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我流造物創作:ロール・アンド・ロール! その③

(何だ……? 急に、身体が動かなく……どんな魔法だ……?)
練音は悠然とナツィに接近し、蜘蛛脚でナツィを殴りつけた。地面に叩きつけられるのと同時に、ナツィの身体も動き始める。
(ぐっ……やっと動くようになった……! あいつの攻撃、そこまで強くは無いけど、まるでこっちの時間の流れが遅くなったみたいに反応できなかった…………!)
「さぁナハツェーラーさん、第2ラウンドですよ!」
練音の言葉に、ナツィは大鎌を構え直し、再び距離を詰めた。練音も更に踏み込み、近距離の戦闘に持ち込む。ナツィは石突側による打撃を仕掛けたが、その攻撃も幻影を貫くだけで終わり、再び時間の鈍化が発生する。
(マズいっ、また……!)
「せやぁっ!」
ナツィの鳩尾に、練音の掌底が突き刺さる。
「ぐっ……また…………この感覚……」
「どうですか、ナハツェーラーさん! 私の実力、ナハツェーラーさんの足下くらいには届いてますか?」
「…………っはは、一撃が軽すぎる。3倍強くなってから出直せ」
「あらら手厳しい。それじゃ、届くまで続けましょう。第3ラウンド!」
ナツィが再び突進する。練音がそれに合わせようとした時、ナツィは急ブレーキをかけ、完全には詰め切らないままに大鎌で薙ぎ払った。斬撃は無防備な練音の首に迫り、直撃をナツィが確信した瞬間であった。
「……【外法・御霊縛り】」
練音の詠唱と共に、ナツィの身体を複数の冷たい腕が背後から引き、攻撃が逸れる。
(外れた⁉ マズい、それよりも……!)
再び発生する時間感覚の鈍化。身動きの取れなくなったナツィに、蜘蛛脚が打ち込まれた。

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五行怪異世巡『肝試し』 その⑬

(そうか、そういえばカオルの姿を見せたのってメイさんくらいか……今出れる?)
(力不足かなぁ)
カオルの返答に青葉はしばらく考え込み、千ユリに手招きした。
「あン?」
「千ユリ。適当に攻撃くれる?」
「…………“野武士”」
武者の霊の放った斬撃を、青葉の背後から伸びてきた機械人形風の左腕が受け止める。
「えっと……紹介します。〈薫風〉の付喪神、カオルです」
「ワタシの可愛い青葉ぁ……こういう呼び方はあんまり感心しないなぁ……」
背中から覆い被さるように出現したカオルの上半身に、他3人の注目が集まる。
「彼女は私に降りかかる霊障などを吸収してくれるようでして……」
「へェ?」
青葉の説明に、種枚が楽しそうに反応した。
「……何さ。あんたは『ただの人間』みたいだから良いけど……じろじろ見られるのってあんまり気持ちの良いものじゃないんだけど?」
「あン? そりゃ失敬。しかしまァ、私が人間と分かってくれるたァ嬉しいねェ」
からからと笑いながら近付き、種枚は青葉の両肩に手を置いた。
「しかしまァ、君も随分と面白くなってきてるじゃないか。身内に引き込んだのは正解だったよ。これからも精進しタマエ」
「え? えっと、まあ、はい……」

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我流造物創作:邪魔者と痩せ雀 キャラクター③

・向田ワカバ
年齢::22歳  性別:女  身長:166㎝
玄龍大学4年生。“アルベド”の研究内容に感銘を受け、「助手」を自称して日々研究室を冷やかしている。魔術師としての腕は極めて優秀で、「仮想の無限空間を展開する」という、所謂結界術を最も得意としている。この術式はアルベドの研究の際にとても役立っているので、アルベドは結構感謝している。
どうでも良いけど、卒論のテーマは『工業史におけるエネルギー効率の変化の経緯』。
※ワカバの魔法:「無限空間」とはいうが、厳密には完全な無限では無い。デフォルトの結界の内装は電脳的ポリゴン空間のようであり、範囲はおおよそ3000㎞立方程度。手帳のページ1枚1枚に刻んだ術式それぞれに、外観の追加要素と無限遠(これも厳密には無限ではなく、デフォルトと同じ3000㎞立方程度)が付与されており、結界の展開時に同時に消費することで、要素を無限空間に追加できる。ちなみに空間範囲は何故か乗算される。つまり追加要素1つごとに1辺当たり「×3000㎞」される。空間内のどのポイントに出現するかは対象1つごとに個別で選択できる。「全対象の現在の相対位置を保持したまま転移させる」のが一番楽で低コストではある。

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我流造物創作:ロール・アンド・ロール! その②

ナツィの振り抜いた大鎌の刃を、練音は後方に跳んで回避する。
「良かったぁ、どう脅そうかって悩んでたんですよねぇ。私だったらお友達を人質に取られるの嫌だなぁ、って思ったから試してみたら大成功! 反応からしてクリティカル引いちゃいましたかね? まぁとにかく。せっかくナハツェーラーさんが本気を出してくれたようなので」
練音の背中から、2対4本の大蜘蛛の脚が展開される。
「こっちもしっかり、『本気で』いかせてもらいますよ!」
「……やっぱり、どこかの使い魔か」
先に動き出したのはナツィだった。背中に蝙蝠の翼を展開し、超高速で距離を詰めて大鎌を振るう。しかし、その攻撃は空中で一瞬減速し、僅かに練音に届かない。
(何だ? 今の感覚……何かに引っかかったみたいな)
練音が蜘蛛脚で放った反撃を飛び上がって回避し、ナツィは目を凝らす。そして、空中で光を反射した細い糸のようなものを確認し、鎌を投擲する。
「うわぁっ」
「……なるほど。蜘蛛脚に蜘蛛糸。タネが割れれば何の面白みも無い……」
「え、えへへ……バレちゃいましたか。クモさんですよぉ……」
ナツィは再び大鎌を生成し、距離を詰める。空間内に展開された極めて細い蜘蛛糸は回転斬りによって切断され、ナツィを拘束するには至らない。
(これで……)
「終わりっ」
大鎌が練音を捉え、斬り裂いた。その姿は幻影のように溶けて消える。
「っ⁉」
「そいっ」
再び放たれた蜘蛛脚の攻撃を、ナツィは大鎌の柄で受け止めた。
「……なんで生きてる?」
「そりゃまぁ……まだ殺されてないからじゃないですかね?」
「それなら……死ぬまで殺すだけだ!」
蜘蛛脚が離れた瞬間、ナツィはカウンターの斬撃を放つ。その攻撃は再び幻影を切り裂き、それと同時にナツィの動きが不自然に停止した。

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ジョブグランス 4章 回復師(ヒーラー)

俺は剣の扇子で切り刻んだ。
そして男は叫んで消えた。
残ったのは俺と山野、工藤、と亡骸?達だ。
俺が倒れた瞬間に山野が駆け寄ってきた。
「勇兎!大丈夫?ごめん私のせいでごめんなさい。」
泣いている山野を見て俺は言った。
「大丈夫だよ…俺はこう見えて諦めが悪いんだよ…。」
そして泣いていた山野が言った
「私が助けるから!。」
そう言って傷口を止血し始めた。
俺は声が出ないが心で言った。
「良いんだよ俺はお前を守れただけで良いんだよ…。」
だが諦めない結を観ているうちに涙が出てきた。
そしてこういうときは奇跡は起こるんだよな。
結の回りを光が包んだ。
「これは?力が湧き上がって。」
俺はジョブマスターの能力か分からないがこのジョブが回復師(ヒーラー)ということが分かった。
「なぁ結お前のジョブは回復師(ヒーラー)だ。」
それを聞いた結は言った。
「ということはこれで勇兎を救える。!」
そして能力を使ったライブLevel1。ライブは対象者のHPの4分の1を回復させる。ただしその対象者が瀕死状態なら失敗する。
そして俺は残りHPは3まだひんしじゃない!なのでライブでHPが36になり生き残った。俺が心を落ち着かせてる時に結は皆の事を回復させている。そして俺の前に謎のパネルが現れた。﹁ヒーラーの心を掴めばヒーラーをコピーできる成功ヒーラーをコピー成功。﹂なんとジョブマスターは本当にジョブをコピーできるらしい。そしてその奇跡はよくない方へ行くらしい。あいつの手にあのジョブが渡るとは。

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我流造物創作:ロール・アンド・ロール! その①

喫茶店の閉店からおよそ10分、ナハツェーラーは静かに店舗出入り口から店外へ姿を現わした。
「あー、やっと出てきたー」
そこに声を掛けたのは、ナツィ本人より小柄な、腰まである長い黒髪と蜘蛛の巣柄の金糸の刺繍が施された和装が特徴的な少女。
「……そりゃ、当然でしょ。こんな明らかに不審者な格好の奴がジロジロ見てきて。で、何の用だ?」
「何ってそりゃ……あ、ごめんなさい! 先に名乗った方が良いですよね?」
「勝手にしろ」
「えー、名乗らせていただきます。私は木下練音(キノシタ・ネリネ)。ネリネちゃんって呼んでいただければ幸いです。本日ナハツェーラーさんに相見えましたのは……」
ナツィは名前を呼ばれ、ぴくりと反応する。
「あれ? わざわざナハツェーラーさんを訪ねておいてナハツェーラーさんを知らないわけないですよね? そんな大げさに反応しなくても……」
(……大袈裟、だって? ほんの数㎜肩が上下しただけだろ)
ナツィの視線を無視して、練音は言葉を続ける。
「あ、それで御用なんですけど、とっても強くてすごいナハツェーラーさんと、1度本気で喧嘩してみたかったんです! 伝説のナントカって魔術師が創り出した、史上最高の使い魔! 泣く子も黙る“黒き蝶”! 魔術に関わる者なら、誰でも1回くらい見てみたいと思うのは当然でしょう? せっかくなら、その実力を1度この目で見てみたい!」
「……はぁー、そんな下らない動機で来たわけ? 帰って良い?」
踵を返したナツィの背後から、練音は更に声を掛ける。
「……かすみちゃん、でしたっけ?」
名前が出た瞬間、ナツィの動きが止まる。
「可愛い子ですよねぇ。ナハツェーラーさんもあの子のことが随分大好きみたいですね。仲良きことは美しきこと……」
練音が口を噤む。一瞬で距離を詰めたナツィが、喉元に大鎌を突き付けたためだ。
「……何が言いたい?」
「言ったじゃないですか。戦りましょう、って」

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我流造物創作:邪魔者と痩せ雀 キャラクター②

・おネコ
身長:130㎝  人格:ネコ寄り  武器:艦載光子砲
アルベドの製作した使い魔。外見は耳がネコのものになりネコの尾が生えた栗毛のショートヘアの子ども。言動はネコ寄り。ワカバさんは『娘』扱いしているので、女性寄りなのかもしれない。アルベドが得意とする多重立体術式を使うことができる。というかそれ以外能が無い。使用する武器も飽くまで術式の『演出』の範疇であり、一連の全ては1つのプログラムの一部でしかない。燃費が悪いので、普段は日の当たる場所か涼しい場所か親しい人間の頭の上で丸くなって寝ている。才能ナメクジのアルベドが創り出した唯一の使い魔。
※おネコに刻まれた多重立体術式:「術者を中心とした旋風の発生」「術者を中心とした電光の発生」「魔力の全方位への放出」「重力と逆ベクトルのエネルギーの発生」「武器の展開」「武器の強化の実行権獲得」「光線の射出」「光線の集光率に対する操作権獲得」「光線に対する破壊力付与権限獲得」「破壊力付与の偏向性に対する操作権獲得」という10種類の魔法を実行するための術式を組み合わせたもの。これらが上から順番に発動し、起動から実行完了まで15秒ほどかかる。

・おスズ
身長:128㎝  人格:ほぼ無い  武器:なし
アルベドを襲撃してきた使い魔。極度の痩身で、両脚の膝から下は猛禽のそれに変じており、背中からは痩せた茶色の鳥の翼が生えている。服装は白いノースリーブのワンピース。微妙に薄汚い。生み出した魔術師は既に死亡しており、アルベドに恨みを持つ魔術師が魔力供給を担う魔道具(紫水晶球)を所持し、暗殺命令を出していた。自我が希薄で、命令を実行するために都合の良い人格を演じることには長けているが、『素』を出そうとすると『本当の自分』を表出する経験の不足から、情緒が幼児以下になる。刻み込まれた術式は「物質の変形」。肉体の一部(多くは足の爪)を変形させ、武器とする。
ちなみに名前はアルベドが付けた。スズメのスズ。
※おスズの魔法:自身の肉体のみを対象とする制限はあるものの、極めて精密に自身の形状や性質を変形させる。分子単位で変形操作を適用し、振動数を調整することで、高温化・低温化も可能。なお、肉体の総量は変わらないので、大きくなったり小さくなったりということは基本的に不可能。密度を調節すれば出来ないことも無い。

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五行怪異世巡『肝試し』 その⑫

翌日、3人から事の顛末を聞いた種枚は、からからと笑って千ユリに声を掛けた。
「おい千ユリィ、その捕まえたって悪霊見せてみろよ」
「んー……アイツ扱いにくいからそんな出したくないんだけど……“朽縄”」
千ユリが指鉄砲を虚空に向けると、高速で伸びる腕が現れ、種枚に迫った。彼女はそれを最小限の動きで回避し、掴もうとして“草分”に止められた。
「だっ……かぁらぁっ! 触んなっつってんでしょうがぁっ!」
「いやはははゴメンヨ」
「もう消す!」
“朽縄”は消滅し、それと同時に無数の腕の拘束も解除された。
「けど青葉ちゃん、本当に強かったなぁ。トドメ刺す動きなんか人間やめてたでしょ」
「ん? あぁ……」
犬神の言葉に、青葉は昨夜の戦闘を思い返す。
“野武士”の攻撃で弾き飛ばされ、彼女が飛んでいった先は、朽ちかけた社の屋根瓦の上だった。そこから強く踏み切り、落下の勢いも合わせ、今や“朽縄”の名がついた悪霊の頚部に斬りつける。
そこでとどめを刺し損ね、“朽縄”の反撃を受けそうになっていたところをやや乱暴な形で守ったのは、犬神の力で発生した土柱。吹き飛ばされながらも空中で態勢を整え、壁面に着地し、そのまま地面には降りずに土柱を足場として跳躍しながら再び背後に回り込み、遂にその首を刎ねることに成功したのだった。
「あれは……私自身よく分かってなくて。カオルも教えてくれないし……」
「カオル……って誰?」
「え……あっ」
犬神の疑問に青葉は気付いた。自ら姿を現わした白神との一件を除き、カオルについて、特に他人に報告するような機会は無かった。

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我流造物創作:邪魔者と痩せ雀 キャラクター①

・“アルベド”
年齢:25歳  性別:男  身長:170㎝
“学会”所属の魔術師。魔法の才能はほぼ無い。「多重立体術式」を唯一の特技としている。性格と実力・実績から“学会”ではあまり良い目では見られておらず、普段は玄龍大学の地下にある研究室で低燃費高効率の魔法術式の開発に勤しんでいる。
ちなみに通り名である“アルベド”は、“学会”から良い目で見られていない自分の立場を察した彼自身が「ちょっとしたユーモア」で『アルベド(ミカンに付いてるちょっと邪魔な白い筋)』と名乗った結果、何故か広まったもの。
※アルベドの魔法【多重立体術式】:アルベドが発明した術式形態。才能の無いアルベドが自分の能力で少しでも高い威力に『見せかける』ための技術。
通常ならば平面の簡単な魔法陣で展開可能な魔術を、敢えて難易度の高い魔術に要求される立体術式に変換し、更にそれを複数個パズルのように組み合わせ、1つの術式として構築するというもの。その複雑な術式の形状は外見的威圧力をもちながら、構成する一つ一つが起こす現象自体は大したものでは無く、しかして立体術式ゆえの魔術容量によって通常の1.3倍程度の出力効率を実現している。
術式構築のためには、各魔術の術式全てを『同時に』構築していかなければならない。立体術式を一つ一つ描いてから組み合わせるのは構造的に不可能なためである。
アルベドは基本的に5種以上の術式を組み合わせるので、1つ製作するだけでほぼノンストップの数十時間を要する(最も使い慣れているものについては、書き慣れて半日もかからないようになった)。やっていることは人間3Dプリンターだが、構築の段階で術式の発動順や発動タイミングも細かく設定する必要があるので、現状手作業以外での構築はできない。
弱点はまず、術式への負担が大きいために、使用の度に最低でも20時間以上のクールタイムが発生する点。アルベドはこれを大量にストックしてあたかも通常攻撃のようにぽこぽこ使うので、クールタイムの弱点については未だにバレていない。次に、1度術式を起動すると一連の流れを完了させるまで中断も終了もできず、発動順も固定されている点。

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五行怪異世巡『肝試し』 その⑪

どす黒い液体をまき散らしながら、悪霊の頭部は地面を転がる。そこに悠然と歩み寄って来た千ユリを悪霊は睨み、口を僅かに開いて舌を伸ばしてきた。
しかしそれは、千ユリが指鉄砲の要領で立てた右手の人差し指に触れると同時に硬直する。
「ふぅーー……だいぶ暴れられたけど、よぉーやくとッ捕まえられる程度に弱ってくれたな? これからアタシの下僕になるわけだけど、どんな名前が欲しい? ぁいやお前の希望なんて聞く気無いんだけどさ。そうだなぁ…………あぁ思いついた。ゴキゴキ伸びてる時の様子やその気持ち悪いツラのヘビっぽさ。今日からお前の名前は」
悪霊の頭部と立ち尽くしたままの胴体が少しずつ煙のように分解され、加速しつつ千ユリの指に吸い込まれていく。
「……“朽縄”だ」
悪霊“朽縄”の身体が完全に消えると同時に、周囲の不浄な雰囲気は消え、代わりに自然な木々のざわめきが静かに響き始めた。
「……終わったぁ…………」
気が抜けたようにその場に座り込んだ千ユリに、青葉が近付いてくる。
「千ユリ、お疲れ」
差し出された右手を取ろうとして、チユリの手が止まる。
「そっちの手ぇ出さないでよ」
「え?」
「なぁーんで好き好んで皮膚ズル剥けた手ぇ取らなきゃなんねーのよ」
「……あー…………あ、マズい……ちょっと身体が痛みを思い出してきた」
「……クソっ。ちょっと悪霊使うけど、抵抗しないでよ?」
“野武士”の刀が、青葉の右手首を通過する。
「…………? 待って何か右手の感覚が無くなったんだけど?」
「アタシの“野武士”は魂のダメージを肉体に誤認させる。あんたの魂は今、右手首より先を切断されてるの。そりゃぁそこより先をどれだけひどく怪我してようが気にならないでしょ。まぁ、しばらく休んで魂の消耗が癒えれば元通りだから、さっさと手当てしてよ?」

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我流造物創作:無我と痩せ雀 その⑥

「まぁ……それについちゃどうでも良いんだ。問題はテメエだクソガキ」
アルベドが右手を前方に掲げると、おネコに刻まれていたものに似た形状の立体術式が出現した。
「そっちが先に手ぇ出してきたんだ。やり返されても文句は無ェよな?」
「えっ、い、いや待っ、お、おい! 助け」
「遅せェ」
術式から、細い光線が放たれる。青年が咄嗟に展開した魔法障壁にそれは弾かれるが、アルベドは既に2撃目の射撃準備を整えていた。
「はーいドーン」
先程より太い光線が、再び青年を襲う。先ほどより広く展開した魔法障壁によって防御しようとした青年だったが、その障壁は光線が直撃したのとほぼ同時に粉砕され、そのまま青年に命中した。
「…………死んだか?」
「虚仮威しだったのでは?」
「ここまで細めりゃ威力持たすくらいは出来ンだよ」
ワカバが青年の傍に屈み込み、様子を確認する。
「……あ、呼吸してる。生きてますね」
「そりゃ良かった。ああそうだ」
「はい?」
顔を上げたワカバに、アルベドは紫水晶球を放り投げた。慌てて受け止めたワカバの横をすり抜け、アルベドは自身の研究室に引き返し始めた。
「え、ま、待ってくださいよ! 何なんですかこれ!」
後を追いながらワカバが尋ねる。
「おスズの魔力源」
「えっと、おス……?」
「あの鳥脚」
「! 名前、付けてあげたんですね!」
「違っげーよ。個体識別用の勝手な呼称だ。名前はそっちで勝手に決めろ」

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ジョブグランス 3章 ジョブマスター

俺はジョブマスターの表示を見て固まってしまった。なぜかって?それはこれを見ればわかる﹁ジョブマスターはある基準を超えたらジョブをコピーすることができるという能力です。ただいまからジョブルーレットを開始選ばれたジョブが最初に与えられます。﹂そしてなんかわかんないルーレットが回り始めた。そしてあたったのは﹁オーバーランクレア孤高の剣王が当たりました。孤高の剣王は剣を極めし武神と呼ばれる存在です。剣王に王が入っているのでスキル剣の扇子を発動16枚の刀を好きな方向に飛ばすことができる。﹂そして俺は剣の扇子を使う。「剣の扇子Label1。」おっとここで割り込み情報です。王が着く者たちは武神の中でもトップクラスの実力を持っている方々でそれぞれ能力やスキルを持っている。剣王の場合普通なら剣の扇子だけだがこの方は孤高の剣王なので空中歩急スカイウォークを使える、スカイウォークは空を自由に歩ける。そしてレベルとは!一つ一つにはMAX値が違うものなある。例えば剣の扇子はMAX値は50だ!それを超えたらスキルを進化されることができる。他にも100レベとかもある。おっとそろそろもとに戻すか。俺は剣の扇子で切り裂いた

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五行怪異世巡『肝試し』 その⑩

「っ…………あァおばぁあっ!」
千ユリが呼ぶのと同時に、“野武士”が無事な片手で取り落とした刀を回収し、『青葉に向けて』振るった。
「ッ⁉」
青葉はその攻撃を仕込み杖〈煌炎〉で防ぐが、その勢いに弾き飛ばされる。
「……ごめん、“野武士”。痛いよなァ、辛いよなァ……」
千ユリは口の中でぼそぼそと呟きながら、右の中指を悪霊に向けて立てる。
「こんな目に遭わせるそこのクソを、ブッ殺すしか無いよなぁあ!」
“野武士”の放った斬撃を悪霊は大きく身体を捩じりながら回避し、首元に掴み掛かる。
瞬間、背後から高速で『飛んできた』青葉が、その速度を乗せて抜刀した仕込み杖で悪霊の伸びきった頚部に斬りつけた。
半分千切れた首を折り曲げて青葉を睨みながら、悪霊は彼女にも手を伸ばす。その手が触れる直前、その場に発生した土の柱が青葉を轢き飛ばし、飛ばされた青葉は既存の土柱の壁面に着地した。
そのまま土柱を蹴って、それら同士の隙間を縫うように移動する青葉を、悪霊は顔面を変形させて片目で追い続ける。
「……ッキヒヒヒ、そっちに目ェ奪われてンじゃァねェよ。アタシの悪霊はまだ!」
首の折れた“野武士”が、悪霊の腹部に蹴りを打ち込む。
「テメエを殺せるぞ!」
その脚は悪霊に触れた瞬間からへし折れるように変形しながらも確実にダメージを与え、悪霊が頽れる。
膝をついた悪霊に、真横から土柱を蹴り青葉が迫る。しかし、悪霊はそれを片目で捉え続けており、片腕を伸ばしてきた。その反撃が届くより早く、別の土柱が真横から伸びてきて、更に青葉を弾き飛ばす。
(くそ……さっきからふっ飛ばされてばっかだな、私…………)
そのまま飛ばされた先の土柱を足場に、障害物の隙間を跳び、遂に悪霊の死角、背後に到達する。
「“草分”!」
千ユリが右の親指を下に向けるハンドサインをする。掻き消える武者霊と入れ替わるように無数の青白い腕が津波のように悪霊に向けて押し寄せる。それらを迎撃しようと悪霊が腕を伸ばした瞬間、背後から青葉に斬りつけられ、完全に切断された首から上が宙に舞った。

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我流造物創作:邪魔者と痩せ雀 その④

再び使い魔が姿を現わした。おネコの背後への出現と同時に、おネコの右腕の肘より先が切断される。
「速えェな。まあ問題はない」
アルベドが呟く。おネコは斬り飛ばされた腕が地面に落ちるより早く左手で受け止め、鳥脚使い魔の方に振り向いて再び空中に投げ上げる。
掌が下を向いたのと同時に、その下に添えるように左の掌を上に向ける。すると、両手の間に立方体に近い形状の複雑な術式が出現した。
「吹き飛ばしてやろうぜ、おネコ」
術式が凝縮されるようにして消えるのと同時に、足下からおネコの周囲に旋風が発生した。風は少しずつ勢いを増し、やがてその中に青白い電光が混じり始める。
おネコに刻まれた術式の持つエネルギーは世界に伝播し、大気を震わせ、地響きを起こし、砕けた微小な土片を余波により生じた反重力が舞い上がらせる。
「んゃぁ……消し飛べ」
おネコが左手を前方に伸ばすと、その手の中に全長3mを超える巨大な携行砲が出現した。片手でそれを構えると、砲身にエネルギーが充填され、銃口から少しずつ光が迸る。
「っ!」
射線から外れるように駆け出した鳥脚使い魔に、おネコは身体ごと砲身の向きを変えて対応する。発射の直前、使い魔は大きく跳躍した。
「……んゃぁ、ばーか」
おネコが携行砲を持ち上げ、空中の使い魔に照準を合わせたのと同時に、直径約30mほどの巨大な光線が放たれ、光線は一瞬にして使い魔を飲み込んだ。
数秒間の照射の後、鳥脚使い魔が力無く地面に落下してくる。
「はい、キャッチしました」
結界術を解除して元の研究室に戻り、ワカバは落ちてきた鳥脚使い魔を受け止めた。
「よくやった。おネコもな。腕は後で治してやる」
「んゃぁ」
ワカバが床に転がした使い魔を、アルベドは近くにしゃがみ込んで見下ろす。
「光線直撃しましたけど、この子大丈夫ですかね?」
「大丈夫に決まってんだろ。ただの虚仮威しだぞ」

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造物茶会シリーズ現行公開設定まとめ! その6

・ピスケス Pisces
この物語のメインキャラの1人。
一人称は「私」。
背が高く(165cm)長い青髪が特徴的。
服装は白いノースリーブワンピースで、白いロングブーツと白い長手袋を身につけている。
性格は上品で淑やかだが少し意地悪。
自分より弱い者(かすみやキヲンや夏緒)には優しいが、自分より強い者(ナツィ)や中途半端に強い者(露夏)は「お前」と呼んで手厳しく扱ったりする。
かすみやキヲンとは仲良くやっているが、ナツィは“学会”の命令で監視しているからなのかあまりよく思われていない。
露夏のことは「私の狗」と呼んでよく共に行動している。
右手に仕込まれた術式で白い弓矢を生成したり、背中に鳥のような白い翼を生やして飛ぶことができる。
普段はかすみの所の喫茶店の2階の物置でナツィたちと溜まっていることが多い。
現マスターの鴻海 歳乃(こうのうみ としの)とは付き合いが長く、歳乃からは「友達みたい」に思われているそう。
“学会”からの依頼でナツィや露夏と共に“学会”の外の魔術師や人工精霊と戦うことが多々ある。

・露夏 Roka
この物語のメインキャラの1人。
通称露夏ちゃん。
一人称は「おれ」。
身長は小さい訳でも大きい訳でもなく(158cm)、赤い短髪で頭部に犬のような立ち耳が生えている(よく外ではキャップ帽を被って隠している)。
服装はTシャツの上に赤いジャンパーを羽織っており、下は青い膝丈半ズボンと赤いスニーカーを履いている。
性格は仲間思いで少し世話焼き。
ナツィからはあまりよく思われていないのか、たまに衝突している。
かすみとはそれなりに仲良くしているし、キヲンのことは可愛がってる。
ピスケスからは「私の狗」と呼ばれており、何かと共に行動している。
“きょうだい”の夏緒(かお)のことはいつも想っている。
懐に術式を組み込んだ包丁を隠し持っている。
普段はかすみの所の喫茶店の2階でナツィたちと溜まっていることが多い。
“学会”の依頼でナツィやピスケスと共に“学会”の外の魔術師や人工精霊と戦うことが多々ある。

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我流造物創作:邪魔者と痩せ雀 その③

「んー……こうなったらもう仕方ないですねぇ……」
ワカバは徐に立ち上がり、先程荷物を置いた机に近寄り、リュックサックを漁り始めた。
「私が何とかしますね。もう少し頑張ってくださいアルベド先生」
「おう頼んだ」
アルベドの返答を聞いた辺りで、ワカバは1冊の手帳を取り出した。
「それでは…………」
手帳を開き、その中の数ページを重ねたまま破り取る。
「【展開】」
ワカバの手の中でページが燃え上がり、直後、研究室内の全員が月夜の平原上空に転移された。空中に投げ出されたことで、使い魔はアルベドから離れ翼を広げてゆっくりと落下し始める。
「流石に助けろおネコォッ!」
「んゃぁ」
一瞬早く着地していたおネコは一言鳴き、再び跳躍してアルベドとワカバを受け止めた。
「助かった……」
「ありがとうね、おネコちゃん」
「んゃぁ」
3人の着地からやや遅れて、鳥脚の使い魔も地面に下り立つ。
「ねぇ君、名前は何ていうの?」
ワカバの問いかけに、使い魔は何も言わず首を傾げた。
「……名無しか。作ったモンには呼び名くらいつけるだろ普通。命令する時どうするんだよ」
アルベドが呟く。
「じゃ、名前つけてあげたらどうです?」
ワカバが反応する。
「あー? 俺の使い魔じゃねえんだぞ」
「じゃあ、うちの子にしちゃいましょう」
「面倒くせえ。勝手にやってろ。……おネコ!」
アルベドの命令でおネコが駆け出すのと同時に、鳥脚使い魔の姿が消えた。

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造物茶会シリーズ現行公開設定まとめ! その5

・かすみ Kasumi
この物語のメインキャラの1人。
一人称は「自分」。
背丈はそこそこ(161cm)あり、下ろすと肩につくくらいの長さの髪を後頭部でまとめている。
いつも白いブラウスと深緑色のジャンパースカートを着て、足元は薄緑色のパンプスと透ける素材のハイソックスを履いている。
普段後述の喫茶店にいる時は白いエプロンをつけていることが多い。
性格は大人しく優しいがちょっと流されやすい。
普段は小さな喫茶店で主人の手伝いをしており、2階の物置では溜まっているナツィたちとよく連んでいる。
ナツィにめちゃくちゃ好かれているし、かすみ自身もそれを受け入れている。

・キヲン Kiwon
この物語のメインキャラの1人。
通称きーちゃん。
一人称は「ボク」。
小柄(150cm)で金髪をボブカットにしており、鬼のようなツノが2本額に生えている(ツノを隠している時は白いカチューシャをつけている)。
服装はVネックのシャツの上に白いストリート風のロングジャケットで、下は白い半ズボンと黄色と白の縞ニーハイソックス、白系のダッドスニーカー。
また、首には黄色いチョーカーをつけている。
性格は明るくてテンション高め。
ナツィのことが(なぜか)好きで、何かにつけて引っ付いている(邪魔がられがちだけど)。
露夏の”きょうだい“である夏緒とは仲良し。
普段はかすみの所の喫茶店の2階の物置でナツィたちと溜まっていることが多い。
現在のマスターは玄龍大学の学生・万 寧依(よろず ねい)。
ただ寧依とは別の人物によって”造られた“と言っている。

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五行怪異世巡『肝試し』 その⑧

悪霊の攻撃は、離脱しきれていない青葉と犬神に向かった。青葉は杖を盾代わりに構えたが、悪霊の腕は直角に折れ曲がりながら回避して2人に迫る。
「……あぁクソ、何やってんだノロマ共が!」
千ユリが叫ぶのと同時に、2人は無数の腕の霊“草分”に突き飛ばされる。悪霊の攻撃は代わりに“草分”の1本を捉え、命中と同時にぐしゃぐしゃに変形させた。
「ごめん……助かった千ユリ」
「うっさいさっさと立て馬鹿。そこのアホが攻撃に参加できないなら、攻め手がアタシの“野武士”とあんたの仕込み杖だけなんだからね」
「ああうん」
千ユリが出現させた武士の霊“野武士”と、再び立ち上がった青葉が並び立つ。相対する悪霊の全身は、それまで以上に醜く悍ましく捻じ曲がり、上下逆に向いた顔で3人を見つめ返していた。
「青葉、カウントダウン3からで突っ込むぞ」
「りょーかい」
「3(スリー)……2(ツー)……」
犬神が土の柱を数本、周囲に展開する。
「1(ワン)……行け!」
千ユリの合図と同時に、低い姿勢で青葉が駆け出す。“野武士”はその全身を煙状に分解して土柱の間を進む。青葉の振り抜いた杖は、悪霊の交差した腕に阻まれた。
(…………なんで? 攻撃が通ってない?)
青葉の頭の中で、カオルが呟く。
(カオル、どういうこと?)
(〈煌炎〉は『怪異を殺す刀』なんだよ。相手が霊的存在なら、まず間違いなく押し勝てるはずなんだけど…………あ、分かった)
その時、悪霊の背後に回っていた“野武士”が人型に再構築され、悪霊に斬りかかった。それも身体を折りたたむように回避される。青葉の攻撃を防いだままの両腕が変形伸長し、青葉と“野武士”に襲い掛かる。“野武士”は再び煙状に変化しながら躱し、青葉は“草分”に突き飛ばされることで回避した。

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我流造物創作:邪魔者と痩せ雀 その②

視線に気づき、使い魔は無感情に見開かれた眼をワカバに向けた。
「こんにちは。どこの子かな?」
ワカバの問いかけに、使い魔は忙しなく目を泳がせ、数秒の思案の末に口を開いた。
「創ってくれた人は死にました。マスターの命令で、“アルベド”という魔術師を殺しに来ました。“アルベド”という方はどこにいますかと魔術師のひとたちに訊いて、ここまで来ました」
はきはきとした答えに、ワカバは苦笑して更に問い返す。
「そっかー。今のマスターさんって誰だか分かるかな?」
「名前は分からないです」
「見た目は? 男の人? 女の人? 若い? お年寄り?」
「えっと、若い男の人です」
「そっかぁ」
「アルベド、殺して良いですか?」
かくり、と小首を傾げて尋ねる使い魔に、ワカバは何も言わず苦笑いを返した。
「……先生、駄目みたいですね」
「諦めんなや仮にも師と仰ぐ人間をお前なー。っつーかおネコォッ!」
アルベドに呼ばれ、おネコは片目だけを開いて彼の方を見やった。
「仮にも親かつ主の命の危機に何のんびり寝てやがる!」
「んゃぁ……」
おネコは欠伸をして、再び眠ろうとした。
「おぉい!」
「……んゃぁ…………」
「クソッ、あれでも俺の最高傑作だってのに……」
「最高傑作カッコ唯一」
「そこうるせえ」
軽口を叩くワカバに、アルベドは素早く釘を刺した。

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五行怪異世巡『肝試し』 その⑦

青葉と“野武士”がそれぞれの武器で同時に襲い掛かるのを、悪霊は明らかに不自然に身体を折りたたみながら回避し、腕を2人に伸ばす。青葉は跳躍によって回避し、“野武士”は無数の腕の霊“草分”に引きずられてその場を離脱する。
更に2人が正面から外れたのと同時に、犬神が自身の能力で土壁の破片を射出し、悪霊に直撃させた。土塊は着弾と同時に粉砕し、悪霊の周囲に土煙が上がる。
土煙の中から高速で伸びてきた2本の腕が3人を狙って暴れ回るが、その攻撃は犬神の展開していた土壁に防がれた。
「……うーん、ちょっと困ったな」
犬神の呟きに、あとの2人が視線を向ける。
「どした?」
千ユリが訊き返す。
「……いやさぁ。私のこの土を操る力はさ、私に憑いてる犬神にお願いして使ってるんだけどね? この子、どうも臆病なところがあってね? だから私が手綱握ってあげないとなんだけど……多分、あの悪霊のせいでこの一帯が穢れてるんだろうね。普段ほど自由に力が使えない。防御用の障害物を展開するくらいが限界だから、攻撃は2人に任せるね」
「へェ……役立たねぇヤツだなー」
「いやぁごめんね。あ、来る」
犬神の警告とほぼ同時に、土壁が悪霊に殴り砕かれる。千ユリはエイト・フィートに自身を引き寄せさせ、青葉は犬神を巻き込んでその場に倒れ込み、その攻撃を回避した。