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とある街にて

 超未来カグラ。

世界最先端の科学技術を持つ、超巨大都市。
地方からの若者の著しい人口流入のおかげで人口は現在億を超えるともいわれており、その経済はめまぐるしく上昇を続けている。無尽蔵なポテンシャルを持つ怪物都市、との異名も。
街を貫く高速交通網。天を貫かんと聳え立つ巨大ビル群。あちらこちらに人ならざる無機質な体を持つ者――自立型AI搭載ロボットの姿。道の脇にはホログラムの掲示板。眺める人の眼鏡には、AR機能が搭載されている。道行く人々の表情は明るく、そこには塵の一つさえ落ちていない清潔感のある街並み。どの店にも活気があり、働く人の目には未来への希望と憧れで満ちている。
まさに世界第一位の経済力と推進力を誇る、”怪物都市”だ。


――だった。15年前までは。


超未来カグラはただ唐突に、その世界一位の玉座から引き下ろされた。
それは超未来カグラの科学力が落ちたわけでも、他国の勢いが上回ったわけでもない。
争っていた相手がいなくなってしまったのだ。彼らの世界から。
いや、超未来カグラだけがいなくなったというべきか。
15年前のある日、超未来カグラは謎の違和感に包まれた。いつもとは空気が違うような、天がいつもより青く高く見え、都市外周部から吹く風は変に荒んでいる、ボタンを一つ、いや、その半分を掛け違えたような、妙な違和感。まるでもともとここにはいなかったような、世界に自分たちだけしかいないような、不思議な孤独感。
誰もが不安そうな顔で空を見上げ、何が起こっているのかを知りたがった。
小さな女の子が、不安がる小さな手を母親の手に隠す。
抜けるような快晴が、逆に気味悪く感じられた。


―――――
世界観の説明回なります。次回で終わる予定。
舞台は巨大都市、超未来カグラ。どのような環境で白鞘君と八式先輩がこの世界を生きているのか。興味がある方は是非。

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とある街にて

「あ、白鞘」
とある日の放課後。ひとりで帰路についていた僕――白鞘凪にひとりの生徒が声をかけてきた。歩道橋の上である。
「おや、先輩。こんにちは」
若干の小走りで横に追いついたその人に、僕は軽く挨拶をする。
「もしかしてボッチで帰りたかった?邪魔して悪いね」
「追いついて早々何言ってるんですか」
「なはは、ごめんごめん」
からかうように笑う横顔。馴れ馴れしい態度で話しかけてくるこの人は、高1である僕の一個上の先輩である。
黒髪のロングにまっ黒な目。思わず二度見したくなるような美貌を持つこの先輩の名は八式永里という。
「で、どうしたんですか?八式先輩」
「む、永里でいいって言ってるのに。……今日ちょっと集まれるかな。面白そうな噂が見つかったんだ」
「上機嫌ですね。いいですよ。場所はいつものところで?」
「うん。美澄も呼んだから、三人揃ったところで”それ”を発表するよ」
「僕は先輩がどんな噂を拾ったのか楽しみです」
「ふふん。楽しみにしておいてね。じゃ、また向こうで」
そういうと、八式先輩はとっとと先に行ってしまった。話したいことは向こうで話すつもりなのだろう。
僕は少しだけ胸を高鳴らせると、歩く足を速めた。

――――――
みんなが小説書いてるの見たら自分も書きたくなってきた、ミーハー体質な月影です。これから連載できたらいいんですけど、いかんせん一つ書くのにとんでもなく時間がかかります。忘れたころに投稿するかもなのでご容赦を。
登場人物を少しだけ。
 白鞘凪……千ヶ暮高校1年。目立たない方の人間。
 八式英里……千ヶ暮高校2年。成績はトップクラス、眉目秀麗、周りからの人気
       絶大と三拍子揃ってる人。

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秋の月との距離

>そっちから見える?
                                 何が?<
>月。
>今日は中秋の名月だから
                                  へぇ<
                              テレビ見てた<
                       ちょっと待ってね、今外出る<
>どう?
                           んー、雲に隠れてる<
                                   お<
                              見えた見えた<
                      おーきれいきれい、すごいよー<
                              すごく明るい<
>ほんと?
>写真送って
                           そっち曇ってるの?<
>そうなんだよね……
>見てみたくてさ、お願い!
                                いいけど<
>けど?
                             いや、いいよ?<
>やった!
                           ん、うまく撮れない<
                                 撮れた<
                           こんな感じでどう?<

届いた写真。
白く光る月。
細い指のピースサインが写っている。
宮城―東京間の距離は約300km。
地球ー月間の場合は約385,000km。
どっちも遠いには遠いんだけど。
きみのその手の方がよっぽど近いんだよ。
 
>きれいだね
                                そうだね<

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