ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 25.ヴァンピレス ⑥
「あの子は異能力を発現してから、他者の”幸せ”な記憶を奪うようになったんだ」
「…そうなんですか?」
わたしは思わず彼に尋ねる。
彼はうん、とうなずいた。
「彼女の異能力…”他者の記憶を奪い取る”能力は、使う時に対象の記憶を閲覧することができるんだよ」
もちろん使い手の技量がないと、どの記憶を選んで奪うかができないんだけどさ、と逢賀さんは続ける。
「それで、他人の記憶を奪う時は”手に入れる記憶を選ぶことができる”はずなんだ」
「…はず?」
わたしは彼の言葉に引っ掛かりを覚え、思わず聞き返した。
逢賀さんはわたしの目をじっと見て言う。
「彼女は意図的に、他人の記憶をごっそりと奪っているんだよ」
彼は手元のホットココアのカップに口をつけてから言う。
「ぼくも、彼女が他人の記憶を奪う現場に直接出くわしたことがある訳じゃないけど、彼女に記憶を奪われた人は本当に”なにも分からなくなるレベル”の状態になっていることが多いんだ」
…もちろん、そうなる人ばっかりじゃないけどね、と逢賀さんはカップをテーブルの上に置いた。