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鏡界輝譚スパークラー Crystal Brother and Sister Ⅵ

「て言うか、みあきちのお兄さんてこの人だったんだ」
紀奈がそう言うと、水晶は出撃前に言った気がする、と呆れたように言った。
「…それにしても」
どうしてここが分かったの?と水晶は石英に尋ねる。
「え、あぁ」
水晶が出撃したって聞いて、スパークラーが個々に持たされる発信機の信号を頼りにここまで来たんだ、と石英は説明する。
「でもまさか大型種がそこにいたなんて…」
石英はカゲを見上げながら呟く。
大きなカゲはゆらゆらと交差点を通り過ぎていった。
「…これくらいなら、みんなで倒せるか」
石英がそう言うと、紀奈はえ、と驚く。
「こんなデカいの、倒せるんですか⁈」
「そりゃあもちろん」
ぼく達澁谷學苑のスパークラーはこんなのとばっかり戦ってるよ、と石英は笑う。
「東鏡は激戦区だもの」
あのレベルを倒すのは日常茶飯事、と水晶は呟く。
「やっぱ名門すげー」
紀奈はそうこぼすしかなかった。
「とりあえず、ぼくの部隊のメンバーをここに呼ぶよ」
水晶達は下がってて、と石英は優しく言う。
「ここはぼく達が…」
「いいえ、わたし達も戦います」
石英の言葉を遮るように、水晶は毅然とした態度で言った。
「どうして…」
「兄さん達の部隊は全員揃っていないでしょう?」
交流会の準備に訪れているのは兄さん含めて5人のはず、と水晶は続ける。
「わたし達の部隊が援護します」
その様子を石英は驚いた顔で見ていたが、すぐに優しい顔に戻った。
「分かった、援護、任せたよ」
石英は水晶の肩を叩いた。

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鏡界輝譚スパークラー Crystal Brother and Sister Ⅳ

STI側から提供された情報によると、今回襲撃してきたカゲ達は、小型のものがほとんどだと言う。
小型とは言え街を侵蝕することに変わりないのだから、早く倒さなければならない。
それでも出撃スパークラーの数から考えてみれば、あっという間に駆逐することは可能だろう。
そう考えながら水晶は刀型P.A.で次々とカゲに斬りかかる。
街を侵蝕しようとしていたカゲ達は避ける間もなく霧散していった。
「みあきちー!」
ふと呼ばれて振り向くと、弩型P.A.を携えた少女…紀奈が駆け寄ってきた。
「どう、調子は?」
「まぁまぁかな」
水晶は刀型P.A.で飛びかかるカゲを切り裂きながら言う。
「あたしもだよ!」
紀奈もまた、飛行型カゲを自身の武器で仕留めながら答える。
「今回は小型種がほとんどって聞いてたけど…」
この辺りはそんなにいないみたい、と水晶は呟く。
「うーん、じゃあここを片付けたら巴達の所へ行こっか」
巴達がいる所の方が大変みたいだし、と紀奈は笑う。
水晶は静かに頷いた。
…と、ここで耳に装着している通信機から聞き覚えのある声が聞こえた。
『加賀屋さん、聞こえる⁈』
「どうしたの呑海さん」
水晶は通信機に手を当てて答える。
『さっき大型種が出現したって情報が入ったわ』
方角は…と巴が言いかけた所で、紀奈が遮るように叫んだ。
「みあきち後ろ‼︎」
はっと振り向くと、そこには5メートルはある動く塔のようなカゲが光線を放とうとしていた。

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白と黒と青き星 〜第1話 出撃〜前編

STI校内、そして防災庁特定特殊生物対策班の施設内に警報が鳴り響き、対策本部は警報と共に電源が入る。
「東鏡都瀬田谷区に大型デネブリスの出現を確認。政府より緊急事態宣言発令に伴うプラン11要求!」
「了解。瀬田谷区全域の河川及び公道にフォトンウォール展開、住民避難を開始します。」
「陸自班、空挺班は東鏡I.Cを中心に第1種戦闘配置!」
指示を出す澁谷分隊長は私たちの通う東鏡第1分校澁谷校の校長でもある鳴海晃司。かつてスパークラーとして第1線で活躍したエースだった男だ。今もその戦術眼は衰えることを知らない。
【空挺班より報告します。目標は現在双子田万川駅周辺を侵攻中。幸い侵食は国道246号線、都道11号線に囲まれた範囲内で抑えられています】
「その範囲なら住民避難完了しています」
通信と本部隊員の声が次々に飛び交う。
【澁谷分隊、全隊員配置完了。目標捕捉しました。】
「了解。総員、飽和攻撃体勢に移れ!」
隊長はその全てを聞き逃すことなく、的確な指示を出す。
【『了解』】
【空挺班、攻撃準備完了。いつでも打てます】
【同じく陸自班、いつでも打てます】
「GPS誘導弾発射準備完了。いつでも打てます」
さすがに特殊自衛隊。行動は迅速で乱れがない。
「住民避難完了のため、政府の承認は省略。飽和攻撃開始。打てぃ!」
隊長のその合図で発射、着弾の轟音が鳴り響く。
先程まで見えていたモニターはその爆撃の衝撃のためか、それを防ぐためか映像が途切れている。
その轟音は数秒間続き、その間も本部は忙しなく誰かしらが動いているが音は掻き消される。
その中で隊長は何か言伝を受け、少し口角が上がる。
「飽和攻撃終了。モニター、復旧します」
そのモニターに映ったのは爆発によって先程までとは少し形状が変化したデネブリスの姿があった。しかし本部の面々に動揺する様子はなかった。
「実弾、光弾共に全弾命中。目標のコアに損傷、認められません」
「結構。第2フェーズ移行への時間は稼げた」
そう言うと通信をアナウンスに切り替える。
「全隊員に告ぐ、これより作戦を第2フェーズに移行する。総員、配置に着け!」
隊長は再び通信をSTI校内の出撃準備室に切り替え、問いかける。
「2人とも、いけるな?」

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鏡界輝譚スパークラー Crystal Brother and Sister Ⅲ

人々が逃げ惑う街中。
無数の黒く禍々しいカゲが人の群れに向かって進んでいる。
「落ち着いてください、避難所はあちらです」
パニックに陥る群衆に対し、警官達が人々を誘導している。
…と、警官の1人に黒いカゲが飛びかかる。
「危ない!」
少女の叫び声と共に警官が背後を見た時、バババババと弾丸が発射される音が響いた。
「$|+]$\€‼︎」
カゲは悲鳴を上げて霧散する。
「大丈夫ですか⁈」
弩型P.A.を持った二つ結びの少女が警官に駆け寄る。
「あ、えぇ、ありがとうございます」
「それならよかった」
ここはあたし達がなんとかするんで逃げてください、と二つ結びの少女…紀奈は言う。
「分かりました」
君達も気を付けて、と警官は一礼してその場を離れる。
「グッジョブ寵也」
ハルバード型のP.A.を持った小柄な少年…弾に肘でつつかれて、マシンガン型P.A.を持ったメガネの少年…寵也は、当然のことをしたまで、と真顔で言う。
「そこの2人、呑気に話してる余裕はないわよ」
サーベル型P.A.を持ったサイドテールの少女…巴は、手に持つ武器を構える。
「加賀屋さん、指示を!」
「…了解」
巴に言われて、水晶は刀型P.A.を敵群に向ける。
「みんな、いつも通り…行くよ」
「了解」
「おっけー」
「分かったー」
「はいはい」
皆がそう返事すると、水晶は静かに頷いて敵に向かって駆け出した。
部隊のメンバーも駆け出し、周りにいる多くのスパークラー達も一斉に鬨の声を上げる。
戦闘が始まった。

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鏡界輝譚スパークラー Crystal Brother and Sister Ⅱ

「うちのSTIも、戦闘経験を積むのに必死だな」
澁谷學苑の方が強くて負けが見えてるのに、と水晶の右隣に座るメガネの少年…熊橋 寵也(くまはし ちょうや)は言う。
「えーいいじゃん」
いい刺激になると思うのにーと弾は口を尖らせる。
「まぁそれはそうだけどさ」
寵也と弾がそう話していると、寵也の右隣に座るサイドテールの少女…呑海 巴(どんかい ともえ)は水晶の様子に気付いたのか、彼女に話しかける。
「加賀屋さん?」
どうかしたの?と聞かれて、水晶は慌てて顔を上げる。
「…なんでもない」
大丈夫、と水晶は言うが、他のみんなは心配そうな顔をする。
「…そう言えばみあきち、元々は澁谷學苑に通ってたんだよね」
ふと紀奈が呟いた。
「澁谷學苑の人が来るのは、ちょっとアレだよね…」
紀奈が暗い顔で呟くのを見て、水晶はそれもあるんだけど、と言う。
「代表部隊の隊長が兄さんだから…」
水晶がそう言った所で、突然サイレンが鳴った。
「管轄地域内でカゲの出現を確認」
出撃可能スパークラーは速やかに出撃せよ、場所は…と校内放送が流れる。
カフェテリアのくつろいだ雰囲気が、一気にピリつく。
「おっと、出撃か」
「騒がしいねぇ」
紀奈と弾は呑気に天井のスピーカーの方を見る。
「そんなこと言ってる場合か」
「そうよ、人が死ぬかもしれないのよ」
寵也と巴は険しい顔をする。
「はいはい分かってますよ」
んじゃ行こうか、部隊長、と紀奈は水晶の方を見る。
水晶は無言で頷き、そしてこう宣言した。
「加賀屋隊、出撃!」

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野良輝士市街奪還戦 その①

「沈んだねぇ……」
カゲの奔流に沈み、フォトンウォールで急遽封鎖された町の、カゲに浸蝕されきらなかったビルの屋上で猟銃型のP.A.のスコープから目を離し、その少女、下野真理奈は呟いた。
「沈んだなぁ……一瞬だった」
戦槌型のP.A.を杖代わりにして、真理奈とほぼ同年代の少年、和泉宗司も彼女の隣で賛同する。
「ヌシどこ?」
「あそこ、あの大きい交差点のところだよ、アカリちゃん」
「『ちゃん』って言うなこれでも男だぞ」
「良いじゃない男で『ちゃん』付けでも」
鉄線銃型P.A.を構えた少年、月舘灯に真理奈が受け答える。
「あそこ、あのビル、中学校の屋上、青い家の屋根。この順番で結構近付けるかな」
真理奈がスコープを銃から取り外しながら言い、灯も鉄線銃の狙いを定める。
「宗司、あの距離届くか?」
「ん、……おう、余裕だな」
「助かる。お前の武器重いからな、先に投げとけ。……よっしゃ、行くぞ」
「おう了解。かどみー、出番だぜー」
宗司に呼ばれ、屋内から彼より少し年上に見える少女が出てきた。
「結構上ってきてたよ。そろそろキツイかも」
「了解、こっちで対処するからヌシは任せたよ」
真理奈の言葉に、後の3人は信じられないといった顔を向ける。
「……え、何?」
「いやいや真理ちゃん、狙撃銃1丁でそれを言うのは無理あるぜ」
宗司の言葉に灯も頷く。
「その上こっちに指示まで飛ばすつもりなんだろ? 自分は1人しかいないって忘れてるところ無い? かどみーだけでも置いてった方が良いだろ」
「たしかその銃、最大装弾数5発とかじゃなかったっけ?」
『かどみー』と呼ばれた少女、門見初音も心配そうにしている。
「大丈夫! そっちは正直スコープでときどき覗いてれば良いし、そこの入り口結構狭いからちょっとずつしか出てこれないだろうし」
狙撃銃とスコープを左右それぞれの手に持ち、真理奈はウインクをしてみせた。

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鏡界輝譚スパークラー Crystal Brother and Sister Ⅰ

「さようなら」
「さよならー」
今日の授業も終わり、生徒達が教室から去っていく放課後。
教室に1人、短髪の少女…加賀屋 水晶(かがや みあき)が残っていた。
水晶はホームルーム後も暫く窓際の席でぼーっとしていたが、ふと時計を見て急に立ち上がった。
そして荷物をまとめて教室の外へ出て行った。
水晶が向かったのは、校舎の1階にあるカフェテリア。
カフェテリアは生徒でそこそこ賑わっている。
水晶はカフェテリアの端に4人の生徒を認めると、そちらの方へ向かった。
「あ、みあきち」
カフェテリアの端で駄弁っていた4人組の1人、二つ結びの少女…仁戸田 紀奈(にへだ のりな)は水晶に気付いて笑顔で手を振る。
「待った?」
「ぜーんぜん」
あたしもさっき来たばかりだよ、と紀奈は笑う。
「そう」
そう言って水晶は4人の傍に座る。
「ねぇねぇ、みあきちにもさっきの話をしようよ」
紀奈の右隣に座る小柄な少年…福貴迫 弾(ふきさこ はずむ)は紀奈に明るく言う。
「さっきの話?」
弾の言葉に水晶は首を傾げる。
「あー今日この街にあの澁谷學苑の代表部隊が来るって話」
紀奈がそう言うと、水晶は少し顔を曇らせる。
「澁谷、學苑…」
「何でも、うちのSTIとの交流会の準備らしいよ」
交流会でうちのSTIの代表部隊と模擬戦をするから、そのための下見みたいと弾は続ける。