視える世界を超えて エピソード7:潜龍 その②
自分が住む町には“潜龍神社”の愛称で知られる古い神社がある。正式名称は別にあるのだが、中世の頃だかに、然る天皇家の後継者を政治的な争いから匿ったとされ、その逸話からこの異名で呼ばれるようになったとか。
そんな潜龍神社で年に4度行われる祭事のうち、12月上旬に執り行われるのが、『潜龍冬祭り』だ。その年1年の厄を払い、清々しい気持ちで新年の準備に臨めるようにするための祭りだという話を、小さい頃に大人から聞いた覚えがある。
「そういえばもうそんな時期か……。せっかく思い出したことだし、行ってみようかな……」
自分が通っていた高校は、地域ではそれなりに名の知れた進学校で、高校2年の冬から大学受験のためにほぼ勉強漬けだったし、大学に入ってからも新しい生活について行くので精いっぱいだったから、一昨年の『冬祭り』より先の祭りには一度も行っていない。
「ええ、お祭りは楽しんだ方が得ですよ。あの人……師匠……種枚さんも毎回行ってるし、多分会えるんじゃあないですか?」
「そうだと良いね」
最後に鎌鼬くんと軽く別れの挨拶を交わし、再び家路についた。