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CHILDish Monstrum:アウトロウ・レプタイルス その⑤

ミズチの雄姿を見届け、サラマンダーはラムトンとククルカンの下に引き返した。
「くーちゃん、ラムちゃんの様子はどう?」
「ん、サラちゃん隊長。ぜんぜんだめー。あのビームでちょっと蒸発してる」
「そっかー。じゃあみーちゃんが戻ってくるまで待とうか」
「んー。……ねえラムちゃん、土に還る気無い?」
「無い」
駄弁る3人の背後で、倒れていたインバーダが突然爆散した。
思わず3人が振り返ると、燃えるインバーダの残骸から、ミズチがほくほく顔で這い上がってきた。その両手には何かを抱えている。
「はいタイマーストップ」
そう言いながら首にかけたストップウォッチのボタンを押し、画面を確認する。
「3分18秒……30m未満級だとまだ遅いなー。最初っから“怪物態”で行けばよかったかなー」
頭を掻き、抱えていたものを地面に置いた。
「今回は可食部がちょっと少なかったけど、頑張って削ぎ落としたよー。軽く味見した感じ、思ったより甘くて柔らかくて生でも美味しかったから、雑に炙ってたたきにしました。さあ食えラムちゃん」
言いながら、インバーダの外皮を加工した皿に乗った肉片の一つをラムトンの口に押し付ける。
「どうよ?」
「…………」
「美味しい?」
「…………」
「おーい?」
「…………、咀嚼中に声を掛けるな馬鹿」
「あー……それもそっか。で、どうだった?」
「もっとあっさりした味付けを所望」
「オーケー。次は調味料も色々持ってこよう」
戦場跡に、武装車両の駆動音が近付いてくる。
「お、後始末の軍隊が来たな。そろそろ撤退だ。ラムちゃんの身体はくっついた?」
サラマンダーに尋ねられ、ラムトンは自分の身体を見下ろしてから首を横に振った。
「いや、動かせるレベルでは付いてない。表面だけなら繋がった」
「分かった。くーちゃん、お願いできる?」
「まかせろー!」
ククルカンが地面を軽く叩くと、4人のいた場所が僅かに持ち上がり、彼らを乗せてスライドするようにその場を離れた。

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CHILDish Monstrum:水底に眠る悪夢 キャラクター紹介

・カナロア
性別:?  外見年齢:7~15  身長:可変
特殊能力:触れた『人間』に恐怖を与える触手を展開する
とある都市の地下隔離室に幽閉されているモンストルム。大規模決戦兵器として生み出されたものの、何故か人間に対して有害な能力が発現してしまい、地下深くに隔離された。本当にどうしようもない時は、タコ足の如き触手だけを地上に伸ばしてインバーダをボコボコにする。人間との区別は触手で捕まえた時に硬直するのが人間、振りほどこうと暴れるのがインバーダ、って感じ。
クトゥルーとは能力の性質が酷似していたためか、触手が融合し離れられなくなってしまった。そのためか彼我の境界も曖昧になっていて、一人称は二人合わせて『ぼく』。自分一人だけを指す機会は無い。渾名は「ロード」。

・クトゥルー
性別:?  外見年齢:7~15  身長:可変
特殊能力:触れた『人間』に狂気を与える触手を展開する
とある都市の地下隔離室に幽閉されているモンストルム。大規模決戦兵器として生み出されたものの、何故か人間に対して有害な能力が発現してしまい、地下深くに隔離された。本当にどうしようもない時は、タコ足の如き触手だけを地上に伸ばしてインバーダをボコボコにする。人間とインバーダの区別は、触手で捕まえた時に滅茶苦茶に暴れるのが人間、冷静に振りほどこうとするのがインバーダ、って感じ。
カナロアとは能力の性質が酷似していたためか、触手が融合し離れられなくなってしまった。そのためか彼我の境界も曖昧になっていて、一人称は二人合わせて『ぼく』。自分一人だけを指す機会は無い。渾名は「リトル」。

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CHILDish Monstrum:人造神話隊 その②

象よりも大きな身体と馬のそれに似た頭部を持つ、悍ましい鳥のようなインバーダの突進が、応戦していた最後の戦車を横転させ、行動不能に陥れた。
這う這うの体で脱出した戦車兵たちを、インバーダが見下ろす。その悍ましい姿に動けないでいる兵たちを食らおうとしたのか、インバーダは大きく口を開けた。その時だった。
「よくやったテメエら! テメエらはギリギリで持ち堪えた!」
威勢の良いティンダロスの声と共に、異形の怪物がインバーダに衝突し、弾き飛ばした。
小柄な競走馬ほどもあるその怪物は、危機を救いに現れたヒーローというにはあまりに冒涜的な外見をしていた。カラスでもなく、モグラでもなく、ハゲタカでもなく、アリでもなく、腐乱死体でもない、名状し難く見る者に恐怖を与える、邪悪な生物だった。
「ぷわんの力があったとはいえ、よく耐えた。もう逃げて良いぞ。死にたかねーだろ?」
怪物の背から下りたティンダロスに言われて、正気に戻った兵たちは慌ててその場から逃げ去った。
「ン、邪魔者は消えた?」
ディープワンが怪物の背中から下り、立ち上がろうとしていたインバーダの頭部に自動小銃を撃ち込み倒した。
「……上から見えた感じじゃ、あちらさんで2割くらいは削ってくれてたっぽいな」
怪物の陰から、コウモリのような翼を具え、手に大鎌を携えた顔の無い化け物が現れた。
「へー、思ったより頑張ってたっぽいな。そんなにデカくないのが幸いしたか?」
「馬鹿言え、数が狂ってンだろ。面倒だから朝までに終わらすぞ」
「はいはい。相変わらず厳しいタイムスケジュールだねェ、ヤキちゃんよォ」
笑いながら、ティンダロスも腐食した大柄な猟犬のような外見の怪物態に変身した。
「みんな頑張れー」
応援の言葉を述べ手を振るディープワンを、ティンダロスは呆れたように見返した。
「……お前もやるんだよ」
「ちぇー、ショウガナイ」
そうぼやき、ディープワンも半魚人のような外見の怪物態に変身した。

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CHILDish Monstrum:人造神話隊 その①

深夜、とある都市の上空約200mを、一つの影が高速で飛んでいた。
「ビャキたんもっと飛ばせぇー! いくら我が国のヘータイったって私らがいつまでも居なくて持つかよー」
「ちょっっっと待ったァティーちゃん! その言葉聞き捨てならないヨー⁉ 戦車も戦闘機もつよつよ最新鋭だぞー⁉」
「相手はインバーダだ! 私らがいなきゃ詰みだろーが!」
「わたしの信仰がインバーダごときに負けるとでもー⁉ それはわたしの力を疑うことだヨー⁉」
その影の上で騒ぐ二人のモンストルム、ディープワンとティンダロスを、飛行していたモンストルムの少女、ビヤーキーが諫める。
「うるさいよ、ぷわん。ティー。振り落とすよ?」
「ナンデわたしの名前を先に呼んだの⁉」
「ぷわんのほうが好きだから。あんまりうるさいと高度上げるよ?」
「ゴメンナサイ……。でも好きなのはウレシイ」
「ティーも落ち着け。ぷわんが大丈夫だって言ってんだぞ? 大丈夫に決まってるでしょ」
「がるる……」
唸るティンダロスの顎を、その後ろに控えていた少年のモンストルム、ナイトゴーントが掻き撫でた。
「許してやってくれよ、ビャキ。コイツは暴れたいのと人間が心配なのとが頭ン中でごちゃ混ぜになってトチ狂ってんだ。だから真っ直ぐ飛んでほしい。俺が死ぬ」
「……そんな心配するなぃヤキちゃんよ。もうすぐ着くよ」
ビヤーキーが地上を指差す。街灯の明かりに照らされて、無数の影が蠢いているのが見えた。

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CHILDish Monstrum:アウトロウ・レプタイルス その④

「はいよーいスタート。さくっとインバーダお料理たーいむあたぁーっく」
独り言を口にしながら、ミズチはインバーダに向かって行った。そのまま足元まで歩いていき、牛刀をインバーダの脚部に思い切り叩きつける。
「うっわ硬い。硬っっっったい! でもきみ、良い外皮してるねぇ! お皿にするね!」
牛刀を再び振り上げ、今度は切っ先を突き立てる。この攻撃は有効打となり、刃が数㎝、インバーダに突き刺さった。更に腰の左のホルスターから和包丁を抜き、その峰を牛刀の柄に叩きつけ、牛刀を更に深く刺し入れる。
そこまでされたことで、インバーダも反応した。単眼をミズチに向け、光線を発射する。
しかしその反撃は、ミズチの前に不意に現れたサラマンダーに反射され、無力化された。
「あ、サラ隊長。ヘルプに来てくれたの?」
「うん、みーちゃん」
続いてインバーダが2人を踏みつけようとしたが、サラマンダーが足裏に触れると、弾かれたようにインバーダの脚が跳ね上がり、勢いのままひっくり返ってしまった。
「今だ、みーちゃん!」
「だいじょぶ見えてる!」
ミズチが軽く跳び上がると同時に、彼女の姿は巨大な一角の龍の姿に変わった。そしてインバーダの腹部に噛みつき、外皮を噛み砕き、体内に頭を突っ込み、再び人型に戻り体内に侵入した。

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CHILDish Monstrum:アウトロウ・レプタイルス その③

「今日は誰がやる? 私はこの間やったし、みーちゃんで良いかな?」
「え、良いの? たすかるー」
腰のホルダーから包丁を2本抜き、ミズチは弾んだ声で言った。
「おい待てェぃ女子共。リーダーの意向を聞い」
2人を諫めようとしたラムトンの言葉は、インバーダの放った光線によって、胸の高さで身体を両断されたことで中断された。
「あ」
「あ」
「……てから動けって言おうとしたんだよ」
分断されたラムトンの上半身が、構わず言葉を続ける。
「で、どうすンだよリーダー」
ラムトンに問いかけられ、サラマンダーは即答した。
「うん、みーちゃんに任せようと思う。それが一番手っ取り早いしね」
「はいはいリョーカイ。それじゃ……」
ミズチはインバーダに向けて歩き出しながら、首にかけたストップウォッチをスタートさせた。
「……よし、みーちゃんはスイッチ入ったね。おれはみーちゃんの援護に向かうから、くーちゃんは……」
サラマンダーがククルカンに目を向けると、ラムトンの下半身を引きずり、傷口同士を宛がおうとしているところだった。
「……うん、言わなくても分かってるみたいだ」
サラマンダーは苦笑し、インバーダに向けてクラウチングスタートの姿勢を取った。

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CHILDish Monstrum:水底に眠る悪夢

「おはよう、“ロード”」
能力によって展開された触手で埋め尽くされた狭い地下空間。その奥底で1人のモンストルム“クトゥルー”は相方に声を掛けた。
「おはよう、“リトル”」
触手に埋もれて眠っていたもう1人のモンストルム“カナロア”も目を覚まし、相方に挨拶を返した。
「今日の早起き対決はきみの勝ちか。これで何勝何敗だっけ?」
「10回より先はもう覚えてないよ」
「そっか」
2人の肉体は、能力によって各々の肉体から伸びる無数の触手が絡み合い、一つになっている。2人の意思は触手を通して音声言語を必要とせずに共有できるのだが、それでも敢えて、口に出してのコミュニケーションを意識していた。
2人が幽閉されている地下空間には、既に数年もの間、IMS職員も訪れていない。ただ定期的に、給餌用の小さな扉を通して食料と水が届けられる、それだけが外界との繋がりである2人にとって、発話を介するコミュニケーションは人間性を失いただの化け物に成り果てないためにも必要な行為だった。
「………………」
クトゥルーは数十m先に地表があるであろう天井を見上げ、触手を通してカナロアに意思を飛ばした。
(“ロード”、今日は何だか上が煩いね?)
(そうだね。ここに来てから初めてくらいの五月蝿さだ)
(もしかしたら、出番があるかもしれないね)
(そうだね)
2人が念話をしていると、天井がスライドし、金属製の格子と遥か上方に僅かに見える外の光が現れた。
「やっぱり『ぼく』の出番だ」
「うん。『ぼく』の力が必要なんだろうね」
無為に地下空間を埋め尽くしていた無数の触手が、整然とした動きで解かれ、格子の隙間から地上へと向けて高速で伸長していく。
「「平伏せ。『我』は水底の神なるぞ」」
完全に重なった二人の言葉の直後、無数の触手が地上に出現し、交戦していたインバーダ、IMS、モンストルム、それら全てを隙間ない奔流で飲み込み、叩き潰した。
「思ったより数があったね」
「うん。一応人間は潰さないようにしたけど……もしかしたら『ぼく』以外のモンストルムが戦場にいたかもしれない」
「別に良いよ。モンストルムならこの程度で死ぬわけが無い。これで死ぬならどの道インバーダには勝てないよ」
「そうだね」
天井が再び閉まり、2人は触手の中で眠りに就いた。

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CHILDish Monstrum:アウトロウ・レプタイルス その②

先んじて飛び出したククルカンの身体にあとの2人が掴まった状態で、ククルカンは愛用の武器を展開した。折り畳んだ状態では1m弱の長さでありながら、展開することで3m強の長さにまでなる長槍。
それを、自身の真横を下から上へ流れる高層ビルの壁に突き刺すと、ビルの表面が粘土のようにぐにゃりと変形し、3人を優しく包み込んで受け止めた。そのまま、エレベーターのように地面まで下りていく。
「はいとうちゃーく。みんな私に感謝して?」
「はいはい」
「してるしてる」
ククルカンより年上に見える少女のモンストルム、蛟(ミズチ)と、幼さの消えつつある少年姿のモンストルム、ラムトン=ワームは適当に返した。
「我らがリーダーはまだ来ねえのか……っと」
ラムトンが2歩、右に避ける。すると先ほどまでラムトンが居た場所に、少年のモンストルム、サラマンダーが音も無く着地した。
「サラちゃん隊長! サラちゃんは私に感謝しなくて良いよー」
「あーうん。くーちゃん2人を運んでくれてありがとう」
「あれー感謝のことばぁー?」
照れながら身体をくねらせるククルカンを無視して、サラマンダーは大型インバーダを見上げた。
「……いやしかし、デカいな」
「ここまでだとたしかに、モンストルムの出番だよなァ……」
半ば唖然としているサラマンダー、ラムトンに反して、ククルカンとミズチは既に武器を取り交戦する気満々という様子だった。