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Trans Far East Travelogue 71

嫁が「さっき渡してくれたもの食べてみたら味噌味で美味しかったんやけど、アレ何ていう名前なん?」と訊いて来たので「五平餅だよ。ほら,俺の大好物で信州名物の」と返すと「アレは私もハマる」と返ってきた。
「俺達,食の好みが似てるんだろうな」と結論付けると「だったら,明太子とかも好きなの?」と嫁が訊くので「前言撤回。申し訳ないけどもつ系と魚卵はマジで苦手。高菜は好きだけど」と答えると「高菜も良いけど,福岡の食べ物で私が1番好きなとり皮はどう?」と返ってくるので「とり皮?大好物やんけ」と返すと「なら,福岡で貴方と絶対行こうって言う場所あって,その隣の施設に入ってるお店のがオススメやけん、そこにしよ」と嫁が言うので「分かった。君に任せっぺ」と答えると「地元で知り合いいたら訛っても許してや」と返ってくるので「別に方言使いてえ時は使っても構わんよ」と返すと真面目な顔して「たとえ高速でも夜ん山はえずか」と言うので「俺,福岡着いたらえずがりな天然で美しか嫁が俺ん滞在中にかかる金は全額払ってくれるって聞いたばい」と冗談めかして返すと「ウチが破産せん程度にしんしゃい。唐人町のアレ,料金高かけん」と笑うので「唐人町?中華系の人の街ってことか?でも,中華街は…長崎だろ?何があるんだ?」と自問すると「唐人町は福岡ドームや」と言う。「交流戦で明日巨人ソフバンじゃねえか…応援セット忘れたなぁ」と呟くと「パスポートも忘れてたやろ。私ショルダーバッグに貴方のパスポート入れとるけん,心配せんといて。応援セットは一式船に積んだばい。代わりに,地元は美人多かばってん、浮気せんでな」と返って来たので「する訳ねえだろ。見た目だけ美人な女性はいくらでもいっけど,君は見た目も性格も,全部東京の夜景より綺麗だぁら,浮気なんて馬鹿なこと心配すんな」と返し、続けて「さ,行くべ」と言って嫁を促し,もう一度車に乗り込む。
渋滞は無く、予定より早く港に着きそうだ。

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Trans Far East Travelogue70

休憩を終えて走り出すと、嫁が一言「信州って雰囲気良かね」と言うので「だろ?俺も信州好きで昔から何度も来てる。ただ、親父と違って俺は上田や松代といった北信よりも諏訪や高遠と言った東信・伊那地域が好き。特に、高遠城址公園の桜はとても綺麗だし、伊那名物のローメンは勿論,大好物の五平餅と言った旨いものも沢山ある。小6の移動教室で伊那の農家さんの所で稲刈りさせて貰った時から信州の食べ物は好きなんだよ。まぁ,ざざ虫やイナゴは今でも苦手だけどね」と返すとタイミング悪く会社の人事課長から電話が来る。
地方への異動の打診だったので少し落ち込んでいたが,温泉の諏訪,郷里の東京・新宿,桜が綺麗な高遠という俺が好きな3つの街にアクセスしやすい茅野へ異動ということで二つ返事でこのオファーを受けることにした。
その後嫁が何か歌って欲しいと言うので,折角だから皆も歌えるヤツにしようと暫く考え込んでいると後部座席の皆が信州を代表する名曲『信濃の国』の音源を流して合唱を始め,嫁もつられて口パクで歌い始める。
今度は嫁が『いざ行け若鷹軍団』を歌うので、各々が応援するプロ野球チームの球団歌を歌うことになって完全にカラオケムードになり,見事に休憩予定地で夜景と月が綺麗な姨捨も山葵で有名な安曇野もすっ飛ばして気付いたら松本まであと1キロの標識が出るまで南下していた。
そして,夕食を摂る為に松本で一度高速を降りて駅ビルの店で山賊焼きを堪能し,もう一度高速に戻って諏訪湖SAの温泉に入った。
風呂上がりにテラスに出て諏訪に程近い山梨の銘菓信玄餅をアレンジしたクレープアイスを食べながら眼下の夜景を見ていると,来た時とは打って変わって雲一つない夜空に北斗七星と月が湖と湖畔の街を照らしていることに気付く。
嫁がそばに来て「なんか,2人でパリに行った時思い出す…あの時も空から見た街の夜景こんな感じやったよね」と言うので「でも,あの時と今日とでは決定的に違うことがある。あの時は移動日で試合が無かったのに対し,今日の試合は言葉にしたく無いくらい酷い負け。」と言うと「もう,貴方ったら。プロ野球か旅か私のことしか頭に無いんでしょう」と嫁が言うので「当たり前だろ?これからの俺を支える、どれか一つが欠けてはいけない三要素なんだから」と言って笑って紙に包まれた木の棒を差し出す。
あと3時間弱で港に着き,すぐに船出する。

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今の気持ち

今日の試合,ファンとして見ていて思うところはいくらでもあった。
今日の試合中継を観ていて僅か3時間ほどの間に思わず感情的になり「そりゃないだろ」,「勘弁してくれよ」,「やりやがった」などと怒鳴ったことは何度もあった。
受験に失敗し,セブでの留学でも成果を出せずくすぶっていて帰国後心も荒みかけた俺を導いてくれたのは,俺と同学年で高卒ルーキーのドラフト一位で俺が好きなプロ野球チーム,読売ジャイアンツに入団し,二軍で腐らずに頑張り、一軍に上がってプロ初ホームランも打って俺も負けられないという気持ちに気付かせてくれた浅野翔吾選手だ。
ジャイアンツが俺のハートの導火線に火を付けてくれた。
だから,もしかしたら一位の阪神タイガースの優勝が決まる試合が俺達巨人ファンとの罵倒合戦になりかねない巨人阪神戦,俗に言う伝統の一戦になるかもしれないと言われた時,俺はビビったし,その一方でかつてない程の炎が闘争心に宿った。
「槙原さんや堀内さんの二の舞になってはいけない」と言って固唾を飲んで見守った今日の試合,蓋を開けてみれば野手のファンブルや全球見逃せば四球になりツーアウト1・2塁と同点のチャンスがに見えそうだったのに無理に打ちに行って空振り三振した,と言う具合に思うところが多々ある試合となった。
そして,俺達は負けた。
阪神の岡田監督の胴上げだ,アレが決まった。
現役の時に受験に失敗した時よりも悔しくて,部屋で少し遅めの夕飯食べながら泣いたよ。
やっと気持ちの整理がついた。

悔しいけど,阪神ファンの皆,18年ぶりの優勝おめでとう!

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Trans Far East Travelogue69

給油を済ませて関越道に入るまでの道中,ラジオから流れて来た交通情報に耳を傾けると,運の悪いことに必ず通る筈の関越トンネルとその前後で連鎖的に起きた事故処理の関係で湯沢から沼田まで通行止めになっている。
土地勘が無く方角も分からず完全に憔悴しきっている嫁に「落ち着いて。絶対隣にいるし俺の言うこと信じれば東京に帰れるから大丈夫。俺を信じて。まずは高速の逆方向で長岡ジャンクションに行こう。」と声をかけて暫く嫁が落ち着くまで待つ。
そして、かつてソウルでの同僚で台湾に栄転した人が後ろに座っていることに気付き嫁を不安にさせない為に彼に韓国語で声をかけて出港を遅らせてもらうよう交渉させて夜11時出港との答えが来た頃、遂に嫁が覚悟を決めた様子で「案内お願いね」と言ってハンドルを握るので俺も「任せとけ」と返す。
そこからの展開は早く、長岡インターから高速に入り,長岡JCTで北陸道に入り西欧の某国から今は亡き女王が訪日した時に乗った新幹線の運転士さながらの運転で上信越道との分岐点である上越JCTを目指して長岡を出てから凡そ1時間で上信越道に入り、その後更に30分程で着いた信州小布施のPAで最初の休憩を挟み,名物の栗を使ったソフトクリームを買って嫁を励まし,俺は腹が減っていたので信州を中心とした地域では一般的なソウルフードのソースカツ丼を食べても足りないので信州蕎麦も追加で注文しどちらも感触するのを見て嫁から「東京の男…恐るべし」と笑われたので「地物や名物を食うのが江戸っ子よ」と笑って返す。
その後のルートについて嫁が相談するので、このまま群馬の藤岡で関越に合流して帰宅ラッシュで混雑する都内の下道をひたすら走って時間をかけるよりも少し遠回りにはなるが更埴JCTから長野道に入り昔は水田に映る月,今は眼下の善光寺平の夜景で有名な姨捨のSAで2度目の休憩を取り、岡谷を経由して中央道に入り温泉施設のある諏訪湖のSAで入浴して最後の休憩を取って首都高経由で港に直行することを提案するが,嫁が念の為もう1ヶ所休憩場所があると良いと言うので万が一のイレギュラーに備えてでも休憩を取る前提で動くことにした。
遠くには先程まで長岡で見ていた信濃川の上流,千曲川の水面が薄暮の空を写して白みがかった金と紫の色を混ぜて光り、それを見る嫁の横顔が並行して走る新幹線の列車の名前にもあるように輝き出していた。

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Trans Far East Travelogue68

河井継之助記念館を見た後,昼食をどうしようか色々悩んだが越後名物のへぎそばに決定した。
その後,山本五十六記念館に行き彼が戦死した時に乗っていたとされる飛行機の翼の一部も見て長岡の名物で新潟県の代名詞とも言える甘味の水饅頭を食べることにした。
嫁が「そう言えばさっき、『映画の作中では五十六役の人は周りの人が驚くのを横目にバクバク食べてた』って言ってたよね?そんなに水饅頭って珍しいの?」と訊くので「まぁ,見てれば分かるよ。君も俺と負けないくらい甘党なんだからすぐに虜になるさ」と返して近くの甘味処に入り、注文した実物を見て嫁は驚いて無言になり、俺は「久しぶりに食うけどやっぱ甘くてうめぇなぁ…やっぱこれ食わねぇと長岡に来た実感湧かねぇや」と言って夢中で食べている俺を見て嫁も食べてみると完全に虜になった様子だ。
迎えが来るまでの間に名物・川西屋の酒饅頭と嫁が一つ残らず食べ尽くした俺の大好物,笹団子を買って今後の船旅で食べることにした。
そして,迎えの車が来てわざわざ運転していた松山の仲間が降りて来てくれたのだが,様子がおかしいので別働隊の他のメンバーに事情を訊くと,様々なハプニングが連続して乗船地の博多に向かう途中の松江から東京に引き返し東京から乗船することになり、免許を持っているのが1人しかいない関係で米子から休憩を挟みつつも1人でずっと運転してくれたとのことだ。
そこで,俺が嫁に「コンディションさえ良ければ,秘密兵器,見せてやりなよ」と伝えると「運転するのは良いけど,私,道分かんないよ」と言うので「大丈夫。高速乗ったら後は家族でドライブしたルートで覚えてるから俺が案内する」と返すと嫁が頷いてくれた。
他のメンバーも賛成してくれたので、ここからは運転席と助手席のメンバーを変えてドライブすることになる。
まだ沈むには早い西陽が信濃川の水面に反射して煌めいている。

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Trans Far East Travelogue67

嫁に長岡のイメージを訊いてみると「河井継之助しか知らん」と返ってきたので「残した言葉はカッコいいけど歴史に残る数々の行動で今でも賛否両論あることで有名な海軍の人も長岡出身だけど知らんの?」と念の為訊いてみると「東郷さんは…薩摩やし,従道さんも薩摩やろ…貫太郎とか?」と返って来たので「山本五十六なんだけど」と正解を出すと「五十六って…あの『やって見せ言って聞かせてさせてみせ褒めてやらねば人は動かじ』の人よね?あの人長岡だったの?」と返って来たので「だから映画で五十六役の役者さんが水饅頭という長岡の甘味を周りの人がその作り方に驚いているのを横目にこれぞお袋の味と言わんばかりに美味しそうにバクバク食べてたんだ。」と教えてやると「地方の食べ物についても知識あるの普通に凄い」と返って来たので「海外の鉄道ファンに日本の鉄道を紹介する動画と東日本の観光地の紹介動画の撮影でJR東日本と北海道の範囲は全て回ったからな。でも,九州は君の方が知ってる筈さ。」と返すと嫁が「任せといて」と言って笑ってる。
すると,仙台支社に移った同期から「今都庁の展望台にいるけど,東京土産はどうする?東京ばな奈で良いか?」とメッセージが来たので「せっかくだから、都庁のお菓子にしよう」と返事をすると知らぬ間に越後湯沢のホームに入線していた。
この列車は浦佐を通過する為、次の停車駅は目的地の長岡だ。
そして,嫁が「私,凄い人と結ばれたんだなぁ」と言っているので「まぁ,新宿のプリンスと呼ばれる位のイケメンだからな。赤坂とか麹町の人には敵わんけど」と冗談めかすと嫁が「貴方って見た目は史実のナポレオンと変わらんけど、中身はチャキチャキの江戸っ子で,しかも私のこと大切にしてくれるから大好き」と言って寄ってくるので軽く小突いてやり、すぐに荷物を纏めて下車し、駅を出ると福島江のせせらぎが聞こえ、見事に出口を間違えたことに気付き苦笑いを浮かべ,嫁は着いてすぐに箱買いした越後名物で俺の大好物の笹団子を呑気に頬張っていて気付いたら一箱が空になっている。
「俺の好物、四公六民の年貢でも半分こでも無ければ嫁に独り占めされてるよ」というため息混じりの呟きが駅のアナウンスと嫁の笑い声でかき消され、箱には団子を包んでいた笹の葉だけが残っている。

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Trans Far East Travelogue56

ここ、新宿駅から日帰りで行くことのできる伊豆や関東甲信越には俺の思い出に残る場所が数多く、締めに何処へ行くか決めかねて嫁にリクエスト求めると,殆ど行った事のない甲信越が良いとのことだ。
そして,嫁のリクエストを一通り聞いたら新潟県西部の妙高か糸魚川といった上越地方へ行くことが理想なのだが,新幹線の接続時間を考慮して,兄貴と一緒に度々訪れたことのある街,上越新幹線も停まる長岡に行くことが決定した。
一旦大江戸線で港の最寄駅の大門に行って既に入港している船に着替え等の重い荷物を予め積み込み、返す刀で東京駅に行くと5分の乗り継ぎでとき号に乗り換えて長岡に行き、北陸経由で東京に向かっている別働隊が運転する車に乗っけてもらえれば搭乗には間に合うことが判明したので,急いで別働隊のメンバーに連絡して長岡駅に寄ってもらうことになり、予定通り荷物も積み込めて東京駅に着いた。
ようやく落ち着けて新幹線の車内で一息ついていると,嫁の財布から一枚のカードのようなものが落ちたので拾い上げて見てみると入籍して苗字が俺のと同じになった嫁の運転免許証だった。
それに気付いた嫁が「私だけ持ってたら当てつけになると思って隠してたけど見ちゃったよね?」と訊くので頷き「でも,君が運転する時は助手席で俺が道案内するから気にしとらんよ」と返すと嫁が口に指を当てて秘密だと示すので俺も黙っていることにした。
後にこのやり取りが役に立つことになる。

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Trans Far East Travelogue65

いよいよ朝日が昇り、門出の日となった。
荷造りを済ませ、この先をどうするか嫁と話し合い、俺の思い出の場所を2箇所巡って乗船までの時間を過ごすことにした。
新宿のサザンテラスに着くなり嫁が突然両耳を押さえたので「どうした?」と訊くと「地元ではこんなに電車の近くを歩ける所がそんなに多くないからここまで走行音が大きいなんて思ってなくて」と答えるので「そっか」と返すが先の言葉が続かず黙ってしまい、下を行く電車を見ながら今よりも多くの車両が走っていて楽しかった幼少期を思い出してため息をつくと嫁が「ごめんなさい…私のせいで怒ってる…よね?」と落ち込んだ様子で訊いてくるので「怒ってるわけじゃないよ。ただ、今よりも車両のバリエーションが多かった幼稚園の頃が懐かしくなってさ…当時はオレンジの中央線も,緑の埼京線も今走ってる当時デビューしたばかりの車両とその前の古い車両が混ざってて,それから新宿駅に乗り入れる特急も車両の種類が複数あって目で見なくても音を聞いただけでどんな車両が走ってるのか分かって、それを当てると大人からは褒められたんだよな…それが偶々世代交代の若手が出たばかりみたいな時期でまず通勤電車、特に中央線、次に特急NEX、埼京線の通勤車両、それから性能と乗客の需要が合わなくて車庫に引き篭もっていた土休日の臨時列車用の車両も消えて千葉方面からの特急もほとんど来なくなって今はもう無くなったし、中央線から更に特急専用車両が二種類消えて一方は解体、もう一方のは伊豆に飛ばされたし、伊豆と池袋方面を結んでたSVOも消えた。当時は今よりも音が大きな車両が多くて車両当てやすかったのに今は路線ごとに塗装を変えただけの同じ車両ばかりで判別しにくくてさ…昔は鉄道の音に敏感で確実に車両が分かるってことで音鉄の神童って呼ばれてたのにその称号は高性能な録音機を持った子供達に渡ったからなぁ…でも、新幹線が無い分新宿に乗り入れる列車の変化は東京駅や上野に比べると大したことないんだけど,1番愛着がある駅なだけにね…」と言って思い出に耽るも過去にあった一悶着も思い出して苦笑いを浮かべると「誤解が解けて良かった」とは言ったものの嫁もその先の言葉が続かず苦笑いだ。

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Trans Far East Travelogue64

嫁が俺と同じくらいのペースで呑みまくり、暫くして眠り始めたことでお開きになり、色々考えた末に嫁を背負って帰ることになった。
「ウグッ…流石にしんどいなぁ…でも、日本男児ならこんくらいはやってやんねえと」そう呟くと嫁が眼を覚まして「え?今どういう状況?」と訊いてきたので「君が酔っ払ってお店が閉まるギリギリになっても眠って起きなかったからこうやって運んでるんだ…俺さ、お酒に強い人が比較的多い韓国で働いて飲み会行きまくった経験からお酒に関しては量は飲めるんだけど,体質的に翌日じゃなくて飲み終わった数十分後に刺激が来て数時間後に消えるんだよ。でも、いきなり立ち上がったからこのタイミングで頭に酔いが回ってきた」と俯きながら語りかけると嫁が「ごめんなさい…私,貴方と結ばれてからロンドンで呑んだのが初めてだったから加減がわからなくて」と謝るので「俺も初めて呑んだ時はグラス2杯分だけでその次からガチで呑んでたから気持ちはよく分かるよ。まぁ,俺は君と違って初めてが氷割りのビールで度数が低かったからその次以降がガチでキツかったけど」と笑って返すと「本当に大丈夫なの?」と心配してくれるので「セブで悪酔いした時よりは少なかったからな。この位ならなんとかなるさ」と答えると「そう言えば,セブの話で皆が言ってたフェラスリーって何のこと?」と訊かれたので「fellaは俺達が通ってた語学学校の名前ね。寮とセットになってるキャンパスが2つあってそれぞれの数字で呼び分けるんだけど,学校の近くのバーに休みにはその学校の生徒が集まって店が学生で埋まるからそれぞれfella3,fella4って呼んでたんだけど、俺は休みが少なくて新しくできた4には行けなくて3しか行ったこと無いけどね」と返す。
「まぁ,そこも色んな思い出があって、予定通りならセブにも寄港して三日ほどいるし、その次の寄港地からも飛行機なら1時間以内だそうだから行こうと思えば行けるんだけどな」と言って笑い、その後も暫く2人でお互いの思い出を語り合いながら歩き、普段の2倍の時間をかけて帰宅し、家でも紅茶を飲みつつ色々語り合った。
近い時期に近い地域男4人が皆同じ週に帰るため修了証書を受け取った金曜に皆で集まって呑み、日付が変わってすぐの便で帰る3人を見送った、寮で過ごした最後の夜の再現と言っても過言では無い。

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Trans Far East Travelogue63

店に着いて皆でエールを飲み始めたは良いが、俺達を見て絶句している。
暫くして,俺と同じ日に学校に着いたが羽を伸ばし過ぎて怒られて急遽先に帰国したAが口を開いて「お前から『嫁を連れて来る』って聞いてたけど、お相手が予想と違った」と爆弾発言をする。
それを聞いた嫁は困惑した様子なので「実は、セブにいた時はとある台湾の女性に恋してたんだ。そこまではこの3人も知っててその先は俺と兄貴達以外は誰も知らないんだけど,台湾までその人に会いに行っていざ告白したら翌日その人の地元,台南で行われるイベントの時に返事を告げるって言われたので高雄の兄貴達と現地で合流ということで台南まで行ったんよ。そしたらさ、それがその人の結婚式で、兄貴が通訳してくれたことでフラれたことが確定した挙句プロ野球もサヨナラ負けしたから所持金全額つぎ込んで皆でヤケ酒飲んで,兄貴が台湾で興した新興財閥で働くことを条件に出して貰った金で帰国したんだ。それが奇しくも去年の11月、俺が21になった誕生日のことさ。そして,俺のことを色々知ってた兄貴に気遣って貰って観光を通じた国際交流促進目的の子会社の『韓国にもルーツを持つ日本人スタッフ』としてソウル支社で働くことになって暫くは韓国と日本を行き来していて、ある日台湾の本社から呼ばれて,ビザを取れなくて経由他のロシアに入国できなくなった紀行文や他の国の紹介記事執筆担当者の代理としてシンガポールから鉄道旅をしてたら高3当時の恋心が再燃して君と結ばれたので作品は急遽恋愛要素を加えた物に変更になって売れてさ…今までまで隠しててごめん」と言って説明も交えつつ謝ると「でも、それ以降はもう私一筋なんでしょ?」と嫁が訊くので「当然さ。あの鉄道旅で時間を共有するうちに再燃した恋心が愛情と独占欲に気持ちが変わっていったからな」と頷いて即答すると嫁は俺に口付けして「これからもずっと一緒にいようね」と笑い、今まで空気になってた3人が「早く呑もうぜ」と促すので「そうだな。よーし、飲んべ!」と言うと嫁が更新されてゆく野球速報を見せて「巨人サヨナラ勝ち!」と言うのでガッツポーズすると、唯一入学から卒業までずっとクラスメイトだった奴から「なんか送別会思い出すなぁ」と笑われた。
嫁も一緒になって飲む酒は,かつてセブで飲んだ物より甘味が入っている。