別れのワルツ
うーたった、うーたった
「ストップストップ!」
アンサンブルを止める彼の声、
「バス、1拍目ちょっと間延びしてるからもう少し響かせる感じでできる?」
「わかった、やってみる」
私はその頃初心者でそれしか言えなかった。
もっと楽器ができるようになって彼ともっと話したい
その一心だった。
しかし気づけばもう卒業が迫っていた
卒業式の後、部内の演奏会をするのが
うちの部の恒例だった。
受験が終わって晴れやかな顔でみんなが集まる。
「久しぶり」
そう言って3年生が集まる。
卒業式の1週間ほど前だ。
当然ブランクもあるので、練習しなけれぱならないのはやっててすぐに感じた。
あの頃できたはずの理想の音…
彼に見てもらった思い出の音…
懐かしくてたまらない。
でも今は出来たら練習が終わっちゃうから
出したいけど出したくない音…
るんたった、るんたった
みんなでまたワルツに乗れた
やっぱり彼と乗るワルツは最高だ
この時間が終わらなければいいのに…