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Flowering Dolly;STRONGYLODON Act 1

昼下がり、街の路地裏にある小さな喫茶店にて。
“喫茶BOUQUET”という小さな看板が下がったその店の中は、5人の客と店主、そして手伝いの少女が1人いるのみでがらんとしていた。
「今日は空いていますね」
青い長髪をハーフアップにしたエプロン姿の少女がカウンターに向かって言うと、そうだなとカウンターの向こうの椅子に座る初老の男は返す。
「今日は月曜の昼間だから、みんな“本職”が忙しくて来れないのだろうよ」
まぁいいじゃないかと男は手元の新聞に目を落とす。
「それにしても普段より少ない気がするんですけど…」
青髪の少女がそう言いかけた時、カランカランと音を立てて店の扉が開いた。彼女が扉の方を見ると、そこには小柄な小学校高学年くらいの少年が立っていた。
「あ、いらっしゃ…」
青髪の少女の言葉を気にせず少年は店の窓際のテーブルへ向かった。そこには青緑色で肩につくくらいのくせっ毛、そして翡翠色のジャケットとスラックスに白いブラウスを合わせた背の高い少女が座っていた。
「…お、やぁ少年」
青緑色の髪の少女は少年に気付くと笑顔で小さく手を挙げた。しかし少年はそれを無視して彼女の目の前の座席に座る。
「それにしてもどうしたんだい」
急に呼び出しなんて…と青緑色の髪の少女が言いかけた所で、少年はあのと顔を上げる。
「お願いがあるんです」
少年の真剣な眼差しに青緑色の髪の少女は少しポカンとする。
「え、なに?」
もしかして…と青緑色の髪の少女は慌てるが、少年は気にせず続けた。
「ぼくと関わるのをやめて欲しいんです」
少年の言葉にえ、と青緑色の髪の少女はポカンとする。
周囲の客たちも、その言葉で2人の方を見た。
「そ、それって…」
「もうぼくに会いに来ないで欲しい、それだけです」
少年がそう言うと、青緑色の髪の少女はなんとも言えない表情で椅子の背もたれに寄りかかった。
「…そんなこと言われてもねぇ」
青緑色の髪の少女は窓の外を見る。
「なんて言うか、どうしてもその辺でフラフラしていると君に遭遇してしまうと言うか」
「じゃあフラフラするのをやめてください」
少年は真面目な口調で言うが、青緑色の髪の少女はえ〜と不満げに返す。

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Flowering Dolly:Bamboo Surprise その①

廃墟群の中を、1つの影が走っていた。
背の丈は大柄な成人男性程度。やや筋肉質な体つきをしたソレは、しかしてたとえ遠目から見ようとも人間では無いと分かるような特長を有していた。
最も明確な特徴は、長く太く平たい、ある種のサンショウウオが具えているような尾である。その他にも、頭部は大型爬虫類のような顎以外のパーツを持たず、皮膚全体は粘液に覆われてぬらぬらと光っている。
付け根から切断された左腕の傷口を水かきのついた右手で押さえながら、尾でバランスを取りつつ器用に全力疾走を続けるその影、“ビースト”は、どす黒い血痕を足跡のように垂らしながら、一心不乱に駆け続けていた。
“逃走”のためではない。生体「兵器」とはいえ、ビーストは1つの生命体である。1つの明確な意志を持って、ソレは駆け続けている。
“追跡”のためではない。ソレはたしかに戦闘の只中にあるが、敵対存在を追っているわけでは無い。敵はソレから逃げているわけでは無く、追っているでも無く、敢えて表現するのであれば、“隠れて”いる。しかし、発見しようという意志も無い。
そのビーストが求めていたのは、“状況の打開”。現在地はソレにとってあまりにも不利で、敵にとってあまりにも有利な環境だった。
がらり、と左前方から瓦礫の崩れるような音が聞こえてくる。反射的に、音から離れるように後方に跳躍し、右腕を戦闘のために構える。その時だった。
「わっ」
近くの物陰から現れた少女が、脅かすように声を上げ飛び出してきた。そちらに尾を叩きつけるが、少女は既に身を伏せ、その場から消えている。
ビーストがよろめくように少女の現れた物陰から離れると、ソレの頭部ほどの高さを通っていた剥き出しの配管にぶら下がった先程の少女が、テディベアを抱えた両手をソレに向けて突き出した。
「ばぁっ」
ビーストは咄嗟に大きく跳躍し、手近な廃墟の2階、その割れた窓から屋内に飛び込んだ。少女は配管からぼとり、と落下し、その後を追って1階から建物に侵入する。