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ファースト・テンプレート

腕時計は時計は10:30を指していた。
『朝は涼しかったのに、急に暑いですね。』
私は、銀座の取引先の会社の最寄りの駐車場にSUVを停め、久々のダッシュで来た。
ブレザーを脱いで鞄に仕舞うと、取引相手の部下らしき人が、ペットボトルのお茶を置いた。
「もう、ほんと参っちゃいますよ。」
それっぽく私は、口角を上げた。
『失礼します。』1つ会釈をして部屋を出た。

「あ、どうも!すみませんお待たせして。」
私は取引相手が入室し慌てて立ち上がり会釈をした。
『あぁいいよそんな、まぁ疲れたでしょ。エアコン付けるよ。』
「あぁ…」反応に困る。
「すみませんほんと。」
この手、相手のご厚意に甘えたいところだが、私は素直に育てられたゆえ、これからの罪悪感に耐性がない。

『あぁ、いいじゃん、こっちでも考えておくよ。』
「あぁ、ホントですか?!ありがとうございます。」
契約は順調。と、いったところだろうか。私は午前の仕事を終え、近くのコンビニに向かった。
交差点、信号をを待っていると、突然電話がかかってきた。
『あ、もしもし中木君?』
「はい、何かありましたか?」
『あ、いや急ぎでこっち戻ってきてほしい、まじで緊急。』
何があったかはよくわからないが、とりあえず私はSUVを走らせ、迂回路を通り会社に向かった。

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ファースト・テンプレート

夏は早く長く、アブラゼミはしぶとく生きている。おそらく蝉の寿命が一週間だなんて嘘だと思う。猛暑、猛暑、猛暑…。三寒四温からの真冬日からの春後半、初夏の気温は当たり前だ。まるで今が夏みたいな言いぶりだが間違えない春だ。今言ったのは忘れてほしい、去年の話だ。

変な気温は、頭でわかっていても体は追いつかないみたいだ。
「あれ、沢本は?」
「風引いたって、なんかあれだよ、寒暖差アレルギーか。」
ふーん。
現代人は働き過ぎだ。
「あ、じゃぁ銀座の方まで行ってきます。」
おぅ、と一言言われ、資料だけ取ってすぐさま私は駐車場に戻った。初任給と貯めてきたバイト代で5年前に買ったSUV。ラジオは今日の渋滞情報を流す。
午前8:25分

ー海老名IC付近を先頭に上りに10kmの渋滞………ー
今日は三連休の月曜日。皆は帰宅ラッシュとやら私とは無縁の物にまんまとはまっている。

「まじか…」
一部が高速から時間短縮のために一般道に流れたらしい、少し混んでいる。
……………
完全に止まってしまった。私は今日の契約先と、会社に事態を知らせ1時間ほどの遅れを許してくれた。なんと心の広い。
周りをチラチラしていると車窓の向こうの車窓の向こうから手を振る人がいた
「あ、!さか…」気づいて窓を開ける
「酒井さんじゃないですか!」
『久しぶりだね』
学生時代のバイト先の店長である。
「混んでますねぇ。」一拍置いて酒井は懐から一本のタバコを取り出す『まぁ仕方ないよ。』足を組んで答えた。「酒井店長、タバコ変えたんですね。」ようやくこっちを見た。『あぁまぁ、あんまりうまくないけど、ニコチンとか少ないヤツにしてね、まぁいつかは、タバコを辞めたいな。こんな調子じゃ無理そうだけどな笑。』私は愛想笑いをする。
車が流れ出し、私は会釈をして窓を閉じようとした。
『あ!中木!』
「なんですか?。」すっと酒井は私を指さした。『今を生きろよ、じゃ元気にやれよ。』
「酒井さんこそお元気で。」
こんどこそ窓を閉め、アクセルを踏んだ。

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ブルーモーメント

残光が私にさよならを告げ
また明日会えるといい
消えそうになる。
今日は今日だけなのに
もう同じ貴方には会えないのに。

また今日も繰り返した
昨日と同じ時間を
月は昇り始め、
遠い何処かで沈み始める
太陽とは紙一重。

ブルーモーメントに染まりきった空に
煌めいて見えるのは
きっと過去の希望
まだ信じられない貴方を
いつか思い出す日が来るでしょう。

一人でいる夜に
呑まれてしまわないように
未来に縋り付いて
じっと耐え抜けば
あの隙間から抜けてくる
いつかの香りに誘われてしまうんだろう。


群青が貴方にフラッシュバックして
まだ忘れないでといい
過ぎ去っていく。
過去も過去だけで
もう二度と蘇らないのに。

また今日も繰り返した
昨日と同じ失敗を
雲は暗くなり始め
遠い何処かで崩れていく
星とは無関係。

ブルーモーメントの忘れない想い出に
隠れていくのは
きっと過去の自分
また悔やんでいる貴方を
いつか思い出す日が来るでしょう。

誰かと居られる夜に
呑み込まれても帰れるように
未来を思い出して
ずっと待っていれば
あの窓から見える
懐かしさを覚えていくでしょう。


一人でいる貴方を
一番わかっているのは
きっと私だと思うの
生きていく運命(さだめ)には
別れがつきもの
暗闇に吸い込まれそうになったら
また思い出しに来ればいい

ブルーモーメントと私の逆境に
見つけられるのは
貴方に向けた花
また泣いている貴方を
いつか慰めに行けるのだろう。

全てを思い出す夜に
嘆いても立ちあがれるように
今を愛そうと
そう決めて居れば
何処かに残る
未来を掴めるでしょう。

貴方の中の愛しいものに
私が居るといいなと思う
何かに恋するような
夕暮れを迎えて
そしてまた一人を知り
空を見上げれば
光る星が貴方を抱きしめてくれるから。

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墓想造物茶会 Act 22

「…あら、そんなに驚く?」
「いや、初めて聞いたから…」
ピスケスは笑顔で聞き返すが、キヲンは思わず苦笑いした。
それに対しピスケスは、まぁそんなものよと続ける。
「私は明らかに弱い存在は守って当然だと思ってるけど、どう考えても強い者は守らなくてもいいと思ってるの」
だからあなたたちによくしてる、とピスケスはティーカップに口をつける。
その言葉にキヲンは言葉を失うが、ここでかすみが…でも、と呟いた。
「それじゃナツィは守らなくてもいいってことになるけど…」
「あら、そういうことになっちゃうわね」
かすみの指摘にピスケスはふふっと笑う。
「それでも私は歳乃に言われてアイツと連んでたの」
だから上層部からの命令がない限り、動けないとピスケスはティーカップをテーブルの上に置いた。
少しの間その場に沈黙が流れる。
「…ねぇ、ピスケス」
不意にかすみが呟いたので、ピスケスがそちらの方に目を向ける。
「やっぱり、ナツィのこと、探せない?」
「随分しぶといわね」
「やっぱり気になるんだ」
ナツィが、自分たちと“仲良くしたくない”って言ってた理由を、知りたくて…とかすみは自信なさげに俯く。
ピスケスは…そうねぇ、と顎に手を当てる。

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墓想造物茶会 Act 21

「じゃ、じゃあ、ピスケスがボクたちと一緒にいるのは…」
「強力な人工精霊であるナハツェーラーが、“学会”に反抗したり、敵対組織に攫われたりしないように見守るため、ってところかしら」
驚くキヲンに対し、ピスケスはそう言い切った。
その言葉に、キヲンとその隣に座るかすみは目をぱちくりさせる。
その様子を見て、ピスケスはそんなに驚くことじゃないわと2人に笑いかけた。
「魔術師たちの集まりであるこの組織…“学会”は、一般人に秘匿されている魔術で無関係の人を傷つけないために結成されたものなの」
だから、強力な人工精霊が“学会”関係の魔術師のところにいるとなれば、見張っておかなきゃいけないとピスケスは部屋の窓際の席で書類を眺めている自らの保護者…歳乃の方を見やる。
「だから私はアイツに近づいた」
ピスケスはそう言って、テーブルの上のティーカップを手に取った。
「そ、それじゃ、ピスケスがボクたちによくしてくれるのって…」
「あぁ、それはきーちゃんやかすみがナハツェーラーや露夏と違って弱い存在だからよ」
「えっ」
自らの質問をさらりと答えるピスケスに対し、キヲンはポカンとする。
かすみも少し驚くが、露夏は真顔のままだ。

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墓想造物茶会 Act 18

「ナツィがいそうなところを探してもいないし、家にも帰ってないっていうし…」
どこへ行ったのか全然わかんないんだよ?とかすみは返す。
それに対しキヲンは、でもとテーブルに身を乗り出す。
「ナツィがいないと寂しいし、そもそもかすみの元気がないもん」
だから、探そ?とキヲンは首を傾げた。
かすみはでも…と言いかけるが、キヲンはそれを遮るようにかすみ、と声を上げる。
「かすみはナツィのこと好きなんでしょ?」
「!」
かすみは少しハッとする。
「あれ、好きじゃないの?」
「えっ、いや、嫌いではないけど、でも、なんか…」
キヲンに聞かれてかすみはおろおろし始めた。
「ナツィが自分のこと好いてくれてるから、自分もそれなりに返してるだけで…」
実際どうと言われると…とかすみは困惑する。
キヲンはその様子を見て不思議そうな顔をしたが、とにかくさと椅子から立ち上がった。
「ナツィのこと、探しに行こ?」
ボクも好き好き〜なナツィに会えないの嫌だし、とテーブルの横をキヲンは通る。
「とりあえず、ピスケスや露夏ちゃんに手伝ってもらお?」
ナツィが好きかどうか考えるのはあと!とキヲンは椅子に座るかすみに手を差し伸べた。
かすみは驚いたような顔を少ししたが、キヲンが促すように笑っているので断り切れずにその手を取った。