ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20.エインセル ①
11月、秋も深まり切って冬が近付く頃。
人々の服装も厚着になっていき、冬が近付いているんだなと感じられる。
かく言うわたしも、今日は寒くて厚手のコートを引っ張り出して”彼ら”の元へ向かったのだ。
着実に冬が、今年の終わりが近付きつつあった。
「それで、奴の目撃情報は?」
「全然」
北風が吹いて寒い中、わたし達はいつものように駄菓子屋の店先に溜まって駄弁っていた。
そしてもちろん会話の話題は、最近行動が活発になってきている”ヴァンピレス”についてだ。
「なーんでこうも涼しくなってきてから動きが活発になるかなー?」
「奴、暑がりなんじゃね?」
耀平と師郎はそう言いながら、駄菓子屋で買ったスナック菓子を口にする。
「いや、春も夏も多少はアイツ動いていたから、暑がりってのは言い過ぎかも」
ネロは手の中のココアシガレットの箱を見つめながら呟く。
黎はそれに賛同するようにうなずいた。
「とにかく、奴に協力している異能力者が存在している事が問題だな」
耀平はポツリとこぼす。