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続・旱天慈雨

はっきり言って複雑な心境である
仲が良いのは知ってはいたが、まさかこんな三角関係がリアルに存在したなんて…
しかも自分が中心になるなんて想像もしなかった。

“ねぇ、こんだけ言ったけど改めて…
付き合ってください…”

もちろん断ることも出来る…
でもそうしたら…
多分あの人は彼女の気持ちを知ってたから振った
そう思えばこそ、失恋にも向き合える…
なら…ここの答えは二つに一つ…
「はい…よろしく…って言えばいいのかな?(笑)」

“やった!…嘘みたい…”

「ほんとに僕のこと好きなの?」
あの涙を見ているが、疑わずにはいられなかった…

“あのさぁ、さっきまで下手に出てたからもう言わしてもらうけど、自尊感情無さすぎ!さっきも言ったでしょ?「自分に彼女できない」なんて言わないで”

“自虐は自分だけじゃなくてあなたを好きでいてくれる人も傷つけるんだよ!”

この言葉にハッとさせられた…
あぁ、怖かったんだ…
誰かが傷つくのが…
自分が傷つけば誰も傷つかないと思ってたんだ…

感謝の意も込めて初めて人を抱きしめた。

別に欲している訳ではない…
でも潤いを知ると乾いていたことに気づかされる…

どんなに乾いてもいつかは潤いが巡る
そんな慈悲の雨を待つのも悪くはないか…

fin

1

旱天慈雨

僕に彼女なんか出来るわけない…
そう思ってた(暗示をかけてた)
彼女に会うまでは…(その言葉を言われるまでは…)

あれは…中学2年の時…
4年に渡る片想いが砕け散った頃だった…

小学校の時こそ関わりはなかったが中学1年、2年と連続で同じクラスだったこともあり彼女とはそれなりに話す程度の関係性だった。
あの時も別にこれといった理由があった訳ではなかった。ただすぐに声をかけられるところに彼女がいただけだった。
「明日俺らと一緒に○○行かない?」
いわゆる数合わせだ。
男女比を揃えるために女子を誘ったに過ぎない。
できることなら好きな子を誘いたかった…
その気持ちは当然残ってはいた。
でも彼女とそれを機に連絡先を交換すると
彼女から来たメールは予想だにしないものだった。

“明日、全体が終わったら2人で少し話せない?”

この時僕はまだ信じていない…
まさかこれが彼女の真剣な話だなんて。
だから当然、翌日も大して気にもしないまま
全体はとても盛り上がった。
日も傾き醒める前にということで
全体としては解散した。
その帰り道彼女は僕の左袖を掴んだ。

“ちょっと話せる?”

あぁそうだった…というより本気だったんだ…というのが本音だった。
とりあえずゆっくり話せるところと思ったが、さすがに中学生、喫茶店なんてオシャレなことはできず、近所の公園に甘んじた。
まさかこの選択が幸をそうするとは知る由もないまま

to be continued…

3

続・小説版ソラミミ

その日以来先輩は僕のことをやけにイジるようになった。しかしそれもあくまで“先輩”としてでしかない。
そんないい雰囲気で最後の演奏会当日を迎えた。
演奏は良好、僕も緊張こそするけど先輩が前にいるだけですごい安心感。先生の指揮も心なしか感情的だ。全てが自分を後押ししている様だった。こんな楽しい時間は初めてだった。しかし演奏はいよいよ終盤…
それとは裏腹にみんなの音はかつてないほど響く。
終わりたくない…
反比例する心…
しかしアンコールが終わった…
会場からは惜しみない拍手が送られた。
達成感か、安堵か、泣いている部員もいた
まだだ…まだ僕は今日泣く訳にはいかない…

“いざ先輩に告るのだ!”

「先輩!最後にツーショット撮りましょうよ!」
お願い…心臓の音よ…今だけ収まって…
でも裏腹に先輩と近くなる度に音は大きくなる。
「またドキドキしてるでしょ.」
先輩はやっぱりズルい、この言葉も“先輩”でしかない…
でも、僕は…
「そりゃしますよ!僕、先輩のことずっと好きなんですから!」
そう言って思いっきり先輩に抱きついてシャッターを切った。
先輩と少し驚いてから一緒に笑顔になった。
でもこの言葉だけは勢いで言っちゃいけない気がした。
1年間も想い続けたんだ…
「先輩…今度は本気です…僕と付き合ってください…」
まるでマンガみたい…本番終わった高揚感のまま告るとか…でもあの音楽、心臓の音、楽器の音、弓の音、
全てが自分を守ってくれてる気がするから…
きっと今なんだ…今しか…

「気づかないわけないじゃん…━━━━━━━……」

この時の言葉だけはどこか遠く聞こえた。
きっと初めて先輩が“先輩”じゃなく発した言葉だったから

後輩を持って気づいた
“先輩”を捨てたら包んでたベールは剥がれてしまう
それは時としてただ打ち解けるより残酷だ

だからもう一度“先輩“の言葉で…
「私もずっと好きだったから…」
そう聞きたい…

空耳かな、先輩の声がした
あぁそうか、僕も引退したんだ…

「先輩…あの時はごめん…」
ほら見て、“先輩“みたいに少しはズルくなったでしょ

1

小説版ソラミミ(ソラミミの前日談的な)

“あなたがもう一度聞きたい言葉は何?”
僕は…あの時の…

「よろしくお願いします!」
この地域では結構強豪な(らしい)吹奏楽部に入部した。
入部の理由は極めて安易(というか不純)だった。
初心者でも大丈夫って言葉とそう言ってた先輩がクッソ可愛いってことだけ。
結果どうにかその先輩のパート、吹奏楽部で唯一の弦楽器、コントラバスパートに入ることができた。(ちょっと後悔してたけど)
やっぱり最初の頃は死ぬほどキツかった。
左腕は上げっぱなしだし、弓には慣れないし、運搬ただただ重いし、なのに先輩は僕より小さい体でサクサクとそれをやってのける。多分この時初めて好きとかを越えて人に憧れた。それからはもう下心とかもなく素直に先輩との時間が楽しかった。学校行事もコンクールも、

“楽しいまま終わらなければいいのに…”

「先輩!今日一緒に帰りませんか?」
初めてそう言えたのは最後の演奏会を控えた練習が始まった頃だった。最寄り駅までの道はどこか部活の延長みたいで、でも帰りの電車が揺れた時先輩に初めて触れてしまった。
あれ?別に隠してた訳でもないのに、
なんか…ドキドキする…なんで?
どうして先輩までそんな顔をするの?
「すみません、先輩、僕の不注意で」
でもズルいよ、そんなすぐにすまし顔するなんて。
先輩が“先輩”のままでいたら手出しなんて出来ないよ。
「大丈夫、あ、なんかドキドキした?」
だって僕は後輩である前に先輩に告ろうとしてる不届き者ですよ!?ドキドキしないわけないじゃないか
「すぐにそういうこと言わないで下さいよ」
「顔真っ赤だよ?(笑)」
「え?」
「なーんて(笑)でも楽しかった。じゃお疲れ様ー」
そう言ってタイミング良く先輩は電車を降りていった。

to be continued...

3

弾き語り

一度だけ、ラジオから流れてきた歌で泣いたことがある。
それは二年前。
まだミセスLocksがあった頃。

一人の少女はベッドでラジオを聴いていた。
「はあ、今日も疲れたな。」
いつものジングルが流れ、少し気分が上がる。
テーマでの会話はどんどん進んで、担当アーティストの時間になる。
その日はミセスグリーンアップルだった。
大森先生と綾華先生、二人での授業。
面白おかしいトークが始まる。
「あははっ」
どんなに疲れていても、その人たちの話で笑える自分がまだちゃんといるということを噛み締めながら、少女は笑う。
トークも終盤に差し掛かると、大森先生がアコギを出して、
「今日はアコギを持ってきたので、一曲歌おうと思います。」
と、言った。
少女はラジオ越しに拍手をする。
(何を歌うんだろ〜)
「曲は何ですか?」綾華先生
「『春愁』です。」大森先生
「おお〜、いいですね!」綾華先生
「では、ミセスグリーンアップルで、『春愁』」

(春愁………?聴いたことないな…)

アコギの音とともにその歌は始まった。

早いものねと心が囁いた〜
(優しそうな歌だな)
青さのカケラが行き交うがやっぱり 摘み取ることはできなかった〜
(サビが来る!)
大嫌いだ 人が大嫌いだ
(え、まって、、、)
友達も大嫌いだ
(涙出てくる、、、)
本当は 大好きだ 〜

少女の目から涙が溢れ出てくる。
理由は一つ。
歌詞への共感。

少女はそのとき、軽いいじめを受けていて、心身共にストレスではち切れそうだった。
それに加え、少女は両親の前で本音が言えない。
なぜなら、泣いてしまって何も言えなくなるからだ。

自分で発することのできない「大嫌い」と、
やっぱり、そんな人々・物への「大好き」が、
歌で代弁され、少女は歌が終わっても泣き続けた。

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長めの…って思ってたら長すぎました(*´ω`*)
なんか、私可哀想でしょアピールっぽくなっちゃった。

0

1歩

1歩踏み出せば、世界は七色に染まる
1歩踏みとどまれば、もちろん世界は何も変わらない

1歩後ろに戻れば、世界は途端にモノクロ
1歩踏み外せば、地面にどーん

頭打ってたんこぶできても周りをよーく見て?
自分と同じような人がいっぱいでしょ?
臆病で、心配性で、自尊心が低くて
みんなで落ち込んでたら、天から手が

「落ち込まないで!それより、踏み出したことを誇って!
ほら、上を見て!あなた達を2000億個の星が照らしてる!」

僕たちを励ますその声の主を、探している
だって、自分の頑張りを認めてくれる声だから!
君も一緒に探そう!

1歩踏み出したところで、世界は本当に七色になるの?
1歩踏みとどまったところで、何も変わらないなんて証拠もない

1歩後に戻ったところで、世界は本当にモノクロ?
ただ、1歩踏み外せば、地面にどーん

もしも、落ちた瞬間に翼が生えて空を駆けられたら、すっごく気持ちいいと思う
でも、そんなの一握り
だから、とりあえず黙って落ちましょう!

頭打ってたんこぶできてもこれは感じられる
自分と同じような人がいっぱいいる訳じゃない
自己中心的、自意識過剰、自分には考えられない
少し軽蔑の目線を流すと、白羽の矢が立った

「なんて目で見るの?あんたみたいな暗いヤツと居たら、
こっちまでレベルが低くなるじゃない!あっちに行って!」

僕を貶すその声の主を、探している
「あんたみたいなその他大勢なんて、誰も見てないよ?」
うるさいガヤは黙っててもらって

たとえ、進んだ先が崖でも滝でも砂漠でも
たぶん、そのちょっと先にいいコトがあると信じているから

進んでる時にまた落ちたら、誰かの助けを求めましょう
誰も助けてくれなかったら…ツギハギだらけの羽を作りましょう
そして、
「大丈夫、飛べるから」
って声に、1度だけ騙されてみよう
それができれば
「はなまるです!」

1

〜二人の秘密〜長文なので時間がある時に読んで下さると嬉しいです!

今日は久しぶりにいつもの窓辺で、足を外に出して座っていた。
『君がそうやって座ってるときは何かあるときだ。』
先生が後ろから声をかける。

「う〜ん、今日はちょっと違うかな〜(笑)。」
『というと?』
「何かあるわけじゃないんだけど考え事かな。」
先生は横に私とは反対の向きで座る。
『考え事?』
「うん。ほら、8月6日が来るでしょ?」
『8月6日?』
「あっ、そっか。先生、魔法の世界の事しか知らないよね!!」
『しかで悪かったな(笑)。』
「私は先生からたくさん学べるからそれはそれで好きよ(笑)?」
『私の話はいいんだ。8月6日、何かあるのか?』
「厳密に言えば何かがあったのほうが正しいかな。私の故郷は広島なんだけどね、76年前の8月6日、市内に原子爆弾が落ちたんだよ。」
『なんで?』
「ほら、魔法の世界でもあるでしょ?戦争。戦争があったの。」
『それで?なんで思い馳せてたわけ?』
先生は少し長い髪を耳にかける。

「う〜ん、最近思うんだよね。戦争とか紛争ってさ私達は経験してないからわからないでしょ?だけど思いを寄せることはできる。それって意味のある事だと私は思う。だからかな(笑)。」
『君のそういうところ、私はいいと思うよ。』
「先生に褒められると嬉しい〜。」
私はそう言いながら先生の肩に寄りかかる。

『どうした?』
「眠い。おやすみ。」
私はそうつぶやくと寝たふりをしてみた。
すると先生の温かい手が頭に触れる。
『落ちるなよ?…おやすみ。』

先生の優しい声を聞きながらこの『平和』な時間が続けばいいなと思った。
先生の温もりが伝わる距離で、手と手が触れ合えそうな距離に、このまま時間を止めてしまいたいと思う。