世にも不思議な人々㊾ 一つ目小僧その2
「つーかーまーえーたァッ!」
伏見は一つ目小僧のほぼ真上から首と右腕を、安芸は地面を這うような低い姿勢で両脚を捉えた。
「よーし捕まえた……ってあれ?何だこれ?」
しかし、彼らが捕まえたのは、一つ目小僧のものらしき右腕と両脚の膝から下、そして生首だけだった。
「うわっ、気持ち悪っ」
伏見がそう言っている間に、それらは消えてしまった。
「……お華さんや、どう思う?」
「これがあの一つ目小僧の能力なんでしょうね」
「もう一度だ。今度は声を出さないようにしなくっちゃね」
「やっぱりあれが原因でしたかね?」
再び追跡開始。今度は無事に組み伏せた。
「ぐああ、離せー」
既に人間の顔に戻ってしまった一つ目小僧が抵抗する。
「いいや、駄目だね」
「一体何が目的だ!?金なら無いぞ!」
「いや、別にそういうんじゃあ無いんだ。ただ君さ、能力者なんだろ?僕らも同類だからさ」
「え!じゃあお前達も異能力者なのか!?」
一つ目小僧を組み伏せたまま、会話が始まった。
「ああ、その通りだ」
「へえ、じゃあいつその能力に気付いたんだ?」
「いや、別に、手に入った時に自覚したんだが」
「ん?じゃあそっちの子は?」
「んー、気付くっていうのはちょっと変な言い方ですね」
「思い出した、の方が正確か?」
「いや、後天的に身に着いた能力だし」
「……は?」
一つ目小僧が倒されたまま、右手を軽く握った。その瞬間、伏見の腕と言わず、脚と言わず、頭と言わず、首と言わず、肩と言わず、腹と言わず、体中に人間の右手のようなものが取り付いた。
「うわ、何だこれ」
「お前ら一体何なんだ!?少なくとも俺の仲間でだけは無いね!」
そう言って軽く右手首を上げると、その動きに対応するように取り付いた右手が一斉に伏見の身体を引っ張り、引き剥がした。
「後天的、だぁ?何ふざけたこと言ってるんだ、能力は前世から引き継がれるもんだと相場が決まってんだぜ!」
そして一つ目小僧はまた逃げ出してしまった。