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思い出した、僕は死んだんだった。

僕はふと目を覚ました。
別に寝すぎたという感覚は無いし、目覚まし時計が鳴ったというわけでもない。
ただ、本当に自然に目が覚めた。
あまりにも自然すぎて、朝が弱い僕は不信感さえ感じてしまった。
スマートフォンのボタンを押すと、まず目に入ってきたのは破顔した彼女。
僕はそれを見た瞬間、布団を投げ捨て、タンスから服を引っ張り出す。ああ、これじゃない。こっちの組み合わせの方が良いだろうか。

やっと着替え、髪をとかして、ご飯も食べずに家を飛び出した。
ご飯なんて食べている場合じゃ無いだろう?
愛用の自転車に飛び乗り、全速力でペダルを踏む。ああ、信号待ちなんてもどかしい。
やっと彼女の家の前に着いたとき、僕は息も切れ切れだった。息を一気に吸おうとしてむせる。
心臓の音が身体中に響き渡っているみたいだ。

呼吸が落ち着いてきた僕は、彼女の家の前に立つ。そうだ、彼女に連絡をしていなかった。仕方ない。今は家の中にいるだろうか。
2階の彼女の部屋を見上げると、電気がついていない。もしかして、今はいないのか。

インターホンを押す。数秒の静寂────
あれ、しっかり押したはずなのに。
今度は力を込めてしっかり押す。
また、インターホンは鳴らない。
インターホンが壊れているのか?

ふと、もう一度彼女の部屋を見上げる。


───思い出した、僕は死んだんだった。

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無題

コートを着て、リュックを背負って、夜の散歩と洒落込もうか。
時は11月下旬の18時。まだまだ時間はある。
リュックには財布とカロリーメイト。コートのポケットにはスマートフォンとペンライト。
充電は89%。まだまだ大丈夫。
少し遠くに足を伸ばそうと、出鱈目な方向に歩いてみる。フードを被り、ポケットに手を突っ込んで反抗期を気取ってみたりして。途中の自販機で買ったカイロ代わりの温かい缶コーヒーを左手に持ち、空を見上げながらぶらぶら川沿いを進んでいく。
時間は?18時22分。まだ時間はある。
冬の澄んだ空気が星空を美しく映し出す。
オリオン座があそこだから、多分この辺が牡牛座かな?
写真に撮ろうと思ったけれど、スマートフォンではいささか画質が悪かったようだ。
時間はどうだ。18時35分。まだ大丈夫。
思いつきで駅の方へ行く。街が明るいのが良いね。
缶コーヒーは冷めてしまった。酸化しなければ冷めたコーヒーも悪くないな、なんて思いながらそれを飲み干し、きちんとゴミ箱に捨てておく。
時間は?もうすぐ7時か。そろそろ帰ろう。
帰り道、この景色を立方体に切り出したら楽しいだろうな、なんて想像する。街の灯りと星灯り。きっと素敵なジオラマだ。