皇帝の目_6
チトニアは焦った。突然梓が目の前からいなくなったために軽くパニックになっているのである。ビーストは床を這い回り、チトニアの周りをぐるぐると回っている。
「わ、私…ご主人様守れなかった…」
と、チトニアがめそめそしだしたとき
「ち!と!に!あ!」
「!?」
声が聞こえた。
「下!ちょ、早く拾って!!」
「下…」
チトニアが下を見ると小さな梓が走っていた。…ビーストに追われて。
「きゃあああ!!梓!ちっちゃい!!」
慌てて拾うとビーストも追随して飛び上がる。
「チトニア、こいつと目合わせちゃだめだぞ」
ビーストは小型で素早く、面倒とは思っていたがここまでとは思っていなかった。チトニアは両手が塞がっているので、目が合う前にと慌てて噛みついてみたが、当然の如く逃げられた。
「あ、梓…ごめんねぇ、私がいたのに」
「どんまいどんまい、気にすんな。それより、私、思ったことがあるんだけど」
「なに?」
「あいつ、目の周りに腕生えてんじゃん?あの生え方、絶対視界の邪魔だと思うわけ。でもわざわざああいう生やし方してるってことは、目、守んなきゃいけないとこなんじゃないかなって」
「弱点…てこと?」
「そう。攻撃手段かつ弱点なんだと思う」
「だったら…」