とあるぼくときみのはなし。
きみはいつも哀しげな表情(かお)をしているね、って、ぼくはくびをかしげた。
そしたらきみは、なんにも哀しくないよって、寂しそうに笑った。
だからふと、きみの手をとって繋いだら、きみはおどろいた表情(かお)をして、照れたように笑ったんだ。
僕はただそれが嬉しくて、ふいに顔をそむけたきみの瞳が、うつむいていたことにはきづかなかったよ。
だからなんだろう。きみが手を離したのは。
だからなんだろう。寂しげなその瞳が、なにも語らなかったのは。
ぼくはただひとり立ち尽くして、知らなかったふりをした。