表示件数
3

LOST MEMORIES~愛の定義編~

歌名は、僅かに頬を赤らめる。
「そこまで言ったことなかったよね。
はじめはって……今はどきどきしないの?」
歌名の問いに、少し考える望。
「しないわけじゃないけれど、独占したいと思っていたんだ。ぼくの横で笑っていてほしかった。
……今は、ただ笑ってくれればいいかな。真剣に想いを伝えれば伝えるほど、彼女は困る。困ったように笑ってはほしくない。」
止まっていた手を動かす。言葉にして初めて、自分の想いや考えを再認識する。
「それは、愛なの?」
「……どうだろう、たぶん愛になるにはまだ何かが足りないと思うよ。やっぱり、ぼくの横で笑っていてほしいと思うし、霧と仲良く話すのを見て妬くくらいにはまだまだ恋だろうし。
……ただ、それ以上に四人の時間や関係が好きなんだ。これを、壊したくない。」
望は歌名を見つめる。
「ぼくが壊してはいけないし、みんな壊さないと信頼してくれている。もちろん、ぼくもみんながそういうことをしないと信頼している。だとすれば、みんなとの時間や関係に対する想いは愛かもしれないね。」
歌名は一通り聞いて、長テーブルに突っ伏す。
「なんで私の周りはそういうことを恥ずかしげもなく……!」
私もみんなのこと大好きだよと、消え入りそうに紡がれた言葉は、穏やかな空間に吸い込まれた。

4

This is the way.[Ahnest]13

アイネ・マウア山脈は古い言葉で『テ・トルフィ』と言うらしい。『3層の山』という意味だそうだが、その名の通り、この山脈は3列に山々が列なっている。ソルコム側の山々を、『テ・エスト』、ケンティライム側の山々を、『テ・ウィゼ』、真ん中は『テ・ランデ』と言うらしい。その語源までは、流石のアーネストも知らない。ちなみに、『トルフレア』と言う国名は、この『トルフィ』から来たと言う説があるが、定かではないらしい。
そして、残念なことにこの山脈の登山道は、テ・エストのソルコム側、テ・ウィゼのケンティライム側にしかない。つまり、この旅は、道なき道を進むことになる。
「で、ホントにこっちであってるのか、シェキナ?」
真っ白な雪道の真ん中で、怪訝そうにアーネストは言った。
「大丈夫よ、アーネスト。この道を通ったのもそんなに前のことじゃないわ」
「それならどうして僕らはあの山脈に背を向けているんだい」
シェキナが振り返ると、なるほど、荘厳な山々がそびえ立っているのが見える。それも遥か後方に。
「うーん、おっかしいな......」
「きっと雪が積もってるから道が解りにくいんだ、あっちの方向へ向かってみないか?」
「...そうね、アーネストがそう言うなら」
なんとも頼りない二人である。先が思いやられそうだな...。