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風落果

君が彼女を傷つけた?
しかたないよ、も頑張れ、も
大きな鏡の破片
喉笛を切り裂くような声で
人の真意を知る術は
どこにもないってことなんて
当然分かっていたんだ
腫れた心さえも貫いて

あー、忘れらんないよな

鳴らない声が叫ぼうとしたこと
もうどこにも行けないんだね
伝えるために生まれた想いのはずなのに
誰も知らないで
また、溶けていく

ずっと治せないでいる癖が
いつか僕の首を絞めること
ざらつく縄の結び目
気道を締め上げるような声で
僕が彼女を傷つけた?
「そんなはず、」とは言えないエゴ
知らなかった、は言い訳
その実知ろうともしなかったくせに

あー、忘れらんないよな
まるで別人みたいな顔
赤黒くくすんだ口もとと
嘘みたいに白い襟

知らないふりで目を背けた過去
もうどこにも行かないんだね
今を生きるだけで精一杯なはずなのに
胸に張りついて
また、溶けていく

雪が降るように 思い出はその景色を変えて
溶けても 証は水溜まりみたいに残ってて
乾いて再び降り積もる雪は
またきっと別の誰か
焦る僕の足はとられ
躓いて白に赤が滲んで
誰が彼女を傷つけた?
1番の加害者はお前だろって
言ってしまった 言ってしまったんだ

もういないあの子が残していったもの
全く迷惑なやつだね
その実名前しか知らないはずなのに
涙を流す義理もないのに
窓の縁に重なる雪

また、溶けていく

こんな僥倖はない
何故か近くにいた彼女、で
こんな感傷を手に入れて
あの子が死んでよかったかもね