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蜘蛛の糸

カンダタが糸登りに疲れて、少し休憩と下を見ますと、何と他の亡者達もどんどん登ってきているのでした。あれだけの量の亡者、一人でも切れてしまいそうな細い糸に、どうして耐えることができましょうか。
「こら罪人ども!この蜘蛛の糸は……」
しかしここでカンダタ、言葉を止め考えました。もしも自分が今やろうとしていたように下手に騒いだりすれば、その振動で糸が切れてしまうかもしれない。幸いにもまだ糸は切れていない。では今必要なのは糸への錘を減らす事ではなく。
「おいお前ら!急げ!急いで登って来るんだ!しかし決して下手に糸を揺らすんじゃあないぞ!一人ずつ!一人ずつだ!隙間を作らず慎重に俺のところまで登って来い!」
亡者達がその通りカンダタのところまで隙間を作らずにカンダタの足のすぐ下のところまで登ってきますと、亡者の身体が梯子のような役割を果たし、カンダタの思惑通り糸への負担が軽減したのでした。
(へっへっへ、俺の思った通りだ。今必要なのは『負担の軽減』ではなく『糸の補強』!これで下の奴を踏みながら登っていけば、糸はきっと切れないだろう。極楽浄土へ行くのもいよいよ夢じゃねえな!)
そしてとうとうカンダタの手が、極楽浄土に届きました。そして全身を引き上げると。
「よくやった亡者ども!お前らのお陰で『俺だけは』極楽浄土に辿り着けたぜ!じゃ、お前らはこれからも永遠に地獄で苦しみな!」
そう言って糸を引きちぎってしまいました。
「ハッハッハッハ!こりゃあ良い!こいつぁあ傑作だな!あの阿呆共め、見事に騙されやがって。さあて、極楽巡りでもするか……ん?」
ふと気付くと、彼の身体に何かが覆い被さってその影で周りが暗くなっていたようです。
「ん?一体何だぁ?これは……え」
振り返るとそこには。
「う、うわあ!何だ、何なんだお前!嫌だ、や、止めろ、来るな、来るなぁ、うわあああああ!」
結局彼も地獄へ逆戻り。そこからは皆さんご存知の通り。
極楽ももうお午近くなったのでございましょう。

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不適切と差別と規制

どこかで聞いた話
「黒人の人が出てる本を作るのは
それは人種差別になるのではないか?」
「戦争描写の漫画は戦争を助長する」

つい目の前の教科書をぶん殴りたくなった
何が不適切な本だよ
何が戦争を助長するんだよ
残虐な描写か?
過激な描写を見ることで
それを真似して戦争をしだす、テロをしだす
そんな風に本気で思ってるのか?

無菌室に閉じ込めて
嫌なものには蓋をする
大事な子供達には怖いものは見せないように…
だけど実際の社会は菌だらけ
生きていけないじゃないか
お前は本当に子供を思って言ってるのか?

例えば虐待の描写を見て
怖いとかこんなことしちゃダメなんだなとか
作品を通してじゃなきゃ
学べないこともあるだろうよ
そんなことにも気づけないのはなんでだよ
子供を庇いたいがゆえか?
それなら大きなお世話だ
そんな庇い、必要ない
差別をなくしましょうって言うならさ
差別を見せることで学ばせる機会を与えようよ
なんで過激な表現が生まれるのか、その意味を
本当に理解したなら
差別をなくすために
過激な表現を見ないようにすればいいなんて
短絡的な考えはしないはずだと思うんだが?


さぁ、君の導く答えは??
それが本当の答えさ

「君が考える」その行動にこそ 大きな意味がある

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或る青年の幽霊噺2

青年「おーい来たぞ霊能者」
霊能者「また来ましたか貴方。敬語を使いなさいな」
青年「エセに使う敬語は無い」
霊能者「だからエセじゃないって…。で、何の用です?」
青年「また憑かれた」
霊能者「またですか」
青年「ああそうだよ」
霊能者「今度は女の人ですねえ…」
青年「お前は次に『何か実害はありましたか?』と言う」
霊能者「何か実害はありましたか?…はっ!」
青年「まあ茶番はこのくらいにして。今度の霊は体のところどころから血が流れてて、それが僕の後をついてくる時にぽたぽた垂れて正直言って不気味でならない。さあ祓え」
霊能者「そのくらい我慢してあげましょーよー」
青年「お前ふざけてんだろ」
霊能者「すいません、今日は別の予約がこの後あるので、また後日」
青年「逃げやがったな…」

青年「おい霊能者、また来たぞ」
霊能者「今度は何の霊ですか?男、子供、女と来て、次は…あらまあ、可愛らしいネコちゃんじゃあないですか!」
青年「まあぱっと見はな。でもこいつの腹を見てみろよ」
霊能者「どれどれ…お、おぅ。腹が…内臓さんこんにちは…」
青年「どうにも不気味だ。さあ祓え」
霊能者「それだけなら良いじゃないですか。見た目は可愛いネコでしょう?」
青年「何なんだよお前。一度に四人、いや、三人と一匹に取り憑かれた方の身にもなってくれよ」
霊能者「どれも無害なんだから良いじゃないですか。また取り憑かれたら来てくださいね」
青年「これ以上憑かれてたまるか。そもそもお前祓おうとしないじゃねーか。もうこれっきりだ。もう来ないからな!」
霊能者「はいはい、それじゃあまた」

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ガラスの眼球

こんにちは、純粋な眼球を買いに来ました。
ええ、そうです。2つ。
え?どのような理由でご所望か、ですって?
いやね、ご主人。私は言葉を書く人間なんですけれどもね。どうも最近は曇ってしまっていけない。それで街を見渡してみますと、澄み渡った視界じゃない。昔、というのは少年時代辺りでしょうか、見えていたものが全く、見えなくなってしまったんですよ。逆に扁平な形になったので視野は広がりましたけれどもね。物書きをさせてもらっている私からすれば、木や鳥や、人がうまく見えないっていうのは些か問題なわけでして。
それで、ですよ。ご主人。訊くところによると、眼球が曇ってしまうのは、どうにも”眼に入れた言葉”とか”耳に入れた言葉”が眼球を傷つけているからだそうな。それでこいつはなかなかに不可逆的な、例外はあるそうですけど、そういう現象らしくて。ええ。まあ大抵の大人はそんなこと気にしないで生活しているそうなんですけれども。視野が広い方が何かと便利ですし、ね。でもほら、先程の通り私は物書きでして、そうではいやはや困ってしまうのですよ。
ええまあ、そんな理由で。それで純粋な眼球というのは何処にあるんで?
ああこれですか。いやでも、これはなかなかに……まあ、小さいですな。ここに並んでいるものはすべて子供用ですかな?はて、大人用は何処にありや。
え?ここにあるものが全て?困りましたな。では他の店を当たってみるしか……。なんと、他の店にも売ってない?それは何故。
眼球というのは、ほう、成長すれば勝手に言葉が入ってきて曇り始めて。それ故まだ幼い眼球しかない、と。これ以上は曇った眼球しかないのですな。
なる程。分かりました。私は間違っていたようで。眼球は曇ったら交換できるものではなく、眼球が曇らないように丁寧に言葉を入れなければならなかったのですな。いやはや、今となっては手遅れかも知らないが、せめてこれから気をつけましょうか。
ご主人、ありがとうございました。また機会ができたら、いつか。
それにしても、ご主人。あなたも歳がいっていながらこれまた随分ときれいな眼球ではないですか。大切にしていればそんな硝子玉のような眼球にもなるものか。
ええ、ではまた。御機嫌よう。

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朝の会話

「じいちゃんおはよう‼」
「おお、今日は早起きだな。おはよう」
「サンタ今日も来た?(12/26)」
「我が孫ながらがめついな」
「ほら、サンタってあわてんぼうだから。間違って今日も来てたり」
「アホか」
「ですよね。……、でもサンタってあれ親のこt……」
「あーあー、ゔゔん、ゔぇっほんげほっげほゔゔぁぁんん。じーちゃん何も聞いてない」
「……。無理はしないでね?」
「ゲホッ。それはそうと。早起きは三文の得と言うじゃろ。お前にいい話をしてやろう」
「いい話とは(哲学)」
「素直に聴いておれ、小賢しい」
「……お幾ら万円もらえるとかって話?」
「ゲスいわ」
「金が貯まる壺の話でしょ。気をつけてじいちゃん、それ詐欺」
「天下のじーちゃんが引っかかるわけ無いじゃろ」
「……蛇革の財布はノーカン?」
「ノーカン。ギリセーフ。ばあさんにはバラすなよ。漢の約束(物理)な」
「こないだ嬉々として話しちゃった(*ノω・*)テヘ」
「そろそろ寝ようかの。棺桶で」
「それで?なんの話?」
「じーちゃんもうヘトヘトなんですけど」
「流石に疲れんの速すぎだろww今いくつだよww」
「71歳です☆」
「あー……」
「聞いといて微妙な空気にするなよ。……あー、ほら。何話そうとしていたか忘れちまったわい」
「認知症かな?」
「医者にかかるか」
「ごめん悪かったからマジレスしないで」
「あ、一つ思い出した」
「お?」

――笑ってると健康になるんじゃと。

「うん。それ割と誰でも知ってる知識」
「冷静に突っ込むなよ。じーちゃん恥ずかしくなってくる」

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雪が、落ちてゆく。

                   ゆ       こ
                    き      の
                     が     ゆ
                     ひ     き
                     と     が
                    ひ      お
                   ら       ち
                           き
                           る
                 ゆ         ま
                き          え
                が          に
                ふ
           あ     た
           な      ひ
           た       ら
           に
           あ
           い         ゆ
           し         き
           て         が
           る        み
           と       ひ
                  ら     つ
                        た
                        え
               ゆ        ら
               き        れ
               が        る
                よ       だ
                 ん      ろ
                  ひ     う
                   ら    か



                あ    わ
                な  と た
                た    し