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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 ロノミア・オブリクァの扱う『刀』一覧

・破城(ハジョウ):全長3m超の斬馬刀。攻撃対象の『防御の意思』に反応し、その防御を破壊する。

・幽鱗(ユウリン):全長90㎝程度の日本刀。刀身の損傷を、表面だけが割れるように剥がれることで完全に修復する。修復の度に刀身自体の耐久力が少しずつ落ちていくので、実質的に修復が使えるのは50回程度。

・血籠(チゴモリ):赤い刀身を持った全長85㎝程度の日本刀。使用者の血液を媒体にして、深紅の流体が刀身の傷を埋める、本質的に不壊の刀。流体の生成効率は、消費した血液の10倍程度。
・異称刀“稚児守”(イショウトウ:チゴモリ):“血籠”の別側面。使用者より年齢の低い者を守る際、刀の耐久力と使用者の身体能力が更に向上する。

・緋薙躯(ヒナギク):赤い刀身を持った全長80㎝程度の日本刀。直刀だが刀身にうねるような刃紋が刻まれている。刀身を自在に伸縮・変形させられる。
・異称刀:否凪駆(イショウトウ:ヒナギク):“緋薙躯”の別側面。この刀を振るった場合、完全に振り抜くまでその斬撃は止まらない。”否凪駆”の能力使用中は、刀身の変形効果は使えない。

・癖馬(クセウマ):奇妙な形状の刀身をもった刀。刃渡り75㎝程度、全長100㎝強。その形状と刀身の密度の僅かな差から、一度振るうと標的を捉えるまで遠心力によって無限に、不規則に回転し続け、速度と威力を増していく。制御は極めて困難であり、十分に勢いの乗った刀身の挙動を読むことは不可能に等しい。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 キャラ紹介・甜花編

ササキア・カロンダ
Sasakia charonda(オオムラサキ)
年齢:17  身長:168㎝
固有魔法:『実力』に『評判』を上乗せする
メディウムの魔法:変身、身体強化、耐久力強化、追加武装、自己回復
説明:甜花学園生徒会会長。自己鍛錬を怠らず、道徳と規律を遵守し、学園生徒からの信頼も篤い。まさしく『正義の人』。その才覚は学園外にも知られているが、本人は自身の魔法を「地味な魔法で、決して大したものでは無い。もっと強い、凄い魔法少女は学園にたくさんいる」と認識している。謙虚な態度も大人気。

ニファンダ・フスカ
Niphanda fusca(クロシジミ)
年齢:16  身長:158㎝
固有魔法:時間と空間を掌握する
メディウムの魔法:変身、発光体の生成
説明:甜花学園の生徒。高等部2年。時空間を自在に支配するという『最強』と呼んで差し支えない魔法を有する『規格外』であり、自身の魔法を恐ろしいものだと認識しているので、普段はあまり使いたがらない。メディウムに封じた魔法は、掌大の光る球体を生成するもの。懐中電灯代わりに便利。趣味は友達の部屋でのお泊り。

エウメタ・ジャポニカ
Eumeta japonica(オオミノガ)
年齢:11  身長:144㎝
固有魔法:『無』を生成する
メディウムの魔法:変身、望遠、魔法障壁展開
説明:甜花学園初等部6年の児童。誕生日は3月中旬。モリヤマ双子の友達。固有魔法は視界範囲内に『無』を生み出すもの。『無』とは真空の上位互換のようなものであり、周囲の空間や物質、エネルギーなど全ての事物は、空間を埋めるために『無』へと引き込まれる。ブラックホールの遠い親戚みたいなものだと思えば何となくのノリとしてはまあまあ合ってる。甜花学園の次代を担うことを期待された『規格外』の1人。

※甜花学園:強力な固有魔法を扱う『規格外』を集め、一か所に隔離することを目的とした学園。圧倒的な強さを保持することで、有事の際の秘密兵器としての運用を期待されており、総務局との繋がりも強い。ネットでその他の学園から叩かれてそう。
ちなみに過去にいた『規格外』の魔法には、時間移動や強力な召喚獣の使役、透過能力や単純な超高火力攻撃など色々ある。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 エピローグ

甜花学園襲撃の翌日、ボンビクスとアンテレアは、友人のエウメタ・ジャポニカを連れてロノミアとの『秘密基地』にやって来ていた。
「へー、ここがモリちゃんとマイちゃんの秘密基地?」
「そうだよー」
「くぁちゃんはもう来ないから、私たちだけの秘密基地なのー」
「くぁちゃん……あ、いつも話してる二人の師匠さん? どうしたの?」
「くぁちゃんはね、魔法がおしまいになったんだって」
「へー」
適当な段差に腰を下ろし、エウメタが口を開いた。
「そういえば、昨日うちの学園に、襲撃が来たんだって。危ないからって、初等部の私たちは早めに帰されちゃった」
「あっ、それくぁちゃんだよ」
ボンビクスがさらりと言う。
「え? じゃあ、あの中等部の校舎真っ二つにしたのも?」
「そうだよ、すごいでしょ!」
「生徒会長さんも倒したんだよ!」
双子が自慢げに胸を張る。
「すごーい! あの人、負けるってことがあり得るんだぁ……で、お師匠さんは今は?」
「総務局に怒られてるの」
「私たちも一緒にいたんだけど、私たちは無罪になったんだって」
「へー、なんで?」
「「さぁ……」」
その後も3人は、他愛も無い世間話をして過ごした。
「あ、そういえば」
ボンビクスが不意に口にする。
「どしたの?」
エウメタの問いかけに、双子はピースサインを向けた。
「私たち、中等部から甜花学園に通うことになったから、よろしくね?」
その言葉に、エウメタは目を輝かせた。
「えっ本当? やったぁ!」
「4月からよろしくねぇ、メタちゃん」
「今から楽しみー」
「うん! 二人ともよろしくね!」

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑱

ササキアは朦朧とする意識の中、ロノミアを睨みつけていた。霞む視界の中、ロノミアは斬馬刀を振り上げ、次の攻撃に入ろうとしている。しかし、衝撃が彼女の体内を大きく損傷させており、ササキアは既に回避も防御もできない状態にあった。
「さーぁコイツで締めといこうか。せっかくだから、『全部乗せ』だ」
ロノミアもまた、“破城”を握る両手や踏みしめた膝は小刻みに震えており、体力の限界も近い。
「私の懸けた魂の分、全部、ぜーんぶ、ブチ壊し抜け!」
“破城”が振り下ろされる。ロノミアの魔力の全てを乗せた一撃は、一閃の軌道上に深く破壊の痕跡を残し、ササキア達の背後、校舎そのものを両断し、刀身自体も反動によって粉砕した。
「……ヤマ子ぉ」
振り下ろした姿勢のまま動かないロノミアが呼びかける。
「……くぁちゃん?」
「もう、結界消して良いぞ」
「うん」
アンテレアが結界を解除すると同時に、ロノミアの手の中にあった“破城”の残骸も消滅した。
「『時間切れ』だ。……うん、悔いは無い。最後にたっぷり暴れられた」
言いながら、ロノミアはその場に尻餅をついた。
「くぁちゃん?」
ボンビクスが、不安げな表情でロノミアに近付く。
「何だよその顔? 私の魔法はもうおしまい。それだけさ。まぁ……これから総務局にたっぷり怒られることにはなるだろうけど」
軽い口調で言うロノミアに、双子は変身を解いて抱き着いた。
「何だよいきなり」
「……くぁちゃん、もう私たちの師匠やってくれないの?」
「くぁちゃん、捕まっちゃう?」
「変な心配する奴らだなぁ……私に教えられることは全部教えたし、そもそも悪いことしたんだから捕まるのは前提だ。……あぁ、モリ子、ヤマ子」
双子が顔を上げ、ロノミアを見つめる。
「お前らは、何も心配しなくて良い。お前らの処遇については、私に考えがあるから。お前らの師匠からの、最後の贈り物だ。有難く受け取れよ?」

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑰

ササキアが反射的に盾を構え直したのとほぼ同時に、『繭』の壁に亀裂が入った。亀裂は深く広く拡大していき、遂に一部が破壊され、その穴から外界の様子が見えるようになった。
「壊した!」
ニファンダの声。
「くぁちゃん、破られた!」
ボンビクスの呼びかけ。
「任せろ!」
ロノミアが“破城”を振るう。ササキアの盾の前に、ニファンダはほぼ反射的に『空間支配能力』によって、不可視の障壁を展開していた。
その『障壁』と大盾に、“破城”が衝突した。

――“破城”。ロノミア・オブリクァの固有魔法によって生成される『刀』の一振り。そして、その全ての『銘』には、能力に基づく意義がある。
『破城槌』という兵器が存在する。これは城壁や城門を衝突により破壊することを目的としたものであり、“破城”の銘もまた、これに由来するのだ。
“破城”の有する能力は、『防御の破壊』。その強度や特性とは無関係に、ただ『防御の意思』を感知し、強制的にそれを破壊するということこそ、“破城”の特殊効果なのだ。

刃は不可視の障壁に触れた瞬間、『空間の歪み』であるはずのそれを粉砕した。その勢いは衰える事無く大盾に直撃し、抵抗なく破壊した。
「なん……ッ!」
咄嗟に腕で受けようとしたササキアだったが、その動作をボンビクスの糸が妨げる。
結果として、ノーガードのササキアを“破城”の刃が捉えた。ササキアは衝撃を受けながらも後方に向けて跳躍したため、致命傷は回避したものの、“破城”の威力も相まって大きく弾き飛ばされ、ニファンダを巻き込んで後方数m、校舎の壁に激突した。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑯

(私がこいつに見せていない『刀』は0。……全ての手札が割れている……いや、一振りだけ、『能力は』見せていない刀があったな。となると……決めるなら“破城”しか無いな)
ササキアの手刀が手首に直撃し、ロノミアは“血籠”を取り落とした。
「ぐッ……!」
続いて放たれた拳を、ロノミアは無事な片手で受け流した。カウンターで肘鉄を打つが、ササキアはそれをわけも無く受け流し、隙だらけの背中に膝蹴りを叩き込む。
「ぐあっ……!」
更に続くササキアの攻撃を、ロノミアは転がるように回避し、距離を取った。
「クソっ、痛ってぇ……」
(……粘るな。何が目的だ? とにかく、こいつを倒すか、やり過ごさねば、元凶であるあの双子を倒せない。……恐らく、こいつは私の盾を破壊したことで、『追加武装』がもう無いと考えている。決めるなら、『あの盾』だな)
ササキアは連続で蹴りを放ちながら、ロノミアを追い詰めていく。
2人の戦闘は徒手による格闘に変わり、ササキアの優勢で激しく動き回りながら打ち合う。その間にも糸の帯は数を増していき、領域内は複雑な地形を成していく。
「っ……」
ダメージの蓄積により、ロノミアが膝を屈した。その隙を逃さず、ササキアが蹴りの姿勢に入る。
その時、ボンビクスの糸束が、ササキアの軸足に固く絡みついた。即座に、ロノミアがやや前のめりに重心をずらす。
((……今!))
ササキアは持ち上げていた足を素早くその場に振り下ろし、右腕に『追加武装』を出現させた。十字架を膨らませたような形状の、全長2m程度の金属製の大盾。その側面は、刃のように加工されている。正しく『大剣』の様相である。
対するロノミアは、膝をついた姿勢のまま、巨大な斬馬刀“破城”を手の中に生成した。
2人がほぼ同時に武器を振り、直撃する寸前。
「モリ子ぉっ!」
ロノミアの掛け声で、別の糸束が彼女を捕え、ボンビクスの方向へと引き戻した。それにより、ササキアの攻撃は空を切る。
糸束から解放されたロノミアは、慣性によって領域内壁に着地し、即座に跳躍した。ロノミアは更にササキアの後方に張られた糸帯に着地し、慣性に任せて深く膝を折る。
(来る!)
ササキアが大盾を構える。しかし、攻撃が来ない。ササキアが盾を僅かにずらすと、ロノミアは糸帯に垂直に着地した態勢のまま、“破城”を構えていた。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑮

ボンビクスが『繭』を生成する前から、ロノミアは既に、結界術を解除していた。しかし、彼女に絡みつく細糸が、操り人形のように彼女の『時間』を動かしていた。
(ん、繭? モリ子の魔法か。)
「……嬉しいねぇ、自分の弟子が成長してくれるってのは」
ササキアの拳を“血籠”の刃で受け止め、ロノミアは呟いた。
「……この程度の魔法、ニファンダ・フスカにかかれば軽く捻り潰せる」
「どうだか」
迫り合う二人に割って入るように、繭の内壁から白糸の帯が放たれた。
「おっ、面白いことやってくれんじゃん!」
ロノミアが跳躍し、糸の帯を蹴ってササキアの背後に回る。ササキアは即座に反応し、身を翻して手刀を打ち込んだ。ロノミアは沈み込むように回避し、反動で跳躍して膝蹴りを打ち込む。ササキアはそれを片手で受け止め、投げで地面に叩きつけようとした。その直前、新たに現れた白糸の帯が、クッションのように受け止める。
「助かったぁ!」
足をばたつかせることでロノミアはササキアの手を逃れ、態勢を立て直す。
(さぁて……困ったことに、私は手を出し尽くした。どうやって押し切ったものか……っつーか、疲れてきたなぁ……)
ロノミアは既に大量に展開されていた白糸の帯を蹴り、空中に逃げる。新たに展開された帯に掴まり、息をつく。
「やーい、ここまで来てみろ生徒会長」
挑発するロノミアを見上げながらも、ササキアはその場を動かない。
(この『繭』が形成されてから、明らかに動きが重くなっている。『絡みつく魔力』に、補正がかかっているのか?)
「……まあ良い」
ササキアが、双子に目を向ける。その瞬間、ロノミアが糸帯の足場から手を放し、落下の勢いを乗せて斬りつけた。ササキアはそれを、籠手を身に着けた片腕で受け止める。
「可愛い弟子の大仕事、邪魔させるわけ無いだろ!」
「問題無い。貴様を倒してから、あの双子も捕える。それで片付く」
2人は再び、至近距離での激しい白兵戦を開始した。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑭

ササキアと交戦するロノミアの背中を見ながら、ボンビクスは瞑目して意識を集中させる。
(必要なものはくぁちゃんが教えてくれた……うぅん、ずっと昔から、くぁちゃんは私に言ってくれてたのに)
長く息を吐き出し、目を開く。
(私の魔法、不安定過ぎて、テンちゃんの結界が無いとまともに使えない。私はずっと、『使いこなせる』ようになろうと思ってた。それが間違いだった)
右手を前方に向けて掲げると、その手の中に新たな細糸が生成された。それらは、アンテレアの結界の中にあって尚、安定性の不足によってかき消える。
(大丈夫。私に足りない『安定感』は、テンちゃんが補ってくれる。私は何も心配しなくて良い)
再び細糸を生成する。糸が千切れ飛ぶ。
(むしろ、もっと滅茶苦茶に。安定性の全部、私は投げ捨てる。余力の全部、『出力』に回す!)
再び細糸を生成する。千切れた破片を、新たな細糸が絡め取る。
(もっと強く、あいつの『時空支配』よりもっと上から、『あいつの魔法ごと』!)
細糸が次々と生成される。それらは千切れ、崩れながら、新たな糸が残骸を更に巻き込み、少しずつ形を成していく。
「この『世界』の全部……縛める!」
突然、複雑に織り固められた細糸の集合体が、噴き出すように飛び出し、5人の周囲を取り囲むように形成されていく。

(これは……繭?)
周囲を取り囲んでいく白糸の塊を見ながら、ニファンダは冷静に魔法を行使し、繭を破壊しようと試みた。しかし、その感触に違和感を覚える。
「……あれ?」
再び魔法を行使する。
「…………なんで?」
再び魔法を行使する。
「……おかしい。違う。なんで、いや、そんな……っ!」
「ニファンダ、どうした!」
「っ! ……だ、大丈夫、会長はそっちに集中して!」
「……了解」
ササキアは再びロノミアに向けて突撃した。
(おかしい……私の魔法が、『繭の外に追い出されてる』。この繭の中は、完全にあの子の領域……! でも、外からなら攻められる。必ず押し潰して……あの子に勝つ!)

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑬

鋭い一撃はロノミアの首を捉えたはずだった。しかし、そこに彼女の姿は無い。
「何っ……!」
ロノミアはササキアの予測より数㎝ほど右方にずれた位置に着地していた。
「らぁっ!」
回転運動の乗った斬撃を、ササキアは仰け反るように回避した。ロノミアの攻撃は空を切り、重量に引かれてその身体は空中へと引っ張られる。“癖馬”は独特の刀身の形状から、それまでの回転と軸の異なる不規則な軌道で、回転を『上書き』した。ロノミア自身の肉体もまた、それに巻き込まれるようにして、ササキアの周囲を滅茶苦茶に飛び回る。
(こいつ……急に動きが読めなくなった……⁉)
「言わせてもらうぜぃ、生徒会長さんよ。『力』は『あるべき形』でありたがる。それを無理やり押し込めるなんざ、それは『技術』じゃなく『臆病』だ」
“癖馬”に振り回され、不規則に動きながら、ロノミアは続ける。
「『制御できない』んじゃない。『制御なんかしない』んだよ。『あるべき姿』の出力に、身体だけ貸してやるのさ。“強さ”ってのは、そういうものなんだよ!」
背後に回ったタイミングを狙い、ロノミアの一撃が放たれる。
「くぁちゃん!」
命中の直前、ボンビクスが叫んだ。同時に、ロノミアの動きが一瞬停止する。ロノミアの腹部を狙ってササキアが拳を打ち込もうとしたその時、その身体は空中で引かれ、双子の前に引き戻される。ボンビクスの固有魔法によるものだ。
「ごめんねくぁちゃん、ちょっと押し負けた!」
「ったく…………で? 掴めたな?」
「うん。もう大丈夫! くぁちゃん、私のこと、信じてくれる?」
「最初から信じ切ってたよ。……それじゃ、やってやれモリ子」
ロノミアは再び立ち上がり、手放した“癖馬”の代わりに生成した“血籠”を握った。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑫

ロノミアはふらつきながらも“癖馬”を持ち上げた。
「何を下らないことを……」
ササキアはロノミアの提案には載らず、突進を仕掛けた。
「うおっ! 危ねーだろー!」
ロノミアは刀を振った勢いで意図的に姿勢を崩すことで、攻撃を回避した。更に慣性のままに刀を振り回し、ササキアに向けて振るう。緩慢なその動作を、ササキアは容易に回避し、反撃に盾の側面を叩きつけようとした。ロノミアはそこに回転運動で戻ってきた刀身を合わせ、ぶつかり合ったその点を軸に、『自身の肉体』を遠心力によって大きく移動させる。空中に投げ出されたロノミアの身体は、回転運動しながら着地し、回転の『軸』を再び彼女の体幹へと移動させ、更に回転運動を加速させる。
「それで、生徒会長さんよぉ? 『暴走する力』は強さだと思うかい?」
「何?」
遠心力の乗った“癖馬”が、再び盾に衝突する。
(重い……が、この程度なら問題ない)
ロノミアは再び回転軸をずらしながら、空中に跳び上がる。
(よし、まだ『回転』は生きてる! このまま……!)
落下の勢いを乗せて、“癖馬”を叩きつける。それを受け止めたササキアの盾に、亀裂が入る。
(割れた……⁉)
「もう一度問うぜぃ、生徒会長! お前を今追い詰めているこの『制御できない力』は、強さか?」
「……制御し、扱うことのできないそれを、『強さ』とは呼ばない」
飛び退くように回避しながら、ササキアは答えた。
「へぇ……?」
ロノミアは地面を“癖馬”で打った反動で再び跳び上がり、追撃を仕掛ける。ササキアはその様子を注意深く観察し、ロノミアが自身の背後に着地した瞬間を狙って後ろ回し蹴りを放った。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑪

ロノミアが追撃を狙い、ササキア達に向かう。その瞬間、ニファンダの魔法が彼女を捉えた。
(っ……時空干渉! マズい、モリ子の『糸』と違って、こんな単純な結界術でどうこうできる代物じゃない……!)
体勢を立て直したササキアが、盾で殴りつけようと踏み込んだその時、ロノミアの身体が自由を取り戻し、逆にササキアの動作が一瞬停止する。
(この『絡みつく魔力』……ニファンダの『時空支配』の中でもここまで妨害してくるのか)
ササキアとロノミアの攻撃が衝突し、再び空間が震える。
「……へぇ? 会長」
ニファンダに呼ばれ、ササキアは後退した。
「この『時空間を縛る糸』、犯人はあの双子ちゃんたちみたいだね。私の支配する領域内で、ここまで張り合ってくるなんてびっくりしちゃった」
「ふむ、そうか。なら、そちらから倒そう」
ササキアが注意を双子に向けると、それを庇うようにロノミアが移動する。
「くぁちゃん……どうしよう。あいつの時空間操作、すっごい強いよ」
ボンビクスが不安げに、ロノミアの背中に呼びかける。
「あん? そうかい。で? 駄目ならそこまでだぞ?」
「うっ……だ、大丈夫! だと、思う……」
「ふーん……モリ子、ヤマ子」
「「?」」
「何にせよ、私はお前ら信じるしか無いんだ。……だから、お前らに良いものを見せてやる」
ロノミアが、手にしていた“チゴモリ”と“ヒナギク”を消滅させた。代わりに、一振りの刀が出現する。
その刀は、『刀』と直接形容するには、些か歪であった。
刃渡り75㎝ほどの異常に幅広の刀身は先端に向かう程太く拡大しており、断面は五芒星を膨らませたような奇妙な形状をしている。外見に違わぬ質量のためか、ロノミアは柄こそ握っているものの、刀身の先端は設置させたままでいる。
「ブチカマすぞ、“癖馬”。……なぁ生徒会長、禅問答しようぜぃ。お題は、『制御できない力は“強さ”たり得るか』で」

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑩

(何だ? この子供たちは……こいつの仲間か? しかし、言い分が奇妙だった。『助けに来た』といった直後に、『守って』だと? 不自然だ……)
ササキアが、ニファンダを庇うように前に出る。それと対になるように、ロノミアも双子を後方へ押しやりながら前進した。
「クキキッ、何となーく察してるとは思うがよぉ……生徒会長さんよ?」
「どんな魔法を使おうが、勝つのは“甜花学園”だ」
「どうだろうなァ? あんたなら知ってると思うが……」
ロノミアとササキアが、同時に攻めに入る。ササキアの盾とロノミアの“チゴモリ”がぶつかり合い、静止した空間に火花が飛び散る。
(この威力……これまでの打ち合いと比べて、明らかに『重い』)
「クカハハッ! びっくりしてんな? 生徒会長さんよぉっ!」
ロノミアが“チゴモリ”を振り抜き、ササキアを押し返す。
「あんたなら知ってるはずだ。『守るものがある奴は強い』ってな。そういう能力」
ロノミアの構えた“チゴモリ”の赤い刀身が、どこか神聖さすら感じさせる清らかな輝きを放つ。
「異称刀、“稚児守”」
ニタリと笑い、ロノミアが更に斬撃を叩き込む。ササキアはそれを大盾で受け止めた。その衝撃の余波で、ボンビクスとニファンダによって縛められているはずの空間がビリビリと震える。
「なっ……これも防ぐのかよ!」
「『この程度』で……私は折れん!」
ササキアの啖呵に、ロノミアは再び口角を吊り上げる。
「へェ? そんなら……こっちはどうだ?」
大盾に向けて、ロノミアは更に“ヒナギク”を叩きつける。
(両手で打たれようが……待て、何故『変形効果』で直接狙わない?)
「敵に届くまで、この『生きた刃』は止まらねぇ」
“ヒナギク”の一閃は大盾に衝突して尚停止する事無く、少しずつ前進していく。少しずつ、その一撃の成立を目指して振り抜かれていく。
「異称刀ぉっ!」
遂に、その斬撃は完了した。防御技術により、直接的な殺傷こそ起きなかったものの、ササキアは弾き飛ばされ、後方に控えていたニファンダに受け止められる。
「“否凪駆”」

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魔法少女学園都市レピドプテラ -small cabbage white- 3

「……キミも迷子?」
ポニーテールの少女の言葉に、ラパエはついずっこける。
「き、キミ“も”?」
ラパエが聞き返すと、ポニーテールの少女はうんと頷く。
「だってボクも迷子だし」
「えええ⁈」
そう、なんですか……?とラパエが近付くと、ポニーテールの少女は苦笑いする。
「実はボク、今日からこの学園に所属することになってさ、まだ校舎の構造が頭に入ってないんだよね」
「だから迷子に……」とポニーテールの少女は言いかけるが、ラパエは「えっ、あなたも転入生なんですか⁈」と驚く。ポニーテールの少女はあぁ、うん……と答える。
「もしかしてキミも転入生なの?」
「はい! 中等部2年1組のピエリス ラパエですっ‼︎」
ポニーテールの少女の質問に、ラパエは姿勢を正して明るく答える。その様子を見てポニーテールの少女はそんなにかしこまらなくていいよと笑ったが、ラパエは「いえ! 先輩相手に失礼なので‼︎」と背筋を伸ばしたままだ。それを見てポニーテールの少女はふふと微笑む。
「……ボクはグラフィウム サルペドン、高等部2年3組だ」
ボクのことはサルぺと呼んでとポニーテールの少女が言うと、ラパエは「じゃーサルぺ先輩!」と声をかけた。
「一緒にこの校舎から脱出しましょう!」
ラパエは元気よくサルペの両手を取る。サルペはあぁ、そうだねと言ってちらと真横にある教室の扉に目をやった。それに気付いたラパエは「……どうしたんです?」と首を傾げた。

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魔法少女学園都市レピドプテラ -small cabbage white- 1

よく晴れた春の朝。
白い外壁が特徴的な校舎の学園・櫻女学院の中等部2年1組の教室では、転入生の紹介が行われている。教室の前には桜色のセーラーワンピースの制服を着て、髪を二つ結びにした少女が担任の教師の隣に立っていた。
「えー、今日からうちのクラスで勉強することになったピエリス ラパエさんだ」
みんな仲良くするようにと言ってから、女教師は少女に目くばせして自己紹介するよう促す。少女は「ピエリス ラパエです!」と明るく名乗り、こう続けた。
「あたし、ずっと魔法少女学園都市に憧れてたので、ここに来れてすっごく嬉しいんです‼︎」
「だからよろしくお願いします!」とラパエはおじぎをする。それを見てクラスの生徒たちはどよめいた。
というのも、この櫻女学院がある人工島・レピドプテラは“魔法少女学園都市”とも呼ばれるように、世界各地から“魔法”と呼ばれる一種の特殊能力を発現させた少女たちが集められ、魔法を失うまで隔離される場所なのだ。魔法を失うまで、一度レピドプテラに隔離された魔法少女はまず出ることはできないため、大抵の人間にとってはあまりいいイメージのある場所ではないし、ここにいる魔法少女の多くは自ら望んでここに来た訳ではない。
しかしこのラパエという少女は“魔法少女学園都市に憧れていた”と言うのである。自らの意思でレピドプテラに来た訳ではない多くの魔法少女たちにとって、違和感でしかない発言だった。
「はいはい、騒ぐのはあとにして」
教師は手を叩き、「ピエリス、あなたの席は窓際の1番後ろだからな」とラパエに声をかける。ラパエははーいと返事をして言われた座席に向かった。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑨

「……テンちゃん、まずい」
ビルの屋上で、ボンビクスが呟いた。
「どうしたの、お姉ちゃん?」
「糸を逃れる人がもう1人出てきた。多分、私より『上』から時空を握られてる。どうしよう……くぁちゃんの結界術は私の糸からしか守れないから、やられちゃうかも……」
姉の言葉に、アンテレアは一瞬考え込んでから口を開いた。
「お姉ちゃん、くぁちゃんと初めて会った日のこと、覚えてる?」
「うん。怖い先輩に絡まれてた時に、くぁちゃんがその人をボコボコにしてくれたんだよね!」
「その時にね、くぁちゃんが言ってたの。『お前らがいて都合が良かった』って」
「そういえば言ってたね? でもなんで?」
「私も気になって、あとで聞いたの。何か、くぁちゃんの刀の中に、2個の能力があるやつがあるんだって。『イショートー』だっけ?」
アンテレアが、にぃ、と笑う。
「くぁちゃんの刀の中にね、私たちみたいな子を守ると強くなれるのがあるんだって。だから、お姉ちゃん」
アンテレアの言葉に、ボンビクスは目を輝かせた。
「テンちゃん、行こう! くぁちゃん助けに行くよ! 結界お願い!」
「りょーかい!」
アンテレアが、新たに双子を範囲内に収める小さな結界を生成する。ボンビクスの魔法の発動と同時に、2人は屋上から飛び降りた。
ボンビクスは糸をクッションにして着地し、そのまま甜花学園を覆う結界に突入する。
「これで……自由に糸を使える!」
ボンビクスは双子の身体を糸でまとめ、校舎に向けて糸の先端を射出した。外壁に接着した糸を引き、伸縮性を利用して一気に跳躍する。
「お姉ちゃん、くぁちゃん見つけた!」
「分かった!」
糸を操り、双子はロノミアの前に着地する。
「くぁちゃん、助けに来たよ!」
「くぁちゃん、守って!」
突然の双子の出現に、場が一瞬固まる。
「お……お前ら、何つータイミングでで出てきてんだよ……最悪だ」
ロノミアの言葉に、双子は不安げに振り返る。ロノミアは頭を抱えながらも、口元には笑みを浮かべていた。
「……最高のタイミングだ……!」

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑧

「ぐっ……時間が足りない……!」
ササキアが呟きながら、身体を起こす。
「あー? 今のを耐えるのかよ?」
「私は、皆に信頼されている……。それに応えるため、折れるわけにはいかないんだ!」
毅然と言い返し、ササキアは再び盾を構える。受けた刀傷は、既に治癒されていた。
「わーお、治癒能力まで搭載済みかよ……とんだ意地っ張りだ。こりゃ骨が折れるぞ?」
ササキアが盾を前に突き出し、突進を仕掛ける。
「ところで知ってるかい? 生徒会長さんよ」
ロノミアが、左手の刀を掲げる。それ――“緋薙躯”の刀身は根元から失われているように見える。否、正確には『視認困難なほどに細長く伸長している』。
「一度伸ばしたものは、必ず縮めなきゃならないんだよ」
“緋薙躯”の刀身伸長が解除され、超高速で元の長さに縮んでいく。ロノミアは先端付近を変形させ、スパイクを形成することで、縮小の過程でササキアの首を捉えられるようにしていた。スパイクがササキアの首の後ろに迫る。
(獲れる……!)
直撃の瞬間、スパイクは虚空で不自然に砕かれ、ササキアを傷つける事無く“ヒナギク”は元の形状に収まった。
「あ……?」
「……どうやら、間に合ったようだな。この『絡みつく魔力』が時間をも拘束していたのだろうが……残念だったな。『時空に干渉する』魔法の持ち主程度、この学園にも揃っている」
校舎の2階の窓が開き、1人の魔法少女がふわりと飛び降り着地した。
「会長、ごめんなさい! いきなりのことで対応に時間がかかりました!」
「助かった。奴が下手人だ」
蝶の羽根を思わせるシルエットの和装に身を包んだその魔法少女――ニファンダ・フスカが、ササキアの隣に並ぶ。
「あれが悪い人なんだ? 流石に私が出し惜しみしてる場合じゃないし、本気で行くよ!」

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑦

ロノミアは踏み込み過ぎず、離れすぎず、『約1m』の距離を保ちながら、連続攻撃を放つ。ササキアは2枚の盾でそれを捌きながら、反撃の機会を窺う。
(まだ……)
斬撃が止まった一瞬を逃さず、ササキアが盾の側面で殴りつける。ロノミアは二刀を交差させて押し返すように受け止めた。
(まだまだ……)
刀と盾の押し合いは、盾側の優勢となった。ササキアが少しずつ、ロノミアを押し返していく。
(まだまだまだ……!)
突き飛ばされ転がされないように、ロノミアはじりじりと後退していく。それに気付き、ササキアは踏み込みながら盾で弾き飛ばした。ロノミアは後ろ足を大きく引くようにして耐えるが、上半身が大きく仰け反る。
((今!))
攻めに転じたササキアに、ロノミアは“緋薙躯”の切先を向け、伸長効果を発動する。ササキアは首を傾けて回避し、そのまま盾で殴りつける。その瞬間、ロノミアは自身の周囲に展開していた結界を縮小し、自身に薄く纏うように変形させた。
周囲の空間には、ボンビクス・モリの拘束糸が漂っている。ロノミアの結界術があることで、『安定化』の恩恵を失った糸からロノミアは身を守っていたのだ。そして、その影響は近距離で戦闘を繰り広げていたササキアにも及ぶ。
ササキアは彼女の固有魔法によって身体能力を強化していたことで、拘束糸を強引に振り切りながら行動することができていた。そして、彼女の魔法が『無効化』ではなく『強化』であるからこそ、新たに絡みつく不可視の拘束を再び振り切るためには、僅かな『タイムラグ』が生じる。
(この感覚……! 時間が止まったときと同じ、『魔力が絡みつく感覚』! マズい、振り切ることは不可能ではない。しかし、この状況は……)
「おっらああァッ!」
一瞬の隙を逃さず“チゴモリ”が振り下ろされ、ササキアは壁に叩きつけられた。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑥

ロノミアは左手に握った直刀“ヒナギク”を振り上げ、照準を定めた。その様子に、ササキアは警戒を強める。
(奴の構え……足を止めている? まさか、遠距離からでも当てられる刀なのか?)
ササキアの装備していた大盾が、2枚のやや小さくなった盾に変化し、両手に収まる。
(奴の攻撃力は把握できた。これで十分対応できる)
「駆けろ……“緋薙躯”!」
振り下ろした“ヒナギク”の刀身が伸長し、ササキアに迫った。ササキアは2枚の盾を構え、防御の姿勢を取る。
刀身は盾に衝突する直前、直角に軌道を変え、防御を掻い潜り切先を首に向けた。ササキアは身体を傾けるようにしてその刺突を回避する。
(刀身の『伸長』と『変形』!)
後退し、ササキアは双盾を構え直した。その隙に距離を詰めていたロノミアが、右手に握った太刀“チゴモリ”で斬りつける。ササキアは双盾で挟み込むように受け止め、そのまま刀身をへし折った。
「あ、テメ! よくもやってくれたな……!」
ロノミアがササキアを睨みながら距離を取り、“チゴモリ”の柄を強く握ると、鎺の隙間から赤い流体が溢れ出し、折れた刀身を埋めるように再形成した。
(あの刀も修復効果があるのか……)
「くそぅ……こいつを直すの、しんどいんだぞ? だから……」
ロノミアが両手の刀を真上に放り上げる。二振りは回転しながら上空で交差し、再び諸手に収まった。“ヒナギク”は刀身の変形効果によって“チゴモリ”と区別のつかない形状に変化している。
「これで、どっちがどっちか分かんないだろ」
「どちらが何であれ、防ぎ、砕く。それだけだ」
「良い答えじゃん」
ロノミアが二振りの刀を提げたまま、再び突撃する。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑤

ロノミアが斬馬刀を振り上げたその時。
「お前ッ! 何をしている!」
背後からかけられた怒声が、彼女の攻撃を引き留めた。
「…………へェ? この領域内で、自由に動けるヤツがいるとは思わなかった」
ロノミアが振り返ると、数m先に軍服風の衣装に身を包んだ魔法少女が立っていた。
「お前がここで一番強いヤツか? それなら朗報だ。『私を倒せば、この学園の異常は解決する』」
ロノミアの言葉に、魔法少女は眉を顰めた。
「……私より強い魔法少女なら、この学園に山ほどいる。私はこの甜花学園の生徒会長、ササキア・カロンダ。皆の信頼に報いるため、お前は必ず倒す!」
「やってみろよ」
ロノミアは“破城”を消し、代わりに一振りの日本刀を生成した。
「“幽鱗”、やるぞ」
身体強化による高速移動で距離を詰め、斬りつける。ササキアは大盾を生成し、それを受け止めた。金属製の硬質な防御に超高速で打ち付けられたことで、刀身に亀裂が走る。
「ははっ! 上手く防ぐじゃんか!」
「この程度の速度で、私を破ろうとしていたのか?」
「いやァ? ……けど、困ったなァ……刀にヒビが入っちまった」
ロノミアが“幽鱗”を掲げると、刀身の罅が全体に広がり、パリンと音を立てて割れてしまった。そして、その下から無傷の刀身が新たに現れる。
(……刀身の損傷を修復した? そういう魔法か)
ササキアが盾を構えると、ロノミアは“幽鱗”を消滅させた。
(何故消した? 損傷は修復できるはず……)
一瞬の思考の後、ササキアは口を開く。
「……今の刀、『修復』の回数は有限なんだな?」
「だったら何だ? どうせ『刀』は他にもある。“チゴモリ”、“ヒナギク”」
ロノミアが新たに、刀身の赤い二振りの日本刀を生成する。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その④

落下しながらビルの外壁を蹴り、ロノミアは一気にアンテレアの結界領域内に飛び込む。同時に、メディウムに封じられた結界術の効果で自身を取り囲む半径1m程度の小さな結界を展開するのと同時に、敷地内の地面に着地した。
「さて……もう始まってっかな? あいつらの魔法が発動しちまうと、どうしようも無いからな……」

ロノミアが飛び降りた直後、ボンビクスは固有魔法を発動していた。
ボンビクスの魔法は、『糸による拘束』。肉眼で捉えられないほど細い、透明な糸を展開し、対象を拘束するものである。
本来、ボンビクスの生成する細糸はその直径故に極めて耐久性に乏しく、出力も不安定なため、実用に足るものではない。
しかし、メディウムに設定した魔法によって固有魔法を強化することで、糸自体の強度を飛躍的に増強すると同時に、その糸が『捕える』対象を概念的なものにまで拡大する。
彼女の放つ『糸』は、その特性を最大限に強化したことで、不安定さも数倍に上昇したのと引き換えに、時空すら絡め取り縛めることが可能となったのだ。
しかし、魔法効果の不安定性自体は据え置きどころか更に悪化しており、ボンビクス一人では自身の強さを発揮できないという、致命的な欠点がある。
それを補うのが、双子の妹であるアンテレア・ヤママイの固有魔法である。彼女の魔法で円形に展開される結界は、領域内において作用している魔法を強化し、更に安定させる。範囲内にさえいれば例外なく効果が適用されるため、味方以外を強化してしまうリスクもある。
しかし、ボンビクスの糸は『時空すら縛める』。領域内にボンビクスの魔法効果が存在する場合、全ての存在及び概念は、安定化しリスクの消滅した拘束糸によって自由を喪失するのだ。

ロノミアが展開した結界内は『双子の領域』から独立した空間となるため、拘束糸は安定性を失う。唯一領域内で安全に活動できるロノミアは、悠然と無警戒に校舎に近付き、魔法を発動し、手の中に全長3m超の斬馬刀を出現させた。
「キッヒッヒ……やるぞォ“破城”。犯行予告のお陰で『守り』は固めてるだろうからな。お前が役に立つはずだ」

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その③

翌日、陽が西に傾きつつある中、3人は甜花学園を見下ろす位置にあるビルの屋上から、校舎の様子を眺めていた。
「くぁちゃん、どんな作戦で行くの?」
ボンビクスが尋ねる。
「そんなん決まってんだろー? お前ら双子の魔法で『学園全体』を対象に捕える。あとは私が好き勝手暴れて制圧。完璧だ」
「おー……」
「それよりも、だ。お前ら、本当に良いんだな? 友達もいるんだろ?」
「友達、もう帰ってる時間だと思うよ?」
「あーそっかー……なら問題無いな。残ってるのは中等以上だけだし、多少は手応えもあんだろ。そういやさ、果たし状も送ったんだぜぃ? ちょうど今日の朝に着くよう計算して郵送したから、多分今頃厳戒態勢だろうなァ……」
ニタリと笑い、ロノミアは双子に振り向いた。
「覚悟の用意は?」
双子はサムズアップを返した。
「それじゃ、始めようか。散り行く私の、少し気の早い弔い合戦」
「「了解!」」
双子は同時に首飾りのメディウムを握り、強く念じる。
「「変身!」」
ボンビクスは白色、アンテレアは薄緑色のケープコート姿に変身する。
「いくよ、テンちゃん! サポートよろしく!」
「任せてお姉ちゃん!」
アンテレアが手を前に翳すと、薄緑色に輝く光の輪が生成され、学園敷地に向けて射出された。光の輪は敷地全体を取り囲むように広く地面に拡大する。
「お姉ちゃん、準備オッケー! くぁちゃんも行って大丈夫だよ!」
「よくやったぞヤマ子ぉ。モリ子、私のことは気にするな、全力でブチかませ!」
メディウムを握りしめ、ロノミアは屋上から飛び降りた。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その①

放課後、ボンビクス・モリとアンテレア・ヤママイの双子は、寮の部屋にランドセルを放り投げると、すぐに街に飛び出した。
目指す場所は、アーケード街の一角、小さな駄菓子屋。その脇の人一人通るにも苦労するような細い隙間に、身体をねじ込むようにして潜り込み、建物の裏に出る。
そこから壁の配管を伝って屋根に上がると、彼女らの目当ての人物、魔法少女ロノミア・オブリクァが仰向けになって日光浴をしていた。
「くぁちゃん、来たよ!」
「こんにちは!」
2人の元気な挨拶に、ロノミアは目だけを向けた。
「ん、来たな? ちゃんと見られずに来れたか?」
「うん!」
「ちゃんと見られてないかキョロキョロしてから来たよ!」
「なら良し」
ニタリと笑い、ロノミアは身体を起こした。
「あぁそうだ……モリ子、ヤマ子。自慢話してやろうか」
「なになに?」
「聞きたい!」
「実は私なぁ、明日20歳になるんだよ」
「へー、おめでとー!」
「明日誕生日!」
「んにゃ、誕生日は明後日」
「「…………?」」
首を傾げる2人を見て、ロノミアはケタケタと笑った。
「それでなぁ? 自分の身体だから分かるんだけどさ。多分、近いうちに私は魔法を失う。これまで色々と楽しませてもらったし、別に惜しくはないんだけどさ……最後に1つぐらい、ドカンと派手に暴れたいだろ?」
ずい、とロノミアが前のめりになる。
「そこでだ。我が愛弟子の2人に、私の最後の大舞台に付き合ってもらいたいのさ」