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Metallevma キャラ紹介②

・アメシスト
鉱石:アメシスト  核:左のこめかみから頬にかけて線状に走る紫水晶の筋
能力:感覚の鋭敏化・鈍化
能力の由来:『酒に酔わない』の意味を持つアメシスト。アメシストの能力は、アルコールの中毒症状に飲まれる事無く、逆にそれによって引き起こされる感覚の鈍化と過敏化を自在に引き起こす。
クォーツ族の戦士。ルチルとは相棒の関係で完全に信頼しきっており、万が一共に戦うことになれば、死角への注意が完全に無くなる。知覚能力を鋭敏化し、恐怖や自衛本能を鈍化させることで発揮される高い格闘能力は、クォーツ族はおろか周辺の他部族でも勝てる者がいないほど。能力の使い方ゆえに負傷することも多い。
シトリンに憑依してもらうと壊れない上に拡張性が極めて高い身体が手に入るのでとても強いのだが、アメシストは身体の部位が少ない状態での戦闘には慣れていても多い状態での戦闘には慣れていないので、必然的に部位欠損を補う形で能力を発動する外無く、条件を満たしにくいという事情もあり、”バーント”は飽くまでも最終兵器。戦士の人手が足りなさ過ぎて基本的にソロで戦うことが多い。

・シトリン
鉱石:シトリン・クォーツ  核:額に2本生えた黄水晶の短い角
能力:親和性の高いメタルヴマに炎の形で憑依する
能力の由来:焼黄(やきき)から。焼黄とは人工的にシトリンを作り出す手法であり、紫水晶や煙水晶を加熱処理することで、その色を黄水晶のようにすることができるそうな。紫水晶由来だと「バーント・アメジスト」、煙水晶由来だと「バーント・スモーキークォーツ」というらしいですよ。
クォーツ族の護衛官。能力は自身を黄金色の炎に変え、仲間に憑依するというもの。炎は対象の部位欠損を補い、実体としてシトリン自身または憑依対象の意思のままに動く。ある程度の親和性が必要で、現状能力が適用されるのはアメシストとスモーキー、モリオンの3名のみ。ルチルのことを苦手に感じており、それとよく一緒にいるアメシストのことも警戒している。
アメシストに憑依した時の強さは本当に凄まじいのだが、では何故最強コンビがシトリン&アメシストではないのかというと、シトリンが戦闘力が低いにも拘らず重要度の高いスモーキーの護衛に就かなければならないこと、シトリンの能力では、実質的な人手が二人分にはなれないことが理由。

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Metallevma 部族紹介

クォーツ族:クォーツ(水晶)のメタルヴマ達。そのスタンスはどちらかというと専守的である。これは煙水晶のスモーキーと黒水晶のモリオンの2名のメタルヴマの特殊能力による土壌生成・地形干渉によって、少ない面積により豊かな地形を用意でき、ナワバリの面積の重要性が低いため。今あるナワバリと仲間を守ることを重視している。
弱点は戦闘面で特に強い人員(かつ表に出ることができる者)がアメシスト、ルチルの2人しかおらず、攻勢に回りにくいこと。

クリソベリル族:感覚能力に特化した特殊能力を持っている傾向が強い、ナード気質の集団。自身の興味の対象以外にはほぼ無関心であり、ナワバリ争いにもあまり積極的では無い。そもそも戦闘能力もかなり低く、戦ったら死にかねない。その弱さゆえに脅威度も低いことからナワバリ争いにおける討伐優先順位も低かったことで、辛うじて生き残っている。

隕鉄一派:鉄隕石を核に持つメタルヴマの集団。『鍛造』と呼ばれる技術によって自身の核である隕鉄を含む全身を改造し、戦闘力を只管に追い求めている。その行動理念の全ては「自分達“の方が”強い」であり、ナワバリ争いとは無関係に各方面に喧嘩を売ってはその圧倒的戦闘力で蹂躙している。一人でも他派閥のメタルヴマが生き残っている限り、彼らの侵略が止まることは無い。また、「相手が死ぬ」ことは彼らにとっては分かりやすい強さの証明でしかないため、殺傷行為への忌避感も他のメタルヴマより乏しい。

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Metallevma:水晶玉は流星を見通す その⑬

「……“天鉄刀”はどうする? 隕石の雨を、どう防ぐつもりだ?」
ルチルが見上げる先、その上空には、天球をほぼ埋め尽くすように大量の隕鉄塊が出現していた。
「私の能力と、シトりんの壊れない炎の身体。恐れるものがどこにある?」
アメシストはニヤリと笑い、炎の脚を深く折り曲げ、大きく前傾した姿勢のまま勢い良く飛び出した。
無数の隕鉄塊が不規則に降り注ぐ中を、アメシストは僅かな隙間を縫うようにして正確に回避しながら進んでいく。
アメシスト自身の能力によって極限まで鋭敏化された感覚能力が辛うじて生存ルートを導き出し、本質的に不壊の流体である、シトリンの能力による炎の脚を、一般的なメタルヴマの身体には耐え切れないほどの速度で稼働することで、ルートの発見とほぼ同時にそれを辿りようやく成し得る荒業である。
「よっしゃ、このまま奴の能力の範囲外まで逃げ切るよ」
「あ、ああ……」
あまりの速度と乱暴な挙動に、ルチルも簡単な相槌を返すことしかできない。
「……っと、その前に」
突然急ブレーキをかけてアメシストが立ち止まる。
「うわぁっ⁉ アメシスト、何を……⁉」
「ルチル、さっき言ってたよな? 『一撃返してやらなきゃ気が済まない』って」
「ああ、けど……」
「せっかくだし、それも叶えてから逃げ切ろうか。シトりん、ちょっと切り離すけど良いね?」
黄金の炎の塊が右脚から分離し、球体の形でアメシストの目の前に浮かぶ。
「よしよし。それじゃあこいつを……お見舞いしてやる!」
掛け声とともに回し蹴りに蹴飛ばされた火球は、隕鉄塊の隙間を器用に回避しながらテーナイトに迫り、下半身の核を僅かに溶かして火花と散った。
「はい全部叶えたから私らの勝ち。そーれ逃げろー!」
アメシストがからからと笑いながら逃げ去って行くのを、テーナイトは攻撃を受けて僅かに溶けた核を気にしつつも、それ以上は何もせず見送った。

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Metallevma:水晶玉は流星を見通す その⑫

「ふぅ……危ないところだったね、ルチル」
来たる衝撃に備え反射的に目を閉じたルチルだったが、危惧したそれが襲い掛かってくることは無かった。かけられた声に恐る恐る目を開くと、アメシストがニタリと笑いかけている顔が目に入った。
「あ……アメシスト⁉ お前、身体は……!」
「シトりんにもう少しだけ動かさせてもらってる。大丈夫、この戦いが終わったらしばらく療養するさ」
アメシストの言葉に合わせて、アメシストの手足や損傷を補い埋めるように燃えていた黄金色の炎が揺れ動く。
「ローズもこんなに小さくなっちゃってまあ……」
分裂した炎の細腕でローズの残骸を抱え込み、アメシストはそれを眺めながら呟く。
「ローズちゃんはダメージで疲れてるんだ。構わないでやってよ」
「私もルチルも同じだってのに。あいあい」
アメシストは頷き、“天鉄刀”“隕鉄刀”の両名に背を向けて駆け出した。
「アメシスト⁉ 何故逃げるんだ! あいつらに一撃返してやらなきゃ気が済まない!」
炎の腕から逃れようともがき始めるルチルを、アメシストは炎の腕を分裂させることで強引に抑え込んで走り続ける。
「馬鹿言え! 私とルチル、ついでにローズ。私ら3人、全員生き延びればそれが私らの勝利だ。傷さえ治せば何度でも挑めるんだぜ、相棒!」
「ッ……! ……悪かった、熱くなってた」
「良い子だ、ルチル」
駆けるアメシストの背後から、“隕鉄刀”カマサイトが追いかけるように突進してくる。
「逃げられると思ったか馬鹿め!」
「逃げられるさバカめ」
抉れた腹部を埋める黄金の炎に“隕鉄刀”の刃が突き刺さり、衝撃波で一瞬炎が吹き飛ばされる。
「うおっとシトりん、無事かい?」
黄金の炎が枝分かれし、小さくサムズアップを作ってみせる。
「アッハハハハ! 私も無事だ、こっちの身体は“流星刀”にやられて殆ど空っぽだからね。そして“隕鉄刀”の弱点は『ここから先』にある」
炎の脚を大きく伸ばし、アメシストは“隕鉄刀”から距離を取る。しかし、カマサイトはそれを追うことができず歯を食い縛って地面を踏みしめている。
「奴の能力は『自身の持つエネルギー全てを刃の先から対象に注ぎ込む』もの。『全て』だぜ。攻撃の直後、奴は絶対に立ち止まる。立ち向かえばまず勝てないが、『追われる側』にさえ回れれば、まず負けないんだよ」

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Metallevma:水晶玉は流星を見通す その⑦

ルチルは無数の水晶針を周囲に浮遊させながら敵の懐に飛び込んだ。トロイライトが刀を振り上げる瞬間、水晶針の弾幕を空間を埋め尽くすように射出し、視界を塞いだ隙に急接近し、無事な左腕で刀の柄を押さえる。
「これさえ、奪えば……⁉」
刀を奪おうと力を加えるが、手に貼り付いたかのようにびくともしない。
「オ……レの……『核』に…………触るな」
「は……?」
トロイライトは左腕でルチルを殴りつけ、吹き飛ばした。
(あいつ……今、たしかに『オレの核』と言った。あの刀が核だと?)
咳き込みながらも起き上がり、ルチルは水晶針の弾幕を再び撃ち込む。トロイライトは刀を振るった余波で弾幕を打ち消し、攻撃のための斬撃を打ち出すため、再び刀を構えた。
トロイライトが斬撃を放つ直前、視界の外、斜め右後方から飛んできた槍のような水晶柱がその身体を弾き飛ばした。
空中で体勢を立て直そうとしたトロイライトだったが、身じろぎしようとする前に、その身体は予め地面に突き立てられていた水晶柱に叩きつけられ、仰向けに倒れそうになる。
「ナイスぅルチル。あとは私の仕事だ」
倒れまいと踏ん張るトロイライトの顎に、アメシストの飛び膝蹴りが突き刺さる。
耐え切れず脚が砕け千切れ飛ぶほどの威力に、重装のトロイライトとはいえ成す術無くナワバリの遥かに外まで吹き飛ばされ、二人の前から姿を消した。
「ぃよっ……しゃぁあー……! 勝てたぁー……!」
満足げに地面に転がるアメシスト。ルチルが足を引きずりながら近寄って来たのに気付き、アメシストは肩しか残っていない両腕をルチルに向けた。
「相棒ぉ、もう両手足無くなっちゃった。抱っこして抱っこ。私の事運んでー」
「……私の手足も相当限界なんだが……まあ仕方ないな。しかしこれ、『勝った』ってことで良いのか?」
抱え上げられながら、アメシストはからからと笑う。
「良いに決まってるじゃない! 私らの目的は、私らが死ぬ前にあいつを眼の前から一瞬でも退かすことだったんだから。ほら、戻ってくる前に私らもさっさと逃げてしまおう」
「了解」

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Metallevma:水晶玉は流星を見通す その④

「外……だと?」
「そーお外」
ルチルが訝し気に問い返すも、ネコメは事も無げに答える。
「クリスチャンにも見えてるんだろうさ。ドキドキワクワクするような、“異世界”ってやつが」
言いながら、ネコメはクリスタルに意識を向けた。その目に映らないクリスタルの口元は、心なしか僅かに上がっていた。
「ナワバリ争い? 下らないねそんなこと。こんな小さい世界に甘んじる奴らの諍いになんか興味無いよ。すぐそこに見えてンだ、この不可視で強大な『壁』のその先が。出自やナワバリの違いなんかでいがみ合ってる暇も無いほど、ボクらの戦いは困難で不確かなんだぜィ?」
ネコメがニヤリと不敵な笑みをルチルに向けた瞬間、ネコメの首が刎ね飛び、後方から飛んできた何者かの腕に吹き飛ばされていった。
「ッ⁉ ネコメ⁉」
咄嗟に立ち上がるルチル。
「る、ルチル! 敵襲だ!」
駆け寄って来たのは、片腕を失ったルチルやクリスタルの仲間、ローズだった。
「ローズちゃん! あの腕ローズちゃんだったの⁉」
「うん、油断した。クソ、“あれ”が来たんだ!」
「あれってなに……」
首だけになったネコメが尋ねる。答えるのはルチル。
「……“流星刀”のトロイライト。最近この辺で猛威を振るってる『隕鉄一派』の1人だ」
「そっかー……ところでなおして」
「ああ。ローズちゃん!」
ルチルに呼ばれ、ローズが自身の傷口を抑えながら駆け寄ってくる。
「クリスちゃんとついでにネコメを頼む。戦況は?」
「アメシストがどうにかしてる」
「私はそっちに行く。他に誰も近付けるな。私とアメシストで駄目ならあとはもう無駄な被害だ」
「了解。行くよ、クリスちゃん」
「んぇあ?」
クリスタルはネコメの胴体を小脇に抱えたローズに呼ばれ、訳も分からずネコメの頭を抱えてローズについて避難した。

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Metallevma:水晶玉は流星を見通す その③

「しかし君らも飽きないな。毎日毎日何にも無い空間に手ェ伸ばして。退屈しないの?」
ルチルのその言葉にネコメの動きが止まり、口元をニタリと歪ませてルチルの顔を覗き込んだ。
「『何も無い』? 何も無いだって? そう見えるのかい? ハハハ、そうかそうか! ボクらが何も無いところを手探りする狂人にでも見えてるわけか! クォーツのひとでも聡い奴ばっかりじゃないんだねェ!」
「死にたいようだな?」
核に水晶針を突き付けられ、息を呑むようにネコメの笑いは途切れた。
「ぃやァーゴメンナサイ調子乗りました……。いやね? 違うんですのヨルチルのひと。ボクら、そうこのネコメちゃんとクリスチャンは、可視光しか感知できない残念な眼玉しか持ち合わせてない余所のメタルヴマらとは見てる世界が若干違うんですノヨ」
「……前にも聞いたな。どういう意味なんだ?」
ルチルの問いかけに、シシシと息を漏らすように笑いネコメは答える。
「いやほら、たとえばボクはクリソベリル・キャッツアイ。イワユル“猫目石”を核に持ちましてね。この猫目は現在絶賛生き別れ中の両の目玉とは違って、ゾクゾクするモノとワクワクするモノしか見てくれないんですノヨ」
「……つまり、どういうことだ?」
「ボクが触れたら死ぬような危険物の存在が、ボクには手に取るように分かる。距離も方位もね。『ワクワクするモノ』ってのはそりゃァルチルのひと」
ネコメはそこで言葉を切って、再び虚空に目をやった。
「“小さな世界”ミクロコスモスの外っ側でさァね」

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鏡界輝譚スパークラー:プロフェッサーよ手を伸ばせ その③

「オヤ、起きたね?」
少年が目を覚ましたのと同時に、明晶が声をかけた。その目はモニタに向けられており、少年には完全に背を向けている。
「ここは……」
「ワタシの秘密基地だよ、少年。しかし君は幸運だったね。ワタシの親友が君を見つけてくれたおかげで、君は今辛うじて生きているわけだ。まあ無傷じゃ済まなかったけど」
「……? あの、あー、すんません。ちょっと、話についてけないんだけど……」
「んー? あー……」
椅子を回転させ、明晶は少年に向き直り、にたりと笑って彼を指差した。
「君が今、身体を支えているその右腕」
「え、…………わあ何だこれ!」
金属製の義腕は、少年の意思に従って通常の人体と変わらないほど自然に動作しており、それ故に少年も実際に視認するまで気付かなかったのだ。
「私の自作ギア……まあP.A.だね。細い螺旋状のパーツを何枚も、何重にも組み合わせ、その伸縮によって身長145㎝から185㎝までの身長の人間に対応した特製義肢、名前は特に無い。元々君のための品物じゃなかったけど……まあ味方は多い方が有利だしね」
「……ぎ、ぎし?」
「そう義肢」
「え……それじゃあこれ、え、僕のこれ、腕無くなってるんすか⁉」
「うん。カゲに浸蝕されてたからねぇ。それしか無かった」
「ま、マジか……あの、それはありがとうございます」
「良いの良いの。恩義さえ感じていてくれれば。ついでにもう一つ恩着せといてあげようか?」
「え、何ですか」
少年が問い返したのとほぼ同時に、屋外から破壊音が響いた。
「え、何⁉」
「お、来たか。ワタシの親友が」
荒々しい足音が近付いてきて、吉代が部屋に入り、気絶した少女を1人床に放り投げた。
「わぁ乱暴。駄目じゃない女の子を乱暴に扱っちゃ」
「入り口壊した。ちょっと何とかしてくる」
「あー……そういうこと。行ってらっしゃい」
吉代を見送ってから、明晶は呆然とする少年の前を通り、気絶した少女を抱き起こし、壁際に寄りかからせてから再び椅子の上に戻った。
「はい、恩その2」

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鏡界輝譚スパークラー:プロフェッサーよ手を伸ばせ:その②

「こいつで、カゲ化した部分よりちょっと上からスパっとやるのさ」
「……止血とかは」
「大丈夫。切断と同時に切断面にバリアを張って止血する仕掛けになってるから」
「あぁ……そうなんだろうとは思ってたが、やっぱりP.A.なのか」
「うん。一応アフターケアも用意してるけどね。万が一ワタシか君がカゲに手足をやられた時のために。……さて、やるか。その子押さえてて」
メスを両手に持って立ち上がり、その刃を少年の腕に当てる。
「…………救命のためとはいえ、……人体に刃を当てるっていうのは、なかなか緊張するねぇ」
軽口のように言い放つが、明晶の手は震え、呼吸は少しずつ荒くなっている。
「プロフ」
「ん?」
「パス」
「あっ」
吉代がメス型P.A.を奪い取り、勢いのまま振りかぶった。
「っ、肩より10㎝程度先を狙って切断して!」
「了解!」
まだ人間的な腕の根元部分に、メスが入る。その刃は光の力によってほぼ何の抵抗も無く肉も骨も切断し、その切断面には光の壁がぴたりと貼り付いて完全に密閉した。
「いやぁ……ありがとうね、親友」
「ん」
「ここからはバリアを構成してる光の力を、人体の代替パーツに変形させて、自然治癒を待つ」
「さすがにこのバリア1枚分で腕全部補うのは無理じゃないか?」
「そりゃそうさね。だからこれを使う」
そう言って明晶は、未だ冷気を吐き出し続ける箱の中から、もう一つのP.A.、金属製の義腕を取り出した。

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Trans Far East Travelogue53

件の映像を見せると、嫁が「これって本当にドイツの映像なのよね?映像に映り込んでしまってる現地の人があげている歓声は英語に似ているけど英語じゃない他の言語なんだけど、背景の花火は日本のものそのままで合成っぽいんだけど…特に、スタートのヒューって音,海外の花火では鳴らないイメージなんだけど…でも、何か変ね。もし本当ならどうしてドイツで日本の花火が上がってるの?」と訊いてきたので「それは、世界的に見ても有名な日本人街のあるDüsseldorf (デュッセルドルフ)で行われているJapan Tag(ヤーパンターク)だね。
名前の意味は『日本の日』で、日本とドイツの文化交流で大きな役割を果たしているお祭りで,その中でも1番人気がこの花火なんだ。俺達はすぐ船で海外行くし,向こうに着いたら日本は夏で花火シーズンだけど現地のを見るには早すぎて見らんないはずだから今年は花火諦めてたんだけど、まさかこれが数時間前にあったとはな」と返すと嫁が「花火っていつ見ても綺麗やね」と言っているので「普通に見れば綺麗かもしれないけど…俺からすれば愛しの嫁の方がもっと綺麗だから、ドイツにいる人には申し訳ないけどこの花火の魅力、俺にはわかんないや」と正直にコメントする。
そしたら、嫁が照れ隠しのためかアッパーで俺を小突いてきた。
かつては女性や老人もいるこの街に容赦なく降り注いだ炎の花は,平和の証として敵味方の区別なく,またかつての同盟国であり技術や文化も共有しあった国とは2度と途絶えることのない友好の証として年に一度、その姿を見せて今も世界中を虜にしている。
そして、その花火を見ている若者2人を乗せた気動車は,武蔵野台地を駆け抜ける。

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鏡界輝譚スパークラー:プロフェッサーよ手を伸ばせ その①

「ぁー……増えてきたねぇ、新型」
ドローンのカメラが映す映像に苦笑しながら、明晶は光の力を回復する薬剤を一口吸った。
映像を出力したモニタには、数日前に彼女が潜むトタン小屋を襲撃したものと同タイプのカゲの姿が多く見られていた。
「せっかくだし、名前でもつけてあげようかな。ちょっとは愛着も……いや湧いちゃ駄目なんだけど」
ケラケラと笑っていると、部屋の外から荒々しい足音が近付いてきた。
「んー、何だい親友、今日は随分と激しいエントリーじゃないか。そんなにワタシに会いたかったのk」
「プロフ! 輝士拾った!」
「はぁん?」
怒鳴りながら部屋に入ってきた吉代の肩には、気絶した輝士の少年が担がれていた。
「……何その子? まだ若いね、15歳くらい?」
「知らん。それよりちょっとマズいことになってんだ」
吉代が床に下ろしたその少年の右腕はカゲに浸蝕され、新型の触手のように異形化していた。
「うわぁ……カゲに堕ちかけてる」
「光の力を使い果たしてるんだ。これ、どうにかできないか?」
「…………」
顎に手を当てて考え込む明晶の背後で、ドローンのカメラ映像が途切れ砂嵐に変わった。ドローン機体そのものが、カゲに撃墜され破損したのだ。
「プロフ?」
「……いやね。まあ道はあるよ、親友。君の特別強い光の力に中てられて、彼の身体を浸蝕するカゲもノロマになってるんだ。これは僥倖だったね」
言いながら、明晶は床下収納を開き、その中に隠していた鍵付きの箱を滑車で取り出した。
「……実を言うと、カゲに染まった肉体を治療する方法はちょっと思いついてないんだ、悔しいけど。だから、カゲに堕ちた部分をまるっと『斬り落とす』」
箱を開くと同時に、冷気が白い霧となって漏れ出す。その中から明晶が取り出したのは、無数の小型機械や配線が繋げられた、刃渡り30㎝、全長1mはあろうかという巨大な外科用メスだった。

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理外の理に触れる者:怪異使い対怪獣使い

「やあ相棒。ちょっと助けてくれるかな?」
勢い良く足元に転がってきた水呼に求められ、亮晟は無言で彼女の身体を持ち上げた。
「どうした?」
「やー、あの子にちょっと絡まれてね?」
「ほう」
亮晟が見上げた先には、異形の腕と顎を具えた月がにたにたと笑いながら近付いてきていた。
「……お前何したんだ相棒」
「そう言わないでよ。君の相棒を胸張って名乗れるようになりたくてさ、私もそこそこ頑張ってたんだよ?」
「へえ」
「まぁー……その結果ちょっとだけ人の身を外れちゃったよね」
「それで、“総大将”に目を付けられたと」
「ははは。まー私は女王様に後見されてるし? いざとなったら助けてもらえるんだけどね? あんな小さい子に危険な目に遭ってほしく無いじゃん?」
「……だからフリーの俺に相手しろと?」
「そゆこと。ほらほら相棒、いっちょカッコよく決めちゃってよ」
水呼が亮晟の背中に隠れ、月の方を指差した。彼我の距離は既に5mを切っている。
「んぉー? “モンスター”やんけ。怪獣はまだ喰った事無かったからなァ……ちょぉーっとバカシ味見させて?」
「……やってみろ。『病霞』、来ませい。『装竜』……変身」

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変身!!

相棒の良太郎が謎の怪人に体を乗っ取られた。
「良太郎!戻ってこい!」
しかしそんな呼びかけもなかなか届かない。
「呼んでも無駄、相当痛めつけておいたから当分目は覚めないよ!」
そんな無慈悲な言葉と共に攻撃されてしまう。
「…ぐっ…聞こえるか!良太郎!俺だ!」
「聞こえないよ!」
「うるせえ、お前になんか言ってねーよ!聞こえてるはずだぜ…お前、抑えてんだろ、それをよ!」
必死に呼びかけるが攻撃の手は一向に止まらない。もはやこちらの体力は限界寸前。
「だからよ…良太郎…もうちょっと踏ん張って…そいつを追い出せ!…できるよなぁ!…良太郎!」
最後の叫びの如く彼はその名を呼んだ。しかしそれが隙と言わんばかりに敵の刃は彼の左鎖骨を捉えた。
「いいから…死ねぇ!」
左鎖骨から右脇腹への袈裟斬りが見事に入り、断末魔と共に彼の体は倒れようとした。
しかしここでその敵が彼の腕を掴んだ。
「何!?ま、まさか!」
敵自身も驚いている。つまり…
「へへっ、やっぱな」
その瞬間、良太郎の体に彼が憑依し、敵の怪人が外へと追い出された。
「なんでだよ!なんで…」
敵怪人は正に困惑といった表情だ。
「バカヤロー、俺達がどんだけ一緒にいたと思ってんだ、いいか?今から本当の変身ってやつを見せてやる」

「変身!」

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企画「短編集『残滓』」

 少し前に私が個人的に作っていた小説集を少し変えて企画にしたいと思います。
 規定は以下のとおりです。

1,テーマは『戦争の残りかす』
2,形態は詩、小説、評論、歌詞、俳句、など文章
3,主体は日本語
4,長さの目安は書き込み1つ分〜5つ分
5,戦争賛歌にはしない
6,タグの一つに「短編集『残滓』」を入れる

 今回の『戦争』は武力衝突全般を指します。そのため、第二次世界大戦のような現代的で広範囲の戦争ではなく、古代の戦争でも、地域紛争でも、宇宙戦争でも、ファンタジーで魔法戦争でも何でも大丈夫です。また、『残りかす』は何も戦後を描く必要はありません。『残ったもの』という感じで、結構広義的に捉えてもらえればと思います。人間でも、ものでも、人間以外の生物でも何でも大丈夫です。
 形態は文章なら何でも良いです。
 何も日本語が主体になっていればいいだけで、英語だって中国語だってラテン語だって使っても大丈夫です。日本語なしでも大丈夫ですが、私が読めないのでそういうときは日本語訳もつけてくださると嬉しいです。
 長さは、短編集なのでそんなに長くなるイメージではないなと思っているだけなので、上記より長くても問題ありません。
 戦争賛歌になってはいけませんが、演出上の賛美は大丈夫です。最終的に反戦を示唆していれば良いです。なお、戦争賛歌にならなければいいだけで、だからといって反戦を唱える必要はありません。
 できるだけ企画名を入れてもらえればいいです。タグが足りなくなったら入れなくても大丈夫です。

 重い感じとか泣ける感じの話でも、笑える話、くだらない話でも、反戦を唱えなくても良いです。とにかく、夏休みには終戦記念日もありますし、少しだけでもみんなで(まあひとりひとりではあれ)戦争について考えていけたらなと思います。
 企画参加作品にはすぐではないかもしれませんがレスします。
 ご質問等あればレスください。
 ぜひご参加ください!

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第1回SOLポエム掲示板夏の企画乱立祭 Introduction その②

その①が無事掲示板に反映されることを祈って、その②です。
レギュレーションの続き、企画発案者編。
2,どんな簡単なものでも壮大なものでも愉快なものでも構わないので、何か企画を考えてタグに『夏の企画乱立祭』または『夏キラ』と入れて「こんな企画用意しました!」という内容の投稿をしてください。自分や他の人が以前に出した企画のアイディアを流用したり応用したりしても良いけど、他人の過去企画を使う場合礼儀と覚悟は重要です。
3,企画投稿の際は、その企画に参加したことを示すためのタグを設定してください。普段のよくある企画と同じです。
4,企画投稿の締め切りは8月31日まで。大学生なんかは9月まで夏休みが続く人も居ると思いますが、9月からは企画参加組で楽しんでください。
5,企画をつくったら、できるだけ立て逃げせずに自分でも企画に参加してください。できるだけで良いので。

意外とスペースが残っているので一般参加者編も。
6,「お、この企画良いなー」という企画があったら参加してみてください。
7,複数の企画に同時に引っかかるような作品を作って、複数企画に同時参加しても良いです。参加した企画の分のタグは全部付けましょう。4つ以上の企画に同時参加するような猛者は頑張って工夫してみてください。
8,一つ注意。企画参加投稿に『夏の企画乱立祭』『夏キラ』のタグをつけることは推奨しません。単純にタグの上限が3つしか無いからです。タグで遊びたい人も居ると思うので。

最後に一つだけ。
9,以上のレギュレーションは全て努力義務です。しなかった、できなかったことで何かが起きるということは全くありません。夏キラと無関係の企画が立っていても面白いので無問題です。掲示板を盛り上げることをこそ最大目標として各人楽しんでください。

以上の9点を目安に、この夏を面白愉快に楽しみましょうぜ。
本格的な夏休み突入まではまだ間があるんじゃないかと思うので、質問やら改善案やらがあったらレスください。反映します。

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鏡界輝譚スパークラー:陰鬱プロフェッサー その③

「ワタシの光の力は見ての通り悲しいほど低くてね。この機械を動かすだけで精いっぱいだよ。けど、君は違う。君の光の力は人並み外れているからね、君なら使いこなせるだろう」
「さっさと言えよ、オプションとやらの内容を」
ぼやきながら、吉代はデバイスを腕に巻く。同時に画面が起動し、ほぼ完全に残った状態の緑色のゲージと『1138』の数字が表示された。
「ああ、もう一つのオプションはね、『素手によるカゲとの格闘戦を可能にする効果』だ」
「……は?」
光の力は、カゲから身を守りカゲを倒すことができる力である。しかし、その真価はP.A.(Photonic Arms)を媒体に出力しなければ十分な効果を発揮できず、基本的にカゲと格闘戦を行うことは不可能なのだ。籠手やメリケンサック型のP.A.を用いれば有効打を与えることも可能ではあるが、素手となるとカゲとの戦闘は不可能と言って良い。
それを理解しているからこそ、吉代の反応も訝し気なものだった。
「おや、信じてないね?」
「いやプロフ、あんたの技術は信じてんだ。けどなァ……流石にこれまでの常識を無視し過ぎだろ」
「うーん……ちょっと説明するとね……これと同じなんだ」
言いながら、明晶は机に立てかけていた猟銃型P.A.を手元に引き寄せた。
「いや全く分からん」
「君も使ったことあるから知ってるだろうけど、銃器型のP.A.は、光の力を弾丸に変換して射撃できるんだよね」
「それは知ってるけど……」
「よくよく考えてみれば、おかしくないかい? これらの武器が示す通り、光の力は『直接叩きつけてカゲにダメージを与える現象』に変換可能なんだよ。それなのに、その性質が飛び道具でしか発生しないなんて……」
「けど実際そうだろ」
「まあね。実際作ってて分かったよ。弾丸みたいな小さくて一瞬で着弾・消滅する物体に変換するまではどうにかなるんだけどね。格闘戦のためには、手足をエネルギーで包み込み、その状態を維持しなくちゃならない。これがなかなか結構難しくってね……」
「……それで?」
「大量の光の力を消費させることで、力づくで解決した」
「これはひどい」

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伝搬・見物衆・難化

「よォお前、こんな往来ド真ん中で立ち止まってどうしたィ?」
「ん? 何だ友よ、俺に気付いてあっちに気付かねえとは、随分と視野が狭いな。葦でも覗いてんのかい?」
町をぶらついていると友人の姿を見つけたんで声をかけてみた。返事はいつも通り皮肉たっぷりだったが。
「んで、何を見ていた?」
「あれさね」
「どれさね」
「俺の指を見ろ」
「…………」
「馬鹿野郎、指を見てどうする。指差す先を見ろってんだよ」
「最初からそう言えよなー」
冗談を交えつつ奴の指す方を見てみると、異国の僧衣を纏った異国の少女が、たどたどしい日本語で何やら演説をしていた。
「何あの美少女」
「どーも異国の宗教について話しているらしいぜ」
「シュウキョウ……? 生憎と興味が無えな。俺が信じるのは祖霊だけだ」
「ばちぼこ浸かってんじゃねえか」
「で、どんな胡散臭い宗教だ? 見てくれだけなら若い男が黙って通り過ぎるわけが無いと思うんだが」
「ごめん俺異国の顔は好かねえ」
「俺もー。で、どんな宗教だって?」
「話聞いてやれよ」
「お前は聞いてたんだろ?」
「おう、割と朝早くからそこに立って、もう二刻は話し続けてるぜ。もう十回は同じ話してる」
「それで野次馬がお前1人か」
「うん」
「そっかァ……。で、どんな宗教だって?」
「だから話聞いてやれって」
「発音が聞きにくいんだよ」
「そんならしゃあねえや」
2人して笑っていると、俺の博打仲間が声をかけてきた。
「ようお前ら、何を笑ってんだ?」
「おー、お前俺達には気付いてあれには気付かねえのか」
友人にやられたことを、そっくりそのまま繰り返す。
「『あれ』? あれってどれだ」
「俺の指を見ろ」
「…………?」
「指差す先を見ろって話だ馬鹿野郎」