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桜木ノア #08 8月某日

それは、夏休みの最中。
唐突ではあるが、桜木ノアと共にテスト勉強をしていた時のことだった。
勉強をしていたところ、どうにも解けない問題にぶち当たるという、なんともありがちな理由でやる気をなくし、スマホをいじっていた時のことであった。
「さっきからずっとスマホ見てるね」
桜木が俺を見ながら言った。
「いや、もう無理そうだから」
俺は適当に桜木に言葉を返した。
その特に何の意味も込めていない言葉が、俺にとって何の意味もなかったからこそ、彼女を傷つけた。
「……そう」
その声が冷えていることに気づいた。明らかに何かが変わった。けれど、何が変わったのか分からなかった俺は、火に油を注いでしまった。
「……どした?」
「いや、別に。君はそういう、諦めちゃう人なんだなーって」
「いいじゃんかよ、問題の一つくらい……。お前だって諦める時はあるだろ」
「……諦める時?」
その時、再び桜木ノアの中で何かが変わった。けれど今回は分かる。
変わったのは、温度だ。
「諦められるなら私はこんなに苦しんでない!」
それは。
今までに聞いたことのない桜木の悲痛な叫びだった。
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相変わらず投稿を忘れがちな私です。1日遅れでドン。

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桜木ノア #07 7月某日

アニメ映画推し・朝香、好きな曲推し・平田、両者の争いになるかと思ったが、そこに応援ソング推し・桜木ノアがやってきた。
「私、やっぱりこの部活って、届けられるっていうのが良いところだと思うんだよね。私たちの音を聴いてさ、前向きになってくれると嬉しいじゃん」
桜木は主張を続けたが、朝香、平田も反論する。
「いや、でもさ、それって聞いてくれる人がいる前提の話でしょ? だったら有名どこから引っ張ってきて客寄せしたほうが良くない?」
「だからその発想も客前提なんだって。自分たちの好きな曲をやるのが一番楽しいだろうよ」
激化しそうな口論の中に、俺は一言放り投げる。
「じゃあ一曲ずつやればいいだろ」
3人が一斉に俺を見た。別にそんなに驚くことではないだろう。
「俺たちが出来るのは3曲まで。だったらやりたいもん全部やれば良いだろ」
「……そっか。確かに」
口論の熱が冷めていくのを肌で感じる。
「お前は? やりたい曲ねーの?」
「俺はいいよ」
そんな感じで火種を回収し、詳しく曲を決め始めたときに
「やりたいこと全部、かぁ……」
と桜木が呟いたのは、誰も聞いていなかった。
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7/15更新と言いつつ完全に忘れていたので、本日投稿、桜木ノアです。

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マリオネットの復讐劇

散々いじめてくれてありがとう。
おかげであなた方に復讐する決意が出来ました。
私に溜まっていた憎悪をこれからみなさんに遠慮なくぶつけることができると考えると、それはそれは気分が高揚します。これまでとは違う気持ちです。これを皆さんは「希望」とか「幸せ」って呼んでいたのでしょうか。

例えばあなたは生まれたばかりの私を捨てて、例えばあなたはそんな私を見世物にして金を集め、例えばあなたは私にたくさんの傷を作って、例えばあなたたちはそんな私を嘲笑して悪者に金を払いました。

ただ、私がオッドアイだったってそれだけで。

ただ、私の瞳の片方が黄色だったってそれだけで。

緑と黄色。この世界では最悪な色の組み合わせです。特に黄色なんて、悪魔の瞳の色ですから。
でも、その悪魔が私の前に現れてくれたんですよ。黄色い双眸を輝かせて私のもとに降り立ちました。
『君には才能があるよ』と、そう言って。
それはもう甘いお誘いでした。甘くて甘くて甘ったるくて、クラクラしちゃうようなお誘いでした。「甘言」というやつなんでしょうね。本当に甘いお言葉でした。
悪魔は私の黄色い瞳に魔力を込めてくれました。この目で見たものは私の想像の通りに動きます──例えそれが物理法則を無視していても。

さあ、これから憎悪の限りを尽くしましょう。これから私は悪魔の道化になるのです。わかっています。私の願いが満たされたら、私の魂は悪魔のものになることくらい。でも、たかが私ごときの魂で満足してくれるなら、安いものです。なんなら身体もセットでお渡ししたいくらいです。
だから、私はピエロになるのです。例え悪魔の目的がわかっていても、今度は人ではなく悪魔が私を笑い者にしていると知っていても、それでも私は進んでピエロを引き受けます。
さて、まずは誰から始めるべきでしょう。
やはり私を捨てた両親からでしょうか? いえ、それは最後にとっておくのも良いかもしれませんね……。

少女は世界の破滅を目論みながら、穏やかに笑む。

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