変身
目が覚めると自動販売機になっていた。
虫ではなく自動販売機であった。
あ、月が綺麗だな、そう気付くように自分はその現実に気付いた。いやこれは現実なのだろうか。そう考えた自分は正常であろう。
トラックが派手な音を立てて通り過ぎた。舞い上がった埃を避けることが出来ない。あぁ、自分は本当に自動販売機になったのかもしれない、と思った。
清楚系の女性が近付いて来て、自分の臍のやや左上に触れた。不思議とくすぐったくはなかった。がたんと音が足の中で響いた。
女性は屈むと、次にはお茶のペットボトルを手にして立ち上がり、まるで道端の自動販売機でお茶を買っただけのように去った。
否。
本当に自分は自動販売機であることを認めねばならない。なんとも情けない気持ちだ。
目が覚めると虫になっていた少年はその後どうなっていたか。
自動販売機は節電モードである。飲み物を照らす明かりは控えめであった。
これが自分らしい。こんなこともあるらしい。