一夜数え歌
一つ 一夜草咥え
淡い幻重ねた朧月
嗚呼宙に弧を描いた煙
二つ 二人の影が揺らめき
風に煽られ儚く滲む
墨を垂らした文を破れば
三つ 三日月欠けた夢
細く浮かんだ孤独さを
掻き消す外の声
四つ 宵闇に溶かした
かこち顔なる涙
そっと息を吹きましょう
五つ いつかと繋いで
からめた小指
月に翳しては嗤う
六つ 昔に恋した乙女
紅を引いては引き直し
鏡見つめた向こうの私
七つ 雪崩と崩れ落ちた
無様に音立て飛び散った
硝子の破片に血を流す
八つ やみくもに手探り
掴んだ夜風はすり抜けて
ふっと髪を巻き上げる
九つ 今夜は黒い月
暗い夜はなにを隠す
見えない後ろ
十で さあ一夜草を投げ捨て
呼ぶ声に煙を残す私