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ファースト・テンプレート 3

『おぉ済まんな中木』
「いいぇ、なにかあったんですか?」
迂回路はかなり正解だった、30分ほどで会社に戻れた。あとでこのSUVを洗車にでも連れてってやろうと思った。
会社に着くなり、私は会議室に来るよう言われ、数時間前のデジャヴのような感じがした。
本来私がいるべき場所ではない。私の地位は社内では上の方とは言え、次長。この社内で会社の重要なことを決める『本会議場』にいるはずがないのだ。
パンっ!
副社長の来栖が一つ手を叩く。
『今回、社長、専務、営業管理部長の三名をのぞいたみなさんに集まっていただきました。結論から言いますと、先の三名は来週書類送検される予定です。』
あまりに急すぎる、会議室がざわめき出した。
『緊急で先ほどここのメンバーでのグループLINEを作りました、そこに音声ファイルが共有されているはずです。』慌てて他の役員がスマホを取り出す。取り乱しているのだろう、普通は会議が終わった後に確認するはずだ。
ん?
なんだろうか、来栖が私に視線を送った。冷静だと思っていた自分が冷や汗をかいていたことには、そこで初めて気がついた。
走馬灯のようにめぐる思考。払い切れていないローンに、会社の規模からに起こる明らかなイメージ低下、それによる減給。転職か?それしかないだろ。どこに転職か?妻にはなんと言えば良い?
とりあえず、この会議、嫌な予感がする。私の転職を許さない何か、また、これからの現実を押し付けられら何か。

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百舌鳥と愉快な仲間たち__12

なんとか蠢くアリエヌスにレヴェリテルムを突き立てようとするユニシンクトゥスの視界の端に、アリエヌスの口と思しき場所からすぽんと何か転がり出て落ちていった様子がうつった。
「……脱出したか……」
呟くユニシンクトゥスの遥か下方でブケファルスとカウダが転がっている。
「うぉーなんとかなったー!!あのアリエヌス絶対潰す!!」
「…酔った…背中痛いし…あーもう帰りたい…」
「んなこと言ってる場合かよ!!」
ブケファルスは気色ばんでカウダを小脇に抱えてユニシンクトゥスのところまで這い上がった。
「…無事か」
「まあ、なんとか…ですけど」
ブケファルスに抱えられたままカウダは微笑む。

不意に、形容し難い甲高い音が鳴り響いた。音の方を見ると、ぐったりと倒れ込むアリエヌスの目にレヴェリテルムを突き刺した状態で揃って耳を塞いでいるカメルスとフスがいる。どうやら耳障りなこの音はアリエヌスの目から鳴っているらしい。勢いよく空気が漏れ出ているようだ。
「……先に倒したか…」
呆然と見ていた3人の足元の揺れが収まった。さっきまで鮮魚の如き動きをしていたアリエヌスがぴたりとその動きを止めていた。
「よくわかんないけど…ダメージ負ってんのか?」
「というか何かしようとしてるんじゃない?」
「…曖昧だな…どちらにせよ今がチャンスだ…」

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ファースト・テンプレート

腕時計は時計は10:30を指していた。
『朝は涼しかったのに、急に暑いですね。』
私は、銀座の取引先の会社の最寄りの駐車場にSUVを停め、久々のダッシュで来た。
ブレザーを脱いで鞄に仕舞うと、取引相手の部下らしき人が、ペットボトルのお茶を置いた。
「もう、ほんと参っちゃいますよ。」
それっぽく私は、口角を上げた。
『失礼します。』1つ会釈をして部屋を出た。

「あ、どうも!すみませんお待たせして。」
私は取引相手が入室し慌てて立ち上がり会釈をした。
『あぁいいよそんな、まぁ疲れたでしょ。エアコン付けるよ。』
「あぁ…」反応に困る。
「すみませんほんと。」
この手、相手のご厚意に甘えたいところだが、私は素直に育てられたゆえ、これからの罪悪感に耐性がない。
…
『あぁ、いいじゃん、こっちでも考えておくよ。』
「あぁ、ホントですか?!ありがとうございます。」
契約は順調。と、いったところだろうか。私は午前の仕事を終え、近くのコンビニに向かった。
交差点、信号をを待っていると、突然電話がかかってきた。
『あ、もしもし中木君?』
「はい、何かありましたか?」
『あ、いや急ぎでこっち戻ってきてほしい、まじで緊急。』
何があったかはよくわからないが、とりあえず私はSUVを走らせ、迂回路を通り会社に向かった。

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ファースト・テンプレート

夏は早く長く、アブラゼミはしぶとく生きている。おそらく蝉の寿命が一週間だなんて嘘だと思う。猛暑、猛暑、猛暑…。三寒四温からの真冬日からの春後半、初夏の気温は当たり前だ。まるで今が夏みたいな言いぶりだが間違えない春だ。今言ったのは忘れてほしい、去年の話だ。

変な気温は、頭でわかっていても体は追いつかないみたいだ。
「あれ、沢本は?」
「風引いたって、なんかあれだよ、寒暖差アレルギーか。」
ふーん。
現代人は働き過ぎだ。
「あ、じゃぁ銀座の方まで行ってきます。」
おぅ、と一言言われ、資料だけ取ってすぐさま私は駐車場に戻った。初任給と貯めてきたバイト代で5年前に買ったSUV。ラジオは今日の渋滞情報を流す。
午前8:25分

ー海老名IC付近を先頭に上りに10kmの渋滞………ー
今日は三連休の月曜日。皆は帰宅ラッシュとやら私とは無縁の物にまんまとはまっている。

「まじか…」
一部が高速から時間短縮のために一般道に流れたらしい、少し混んでいる。
……………
完全に止まってしまった。私は今日の契約先と、会社に事態を知らせ1時間ほどの遅れを許してくれた。なんと心の広い。
周りをチラチラしていると車窓の向こうの車窓の向こうから手を振る人がいた
「あ、!さか…」気づいて窓を開ける
「酒井さんじゃないですか!」
『久しぶりだね』
学生時代のバイト先の店長である。
「混んでますねぇ。」一拍置いて酒井は懐から一本のタバコを取り出す『まぁ仕方ないよ。』足を組んで答えた。「酒井店長、タバコ変えたんですね。」ようやくこっちを見た。『あぁまぁ、あんまりうまくないけど、ニコチンとか少ないヤツにしてね、まぁいつかは、タバコを辞めたいな。こんな調子じゃ無理そうだけどな笑。』私は愛想笑いをする。
車が流れ出し、私は会釈をして窓を閉じようとした。
『あ!中木!』
「なんですか?。」すっと酒井は私を指さした。『今を生きろよ、じゃ元気にやれよ。』
「酒井さんこそお元気で。」
こんどこそ窓を閉め、アクセルを踏んだ。

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二人の囚人がいた。 その①

二人の囚人がいた。一人は泥を見た。一人は星を見た。
星を見た囚人は、いつかあの星を掴みに行こうと言った。その言葉は、二人の希望になった。
泥を見た囚人は、我々のいる場所はこんなにも汚く醜いと言った。その言葉で、二人は現実を見つめ続けることができた。

ある日、牢の錠が外れていた。
星を見た囚人は、今こそあの星を掴みに行こうと言った。その言葉で、二人は自由へ踏み出すことができた。
泥を見た囚人は、我々の行く道はこんなにも泥濘んでいると言った。その言葉で、二人は転ぶこと無く歩き続けられた。

二人は並んで荒野を歩き続けた。
星を見た囚人は、あの山に登れば星に手が届くやもと言った。その言葉で、二人は疲れた足を動かし続けることができた。
泥を見た囚人は、我々の行く道はこんなにも湿っていると言った。二人は泥水を漉して、少しだけ喉の渇きを癒やすことができた。

二人は泥濘の中に粘土を見つけた。
星を見た囚人は、素朴な素焼き人形を作り上げた。温かなその作品は、旅人の胸を打ち小金と交換された。
泥を見た囚人は、無骨な壺を焼き上げた。頑丈なその作品には、旅の荷物を収めることができた。

二人の行く道は、次第に固く乾いた土を纏いだした。
星を見た囚人は、空を暗雲が埋め尽くすのに気付いた。その発見は、二人の喉を潤す清潔な雨水の到来を示した。
泥を見た囚人は、しぶとく根を張る雑草の虫食いに気付いた。その発見は、昆虫と野草という僅かで明確な食料の存在を示した。

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最近

すっかり新しい環境に慣れてしまって
輝きを失った新入生が
もうすぐ「先輩」になろうとしています

数年前は”深夜”だと思っていた25時台がやってきても
わたしはもうびくともしません いつもの時間だから
夜の波に呑まれてしまう、と慌てて眠っていた頃が懐かしく愛おしい
人間はこんなにも冷めてしまうのか、と自分の成長を悲しく思ったり
これが皆が掲示板からいなくなっていく理由か、と納得してしまったり

テスト期間には相変わらず涙を流します ひとりで
中身は強くなれていないようです ちっとも
こんなに夜更かしできるようになったのにね。

SOL!と出会った6年前
毎日連絡を取り合う友達ができました
23:59まで掲示板上でお互いのことを話し合いました
バンド掲示板で吹奏楽のことを話したり
恋愛掲示板でみんなの恋を後押ししたり
学校掲示板では座禅部を名乗って
彼氏や彼女ができたメンバーには「幸せになりやがれ!」と
顔も知らないのに喜び合って

段々とここを卒業する人が増えて
レスが二桁を超えるような投稿が見られなくなって
わたしが話していた相手の投稿はぱたりと途絶えていました
インターネットでつながっていた縁は ずっと続く訳ではないし
インターネットでの会話だけでその人の全てを理解できている訳ではないことを
静かに、確かに、感じさせられました

わたしもいつかそうなるのかもしれない
でもわたしがここで呟きたいと思う限りは、
ここに言葉をのこしていこうと思うのです

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転生するのも案外良くないものだ p.5

 ただし不満がない訳ではない。

 例えば宗教学的に見れば、宗教は古代的なアニミズムがあるようだが、立派な神殿や聖典、確固たる教義は存在しない。

 御天道様にお祈りを捧げる、埋葬する、といった文化はある。しかしキリスト教をはじめとする前世に存在した宗教、また街の方の宗教のような、支配と結びついた宗教ではない。一神教と支配について好んで学んだ身としては非常に残念である。

 人文科学の点から見ても、我々の使用言語にはそもそも文字がない訳だから歴史研究や文学の発展もないに等しい。勿論口伝の神話や寓話は存在するが、それ以上の『文学』は私が見たところ存在しないようである。私は前世、本、殊に文学や古代史書、天文学書をよく好んで読んだのでその点落胆した。

 また、コマ=リャケットには文字がないと述べたが、文字を覚えられる者が殆どいないのである。
 
 集落の中で公用語を話せる者は一割程度、その上記述が可能な者は一人といった具合である。それにはやはり鱗と鋭い爪で武装した使い勝手の悪い指という身体的な特徴の原因もあるが、主な理由としては知能の低さにあるであろう。

 元は人間である私も今では立派にコマ=リャケットである。知能の低下に抗う術は持っていなかった。

 まず思考力が低下していることが分かった。計算は随分遅くなった。小学生の頃と比べてもあまりにも遅い。
 それに、高校や大学で当然に説明のできた理論が理解できなくなった。知能の低下に気が付いたときに一つ一つ確認したところ、虚数が理解できなくなっていたのだから驚きだ。

 補足しておくと、コマ=リャケットの脳機能は十年程度で成熟する。私が他の者よりも極端に知能が低い訳でもないようだ。

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転生するのも案外良くないものだ p.4

 一体街はどれほど文明が進んでいるのかと思い行商の者に話を聞くと、あちらでは動力のない巨大な馬車が轟音を上げながら走っていると言う。恐らくは蒸気機関車であろう。電気が通っているかどうかは測りかねる。今の私にとっては灯油ランプと電気の違いを彼らに説明することは困難なことだ。

 彼らの話を総合すると、どうやら街は、あるいは人類は産業革命時程度の文明を持っているようだ。

 街の亜人らは魔力を持ち魔術を操るので産業革命時程度だが、それらを持たぬ人間はより発展した科学技術を有している可能性が高い。コマ=リャケットの文明は未だ中世の農村共同体程度で止まっている訳だから、人類、殊に人間と比べれば雲泥万里というものである。

 しかし、文明未発達といえども、周囲の生活に合わせていれば大した苦労はない。

 コンクリート・ジャングルで時間に追われた生活をするのも、充実感に満たされていて嫌いではなかった。ただ、今の自然の中の共同体的な生活も悪くない。時間が悠然と流れて行き、それに身を任せる。
 人の形をしているとはいえども分類上は爬虫類。子供は過酷な生存競争の中で生き延びねばならぬものと覚悟していたがそれも杞憂に終わり、成人するまで親の扶養を受け、誠実に秩序を遵守していれば成人したのちも集落の中で暮らすことができる。類稀な平和を享受しているように思う。

 現在の私は幸福感で満ち満ちている。

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転生するのも案外良くないものだ p.3

 さて、この身体は元人間の私には申し分ない身体である。文明未熟の点、始めは不安を抱かざるを得なかったが、コマ=リャケットとして生を受けて九年、慣れてしまえば問題はない。

 コマ=リャケットは三十人から五十人規模の小共同体を形成して殆ど自給自足で生活する。

 我々は一般に魔物に分類されており、人類からは文明とかけ離れた存在として扱われているが、魔物にも文化や文明といったものは存在する。魔物としては人類文化からは学ぶことが多く、少しでも彼らの文明世界に追いつこうという心意気を持っておおよその人類とは親しくしている。

 しかし人間はというとかなり鎖国的で、他種族との交流を持とうとしない。他の人類、例えばエルフや獣人、亜人すらも野蛮として扱っているらしく、人間の国にはとても近付けないという。

 思えば前世における人間もそうして発展していった。
 どの世界でも人間は愚かだ。

 いや、魔物や獣人のような身体的な強さもエルフや亜人のような寿命も魔力も持たぬ人間が種を守り抜くためには致し方がないことなのだろうか、私が知らないだけで魔物や人類の国でも差別や戦争が蔓延っているのだろうか……。

 兎も角も、私の浅い知見で判断できるものではない。

 話が逸れてしまったが、そういう訳で、人間が国家を建設するように、魔物や人間以外の人類にも立派に国家があり、都市や市場がある。そういうところでは公用語や文字が存在するが、コマ=リャケットに関しては国家とは乖離した農村共同体的な集落を形成している。

 年に二回、秋春に集落の行商男達が中央山脈とその向こうに横たわる大河とを超えて、人類の街に家畜や鉱石を売りに行き不足物、衣料品や物珍しい嗜好品を荷馬車一杯に買って帰ってくる。彼らがチョコレートやビスケットを買ってきたときは感嘆した。

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転生するのも案外良くないものだ p.2

 まず、繰り返しになるが苦痛がなかった。全くの無とは勿論言えないが、直前のあの一瞬だけの痛みであるから、比較的宜しい。

 次に転生を果たした。死後の恐ろしい無はなく、早死にの未練で現世にしがみつく怨みや何かはなく、両親より先に死んだ罪障もない。これは非常に宜しい。

 また、今まで歩んできた人生のことを思っても文句はない。勤勉な父上の馳駆によって食うに困ったことはない。几帳面な母上によって家庭環境は整備され、私は幼少の頃より剴切な情操教育を享受していた。良師、良友にも恵まれ、国立大学進学も叶った。
 就職も順調に行き、地方企業でプライベートを保障された独身貴族生活を送り、上司にも恵まれた。

 私の周囲は人格者ばかりで、しかし私自身は大した劣等感もなく、万事上首尾であった。その中で死んだのだから、これは非常に宜しい往生である。これ以上の高望みは足るを知らなすぎるというものだ。

 さて、転生したのちの話をしよう。

 私は人間には転生しなかった。
 人文学的には人類として分類されると言うが、生物学的には爬虫類として分類される。赤褐色の硬い鱗で身を包む、二足歩行の巨大蜥蜴。それが私の転生した高知能爬虫類コマ=リャケットである。恥ずかしながら異世界に知見がないため、現世でこれに当たるモンスターやクリーチャーを知らないのだが、読者諸君が想起しているもので正しいと思う。

 語意的な話をすると、コマ=リャケットの言葉で、コマが『人』、リャが『蜥蜴』、エットが『大きな』の意を示す。
 この言語では被修飾語となる名詞の直後に修飾語を追加していくが、『リャェット』は大きな蜥蜴という単語として存在しているため前記のように分けている。

 前世で言うところの『c』の発音が『〜のような』を示すらしく、それでは種族の自認として『蜥蜴ではなく人間だ』というのがあるのかと始めは思っていた。しかしよく聞いてみるとコマの後にも『c』が付いていたので、どちらでもないというのが自認として正確なところであろう。
 多分我々は蜥蜴も人間も大した違いのないように感じているのだとも思う。

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転生するのも案外良くないものだ p.1

 読者諸君には突然で申し訳ないが、私は死んだ。

 私にとっても突然のことだった。
 駅のホームで、酩酊する青年にぶつかって、入ってきた通過電車に轢かれて死んだ。大した痛みはなかった。それは本当に良かった。自分は死というのは一体どのような心地であろうかと無意なことを人生の中で時折考えたものだが、そのときはいつも、できるだけ苦痛なく、かつて読んだ小説の主人公が思い描くような当にそのような死に方をしたいと思っていた。現実に死に際し、苦痛を伴わずに死ねたことには、神や仏や、もしくはそれ以外の死を司る者らに深い感謝の念を抱かずにはいられない。

 とは言えども、その後が問題である。
 人は死んだ後どうなるのか。様々な説が飛び交っているが、持論を言わせてもらうと、それらの説の殆ど全てが正しいと考えている。結局はどれに当たるか、という問題なのではなかろうか。それが偶然にしろ必然にしろ。

 では私はどれに当たったのか。

 私の場合は転生だった。
 読者諸君の恐らく大部分が今頭に浮かべた『転生』の意で取ってもらって問題ない。巷では『異世界転生』といって、非常に大きな市場規模を誇るエンターテイメント・ジャンルの一つであり、若い頃には一度は皆憧れたであろうトピックである。私も幾分か読んだし、ある一作は我が短い生涯の愛読書となった。私は今、その渦中にいるのである。正直なところ、満更でもない。

 確かに私は寿命を全うせずに死んだ。親の死に目にも会えないままだ。当然ながら友人らに挨拶して廻った訳でもない。やり残したこともここらある。
 しかしながら、今のところは最大限に幸福だという自信がある。

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あなたも入る?ようこそいか教へ!続き3

第二章 イカの心得って?
そして、爆速で廊下を走り、なんとかホームルームに間に合い、1時間目を受け終わった二人であった。。。
休み時間______
「・・・それで、いか教って何をするの?」
「うむ、まずはいか教3つの心得を教えてやろう!」
「3つの心得?」
「うむ、まずは毎日イカを食べること!」
げっそんなぁあ。。。アレルギーになっちゃうよお
「そして!」
まだあるの?
「給食のときには必ずしもいかのおかわりを第一にすること!」
え〜まあ、いか、好きだからいいけどさあ。
「最後に!」
多くない?
「回転寿司ではイカのお寿司を6個は食べること!」
ええええええええ!
「ちなみにわしはイカしか食べんぞい。」
はぁぁぁぁぁぁぁぁ?!狂ってるんじゃ。。。
「ま、そういうことで我が信者よ、よろしゅうな!ああ、あと日頃は信者を多くする活動を。。。なんちゃらかんちゃら」
ああもう、なにこれ。やっぱり変な人に出会っちゃったな。
「〜〜〜だから、良いか!」
私は耳にタコができるほどの説明にむしゃくしゃした勢いで、
「う〜んもう!はいはいわかりましたよぉ!信者になりますぅ!!」
と答えてしまった。あああああああああやってしまったー!私はうつ伏せ状態になった。こんなことしたら私の新しい第1歩を踏み外したことになるじゃないか!(失礼)もう、きっと雀は嬉しそな顔をしているんだ。。。そして私が顔を上げるとそこには。。。
「ヒックヒックぐすん。。。え〜んえ〜ん」
雀が泣いていた。は、はぁ?!な、ないてる?もしかして、泣かせちゃった?!
「ど、どうしたの?」
「だって、だって、断られるかと思ったんだもん。。。みんな、私が誘っても、断ってどこかに行っちゃうの。。。」
断れるようなことするなよ。。。そんな気持ちもありながらも私は優しく雀を撫でた私であった。続く。。。

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あなたも入る?ようこそいか教へ!

「もう、、、行くから。。。」
そう言って私は猛ダッシュ!こう見えて私足速いし。
「まて〜い!」
って!足はっや!はぁ、はぁ、ここまでくればもう大丈夫?ああ、ここに貼ってあるのは地獄の紙。その名も。。。「クラス表」ドーン!私はAクラスなのか、Bクラスなのか、はたまたCクラスなのか、ドキドキドキドキドキドキ。勇気を持ってその地獄の紙を見る。______
A!29番!すかさず次の番号の人を見る。まあ、それが私のいわゆるくせ。う〜んと。。。「大王雀」か。。。すずめ?キラキラネームやん。{ここで豆知識!出席番号は名字のあいうえお順だけでなく、名前のあいうえお順があるのだ!ほかにも、誕生日の順番もあるんだよ!(今学校は誕生日だね)}仲良くできなさそう。。。まあ、それはいいとして、そして特に知ってる人はいない!いじめっ子もいない!最高だああああああ!私は絶叫しそうになった。その時。。。
「まて〜い!」
そ、その声は!いかっこ〜?!(いかの信者と言ってきた子の略)
「はぁ、はぁ、お、追いついたぞぉ〜」
なんとも幼い声。ていうかあの子の名前知らないんだけど?高校生ならこのクラス表に載ってるはずよね。一応聞いておこう。
「あのぉそのなんていうかお名前をお伺いしても。。。」
「うむ、良かろう。わしは大きい王、雀と書いて、大王雀(するめ)じゃ!」
ふーん。。。って!さっきの。。。〜「大王雀」か。。。すずめ?キラキラネームやん。仲良くできなさそう。〜???????????!!!!!!!!!!!!ham?!ていうことは同じクラス?
ああ、なるほど、なるほどね〜あ、なるほどね〜(理解できず無理やり理解しようとする図)。へにょん(理解が追いつかなくて倒れる図)
「うわ!おぬし、大丈夫か?!よし、わしが運んでやろう!」
「だ、大丈夫ぇす〜一人で歩けまぁ〜す!私の名前は中村友奈でぇす」
「別に名前は聞いてないが。。。」
このとき、二人は思った。やばい、変な人と友だちになってしまった。と。
第二章に続く。。。

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あなたも入る?ようこそいか教へ!

第一章 あなたはだれ?大王雀!
新学期。それは始まりの季節。中村友奈は新たな一歩を踏み出そうとしていt
「そこの方!」
うああ。びっくりしたあ。急に何だ?誰かにこんな大声で呼びかけるなんて。。。うん、変人だな。変人がここに1名いるだけ。よし、気にせず行k
「お〜いあなたですよあなた!」
え、私?私、そんな変なことしたっけ?聞き覚えのない声だし。。もしかして、私、変な人に目つけられちゃった〜?!うん、きっと気のせいだ、気のせい。私には言ってないと思うし。
「トントン!ちょっと、あなた、なぁ〜に無視してるんですかぁ〜?」
か、肩を叩かれた。。。こ、これはもう。。。た、助けてぇ〜(声かけられてるだけ)でも、新学期だ。ここで逃げてはいけない!うん、勇気を持って振り向いてみよう。新たな新学期と思って!そして、私は振り返った。
「は、はいぃ〜?」
うん、我ながら最悪の始まりだ。こんな最悪な声が出るなんて。。また逃げてると、おとなしいと思われる。噂されて。。。ああ、また_____
「あいつ暗すぎw」「それな?」「この前、発表でまぐれであたったとき緊張しすぎて「ああっああっ」しか言えなくてw」「いじめても何にも言わなそうw」「いっそやってみる? w」「やろw」ああ、ああ、ああ!やめて、やめて。。。
「何をボーっとしているんですか我が信者よ。」
はあっ?し、信者?!そう思いながらも私は緊張してその人の顔を見られない。
「ど、どういうことですか?」
そう言って少し顔を上げる。
って!ショタやないか〜い!え、なんでここにいるの?ここ高校だよ?
「ま、迷子かな〜?」
「わし、高校生だもん。」
そりゃそーだ。ってえ?!ちびすぎん?
「そんなことより!我が信者よ!」
だから信者って何?
「わからないのか?わらわにこえをかけられたということはいか教の信者ということだぞ!」
しらないよ!そんなルール!ていうかいか教って何?もう、かたっぱしから変な人!(背が小さすぎるし!)
「もう、、、行くから。。。」
そう言って私は猛ダッシュ!こう見えて私足速いし。
「まて〜い!」
って!足はっや!はぁ、はぁ、ここまでくればもう大丈夫?
どうなっちゃうんだ〜?!
続く。。。

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百舌鳥と愉快な仲間たち_1〜6まとめ

情緒不安定でカテルヴァの所属経験がない14歳のアヴェス、ラニウス ブケファルス。
ある日突然、彼の家に三人の所謂問題児のアヴェスが訪ねてくる。凄まじい癖毛と乱暴な口調が特徴のストルティオ カメルス、小柄で愛想の良いアエギタロス カウダトゥス、おどおどして押しに弱いヴルトゥル グリュフス。突然同室となった個性的な同期に困惑しつつ、ブケファルスは彼らと交流を深めていく。
ブケファルスと問題児三人が同室になってから二週間経った日、四人で出かけている最中に大型のアリエヌスが襲来する。ブケファルスとグリュフスはアリエヌスから街を守り、カメルスとカウダトゥスは『先輩』と呼ばれる年上のアヴェス、パラブーテオ ユニシンクトゥスに救援を求める。

いつも読んでくださったり、反応をくださっている方々、ありがとうございます。
高校生活が忙しく投稿頻度が減り、今週からテスト期間にはいるためまた投稿頻度が減るので今回は続きではなくまとめを書いてみました。つたない文章、意外性のない展開になりがちなのですがこれからも執筆は続けようと思います。
最近気温が低く、インフルエンザも流行っているので体調にはお気をつけて。

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毎日

久しぶりに、とここに書く回数が増えた

毎日が淡々と過ぎていく
課題をこなすだけの今日がやって来る
「この後、学校で何しよう」と考える暇もなく
90分間の授業に拘束される日々が続いている

中学生の頃の生活が既に懐かしい
ケータイを握りしめて
好きな人からのメールを待った
ダサいと言いながらも皆で同じ体操服を着て
クラスの旗を囲んで集合写真を撮った体育祭
たった15分の劇に数ヶ月を捧げた文化祭
この前、久しぶりに行った中学校には
おままごとみたいな空間が広がっていた
どこか大人になりきれない、「守られている」世界があった

ここで過ごした青春を絶対に忘れたくないと思った
人間関係に悩んだ時、お世話になった保健室
進路が決めきれず先生と話し続けた進路指導室
理想の音楽に向き合った部室
転校するあの子と最後に話した下駄箱前
好きな人とふたりで過ごした朝の教室
あの時日常だと思っていた毎日は、
振り返るときらきらと輝いている
あの子が、クラスメートが、先生が、あの人が、だんだんとあの頃のことを忘れていったとしても
自分だけは、忘れずにいたい

それは今も同じことであって
この無機質な毎日が、数年後、数十年後には
戻りたくなる「あの頃」になるかもしれない
だからこそ、今を大切に
心だけでも、ときめいていたいと思うのです

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Specter children:人形遣いと水潜り その㉕

「私の腕?」
蒼依は天邪鬼が逃げ出してから気を失うまでの経緯を、冰華に説明した。
「えっ頭大丈夫⁉」
「言い方ぁ」
「良いから! ぶつけたところ見せて!」
「別に……この程度よくあることだし……」
言いながら、蒼依は濡れた前髪を掻き上げる。彼女の前頭部、やや左寄りの場所には、浅く抉れたような傷が残っていた。
「結構ひどい怪我じゃん!」
「だからこの程度平気だって……」
「平気ではないよ⁉ きちんと手当てしよう⁉」
「分かったよ……取り敢えず、冰華ちゃん家に戻らせてもらっても良い?」
「もちろん! 手当もちゃんとしなきゃだね」
冰華は川の方を向き、大声で呼びかける。
「それじゃあみんなー、鬼の死骸の処理、お願いできるー?」
その問いには、多くの泡沫や飛沫が応えた。
「よし、これで後始末もオッケー!」
「ありがとう。あっそうだ、私も人形回収しなきゃ」
蒼依が川に向けて手招きすると、水中から大きく広がった網状の物体が持ち上がった。
「わぁっ、それも人形が変形したやつなの?」
「そうそう」
気絶する寸前、蒼依が“奇混人形”に授けた命令は、『下流方向100mまで移動した後、網状に再変形して川を塞ぐこと』。水流に巻き込まれるように逃亡していた天邪鬼は、その網目に絡まったために不運にも水上に顔を出すことができず、呼吸不能の状態で川に潜む河童たちの襲撃を受けて絶命したのだった。更に、“奇混人形”の網は蒼依の手を離れた『冰華の腕』もまた、網目に絡め取られ、河童が回収することを可能としていたのである。
「……いやぁ……しかしまぁ」
歩き出しながら、蒼依は大きく伸びをし、小さな欠伸をした。
「どしたの蒼依ちゃん」
「……疲れた」
「お疲れ様。帰ったらお風呂入って、ご飯食べて、しっかり寝ようね」

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Specter children:人形遣いと水潜り その㉔

瞼の向こうに光を感じて、蒼依は意識を取り戻した。
「…………? 腹が、重い……?」
蒼依の視界に最初に入ったのは、彼女の腹部を膝で押している冰華の姿だった。彼女の両腕は、未だその肩から抜けたままである。
「……冰華ちゃん、何やってんの?」
「あ、蒼依ちゃん起きた。いやぁ、追いかけてきたら蒼依ちゃんが川に下半身突っ込んで動かなくなってたから、溺れたのかと思って水吐き出させてたの」
「もう平気だから退いて?」
「うん」
冰華が身体の上から退いたことで、蒼依も身体を起こす。周囲を見回すと、空は既に白み始めていた。
「もう朝か……」
「うん。……あ、あの鬼は⁉」
忙しなく身体を揺らしながら尋ねる冰華に、蒼依は立ち上がりながら答える。
「見に行こうか」

下流に向けて並んで歩いていると、川の途中に不自然に木片や木の葉などの浮遊物が滞留している地点があった。
「なるほど……あの辺か」
二人がその場所に近づくと、水面に小さなあぶくが浮かび、1体の河童が姿を現した。その手には、流されたはずの『冰華の腕』を掲げている。
「あっ、私の腕! ありがとー」
冰華が腕を肩に嵌め直している横で、蒼依は腰ほどまで川に踏み入り、水中を手探りし始めた。
「蒼依ちゃーん? 何してるのー?」
「んー……あ、いた」
蒼依が再び川から上がる。その手には、ぐったりと動かない天邪鬼を引きずっていた。
「死んでる?」
「脈は無かったよ。溺死かな。あるいは冰華ちゃんの腕が偶然掠ったか」

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Specter children:人形遣いと水潜り その㉓

天邪鬼を追って木立を抜けた先は、河原だった。
(この河原……冰華ちゃんが河童たちと会ってたあの川か! 気付かなかった……)
「……そんなことより!」
蒼依が下流方向に目をやると、天邪鬼の長い腕が浮き沈みしながら流されていくのが確認された。
(野郎……流れを使って逃げる気か!)
蒼依は四足獣化した“奇混人形”から降り、天邪鬼の流される方向に向けて駆け出した。更に手の中で“奇混人形”を短槍の形状に変化させ、投擲できるように構える。
「……いや。どうせなら」
蒼依は大きく跳躍し、そのまま川に飛び込んだ。同時に“奇混人形”をスイムフィンのような形状に変形させて自らの両脚に装着し、水を蹴って水中から追跡を再開した。
ただ藻掻き続けるだけの天邪鬼と、明確な意思を持って泳ぐ蒼依の距離は少しずつ縮んでいく。両者の距離が5mを切ったその時だった。
「ぐっ……ぁっ……⁉」
天邪鬼が水中で振り回していた右腕が、川辺に転がっていた倒木にぶつかった。更にその衝撃が倒木を動かし、水中へと転げ入ったうえ、タイミングよく蒼依に直撃したのだ。
そのダメージで蒼依は肺の中に残っていた空気をすべて吐き出してしまい、同時に緩んだ掌から『冰華の腕』がすり抜け、水流に浚われてしまった。
(クソッ、しくじった……武器が……冰華ちゃんの腕が……)
衝突の勢いで回転しながら、蒼依は天邪鬼と『腕』が流されていった方向を見やる。
(クソ……頭痛い……変に打ったか……? ……これ、私は追えないな)
蒼依は最後の力を振り絞って水面に浮かび上がり、どうにか息を吸い込む。そして――
「っ……冰華ちゃんの腕が持ってかれたァッ!」
掠れた声で叫び、態勢を崩して再び水底に沈んだ。
(もう駄目だ……『私には』追えない…………だから)
蒼依は薄れゆく意識の中、“奇混人形”を変形させ、魚のような形状で下流方向に送り出す。
(『友達』、なんでしょ……? 何とかしてよ、“河童”ども)
“奇混人形”の行動プログラムを設定し終えた蒼依は、酸欠によって完全に意識を喪失した。

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Specter children:人形遣いと水潜り その㉒

天邪鬼の爪に切り裂かれるより早く、冰華は腕を片側に伸ばして手近の木の幹を掴み、身体を引き寄せるように回避した。更にその慣性を利用して腕を完全に肩から引き抜き、素早く距離を取る。
「蒼依ちゃん、残しといたから!」
「助かる!」
蒼依は“奇混人形”を走らせ木の枝に掴まっていた『冰華の腕』を掴んだ。そのまま掌を天邪鬼に向けるように『腕』を突き出し、魂の奪取を狙う。天邪鬼は大きく身体を反らせて回避し、バランスを崩して倒れかけたところを尻尾で身体を支えることで持ち堪えた。
天邪鬼が身体を起こした次の瞬間、蒼依が突撃を仕掛けた。跳躍し、天邪鬼の角を掴み膝蹴りを喰らわせようとする。しかし、天邪鬼は上体を伏せるようにして躱し、尖った角の先端が蒼依の左上腕を掠める。
「っ……」
蒼依は左腕を背中に庇うように体を捩じりながら、天邪鬼の左肩を蹴って距離を取った。折れた腕に衝撃を受けたことで、天邪鬼は奇声をあげて右手を地面に付き、両脚と右手の合計三足で獣のように木々の間に逃げ込んだ。その退路を塞ごうと“奇混人形”が『冰華の腕』を叩きつけるが、天邪鬼は地面すれすれにまで身体を這わせ、その指先を回避する。
「逃げんなクソ鬼がぁっ!」
そう叫び、蒼依は即座に追跡を開始した。“奇混人形”が隣を並走しながら冰華の腕を蒼依に投げ渡し、自らは大型四足獣のような形状に変形する。蒼依はその背に飛び乗り、身を伏せながら後を追った。変形した人形の四肢の先端に生えた鉤爪が地面を掴み、みるみるうちに天邪鬼との距離を詰めていく。
(届く……ッ!)
至近距離まで追い縋り、蒼依は『冰華の腕』を振り抜いた。しかし、直撃の寸前で天邪鬼はバランスを崩し、地面を転げることで蒼依の攻撃は外れてしまった。
天邪鬼は慣性に従い、地面を転げながら前方へ前方へと進み続ける。
張り出した木の根に乗り上げたことで跳ね上げられた天邪鬼の身体は宙を舞い、木々の向こうで『水音』を立てながら落下した。

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Specter children:人形遣いと水潜り その㉑

全身を泥と出血に汚した鬼が、芋虫のように五体を蠢かせ、ふらふらと立ち上がる。
『おおおォォォ……グッ、うウゥゥゥ……! 逃げ……なくては……! 体力を……回復サセなくては……!』
呻き声をあげる鬼の両腕は力なく垂れ下がり、全身の傷からは止め処なく血液が噴き出している。
(……右腕は、ピクピク動いてる。多分まだ動かせるな。左腕は完全にイってる……それなら……)
刀剣を握り締め、蒼依は鬼に向けて駆け出した。刃の間合いに入る直前、鬼の右腕側――蒼依から見て左側に大きく踏み込み、鬼の顔が彼女に向いたのを確認したのと同時に次の一歩で大きく鬼の左手側――蒼依から見て右側に飛び込んだ。フェイントである。
(いける……!)
しかし刃が脇腹を捉える寸前、鬼は上体を前屈させ、『折れている左腕で』殴りつけたのだ。
「ぐッ……!」
蒼依は刀剣型だった“奇混人形”を人型に再変形させて、身体を支えさせる。
「……折れてたろ」
『ハアアァァァ? 一向に動かせるンダガァ?』
不自然な方向に曲がり青紫色に鬱血した左腕を、胴体を揺らす慣性によって振り回しながら、鬼は主張する。
「天邪鬼がよぉ……」
蒼依の呟きに、鬼の動きが止まった。
「……? ……おい、まさか」
『違ェぞ! 誰が天邪鬼なモンカ!』
「お前……鬼は鬼でも“天邪鬼”かよォ!」
“天邪鬼”は不意に蒼依に背中を向け、森の奥へと逃げ込もうと試みた。しかし、交戦中に背後に回っていた冰華が道を塞いでおり、退路が潰されている。
『退ケェ!』
「退かない!」
『なら退クナ!』
「退かない!」
『コノ餓鬼ガァ!』
天邪鬼は右腕を振り上げ、長く鋭い爪を冰華に向けて振り下ろした。

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Specter children:人形遣いと水潜り その⑳

樹上の枝葉に身を隠していた鬼が、飛び降りるようにして二人に飛び掛かった。蒼依は咄嗟に冰華の背中を蹴飛ばしながら飛び退き、結果として鬼は二人の間を通過して地面に転がった。
「わあっ……とっ、とぉ。助かったよ、蒼依ちゃん」
冰華はバランスを崩しかけたもののどうにか転倒を堪えて振り返る。
二人の間には、奇襲を失敗した鬼が俯せに転がっており、起き上がろうと藻掻いていた。
「よく見えたね蒼依ちゃん⁉」
「人形がちらっと見てたからね……!」
手元に“感情人形”を再生成して攻撃に移ろうとした蒼依のすぐ横を、背後から白い影がすり抜けた。
「…………?」
蒼依が反応するより早く、それは一直線に地面に伏せる鬼に飛び掛かった。
「あ、蒼依ちゃん……あれって……!」
「……まさか、この辺まで縄張りだったなんて……冰華ちゃん、よくさっき転ばなかったね」
影の正体は、体長2mを超える巨大なイヌのような姿の妖獣だった。それは鬼を組み伏せ、爪を突き立て、容赦なく噛み付き牙を立てている。
「こいつ……“送り狼”だ……!」
送り狼に襲われながら、鬼は金切り声をあげて抵抗する。しかし、送り狼の膂力に負け、肉を裂かれ骨を砕かれ、全身あらゆる部位を牙で穿たれていく。
『おいコラ! ヤメロ! 犬野郎が! 俺は転んでネェ! 寝ッ転がったダケだゼ! オイ退きヤガレ!』
そう喚きながら鬼が暴れると、送り狼は急に攻撃を止め、鬼の背中から降りて闇の奥へと消えてしまった。
「あ、蒼依ちゃん⁉ 狼さん攻撃止めちゃったけど⁉」
「そりゃ、『転んだ奴』を獲物にするんだから、『そうじゃない』と言い張られれば……」
蒼依は《奇混人形》を発動し、刀剣の形状に変化させて鬼に斬りつける。
(あれだけのダメージ、手足も胴体もズタズタだ。勝てる……!)
しかし、振り下ろされた刃は鬼の肉体には届かず、地面に突き刺さった。鬼は全身を使って転がるようにして移動していたのだ。

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Specter children:人形遣いと水潜り その⑲

深夜の森の中を、蒼依と冰華の二人は周囲の気配を警戒しながら慎重に進んでいた。
「っとと……」
「蒼依ちゃん大丈夫?」
「うん」
足元の小さな凹凸に足を取られて転びそうになった蒼依を、冰華が支える。鬼を逃がしてから、このやり取りは既に5度目だった。
「どしたの蒼依ちゃん。疲れた? ずっと戦ってくれてたもんね」
「いや、それは大丈夫。ちょっと注意力が散漫になってて」
「暗いんだから気を付けなきゃ」
「いやぁ……さっき、人形たちを先に森に突っ込ませたじゃん?」
「うん」
「私、あれと感覚共有できんのよ……人形たちの見聞きしてるものが、ぼんやりと分かるの。『ぼんやりと』ね」
「へー?」
「ただ……あまりにもぼんやり過ぎて、めちゃくちゃ意識集中させないと分からないんだよね。だからちょっと、足元に注意払う余裕が……」
「おんぶしたげよっか?」
「重いよ?」
「大丈夫、私の腕は“河童”なんだから!」
「おんぶって腕だけでするものじゃないじゃん」
「良いから! 蒼依ちゃんは鬼見つけるのに集中して!」
「……じゃ、お言葉に甘えて」
蒼依が恐る恐る、冰華の背中に覆い被さる。
「……重い」
「だろうね」
冰華がよたよたと歩き出して1分も経たないうちに、背中の蒼依が声を上げた。
「止まって」
「何?」
「来る」

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Specter children:人形遣いと水潜り その⑱

地面に俯せに倒れ、ぴくぴくと痙攣する鬼を見下ろしながら、冰華は再接続された両腕の挙動を確かめる。
「“河童の尻子玉”の話ってあるじゃない?」
「どしたのいきなり」
冰華の不意の発言に、蒼依は網状に変形させた“奇混人形”で鬼を拘束しながら答える。
「河童が溺れた子供から“尻子玉”を抜いて殺しちゃうの」
「あるねぇ」
「尻子玉っていうのは架空の内臓らしいんだけどね。……もし、『本当に何かを奪っているとしたら』?」
「…………何を?」
「“魂”」
冰華の淡々とした答えに、蒼依の眉が僅かに上がる。
「河童の手は、“尻子玉”……つまり、“魂”を標的の肉体から掠め取るの。しかも、『末端部からほどより多く』。多分、尻尾にでも掠ったんじゃないかな?余計なパーツが多いと大変だねぇ」
「物騒な能力だなぁ……」
「…………あれ?」
冰華のあげた素っ頓狂な声に、蒼依は捕縛しようとしていた鬼を見下ろした。そこに、鬼の姿は無かった。
「……冰華ちゃん? 魂を奪って動けなくさせたはずじゃ?」
「流石に1発で全部は無理だよ。感触的に、多分奪えたのは半分くらい。タフなやつなら十分動くもの」
「半分なら結構な痛手かな」
「うん」
「じゃ、この勢いで押し切っちゃおう」
蒼依は“奇混人形”を3体の“感情人形”に解体すると、森に向けて解き放った。

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