LOST MEMORIES ⅥⅩ
ご飯、お風呂、歯磨き、すべてを済ませ、あとは寝るだけ。困っているのが、全く眠くないということだ。そりゃ、あれだけ日中に寝てしまえば眠くないはずである。そして、そもそも夜行性なのだ。
寝る準備万端の状態で人前に出るなどしたいことではないが、部屋にいても気が晴れないどころか目が冴えてくる一方なので、寝ようとすることを放棄した。
いるのはチャールズだからというのも理由のひとつである。
アイボリーのカーディガンをひっかけ、リビングへ行く。
明かりが漏れている。起きているのだろうと思って行ったものの、予想通り過ぎて笑えない。
「お嬢さま、起きてらしたんですか。」
少し驚きを滲ませるチャールズの横に座る。
「眠れないの。」
納得したように苦笑して、ちょっと待っててくださいねと言う。
立ち上がるチャールズから目を離し、置かれた本を手に取る。本というより、手記に近いような冊子。タイトルはない。開けてもいいものかと躊躇っていると、チャールズがカップをひとつ持ってきた。もう一方の手に持っていた蜂蜜の小瓶を置くと、その手でそのまま本を取り上げられる。
「人のものを勝手に探るような無粋な真似はするものじゃありません。」