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復讐屋

“復讐屋”
性別:女  年齢:27歳  身長:181㎝
ブラックマーケットの奥深くで「復讐支援業」に従事している女性。本名を知っている人間はごく少数で、腕利きの情報屋ですら名前を探れないでいる。
「復讐とは、過去の因縁に決着を付け前に進むための儀式である」との信念から、顧客たちの復讐の支援を行うべく、情報収集・ターゲットの誘導・武器類の提供を行う。
飽くまでも直接手を下すのは復讐を望む本人であるべきと考えており、「復讐代行」だけは絶対にしないと決めている。
愛銃は6発装填リボルバー式拳銃の〈ジェヘナ〉と5発装填ボルトアクション式スナイパーライフルの〈リンボ〉。実際に発砲する機会は少なく、特に〈ジェヘナ〉には常に1発しか弾丸を入れていない。
仕事で使っているリュックサックは状況に応じて中身が変わるが、ミネラルウォーター500ml×2、携帯食料1日分、アーミーナイフ、防水マッチ30本入り1箱、電気ランタン、合成繊維製のロープ10m、カラビナ4個、ブランケット、〈リンボ〉用の弾薬箱20発×2、〈ジェヘナ〉用の弾丸1発は常備している。
自分の生業については、「死後地獄に堕ちることが確定しているだけでそれ自体は正当な行為である」と認識している。

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少年少女色彩都市・某Edit. Outlaw Artists Beginning その⑩

「しかしまあ……結構だりィぞ」
「何が? ちょっと頑張ればダメージ通せるよ?」
「いやァ……ちょいと俺の攻撃をよォーく見といてくださいよフヴェズルングさんや」
タマモの攻撃が、防御していた腕を数本吹き飛ばす。すぐに別の腕が防御に回って……。
「あ、なるほどー」
千切れていたはずの腕が無くなっている。というか、無事な腕の陰に隠れた隙に再生してるっぽい。
「火力足りてなくない?」
「だなァ。一般市民が通報して応援が来てくれるまで粘るってのもアリではあるンだがよォ……なあロキ」
「何?」
「せっかくの初陣、華々しい勝利ってヤツで飾りたくね?」
「まあ、せっかくならねぇ」
ニッ、と笑ってタマモが1歩踏み出す。
「じゃ、ちょっと頑張ろうぜ」
「うん」
タマモは素早く弾幕の用意をして、それと並行してエベルソルを攻撃している。正面から削り切るつもりだろうか。私も攻撃に参加しても良いけど、私達2人でダメージが追い付くだろうか。せめて全方位から削れれば効率良く倒せそうなんだけれど……。
「あ、良いこと思いついた」
「あ? 何だ、先輩として協力なら惜しまねーぞ」
「引き続き頑張って」
「りょーかい」
少し大きめの光弾をたくさん生成する。そのうち半分は、作るのと同時にエベルソルに飛ばして、タマモの支援をする。
そして、そこそこの数の光弾が貯まったところで、改めてエベルソルを睨む。

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視える世界を超えて エピソード7:潜龍 その⑦

石段を上り、鳥居をくぐり、境内に入る。“潜龍神社”は本殿の他に3社の摂社と4社の末社、舞殿があり、敷地の総合面積もかなりのものになっている。
神楽はその中でも本殿の手前に建つ舞殿で行われる。合計で半日もかけるような本格的なものというわけでは無く、7演目を合計4時間ほどかけて舞う構成になっている。
自分は普段、途中で見飽きて帰るのだが、ただでさえ人外のモノが少ない神社境内の中でも、神楽の最中の舞殿周辺には不思議と怪異の姿が見られず、清浄な雰囲気さえ感じられて、その場の空気感自体は好きだった。

犬神ちゃんに手を引かれて舞殿の前を通る。神楽は既に始まっていて、周囲には人だかりができていた。
つい足が止まるが、犬神ちゃんはそちらには全く興味が無いようで、構わずぐいぐいとこちらの手を引いて奥へと進んでいく。仕方なく彼女に従い、本殿の方へ向かう。
「キぃーノーコちゃぁーん、どぉーこぉー?」
犬神ちゃんは辺りをきょろきょろと見回しながら、種枚さんを探し呼びかけている。
「ほら君も、キノコちゃんのお気に入りなんだから一緒にあの子のこと呼んでよ」
「え、あ、はい。……く、種枚さーん」
「声ちっちゃい!」
「えぇ……?」

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少年少女色彩都市・某Edit. Outlaw Artists Beginning その⑨

彫刻から飛び降り、大きな影、エベルソルの下に駆け付ける。青白いヒトの腕が無数に絡みついたような気持ちの悪い姿の化け物が、公園の柵を蹴倒しながら猛然と突っこんできていた。
「おいクソッタレのエベルソル! なァに芸術以外ブッ壊してンだ生ごみ野郎がァ!」
エベルソルに対して挑発するように喋りかけながら、タマモはガラスペンで描いた光弾をいくつもぶつけた。化け物を構成する腕の表面には、弾が当たって焦げ跡ができたけれど、有効打にはなっていないみたいだった。まあ、こちらに気付いてくれたようだけど。
「ああクソ面倒くせェ。コイツそこそこ硬てェぞ」
「わぁ大変」
「お前も働くんだよロキ」
「まあまあ。まだペン使うのに慣れてないんだから……」
ガラスペンを取り出し、タマモに倣ってインキ粒をいくつか描き、エベルソルにぶつける。あまり威力は無かったけれど、練習はできた。こんな感じか。
「理想はここの彫刻全生存。最悪何個か壊れても作者さんに謝りゃ良い。気楽に行こうぜ」
「うん」
タマモがエベルソルの気を引いているうちに、少し走って奴の真横に位置取り、水玉模様の捻じくれた彫刻の陰で光弾のストックをいくつか用意する。小さい弾じゃダメージにはならないみたいだったから、少し時間をかけて大きめの弾にする。
数十個完成させたところで、攻撃に参加しようと彫刻の陰から顔を出す。エベルソルは腕のいくつかを防御のために前方に構えながら、タマモにじりじりと接近している。こちらからは完全に無防備だ。
こちらの用意した光弾のうち、3分の1ほどを一気に叩き込む。無事に奴の腕をいくらか千切り飛ばしたは良いものの、すぐに対応されて防御されてしまった。
「お、やるじゃねーのロキ。次はお前が狙われるぞ」
「えー」
たしかに、エベルソルの進路は私の方に変わっているみたいだ。流石に彫刻を巻き込むのはそれを守る人間として申し訳無いので、陰から出てタマモの方に駆け寄る。
「お前なんでこっち来た?」
「いや、つい……彫刻の少ない方にいたから」

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少年少女色彩都市・某Edit. Outlaw Artists Beginning その⑧

「……そうだ、何か芸術っぽいのが多い所行こうぜ。エベルソルってのは芸術をブッ壊すことに命懸けてる連中だからな」
「なるほどー。それなら“芸術公園”とか?」
「おっ、名案」
通称“芸術公園”。この彩市在住のアーティストが制作した彫刻などの立体作品がそこら中に乱立する市民公園。屋外ステージもあって、ちょくちょくイベントが開かれたりもする、住民たちの憩いの場だ。
「こっからだと歩いて……10分くらいか。お前時間とか大丈夫か?」
「うちは門限とか結構緩いから大丈夫」
「そうかい。じゃあ行こうか」
適当な世間話をしながら、公園に向かう。タマモ、私より2つも歳上だったのか。敬語でなくても構わないと言われたので、言葉遣いはそのままだけど。
「……さて、着いたわけだが」
「いないね、エベルソル」
「いないなァ……」
殆ど日没といった空の下、公園には数人の一般市民が見られる程度で極めて平和そうな日常風景が広がっていた。
「……もう帰って良いかな」
「そう言うなよ。10分くらい時間潰していこうぜ」
「ん」
曲線的なシルエットをした石材製の大型彫刻に登り、公園全体を見下ろす。
「……本っ当に平和。エベルソルって実在するの?」
「一応、10回くらい遭ったことはあるんだけどなァ……」
少し離れたところに立っている時計をちらと見やる。もうすぐ5時か。
「5時まで何も無かったら帰って良い?」
「良いんじゃね?」
そのやり取りを終えた瞬間、まるで見計らっていたかのように大きな影が公園に近付いてきた。
「……あーあ、フラグ立てたりするからよォ」
「むぅ、まあ戦い方も考えたいし良いか」

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シラー

「誰かが隣にいる」
そんな未来が良かったな
スタート地点は多分私だけ遠くて
誰も隣に居ない
居たとしても寄り添ってはいなくて
ゴール地点までは多分地球1周くらいあるんだろう

知らないあの子が楽しそうに笑ってる
私は一人 睨んでしまいそうで
でもそんなこと私はしたくないから
一人で立ちすくんでしまう

今頃みんなで連絡を取って
楽しそうに笑ってるんだろうな
私はその輪の中には居なくて
次あの子達と会っても誰とも話せないんだろうな

誰かと仲良くなって
分かり合ってバンドを組んで
そんな未来を思い描いていたのにな
誰も隣に居ない
居たとしても分かり合えてはいなくて
思い描いている人は一体どこにいるんだろう

知ってるあの子も楽しそうに笑ってる
その目に私は映っていない
「寂しいよ」「一緒に居てよ」なんて
言ってしまえたらいいのにな

今頃私と連絡を取ろうなんて
考えもせず笑ってるんだろうな
あの子達とはいくら待っても
私が送らないとメールも何も来ないんだろうな

今頃みんなで知らない話題で
楽しそうに笑ってるんだろうな
私の事なんてほぼ知られてなくて
次あの子達と会っても話せないんだろう

今頃私と話してみたかったなんて
言ってる人は居ないんだろうな
あの子達とはいくら待っても
話すことなんてできないんだろうな

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少年少女色彩都市・某Edit. Outlaw Artists Beginning その⑦

「……もうこんな時間か」
タマモの独り言に壁掛け時計を見ると、15時過ぎだった。
「なァ、ロキ。暗くなる前にチュートリアルといかねェか?」
「良いね。インキ弾の使い方、私も練習してみたいし。エベルソルってどこに出てるか分かる?」
「いや分からん。たまにお偉いさんから『どこそこに行け』って言われることもあるけど、今は特に何も無いからな。適当に怪しいポイントをぶらついて、遭遇出来たらブチのめすって感じだな」
「なるほどー。私、化け物と戦った事なんて無いんだけど……」
「誰だって最初はそうだよ。俺だってまだ両手の指に足りる程しか戦った事無ェもん」
「それもそっか」
「そうだよ」
タマモが椅子から立ち上がった。私も席を立つ。
「……じゃ、行くか」
「うん」

彼について歩き、フォールム本部を出る。彼は市街地に向けてのんびりとした足取りで歩いていた。
「……なァ、ロキ。どっか行きたい場所無ェか?」
「んー……あんまり強くないエベルソルがいるところ?」
「お前大分贅沢な注文するなァ……」
苦笑しながらも、タマモは迷いなく商店街に入っていった。そのどこかに用事があるのかとも思ったけど、特にそういうことも無かったみたい。青果店で果物の並ぶ棚をじっと見ていたくらいで、結局通り抜けてしまった。
「……最近は何でも高くて良くねェ。果物なんか簡単に買えないモンだから、ビタミン摂るのが面倒だぜ」
「野菜ジュースとかオススメだよ」
「あれ、あんま好きじゃねェんだよなー」
「ふーん」

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少年少女色彩都市・某Edit. Outlaw Artists Beginning その⑥

フォールム本部内を1周して、あの部屋に戻ってきた。タマモは設備について逐一教えてくれたけど、様子を見ていた感じ、半分くらいは彼も初めて入った場所だったようだ。
彼が少し血のついたままの椅子に掛け、促されて私も向かいの席に座る。
「最後にここが、数ある休憩室の一つだ。最序盤でスルーした部屋は全部休憩室だな。誰がどこ使うとかは決まってねェけど、リプリゼントルは好きに使って良いことになってる」
「へー……」
「さて……施設内見学は終わったが、何か質問とかあるか?」
「はーい、ありまーす」
「何でしょうフヴェズルングさん」
「タマモせんせー、私、絵が全く描けないんですけどどう戦えば良いんですか? このガラスペンで何かを描いて戦うんですよね?」
「あー…………」
タマモはしばらく目を泳がせ、テーブルに備え付けられていたメモ帳のページとボールペンをこちらに差し出した。
「ロキお前、犬と猫を描き分けられるか?」
「…………」
とりあえずペンを取り、さらさらと2つの絵を描いてみる。なかなかに酷い出来の、辛うじて四本足の何かと分かる絵が並んでいた。
「すげェや、違いがある事しか分からねえ」
「お恥ずかしい限りで……」
「別に恥ずかしいことじゃねェよ。俺も絵はド下手だ」
そう言いながら、タマモはページをくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に放り込んだ。
「じゃあ、タマモはどうやってるの?」
「こうしてる」
ニタリと笑い、彼はガラスペンを取り出した。そのペン先からインキが垂れ、空中で一つの球形にまとまる。
「……さっきの紙捨てなきゃ良かったな。まあ良いや」
彼はメモ帳から新たに1ページ破り取り、宙に放った。そしてひらひらと落ちてくるページ片に、インキの球体、いや、弾丸を発射し命中させた。
「おー」
自然と拍手が出る。
「複雑なモン描けねェなら、単純なモンを武器にすりゃ良いんだ」

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 番外編 吸血姫と竜生九子と雪の精 ②

あたしはフンと鼻を鳴らした。
「意味不明な奴」
さっさと奪いたいなら奪ってしまえば良いのにとあたしは呟く。
ヴァンピレスはそれを聞いてうるさい!と声を上げた。
「貴女、大人しくわらわの餌食に…」
ヴァンピレスはそう言って白い鞭を振り上げる。
あたしはもはやこれまでかと目をつぶった。
しかし鞭が振り下ろされることはなく、代わりにヴァンピレスがうっとうめく声が聞こえた。
あたしが目を開くとヴァンピレスが白い鞭を振り下ろそうとする体勢で動きを止めていた。
「⁈」
あたしが驚いていると背後から聞き馴染みのある声が聞こえた。
「穂積」
思わず振り向くと、短髪で前髪をカラフルなピンで留めた、瞳を青白く光らせた少女が立っていた。
「…”フロスティ”⁈」
あたしがつい声を上げると、彼女はこちらへ駆け寄ってくる。
「逃げよう、穂積」
「え、でも」
「さっさと逃げようか」
フロスティはあたしの手を引いて元来た方へ走り出した。
暫くあたし達は走り続け、気付くと駄菓子屋の前まで辿り着いていた。
「ここなら大丈夫だね」
駄菓子屋は異能力者の緩衝地帯だし、とフロスティはあたしの方を振り向く。
その目はもう光っていなかった。
「…雪葉、どうして」
「どうしてもこうしても、親友がピンチだったからうちが助けてやったんだよ」
あたしの言葉を遮るように、フロスティこと雪葉はあたしの顔を覗き込む。
「あんたさ、たまに悩み事を1人で抱え込む事があるからよく警戒してたんだよ」
最近怪しいと思ってたら、案の定だったと雪葉は笑った。
「別に、あんたに助けて欲しいなんて」
あたしはそう言いかけるが、雪葉は友達なら助け合うのが普通だと思うよーと続ける。
「特に親友ならなおさら」
雪葉はそう言ってウィンクした。
「…もう」
あたしは呆れたように呟いた。

〈番外編 吸血姫と竜生九子と雪の精 おわり〉

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 番外編 吸血姫と竜生九子と雪の精 ①

路地裏というものはアングラな雰囲気を纏っている事が多い、とよく言われる。
大通りに対して建物が密集しており空も狭く見えるし、上から入ってくる光も限られる。
だから”常識の外の存在”も当たり前に存在するのだ。
例えば、この路地裏を歩くあたしのような…
「うふふふふふふ」
不意に聞き覚えのある高笑いが聞こえたので、あたしはパッと顔を上げる。
しかし周囲を見回しても誰もいない。
一体奴はどこに、とあたしが思った所で後ろの首筋に気配を感じた。
「ご機嫌よう」
チョウフウ、と背後に真っ直ぐな棒状にした白い鞭をあたしの首筋に突き付ける少女…ヴァンピレスは言う。
自分の後ろに回っているため顔は見えないが、きっとその顔は笑みを浮かべている。
「…何の用」
あたしが聞くと、ヴァンピレスは貴女にお知らせがあって来たのと答える。
何、とあたしが聞き返そうとした時、ヴァンピレスはこう言った。
「貴女を利用するの、やめにしたわ」
「は?」
あたしは思わず振り向く。
「何で…」
「単純に貴女の事が、”彼ら”に気付かれてしまったからよ」
淡々としたヴァンピレスの言葉にあたしは…なるほどと呟く。
「あの常人と死霊使い達にあたしがアンタと繋がっている事がバレたから、消しに来たって訳ね」
あたしがそう言い切ると、ヴァンピレスはうふふふふと笑った。
「貴女を消してしまうのはもったいないかもしれないけど、どちらにせよ貴女の異能力は使わせてもらうから感謝なさい」
「感謝なんてするかよ」
あたしは思わず言い返す。
「あんた、あたしの親友の異能力を奪おうとしやがって、それを止めようとしたらその代わりにあたしに協力を持ちかけてきて…」
こんな自分勝手な奴に感謝なんてしな…とあたしが言いかけた所で、やかましい‼とヴァンピレスは声を上げる。
「特別使える訳でもない異能力のクセに偉そうな口を利いて…!」
せっかくわらわが奪おうとしてやっているのに…と彼女は身体を震わせる。

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視える世界を超えて エピソード7:潜龍 その⑤

「……外が騒がしくなってきたねェ」
“潜龍神社”の本殿、その中で厳重な拘束を受けながら、種枚は祭りの喧騒を聞いていた。
「残念なことだ、私、お祭りの雰囲気は好きなんだぜ? 人間どもが心底楽し気で、慌ただしくて…………しかしまァ」
扉から視線を外し、自身を拘束する道具類に目をやる。
両手首を拘束し、大黒柱の裏を通って腕の動きを妨げる錠。両足を床面に固定拘束する枷。全身に巻かれた荒縄と鎖。無理に振りほどこうとすれば身体に食い込むよう、手足と首にきつく巻かれた有刺鉄線。怪異に対して威力と拘束力を持つ紙製の札と木札、注連縄。そして、両手と両足を貫き縫い留める、4本の短刀。
「本ッ当に、厳重だねェ。私が何であろうと、意地でも逃がさないって感じだ」
拘束を眺めるのをやめ、再び屋外に通じる引き戸に目をやると、数秒遅れて静かに戸が開いた。
「おっ、やっと出してくれるのかい? 私も祭りを楽しみたいんだが?」
「許すわけが無いだろう、鬼子め。貴様がまた逃げ出しでもしないかと巡視に来ただけだ。こちらも忙しいのでな」
尊大な態度で答えるその青年に、種枚も挑戦的に睨んで応えた。
「……しかしまあ、前に捕まえた時と比べて随分とアクセサリィが増えたな? 素敵な持て成しじゃないの」
「2週間も拘束していて、水の一滴すらやっていなかった状態から逃げられたんだ。これでも足りないくらいだろう」
「あァ、あの時はしんどかったなァ」
「……そして今回は、そろそろひと月になるか?」
「そうだねェ。さすがに空腹がキツいや」
「……化け物め」
青年はそう吐き捨て、本殿から出て行った。

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花の魔女

・嫦娥 Jouga
年齢:不明(10代中盤くらい)
性別:女
身長:158cm
体重:身長に見合った重さ
通称:花の魔女
登場作品:なし(自分の中でボツになった作品の登場人物)
科学と非科学、人間と人外が共存する“都市”に暮らしている何でも屋の少女。
薄いウェーブがかったピンク色の長髪で、いつも白やピンク系のロリィタ服を着込んでいる。
“花”にまつわる魔法を使いこなす所から“花の魔女”と呼ばれることも多い。
魔法がかかった白い日傘を持ち歩いており、これをさすことで飛行することも可能。
何でも屋としては“都市”で起こる大小様々な事件・騒動の解決を生業にしており、“都市”に跋扈する様々な住民・勢力から一目置かれている。
元々は“都市”の中心部にある、”都市“の治安を守りそこに住む人間の権利を保障するために作られた機関“政務局”の人造人間による治安維持特殊部隊隊員のプロトタイプ。
幼い頃はずっと“政務局”のタワー内にある研究室で暮らしていたが、治安維持特殊部隊の創設に反対する“政務局”内のある派閥に依頼されたとある何でも屋によって外へ連れ出された。
“嫦娥”という名前は彼女を連れ出したとある何でも屋に付けられた名前であり、元々は“ヌル”と呼ばれていた。
このような経緯から“政務局”の関係者とはバチバチに仲が悪く、特に自分を元に量産された存在である治安維持特殊部隊の隊員とは遭遇するだけで壮絶な戦いが始まったりもする。
ちなみに彼女を引き取った何でも屋はとある仕事の最中に行方不明になっている。

〈都市〉
科学と非科学、人間と人外が共存する大都市。
かつては世界有数の大都市だったが、とある大災害で壊滅した後人間たちから隠れていた人外や非科学的存在が表に出始め跋扈するようになった。
様々な勢力が存在し、時に協力したり時にいがみあったりしながら均衡を保っている。
一応政治機関として“政務局”が存在しているが、この機関は“都市”をかつてのような人間だけのものにするための組織であり、非科学的存在を否定するが故に“都市”の様々な勢力と衝突を繰り広げている。
過去の大災害の爪痕があちこちに残っているが、人間や人外たちによって活気に溢れている。

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少年少女色彩都市・某Edit. Outlaw Artists Beginning その⑤

「クッソ負けた……人を操ることについては自信あったんだけどなァ……完璧にそっちのペースだったな」
そう言われて、少し得意げになってしまう。当然だ、これが私の『芸術』なんだから。
「それじゃあ、そっちから教えて?」
「……俺の芸術は…………何て言えば良いんだろうな。……敢えて言うなら、そうだな、『扇動』が近いかな。芸術ってのは、人の感情を揺さぶり動かすものだろ?」
頷き、続きを促す。
「言葉で、リズムで、テンポで、環境で。あるものと使えるもの全部使って、人の感情を動かし操る。それはもう芸術だろ」
「……言われてみればそんな気がしてきた」
タマモの表情がぱっと輝いた。
「だろー? あの野郎はそれが分からねえから駄目なンだよ。顔料か旋律が無きゃ芸術じゃねェと思ってンだぜ?」
「それは良くない」
これは間違いなく私の本心だ。私の芸術も、そういうものだから。
「で、ロキ。お前はどういう『芸術』を使うんだ?」
「んー……『展開の演出』、かな。ボードゲームなんかだとやりやすいんだ、ルールで縛られてるから。ゲームっていうのは物語の創出だから、より面白い展開を描くために勝敗を捨てて『人』と『運』、『場』を都合のいいように操作する」
「なァるほどォ……道理で負けたわけだ」
「お褒めに与り光栄至極」
「ハハッ、くるしゅーない」

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Daemonium Bellum RE あとがき

どうも、テトモンよ永遠に!です。
先月末、3月29日をもちまして企画「Daemonium Bellum RE」は一応終了いたしました。
ご参加していただいた皆さん本当にありがとうございます。

今回の企画は2年前に開催した企画「Daemonium Bellum」のリバイバル版みたいな企画でした。
「Daemonium Bellum」の方は要項の投稿時期のミスで多くの人の目に止まらなかったこと、その時企画に参加する気のあった人が少なかったこと…などからほとんど参加者の出ずに終わりました(そもそもぼくの企画は参加者がほとんど出ないのがデフォルトなんだけどね)。
この時の教訓によってそれ以降の企画は月初めに要項を投稿するなどの工夫を凝らすようになりましたが、この企画の世界観だけなんだか不完全燃焼な感じがしてたんですよ。
それで「Daemonium Bellum」の開催後に自分の中で追加された設定などを盛り込んだ上でリバイバルすることにしました。
事前の企画アンケートで2番目に票を獲得していたのである程度参加者は出てくるだろうと見越してはいましたが、その前に開催した企画はアンケートで1番得票率が高かったのに自分以外に2人しか参加者がいなかったので開催前はめっちゃ不安でした。
でもいざ蓋を開けてみたら自分以外に6人(タグの付け忘れ含む)も参加者が出ていてびっくりしました。
やはり天使とか悪魔ネタは書きやすいんですかね…?
設定とか盛りすぎてぼく史上最高難易度の企画になってしまいましたが、参加者の皆さんが楽しんでもらえたら嬉しいです。

という訳で、長くなりましたが皆さんご参加ありがとうございました。
今も企画「テーマポエムを作ろうの会」を開催していますし、5月には新たな企画の開催も予定しております。
今度は鉄道モチーフですので、参加してみたい方は今の内に日本の鉄道路線について調べた方がいいかも…?
てな訳で当企画はこれで以上になります。
あ、でも遅刻参加・投稿はいくらでも待ってますよ(笑)
では、テトモンよ永遠に!でした〜

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視える世界を超えて エピソード7:潜龍 その③

日曜日、午前10時。『潜龍冬祭り』の開始時刻だ。
この祭りでは神社敷地内だけでは無く、その前を通る道路でも交通規制を行い、広範囲に渡って出店が並んだり、神輿を担いだ人々が練り歩いたり、神社敷地内では神楽が行われたりする。
自分の普段の祭りの楽しみ方を振り返ってみると、大体は出店で適当に食べ物を買い、14時に始まる神楽を見て、その後は何をするでも無く祭りの雰囲気を味わうためにうろつく、といった感じだったか。
今回も同じように動くとしようか。そう思いながら自宅を出る。

昔から霊感……いや、正確には『霊感』ではないんだったか、人外のモノが視える体質だったわけだけど、祭りの日は何故か『そういったモノ』が多く、特に上空などは絶対に見てはいけない状態になっているものだから、楽しい気分とは裏腹に目線は下がっていくという、何とも不思議なことになる。
今日もアスファルトに熱い視線を送りながらやや急ぎ足で歩いていると、前から同じく急ぎ足でこちらにやって来る人に気付かず正面衝突してしまい、しりもちをついてしまった。
「わぁごめんなさい! ……あれ?」
向こうの反応が不自然だったので顔を上げる。そこには見覚えのある少女の姿があった。彼女の肩に憑りついている怪異存在の姿も合わせてみれば、間違いなくあの子だ。
「たしか……犬神ちゃん?」

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黒い蝶

・ナハツェーラー Nachzehrer
年齢:秘密(数百年単位)
性別:なし
身長:156cm
体重:そんなに重くない
一人称:俺
通称:ナツィ、黒い蝶(二つ名)
登場作品:造物茶会シリーズ(第5弾までまとめてあるので気になる方は参照してみて)
「造物茶会シリーズ」の一応の主役にしてアイコン的存在。
面倒くさがりなツンデレだけど、その強さは折り紙つき。
その昔、高名な魔術師“ヴンダーリッヒ”によって生み出された人工精霊にして使い魔である。
容姿は黒髪黒目でだいぶ地味なようにも見えるが、なぜかゴスファッション(スカートは穿かない)ばかり着ているため目立つっちゃ目立つ。
あと足元は黒タイツに厚底のショートブーツないしメリージェーン(ストラップ付きパンプス)を合わせていることが多い。
露出が嫌いなので前述のように黒タイツを着るだけでなくいつも黒い革手袋をはめている。
髪は短めだがくせっ毛で跳ねている。
紅茶党で実は甘党、そんでもって嫌いなものは人間。
しかし前日譚「緋い魔女」「緋い魔女と黒い蝶」では主人であるグレートヒェンにデレてたりするのでものすごく人間が嫌いって訳でもないのかもしれない。
右手に仕込まれた術式によって蝶がかたどられた大鎌を生成したり、背中にコウモリのような黒い翼を生やして飛んだりできる。
魔術(物理)っぽい所はある。
普段は仲のいい(?)かすみやキヲン、ピスケス、露夏と共にかすみの主人が経営する喫茶店の2階の物置に溜まってお茶している。
キヲンにはめちゃくちゃ好かれているし、隠したがっているけどかすみのことは好き。
逆にピスケスや露夏のことが気に食わない。

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貰ってはいるのよ、愛を。

・岩戸青葉(イワト・アオバ)
年齢:13  性別:女  身長:小学生料金でバスや電車に乗れるくらい
初出はエピソード6。名乗る機会が無かったので「少女」で押し通さざるを得なかった子。
人外のモノに好かれ、人外の異能の才を持つ女系一族“岩戸家”の当代末子。人外の才能や霊感は全く無く、かといって姉や両親、親族からそれを理由に邪険に扱われることも無く、むしろ能力など関係無いとばかりに深い愛情を受けて育ってきたが、その愛が逆に彼女の劣等感を刺激した。
「家業を継ぐ」という観点においては明確に劣っている自分がその愛情に足ると心の奥底で信じ切れず、それを受けるに相応しい人間になるべく、夜な夜な愛刀たる〈薫風〉を手に家を抜け出しては、怪異相手に武者修行を繰り広げている。
幼い頃には自分の無能ぶりに絶望し引きこもったこともあったが、現在は〈薫風〉と暴力性(殺意)、身体能力という希望があるため、かなり安定している。
ちなみに家族や親族に八つ当たったことは一度も無い。彼らが悪いわけでも無ければ、そもそも自分の能力の低さが理由なのにその能力がある人間に当たれるわけが無かったので。

〈薫風〉:岩戸家に伝わる日本刀。刃渡り約55㎝。全長約80㎝。各代で最も力の弱い子が怪異から身を護るために受け継ぐ。霊体にも干渉し、怪異存在に特にダメージを与えることができる。また、所有者であるというだけでその威光が弱い怪異を寄せ付けず、所有者の受ける霊障を吸収する。近代以降、実際にこれを武器として用いる継承者はいなかった。

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逃鷲造物茶会 あとがき

どうも、テトモンよ永遠に!です。
毎度お馴染み「造物茶会シリーズ」のあとがきです。
今回もお付き合いください。

今回のエピソードは主人公がかすみみたいなお話でした。
割と造物茶会シリーズのお話(構想中のものも含む)の中では珍しい、”ナツィが中心じゃない“物語でしたね。
一応このシリーズにおいてナツィは”主役“ということになっていますが、スーパー戦隊シリーズみたいに主役以外の主要キャラが中心になるエピソードがあってもいいということで作りました。
これからもこういった、“主役以外のキャラが中心になる”回が出てくるので、どうぞ楽しみにしていてくださいね。

という訳で、今回は短めだけどここまで。
「造物茶会シリーズ」第7弾(絶賛執筆中)をお楽しみに。
あと来週から「ハブ ア ウィル」の記念すべき20個目のエピソードを投稿し始めます。
昨日完成したての新エピソード、楽しみにしていて…なのですが、このエピソードを語る上で必要だろう番外編を今週末の土日に投稿しようと思ってます。
こちらもお楽しみに。

ではこの辺で。
現在開催中の企画「テーマポエムを作る会」への参加も待ってます!
それでは、テトモンよ永遠に!でした〜