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円環はみだし魔術師録 杖 解説編1

杖について解説します。
ぶっちゃけ分からなくても本編には影響無いです。
御安心ください。

1、この世界における杖
まず、この世界において杖は必須ではありません。
東方の国や北方の一部地域では素手で魔術を使うようです。
では、どういう物なのか?
結論から申し上げますと、「補助器具」です。
この世界における杖とは、クリスタルや木、金属などを使って作られた、魔力の充填、射出、魔術の詠唱省略などの機能を持った補助器具を指します。
極論、棒状で無くても上記の機能が備わっていれば「杖」です。
変わった形の杖の例としては、帝国神話における五人の聖騎士の一人、魔術師イユジュニスタ・ウディスコが愛用した杖は円盤型であった、と言う説があります。

2、普及率
そしてこの世界の杖の普及率は八割程度であり、殆どの魔術師が所持・使用している様です。
魔術師校などでも基本的に杖が必須で、ほぼほぼ無くてはならないものもなっています。
また、魔術師校などでは素手撃ちを教えて貰えないため、杖は必須だと思っている人が殆どの様です。
しかし、日常生活で利用する低級魔術は素手で撃つ魔術師も稀に居ます。

3、歴史
杖の歴史は今から二百年程前に遡り、沿岸部の村の若者数名が、帝国神話のワルプルギス島の真相を確かめようと遊びで砂浜を探索。その結果、砂の中から、幾つかの魔術書を含む書物が発見された。
その書物の中に杖の設計図が残されており、当時のウディスコ家当主バストン氏と他数名が再現し、実験を行った。その後杖の有用性が証明され、爆発的に普及。様々な組み合わせや素材、形などが研究され、現在に至る。
なお、ワルプルギス島自体は海底に沈んだ上に呪いの類で近寄れなくなっているため、真相は定かではないが、ワルプルギス島では杖の使用はされておらず、設計の間に島が滅んだと考えられている。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑰

ササキアが反射的に盾を構え直したのとほぼ同時に、『繭』の壁に亀裂が入った。亀裂は深く広く拡大していき、遂に一部が破壊され、その穴から外界の様子が見えるようになった。
「壊した!」
ニファンダの声。
「くぁちゃん、破られた!」
ボンビクスの呼びかけ。
「任せろ!」
ロノミアが“破城”を振るう。ササキアの盾の前に、ニファンダはほぼ反射的に『空間支配能力』によって、不可視の障壁を展開していた。
その『障壁』と大盾に、“破城”が衝突した。

――“破城”。ロノミア・オブリクァの固有魔法によって生成される『刀』の一振り。そして、その全ての『銘』には、能力に基づく意義がある。
『破城槌』という兵器が存在する。これは城壁や城門を衝突により破壊することを目的としたものであり、“破城”の銘もまた、これに由来するのだ。
“破城”の有する能力は、『防御の破壊』。その強度や特性とは無関係に、ただ『防御の意思』を感知し、強制的にそれを破壊するということこそ、“破城”の特殊効果なのだ。

刃は不可視の障壁に触れた瞬間、『空間の歪み』であるはずのそれを粉砕した。その勢いは衰える事無く大盾に直撃し、抵抗なく破壊した。
「なん……ッ!」
咄嗟に腕で受けようとしたササキアだったが、その動作をボンビクスの糸が妨げる。
結果として、ノーガードのササキアを“破城”の刃が捉えた。ササキアは衝撃を受けながらも後方に向けて跳躍したため、致命傷は回避したものの、“破城”の威力も相まって大きく弾き飛ばされ、ニファンダを巻き込んで後方数m、校舎の壁に激突した。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑯

(私がこいつに見せていない『刀』は0。……全ての手札が割れている……いや、一振りだけ、『能力は』見せていない刀があったな。となると……決めるなら“破城”しか無いな)
ササキアの手刀が手首に直撃し、ロノミアは“血籠”を取り落とした。
「ぐッ……!」
続いて放たれた拳を、ロノミアは無事な片手で受け流した。カウンターで肘鉄を打つが、ササキアはそれをわけも無く受け流し、隙だらけの背中に膝蹴りを叩き込む。
「ぐあっ……!」
更に続くササキアの攻撃を、ロノミアは転がるように回避し、距離を取った。
「クソっ、痛ってぇ……」
(……粘るな。何が目的だ? とにかく、こいつを倒すか、やり過ごさねば、元凶であるあの双子を倒せない。……恐らく、こいつは私の盾を破壊したことで、『追加武装』がもう無いと考えている。決めるなら、『あの盾』だな)
ササキアは連続で蹴りを放ちながら、ロノミアを追い詰めていく。
2人の戦闘は徒手による格闘に変わり、ササキアの優勢で激しく動き回りながら打ち合う。その間にも糸の帯は数を増していき、領域内は複雑な地形を成していく。
「っ……」
ダメージの蓄積により、ロノミアが膝を屈した。その隙を逃さず、ササキアが蹴りの姿勢に入る。
その時、ボンビクスの糸束が、ササキアの軸足に固く絡みついた。即座に、ロノミアがやや前のめりに重心をずらす。
((……今!))
ササキアは持ち上げていた足を素早くその場に振り下ろし、右腕に『追加武装』を出現させた。十字架を膨らませたような形状の、全長2m程度の金属製の大盾。その側面は、刃のように加工されている。正しく『大剣』の様相である。
対するロノミアは、膝をついた姿勢のまま、巨大な斬馬刀“破城”を手の中に生成した。
2人がほぼ同時に武器を振り、直撃する寸前。
「モリ子ぉっ!」
ロノミアの掛け声で、別の糸束が彼女を捕え、ボンビクスの方向へと引き戻した。それにより、ササキアの攻撃は空を切る。
糸束から解放されたロノミアは、慣性によって領域内壁に着地し、即座に跳躍した。ロノミアは更にササキアの後方に張られた糸帯に着地し、慣性に任せて深く膝を折る。
(来る!)
ササキアが大盾を構える。しかし、攻撃が来ない。ササキアが盾を僅かにずらすと、ロノミアは糸帯に垂直に着地した態勢のまま、“破城”を構えていた。