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理外の理に触れる者:蝶と鴉と猫 弐

ガラス戸を開けて外に出ると、外は曇り空だった。
雨じゃなければいっか、と黒羽は肩にカラスを乗せたまま歩き出した。
…黒羽の住む街外れはとにかく和風建築だらけだ。
昔からある古い家ばかりで、いつも見ていると飽き飽きしてくる。
しかし流行りの洋風建築が増えている街の中心部も、なんだか黒羽には性に合わない。
だからこの街外れに留まっているのだ。
もちろん、街の中心部には自分の居場所なんてどこにもないからと言うのもあるのだが…
「…」
黒羽は見慣れた街並みを眺めながら歩き出した。
「なぁ、お前」
左肩に乗るカラスが黒羽に話しかけてくる。
「さっき夢は見てないとか言ってたけど、本当は見てたんだろ」
黒羽は思わず足を止める。
「…やっぱり、見てたんだな」
オレ様にはお見通しさ、とカラスは笑った。
「で、どういう夢を見てたんだ?」
教えておくれよとカラスは黒羽の顔を覗き込む。
「…」
黒羽は暫くいやそうな顔をしていたが、すぐに諦めてこう語り出した。
「昔、屋敷にいた頃の夢だよ」
そう言いながら黒羽はまた歩き出す。
「正妻の子じゃないからって理由で疎まれて、屋敷の離れに閉じ込められていた、あの頃の夢」
そう聞いてカラスは、今もあまり変わらなくねぇか?と呟く。
「だってお前、ちょっと前に屋敷から追い出されて、街外れのあの家に引っ越してきたばかりだろう?」
場所が変わっただけで、屋敷の人間から疎まれていることに変わりないじゃねぇか、とカラスは続ける。

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理外の理に触れる者:蝶と鴉と猫 壱

ぱち、と目を覚ますと見慣れた天井が見える。
暫くの間そのままでいたが、やがて誰かの気配を感じて窓の方を見た。
「よぉ」
そこにはカラスが留まっていた。
「随分と寝てたみたいじゃないか」
そう言って、カラスはケタケタと笑う。
「…」
畳の上に寝転んでいる黒髪の人物は、静かに起き上がった。
部屋のゼンマイ時計を見ると、午後2時を指している。
「どうだいお前、よく眠れたかい?」
夢でも見てたのか?とカラスは笑いながら言う。
「…別に」
見てたとしても忘れてるよ、と黒髪の人物は素っ気なく答える。
「そうかね?」
お前がそう言う時は大体…とカラスが言いかけた所で、黒髪の人物は立ち上がった。
「…おっと、どこへ行くんだい?」
部屋の出入り口へ向かおうとする黒髪の人物を、カラスが引き留める。
「ちょっと散歩」
あんまりいい寝覚めじゃないから…と黒髪の人物は部屋から出ようとする。
「じゃあオレ様も連れてってくれよ、黒羽(くろは)」
お前1人じゃ心もとないだろ?とカラスが言うと、黒羽と呼ばれた人物は窓に一瞥もせずこう言った。
「好きにしたら」
カラスはその答えを聞くと、バササッと黒羽の肩に飛び乗った。
「へっへっへ」
やっぱりこの場所は落ち着くなぁとカラスは笑う。
黒羽はカラスがちゃんと肩の上に乗ったのを確認してから歩き出した。

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籠蝶造物茶会 あとがき

どうも、テトモンよ永遠に!です。
こちらは「籠蝶造物茶会」のあとがき…と言うかおまけです。
よかったらお付き合いください。

「造物茶会シリーズ」はぼくの高1の時の空想から生まれました。
ただ、元々は魔術が出てくるようなお話ではなく、人外達がいちゃいちゃ(笑)するようなお話でしたし、キャラクターもナツィとキヲンしかいませんでした(しかも当時は明確な名前がなかった)。
ただ空想の内容が少々えげつなく(お察しください)、空想している自分が辛くなってしまったために全然違うお話にしました。
それが「造物茶会シリーズ」の始まりです。
でも最初の内はキャラ名やそれぞれの設定がかなり違ったり、ナツィとセットなのはきーちゃんだったりしました。
この辺りは空想を続けている内に自分にとってよりしっくりくる方…現在の形へと変わっていきました。
ちなみにきーちゃんがナツィにくっ付いたりしているのは初期の名残りです(笑)

今回はこれくらいにしておきましょう。
いつになるか分からないけど、「造物茶会シリーズ」第3弾もお楽しみに。
また「ハブ ア ウィル」の新エピソードも絶賛制作中で、3月中の投稿を予定しております。
こちらもお楽しみに。

あと最後ですが、ぼくから質問です。
ポエム掲示板を出入りしているとここで自分以外にも小説を書いている人を度々目撃するのですが、皆さんどういうキッカケで小説を書いているのでしょうか?
ぼくはある人がここで長い長い小説を書いているのを見て、真似したくなって始めたのですが…
みんなはどうなのでしょうか?
よかったらレスから教えてください。

ではこの辺で。
テトモンよ永遠に!でした〜

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輝ける新しい時代の君へ Ⅰ

今からする話は、まだ幼かった少年と不思議な男との些細な出会いの話だ。


 少年はまだ幼稚園に通う程の年齢だった。しかし、貧困する程ではなかったが、家計に余裕はなかった。両親も共働きで幼稚園や保育園に通わせることを望んでいたが、本人に通う意思がなかった。親の方も通園費を考えると、子供の決断には好意的だった。こんなことで教育を諦めることには抵抗と罪の意識を感じていたようだが、内心安堵していたのも確かであった。だから両親が働いている間は、母親の姉の家で過ごした。
 少年の祖父は東京の有名な大学に通っていたので娘たる母親とその姉も学があり、少年に様々なことを教えてくれて、少年は彼女のもとに行くことが好きだった。彼女も子供が居らず、少年が幼稚園にも保育園にも行かないと聞いて、自分から預かると名乗り出たそうだ。

 少年は、彼女の家に行く前に自分の家の近くにある公園のベンチに座って、ぼうっとして空を眺めることが好きだった。朝の30分だけ、誰も居ない、静かな公園で、ゆったり流れる雲を見ながら呆然とする。
 余談だが、こういった子供らしくないところもあり、少年はあまり大人に好かれてはいなかった。きっと子供にも好かれなかっただろう。

 ある日和良い春の日。 
 その日も少年は何を考えるでもなく、足をユラユラさせていた。
 すると、
「おはよう、坊や」
 柔らかい男の声だった。周辺に少年以外の人間が居ないので、自分に向けられたものだと思い、少年は声の主に目を向けた。
 男は、祖父が着ていたような服を着ていた。祖父の若い頃の写真を見た時変な格好だと思ったので、男のことも同様に変だと思った。しかし不思議と嫌な感じはしない。同時に、既視感があった。
「おはよ」
 挨拶を返すと、男は人当たりの良い笑みを浮かべて「隣いいかい?」と訊いた。少年はこくりとうなずく。
 明らかに不審だったが、この時の幼い彼はこの人は誰なのか、程度にしか思っていなかった。