬鹿なッ!』
「今ノ言い方、まるでマタやっテ来るみたいジャあないカ。そんなコトは僕が許さナイヨ?」
『グッ……、ま、魔法は一人に一つ、そうじゃなかったのか!』
「知らなかったのか?『死』からは誰も、逃げられない」
ただの人間には聞こえない断末魔が、周囲に響いた。その日、ほんの一部の人間にしか分からないことだが、その周辺に大量のネコの死骸が目撃された。その数は、数千から数万匹にものぼったという。
「……一つ。死は、命あるものを等しく殺す。一つ。死を留める障害などこの世には存在しない。一つ。『死』、その正体は、自身である。以上がこの魔法のルール。……おお、怖い怖い。この世はまったく、怖いものばかりだ。そうだな、今は冷たい麦茶が1杯と安らぎのひと時が怖い、なんてね」

『死』そのものになること。それがこの少年の魔法である。

0

魔法譚 死にたくない魔法使い4

本文を始める前に、レスにあったことについて補足をば一つ。本作の主人公の少年の『死神』モードについてですが、これはマジックアイテムの変身機能とは別物です。変身による変化は飽くまでもローブだけで、骸骨姿は彼の魔法によるものです。追加で変身魔法を使ってるんだと思っていただければ大体合ってます。そんな訳で本編再開。

「ふう、終わったか」
『死神』はローブだけを残して、その姿を少年のものに戻した。しかし、
『……とでも思っていたのか?』
「何!?」
死んだはずの〈ケットシー〉の声が聞こえてきて、少年は慌てて『死神』の姿に戻る。声のした方を見ると、そこには三毛猫が二本足で立ち上がろうとしていた。
『フフフフフ……。ただ殺すだけで頭の足りない馬鹿に教えてやろう。我らファントム〈ケットシー〉は、一にして全!全にして一!言うなればこの猫の群れ、猫の治める国そのもの全てが〈ケットシー〉なのだ!お前にこれまで話しかけていたのは、代表として動いていた、たった一匹に過ぎないのだ!そして我々は既に半径にして500m単位で貴様を包囲している!逃げ場など無い!さあもう一度、【人を殺す歌】を!仲間の仇を討つのだ!全体、歌い方、始め!』
しかしネコ達は、たった一息吐くほどの間も与えられずに、ある者は首の骨を折られ、またある者は八つ裂きにされ、別のある者は訳も分からず心臓を止められ、皆、様々な方法で死んでいった。半径500m圏内、殆ど全てのネコがだ。
(何……だと……。まさかここまで恐ろしい魔法使いだったとは。連れていたネコ達も、9割方殺されてしまった)
〈ケットシー〉も焦りを隠せない。
(クソ、こうなったら最後の手段だ)

2

無幻の月-宿痾-

「哭羅(コクラ)...そんなものまで出てくるなんてねぇ...」
桜は戦場から少し離れたところにワープさせられてた。
「賢者...なぜ助ける...」
「緊急事態なんでね。本来はこんなことはしないけど哭羅が出てきちゃったからねぇ...絶対にキミにはヤツを倒してもらいたい」
コクラ...あのでかいヤツのことか?
「だからキミの腕は魔術的に繋げさせてもらった」
なるほど、まだ変身状態なのはそういうことか
「賢者、二つ聞かせろ」
「なんだい?今さら降りるとかは無しだよ?」
「一つ、コクラとか言うあの怪物はなんだ、あれを放置すると何が起こる」
「あれはファントムの上位種。いわば支配者、王様みたいなものだ。この世界では...なんだっけ...あーそうそう、ダゴンって呼ばれてる」
ダゴン...昔何かで読んだな...どっかの宗教の神様だったか?なるほど、それであんなに強いわけだ
「そして、あれを放っておくとこちらの世界がメチャクチャになる」
さした影響は無さそうだな
「では二つ、私があの指輪を取り込んだらどうなる」
一緒にワープさせられた右腕を手に取りながら言う。
これは前々から考えていたことだ
取り込めれば恐らく指輪のリミッターを外せる
もっともこれが危険な賭けなのがわからないほど私も馬鹿ではないのだが
「...あなた正気?」
いつも飄々してた大賢者の顔が険しくなる。
「正気だ。お前が私の前に現れた時と同じくらいにはには」
「...そもそもマジックアイテムの力にその肉体が耐えきれない。仮にそこをクリアしたとしてもキミは常に変身状態でいるここと同じになる。人の精神がそれに耐えられるはずがない」
「なるほど...面白い!」
聞き終わった後、指ごと指輪を飲み込んだ。
体内で力が駆け巡る。耐えきれないというのは納得だった。
だが...これなら...
暴れだしそうな魔力を精神力でねじ伏せる。
それはもう、人に非らざる魔なる者だった。
「あなた...何を...!?」
「...いい気分だ...」
「この魔力...ファントム!?まさかあなた、アレも取り込んだの!?」
どうやら、あれは禁じ手だったらしい
持ってかれた右腕を魔術で生やし、焦る大賢者を尻目に再び戦場へ飛び去った。

0

魔法譚 死にたくない魔法使い3

『なっ、何だオメェ、そのけったいな姿は!?くッ、お前ら、怯むな、歌い続けろォッ!』
『死神』が歌い続けるネコ達に向かって、何ということもなし、といった風に腕を振るった。勿論ネコ達にはかすりもしない。しかし、その腕の軌道の延長線上にいた数匹のネコの首が、何か見えない力によって斬り飛ばされた。
『馬鹿なッ!くそ、ええい、こうなったら!後方の部隊を歌唱に集中させ、前方のものは奴に突撃!あのくだらん骸骨マスクを引っ剥がし、喉笛に喰らいついてやれ!』
それに従い、前の方に居たネコ達が一斉に『死神』に飛び掛かる。しかし、『死神』にひと睨みされたその瞬間、また首を刎ね飛ばされて絶命した。
『グッ………。何て野郎だ。しかァし!今ので全て理解したぜ!どんな恐ろしい力かと思えば、所詮相手の首を刎ねるだけのくだらない魔法じゃあないか!そんなことなら何でもねえ!』
〈ケットシー〉が後方宙返りを決める。その技の終わりには、〈ケットシー〉の首から下は何処かに消え、ニタニタ笑うネコの頭だけが空中に浮かんでいた。
『イイィィイイイッハァアハハハハハ!首しか無いネコの首が刎ね飛ばせるか!?首と胴が最初っから離れてる奴にギロチンが効くか!?オラどうなんだよハートのクイーン様ヨォ!?答えてみろやァハハハハハ!』
「……うるさいナ」
驚く程冷たい、生命力を感じさせない声で『死神』が〈ケットシー〉の挑発を遮った。黒猫もその圧力に気圧され、口をつぐむ。
「僕がアイツラの首をハネたノハ、あいつらがソレで死ぬカラだヨ。お前の言っテルことの意味ハよく分からンが、一つダケ分かるコトガある。お前らは『等しく死ぬ存在』だよ」
そう言って首だけの〈ケットシー〉に手を翳すと、〈ケットシー〉の脳天に撃ち抜いたような穴が開いた。
『ばッ馬鹿なアアアアア………』
首だけのネコは地面にポトリと落ち、他のネコと等しく死んだ。

1

魔法譚 死にたくない魔法使い2

突然、身体を丸めるようにして苦しんでいた少年が、耳を塞ぐのを止めて姿勢を正した。
「僕はさ……、ただ願っただけなんだよ。『死ぬのが怖い、死ぬのは嫌だ』って。それだけなんだ。そしたらあの人は、僕に言ったんだよ……」
少年の頭に、『大賢者』と出会ったときの会話が思い出される。

『少年、死ぬのが怖いと言ったな?』
「うん、言った」
『そうか、ところでお前さん、自分を怖いと思うか?』
「いや、思わない」
『そうか、それは幸せなことだ』
「そうなのです?」
『ああ、世の中には、自分自身が怖いなんてことを言う奴だって居る』
「それはまた奇妙な。どんなに怖がったって自分からは逃げられないでしょう?」
『死もまた、決して逃げられないことさ』
「そりゃあ、運命による死はそうでしょう。けど、何か悪いものが僕を害して、そのせいで勝手に死なされる、それが怖いのです」
『ふむ、……それなら少し……、いや、よそう。結局はお前が決めることだ』
「何の話です?」
『いや、「お前は幸せ者だ」という話だよ。さあ、これをくれてやろう。後はお前と、お前の願いが決めることさ』

少年は懐から小さな白い何かを取り出した。それは、『骨片』。何かの生き物のどこかの部位の、ほんの小さな、少年の指の長さほどの骨の欠片。
「つまりはさ、何も分からないから怖いんだ。いつ来るのか、そもそも何なのか。未知こそが恐怖の正体なんだよ。なるほど確かに僕は僕を怖がらない。その答えが『自分』ならさ……」
少年の姿と服装がが少しずつ、変化していく。
「少しハ、マシなんじャア、無いカナ?」
あまり高くなかった背丈は、いつの間にか大の大人さえ軽く見下ろせるほどのものになっていて。ボロボロの黒いローブから覗くは、骨だけの腕と顔面。トレードマークの大鎌こそ持ってはいないが、その姿は確かに『死神』だった。

1

魔法譚 死にたくない魔法使い

ある時ある場所にて。その少年は、友人数名と学校からの帰り道にいた。
少年がふと気付くと、道の脇に一匹の黒猫がいた。
「あ、ネコ……」
「ネコ?どこに?」
「ねこはいます?」
「ミームか?」
どうやら少年以外には見えなかったらしい。その黒猫が、とても不自然なことなのだが、ニタリと笑った。さながら、童話に書かれたチェシャ猫のように。
「……ごめん。今ちょっと急に用事ができた」
「お、また用事か」
「お前よく用事召喚するよな」
「なに、今更止めやしねーよ。さっさと行ってきな」
「うん、ありがとう。それじゃ、また明日」
少年は友人達と別れて、黒猫とは反対側に、体力不足故にときどき歩きつつも、走りに走った。そして、三方を塀に囲まれた行き止まりに行き着いた。
『クックックックックッ………。わざわざこんな始末しやすい場所に来てくれるとは、何とも親切じゃあないか、魔法使い様ヨォ?』
先程の黒猫が現れ、話しかけてきた。しかも、人間のように二本足で器用に歩きながら。
「うう、何なんだよお前ら……。確か、ファンタズムとか何とか……」
『阿呆。ファントムだ。お前らはそう呼んでるんだろう?え?』
「そうそれ。何で僕ばっかり虐めるのさ……。せっかく人間からのいじめも無くなって友達もだんだんできてきたっていうのに……」
『そんなこと知ったことか。さて……』
いつの間にか周りの塀の上には、何匹ものネコが集まっていた。
『冥土の土産に名乗ってくれよう。我こそは猫を統べる〈ケットシー〉!闇に生きる王、不可解の魔獣!これから貴様を殺す者なり!』
ケットシーが周りのネコに呼びかける。
『さあお前達!歌え、【人を殺す歌】!死肉は好きにくれてやる!』
その合図と共に、ネコ達が一斉にニャアニャアと鳴き出した。何十、何百と重なり、不快なハーモニーを生み出すその鳴き声に、少年もたまらず耳を塞ぐ。
「うう、頭痛がする……吐き気もだ……。何だよこの鳴き声……。一体何匹居るんだよ、このネコ共は」
『お前には知る必要の無いことよ!しかしこれだけは教えてやる!この歌は音の重なり合いによって特殊な周波数を生み出し、貴様らのような人間の脳味噌と肉体を直接に殺す、必殺技なのだ!魔法を使うといったところで、所詮は人間!このままくたばりやがれェッ!』

3

魔法譚 〜用語解説 Ⅲ

企画「魔法譚」の用語解説、Ⅱの続きです。
企画概要はタグ「魔法譚」から。

〈魔法使い〉
大賢者からマジックアイテムを受け取って魔法を使えるようになった人のこと。
マジックアイテムを使うことで魔法を使用できるが、1つのマジックアイテムで使える魔法は1種類までなので、実質1種類しか魔法を使えない。
異方からやってくる“ファントム”に命を狙われる運命にあるが、マジックアイテムの変身機能を使うことで戦うことが可能。
変身後の姿は人によって様々である。

基本的に大賢者からマジックアイテムをもらって魔法使いになれるのは子供のうち(10代くらい)である。
だが世の中には少数だが大人の魔法使いもいる。
それでもコドモの魔法使いが多い。
なぜならほとんどの魔法使いは、大人になる前にファントムに命を奪われるからだ。

〈ファントム〉
異方からやってくるバケモノ。
理由は不明だが魔法使いの命を奪いにやってくる。
実在する生物っぽい姿から、なんとも言えない異形の姿まで、様々な姿形をしている。
普通の人には見えない。
そのくせして魔法使い達に物理攻撃や精神攻撃などを仕掛けてくる。
魔法使い達にできる唯一の対処法は、マジックアイテムの変身機能を使って戦うことのみである。

たまに大賢者に手を出すことがあるが、チート級に強いので一撃でやられる。

これで用語解説は終了っと…
何か分からないことがあったら、レスで質問してくださいね。

企画「魔法譚」は7月7日21時よりスタート!