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元人間は吸血鬼(仮)になりました。#3.5

雨月視点


静かにピアノを弾き続ける涼香。本当に何も覚えてないんだ。あんなに必死であの四人のことを守ろうとしてたのに。人間ってやわだなあ。誰かに守ってもらわないと行けないなんて。
きっと私にも、人間だった頃があったんだろうけど、何も覚えてない。何も分からない。なにかを守る理由が。守るものも、守られることもなかったから。愛されなかった。ただそれだけ。分かりきってる事。だから、きっとその、憎しみで、私は、死んでから、キョンシーなんかになったしまったんだろう。
こんなに醜い見た目じゃ、ここでも誰にも愛されない。でも、風花が教えてくれた。怪物は、同族には優しいってこと。
だから、できることなら、二度と人間は見たくない。
涼香は、愛されたのかな。愛されてたか。あの四人に。悔しいな。あの四人に教えてやりたい。「怪物になってから、お前らのことなんか、涼香は忘れたよ」って。
きっと、あの四人は、笑って許すんだろう。悔しい。私だって、愛されたかった。
どうしようもなく悔しい。
きっと私は、涼香に嫉妬してるんだ。こんなに醜い感情を持っているから、愛されないんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
はい!皆さん!お久しぶりです!
イカとにゃんこです!覚えてる人いますかー⁈
覚えてる人はレスください!
実は、部活を辞めたり、勉強したり、ベース弾いたり(おい!)で忙しかったので書き込みできませんでした。(苦しい言い訳)
これからもよろしくです!(急だな!)

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おわりに華

君といる夜空の下
星より光る大輪の花
きれいだね って笑って
おわりだね って泣いている

最後の花火が僕らを照らす

またいつか、会えると信じて。

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LOST MEMORIES 番外編「夏祭り」

「良かったんですか、行かなくて」
 ベランダから光を見上げていた瑛瑠に、グラスを2つ携えて付き人が声をかけてきた。氷がグラスにぶつかる音が何とも涼し気で、ありがとう,と言葉を落とす。
「せっかく素敵に着付けてもらったのに」
 そう静かに声を発したチャールズの碧は、柔らかかった。だから瑛瑠も、静かに微笑んで見せる。
「……人混みは、あまり好まないから」
 そう言って、再び視線を光へ戻す。真っ黒なキャンバスには、泡沫の彩りが弾けた。視線を交わしていた間にも、いくつもの光が消えていたのだろう。艶やかな喧騒が此処まで届いてくるようで、微かに笑みが零れる。横で付き人が、いつものように、困ったような寂しげな表情でいることには気付く余地もない。
 手に持ったグラスの中の氷はほとんど溶け、代わりに汗をかいたグラスから水が伝う。腕をなぞる水線が、冷たい。
「暑いね」
 夏、だから。
 瑛瑠は、気付けなかった。喧騒が、近づいてくることに。
「瑛瑠!」

 聴こえてきたそれは、喧騒の前奏曲。

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ファミリア達と夏祭り act 7

「…そう。じゃ、行けば?」
ナハツェは興味なさげに言った。
「えナハツェ興味無っ」
キハはちょっとわざとらしく後ずさった。
「別に俺は行きたくてここに来たわけじゃないんだし。ただキハがやらかさないか気になって…」
「ほらとにかく行こっ!!」
ええっ?!とナハツェが言う頃には、もうその腕はキハに握られ思いっきり引かれていた。
「ちょっと待ってちょっと待って。何⁈」
「え? だから2人で屋台回ろって…」
キハはキョトンとしたように首をかしげる。
「…俺許可してないんですけど」
「えーでもさいいでしょ! ボク的には2人で回りたいもん」
「何それ…」
ナハツェはあきれたようにうなだれた。
「まぁまぁ、いいじゃない」
「そうだぜ、2人でデートして来い!」
ピシェス、そしてカロンはそう言って2人に行くよう促した。
「…デート言うな」
「いやだってキハはナハツェLOVEじゃん」
「うるさい」
あーぁ、とナハツェはため息をついてから言った。
「好きにしろ」
「ホントに⁈ じゃー行こっか!」
ナハツェの渋々の同意を聞いて、キハは嬉しそうに彼の腕をもう1度握りなおして歩き出した。
「…行っちまったな」
人混みを行く2人の後ろ姿を見ながらカロンが呟いた。
「じゃあわたし達も行きましょうか」
「そうだな、カシミールも行くよな?」
カロンは笑ってぼくに尋ねた。
「ええもちろん。あの2人は、ぼくの千里眼で見守りますし」
ぼくはにこりと笑って右目を若草色に変えた。
「…フッ、透明で自力で消したり出したりできる羽根を持つ、様々な力を持った使い魔”ピクシー”は便利だなぁ」
カロンはにやっと笑う。
「…別に、マスターは自分の喫茶店の働き手のためにぼくを作ったのですよ?」
ぼくはそう苦笑すると、歩き出した2人の後を追って歩き出した。

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うたうたいの独り言

夏祭りの夜。

出店の赤と、夜空の紺のコントラスト。

溶けかけのリンゴ飴ほおばり、

音だけの花火は背の向こう。

がらんどうの音を右に左に

夜に浮かぶ三日月の船に揺れる、

着色された火薬の舞。

1センチの境が、

崖より深いが

ポンっとあかりに照らされる

君の頬の白さだけは

心の片隅に。

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世にも不思議な人々㉜ 呪う人・信じ込む人その3

「君の能力、それは……」
「……それは……?」
「『自分にかけられた暗示が世界にまで影響する能力』です!」
「……何それ?つまりどういうこと?」
「つまりね、君に『あなたはだんだん眠くなる』って暗示をかけたとするでしょ?そしたら君はただ眠くなるだけ。だけどさっきみたいに、たとえば、『今はもう夜だ。だから君もそろそろ眠くなるはずだ』みたいに暗示をかければ、本当に夜になる。つまりそういうこと」
「いや、全く分からん。理解はしたが納得ができない」
「これが本当って証拠が一つだけあるよ」
「何?」
「私、君に対して嘘だけはついたこと無いでしょう?もちろん君への好意はあるよ?けど君の能力がうっかり変な方に動いちゃいけないってのもあって」
「ええ……。我ちょっとショック受けたさ……」
作者のナニガシさんはそれが理由として成り立つことにショックを受けたさ……。ところで。
「あ、そういえばつーさん?」
「何?…って、だーかーらー!呼び方ー!」
「ああ、ごめんつくば。君は何をしたの?まさか暗示だけじゃないよね?今更わざわざやりに来たってことは、何かあるんだと思うんだけど」
「ウフフフ。やっぱりちゃんと呼ばれると嬉しいねぇ。ああ、そうそう、それが私が来た目的なんだけどね。なんとついに私も不思議な能力手に入れたんですよ!」
「へえ。どんなの?」
「『呪う』能力」
「……え?」
………え?
「今何て」
「だからー、呪う能力だって」
「え、のろ……」
「私の能力は『のろう』能力であり『まじなう』能力でもあるの」
「へ、へえ……。……あ!そういえばその二つ同じ字か!」
「そう!分かってくれた?」
「うん。……けどさ、何かもう夜になっちゃったしさ、もう帰りなよ」
「えー、いけずぅー。『泊まってけ』くらい言えないの?それだから君はアルティメットチキンなんだよ」
だからそれは他人だっての。

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ファミリア達と夏祭り act 6

「…人、多いね」
「そうだな…」
午後5時、ぼくらは夏祭りの会場へ足を踏み入れていた。
「ほんと、こんな中で正体がバレたらたまったもんじゃないわね…」
多くの人々で込み合う祭り会場を見渡しながら、ピシェスは呟く。
「てか割とキハはカモフラージュできてんな。すごい」
帽子を改造(?)して、角を上手いこと頭から直に生えてるように見えなくしているキハを見て、カロンは感心したようにうなずいた。
「ま、道行く人間からはただのコスプレイヤーみてーなのにしか見えてないんだろうけど…にしてもこの服慣れない」
ナハツェは自分が来ている和服の袖を眺めながら言う。
「えへへ~ん、いいでしょー。ボクのマスターにお願いして、全員分レンタルさせていただきましたー!」
そうキハは誇らしげに手を上げる。
「キハの御主人は太っ腹だね」
「というかさ、この格好する必要あった?」
「そう? こっちのほうが楽しくない? あとさ、今はマスターに内緒でこんなとこ来てんだよ? いつもと違う格好ならバレないかもだよ?」
だからいいでしょ!とキハは周りの目を覗き込みながら言う。
「うー…どうなんだろ」
「まぁ羽根を魔術で消さなきゃこんなの着れないからね」
「あ、でもぼくはこれでもいいかな~」
皆が口々に言う中、ナハツェがポツリと呟いた。
「…なぁ、それでどうすんの?」
「え?」
キハがぽかんとしたように首をかしげる。
「だから、来たはいいけど何すんだよ」
ナハツェがちょっと苛立たしげに言う。
「あー…とりあえず、お店回ろ! んでもって花火見る~!」
キハは明るくみんなに言った。

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︎︎

あなたは私が頑張ってる時に限って
こっち見てよって
邪魔してくるのに

私があなたに構おうと思ったら
そんな気分じゃないなんて
気分屋にも程があるわ
それでも手放せないのあなたの事が

そう

_人人人人人人人人_
>  ス マ ホ  <
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

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愛に手を振って。

朝に気がついたんだ、眠い目擦りながらパンを焼く、まただよ。
始まるって気づいたんだ、擦り傷だらけで僕 歌を歌う。わかるかい?

傷つけられた代償を、愛に求めるのはやめたよ。
だってそれでまた傷つくだろう。
もう勘弁さ。


僕は強く生きるんだ、仲間とつるんだり色々したけど、結局は
僕は1人で生きるんだ、ギター一本を背負ったまんまで まんまで


傷つけられた傷みを愛なんかで誤魔化すのはやめたよ。
だってそれでまた剥がれるだろう。
もう御免さ、

僕は強く生きるんだ、弱みを見せたり
もうしないよ、神様
僕は1人で生きるんだ、どれだけ笑っても心では 泣いている。



頭ん中でなる音楽と、指で弾いたこの音には何かが違うよ。
それは何なんだろう、僕が愛を捨てきれないのと何か関係あるのかな?


僕は強く生きるんだ、弱みを見せたり
もうしないよ、神様
僕は1人で生きるんだ、ギター一本といくつかのコードと、言葉で。

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お知らせ

こんばんは。そうです。memento moriです。
あつがなついですね。大阪は相変わらずうだるような暑さで、日本一を誇ってたりするのですが(そんなんいらん)、熱中症になどかかっていませんか?僕はこの間夏風邪をひきました。
とまあそんな話はさておき。タイトルにもある通り今回はお知らせです。

第二回ショートポエム選手権、やります。

期間は九月いっぱい等を予定しております。しかし、重大な問題が一つありまして。それは、



審査員がいない。



というわけで審査員の急募です。もしかしたら以前希望の旨を伝えてくださった方もいるかもしれませんが、ちょっと記憶に自信がないので()、再度その旨をお伝えいただきたいです。
その他、「ショートポエム選手権って何?」「夏祭り行った?」「平熱は何度ですか?」等々、何でもレス待ってます。
できるだけ早く決めたいので、ひょっとしたら先着順などになるかもしれませんが、人数はまだ未定なのでどんどんご応募(?)くださいね。

ではでは。花火大好きmemento moriでした。またの機会に。

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夏祭りに行かないまま今年の夏も終わるのね、と思っていた。

押入れがドンドンと叩かれて、クーラーに包まれた昼寝が終わりを告げる。「なあに」バタン、と開けるといつもどおりの大きな声。「お祭!行く!」「えー」「行く行く!絶対行く!連れてって!」スーパーのお菓子売り場レベルの駄々をこねられてしまった。
「みつる?うるさいわよ」お母さん、僕じゃないのに。「はーい」
「じゃあ行くよ」「本当?」細い目がうんとのびて「ありがとう、みつる」

小さな君を背中におぶって、屋台の間を行く。後ろで綿あめを振り回されるので、髪がべたべただ。「みつるも食べる?」「んんん」綿あめで視界をふさがれる。もう顔もべたべただ。
「みつる君だ!」隣のクラスの杉本と奥谷だ。「久しぶり」「顔べたべたじゃん」「ちょっとね、」「みつる君、弟いたの?」「いや奥谷、この子は妹でしょ」「嘘!」二人の会話にはあえてふれず、「花火って何時からだっけ」「19時だよ」「もうすぐか」と、話したところで向こうに奥谷のお父さんが見えた。見つかったら嫌だな。「別のとこ見てくるわ」「そう?じゃあまたねみつる君」「うん」

ヨーヨーすくい、りんご飴、もう一回綿あめ。小五のおこづかいでは少しきびしい出費だが、きらきらした笑い声を聞くと僕も楽しくなってくる。
「花火を見たら帰ろうか」「ん……」この返事は、と気づいたときには ぐっと背中に体重がかかる。「寝ちゃったか」
まだ明るい帰り道、遠くで花火の音、僕も誰かに背負われて帰った夏祭りがどこかにあった気がした。

押入れを開けて、小さな布団に横たわらせる。静かな寝息。周りにはヨーヨーとうちわを並べる。
「あらみつる、お祭り行ってきたの?」どき!「ちょっとね、」「やだ、押入れなんかに隠さなくていいのに」「いいの」後ろ手で押入れを閉める。おやすみなさい、また明日。

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こんな世界で正気を保っていられる僕は、すでに正気を失っているのかもしれない。

歪んだ表情(かお)と愛が
アダムとイブの話みたいだ
光ったはずの誓いが
ほだされていくのをみていた
嫌ったような気でいた
不貞腐れてる横目のあなた
満たしあえない僕らは
互いの身体に火をつけて
鮮明な夢をみていただけ
経験はないといえないだけ
あの頃の傷が癒えないだけ
光ってた金ピカ消えないだけ
倫理観なんてさえいらないから
溺れる気持ちだけもってきなよ
見蕩れるほど綺麗な朝焼け
生きてることに流れる涙
焼け野原に立つ新しいぼく
色褪せる温度纏って歩く

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ファミリア達と夏祭り act 5

「え? そりゃ…おれは行きたいけど?」
「…私も」
「え、ちょっと待て2人ともマジで?」
ナハツェがカロンとピシェスに向かって思わず身を乗り出す。
「…まじで」
「え、じゃぁカシミールは⁇」
お前はどうなの?とナハツェはぼくの方を見る。
え、ぼく…?とぼくはビックリして自分を指差す。
「…ぼくも、行きたいけど…」
ぼくの返事を聞いて、うわマジか…とナハツェはため息をついた。
そして、彼はあきれたように言った。
「しゃぁない、俺も行く。カシミールがいるとはいえ、キハがいる時点で何が起きるか分かんねーから、俺もついてく」
「やったぁ! ありがとう、ナハツェ!」
喜びのあまりキハはそう叫んでナハツェに抱きついた。
「うわ! よせキハ! 椅子から落ちるっ!」
やめろとナハツェは突然抱きついてきたキハを引きはがそうとするが、キハはずっと幸せそうに抱きついたままだった。
「…でキハ。夏祭りっていつなの?」
ふと、思い出したようにカロンが呟いた。
「え、いつって? 明日! 明日の5時っから!」
キハはカロンの方を見ながら言う。
「え、明日?」
「明日か…」
「別に暇だからいっか…」
いっそもう少し前に伝えてくれた方が良かったんじゃないのとぼくは思ったが、さすがに言おうとは思わなかった。
「じゃ明日の3時くらいにここに集合ね~! 約束だよ?」
キハは明るい声でみんなに言った。
「ん? なんで3時? 5時からだよねぇ?」
ぼくは思わずキハに尋ねた。集合時間にしては早すぎない?
「え、それはね~当日まで内緒!」
キハは口元に指を当ててウィンクするだけだった。

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ファミリア達と夏祭り act 4

「え⁈ 何? ねぇ教えてよピシェス!」
ピシェスの呟きに、キハは目をキラキラと輝かせて反応する。
「…え、そりゃぁ、カロンは耳を帽子かなんかで隠して、シッポは服の中に押し込めばいいし、キハは帽子に穴開けて角通せば、直に角が生えてるってそう分かんないでしょう?」
「え、ピシェスてんさーい!」
ピシェスの策を聞いて、キハは思わず声を上げた。
「いやちょっとひねれば思いつくでしょ」
ピシェスはそんな褒め言葉を聞いても何食わぬ顔だった。
「いやちょっと待て、羽根はどうする。隠すの難しいぞ」
不意にそう言ったナハツェは、自らのコウモリの翼のような黒光りする羽根を、マントから出して見せた。
「あ、ほんとだ」
「そーいやピシェスも羽根あるよな。白いのだけど」
そうね、と言って、ピシェスは背中から生えてる白い羽をこちらに見せた。
「羽根はもう魔術使って隠すしかないわね」
「え、それどーすんの」
できんの?とカロンが椅子から立ち上がっていう。
「そりゃぁ、キハの御主人に頼むしかないでしょう? そういうの得意らしいし」
ピシェスがちらとキハを見ると、キハはえ? ボクんとこの?と自分を指差した。
「そう、優しい人だから頼めばやってくれるでしょう?」
「…待て、キハのマスターはマジで会いたくないんだけど」
ナハツェがうつむきがちにピシェスを制止する。
「あそっか。ナハツェはピシェスの主さん苦手なんだっけ」
「えーどーしてー? ボクのマスター良い人じゃーん」
周りに尋ねられると、ナハツェは嫌そうに目をそらす。
「…ああいうのは嫌なんだよ」
「そう…」
ピシェスは静かに呟く。
「じゃあナハツェは夏祭り行かないの?」
キハはナハツェの顔を覗き込みながら聞く。
「…そもそも行きたかない。ていうか、みんなはどうなんだよ?」

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一輪花火

人ごみでもすぐわかる
白いワンピースがまぶしい
暗闇でもはぐれない
ずっと一緒だと思ってた

かき氷を突かせながら
9月に留学するのと言った
君のブルーハワイが
何故かいつもより青かった

hyu〜 don parapara…
ー 図書館 ビーチ 喫茶店
君との夏の思い出が
夜空に咲いては消えてゆく
段々激しくなる音は
9月までのカウントダウン

hyu〜 don parapara…
終わりを告げる一輪花火
そっと目を閉じると
ぼんやり残像と火薬の匂い
まぶたの中の花火は
実物と違って 青くみえた

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ファミリア達と夏祭り act 3

「無理だ」
「え?」
不意に、ナハツェがキハの提案を遮った。
「このメンバーじゃどうあがいても無理だろ。目立ちすぎる。それに…”マスター”の許可取れると思う?」
「…」
現実を突きつけられて、一同沈黙する。
「隠匿されるべき”魔術”の最上級の産物である俺たち”使い魔”が、堂々と人の多いところに出られると思う? 一般人にバレたら即消滅させられるかもだし」
「確かにそうだけど…」
「もーナハツェは頭固いな~」
それでもキハはのんきそうだった。
「…当たり前のことだ」
ナハツェは冷たく呟く。
…確かに、この世界でずっとその存在を隠されてきた”魔術”の一端が、一般社会の日の目を見てしまうことは禁忌中の禁忌だ。
そして数多ある魔術の中でも、最上級の”使役精術”によって創られた”使い魔”は、一般人の前に正体をあらわにしてはならないのだ。
特に”使い魔”の中でも、最高クラスである人のカタチをしたもの―ここにいるメンバーは、人間のカタチをしているとはいえ、普通の人間と区別するために翼や角、獣の耳を与えられている。
耳や角はどうにか隠せても、翼は隠すのが難しく、うっかり人間でないことがバレれれば自らの主人である”魔術師”に、消滅させられるかもしれないし、他の魔術師に狩られてしまうかもしれない。
だから、使い魔だけで人の多い場所に行くのはかなり危険でできたら避けるべきことなのは、使い魔たちの暗黙の了解だった。
まぁでも楽しいことが好きなキハなら行きたがるのも無理はないか。
「だからキハ、これは諦めろ」
「え~やだみんなと行きたいぃ~」
諦めろ、と言われても、キハは1人駄々をこね続ける。
「…あ、でも、行こうと思えば行けるよ」
ぽつっ、と何かを思いついたようにピシェスが呟いた。

2

場内アナウンス

皆さんこんにちは、月影:つきかげです。
百鬼夜行へのたくさんのご参加ありがとうございました。
いかがでしたでしょうか。妖怪たちが跳梁跋扈する無人のお祭り会場”百鬼夜行”。
妖怪とお祭りの雰囲気ってどことなく似ている気がします。あの猥雑とした感じや阿保やってる感じが似ているんでしょうね。
正直予想以上の書き込みの数で、内心やべえやべえ超うれしいと舞い上がってるところです。

マジヤバい。
あとKGBさんお疲れ様です。

さて、掲示板夏祭りも残すところ今日で最後となりました。
皆様の手でこの祭りを成功に導いてほしいと思います。
グランドフィナーレとかは特に用意してませんが、騒いだ後の鎮火されていく様をぼんやり眺めるのもまた一興。
ぜひ皆様の楽しむままになされますよう。

夏祭り実行委員 月影:つきかげ

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センチメンタルの夏?

窓の外から金属音と声が聞こえる
スッとアイスがとけた

高く上がってサッと散った花火
庭の池からカメがフッと顔を出す

水槽の金魚がくるりと沈む
消えそうなロウソク諦められない

ギッと呟いて地に落ちたセミ
田んぼにダイブあまがえる

キンキンに冷えたビール
のびに伸びたそーめん

ガタンゴトンと電車に揺れる
線路沿いのうつむいたヒマワリ

釣れ始めたワカサギ
見えなくなった素肌

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後の祭

蝉が唸りをあげる頃
祭り終わりの川縁で
高く太陽燃え盛る
彼方逃げ水ごみ袋
汗をぬぐった午前九時
君と も一度待ち合わせ
特に行く宛てないけれど
それでも君と待ち合わせ
不馴れな君のことだから
今日も迷子になるだろか
そして結局地下街を
駆けずり回ることになる

宵の祭りの遺骸には
蟻と蝿とがたむろして
君と一緒にあの夜を
過ごせてたらって思ったり
「も一度君に会おうとして
望遠鏡を覗きこんだ」
街で流れる音楽は
想いをいっそう駆り立てた
行くあてなんてどこにもない
目的なんてあるはずない
ただ君といるこの時間
それだけがただ大切で
暫く会えない君だから
「またね」の心許なさが
僕らをいっそう駆り立てる
離れられない気がしてる

真夏の街は騒がしく
僕の心に囁いた
赤い髪した君のこと
忘れるはずなどないんだ、と

0

孤毒

毒を吐きたくなるような夜は
いったいどうしたらいいの

すべてを受け止めてくれる
あなたはどこにもいないのに

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ファミリア達と夏祭り act 2

「俺はホットでもいい。別にアイスも飲むけど」
「え~でもボクはナハツェが無理してないか心配だよ~」
キハと呼ばれた角が生えた子が、ナハツェにすり寄りながら言う。
「…ウザいから離れろ。紅茶淹れらんない」
ナハツェはブスッとした顔でキハに言う。
それでもキハはえ~やだ~と駄々をこねて離れなかった。
「まぁ…そこまで気にする必要なくね? キハはお前さんが好きなんだし」
猫とも犬ともつかぬ耳を持つ赤髪の人物が、ナハツェに向かって笑いかける。
「…そーだよー」
赤髪の人物の隣にいる長い青髪の人物もうなずく。
「…何なんだよ、カロンも、ピシェスも…」
ナハツェはあきれたようにため息をつきながら、手元のカップに紅茶を淹れた。
ぼくはそんな彼らの様子を見ていて、ふとキハの手に目が留まった。
「…キハ、何もってんの?」
ぼくの言葉で、周りのみんなの視線がキハに集まる。
「ほんとだ」
「あーそれさっきから気になってたんだよね」
「お前、何もってんの?」
ナハツェが尋ねると、キハは、ん? コレ?と手の中にある紙筒をみんなに向かって広げて見せる。
「じゃじゃーん! 夏祭りのお知らせ!」
は?と周りの者たちは呟く。
「…何の話?」
「夏祭りって…」
「てかソレどこから持ってきた」
ぼくもそうだけど、キハ以外のみんなは何のことか、全く分かっていないみたいだった。
それでも気にせずキハは話を続ける。
「今度ここの近くの公園で夏祭りやるんだって。だからみんなで行こう!」

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陰陽師と夜の夏祭り③

「……陰陽師」
「ん? どうした」
「そろそろ夜が明けそうだ」
「……ああ」
東の空は白んでいて、じきに朝が来ることを伝えていた。
「陰陽師、ありがとう。楽しかったぞ」
「君が楽しめたならそれでよかった。でもいいのか? もっと回りたいところとかは?」
女の子は首をふるふると振ると、答える。
「いいんだ。もう満足だ。それにやっぱり人と会うわけにはいかない。私は一度死んでいるのだから」
「そうか」
「ありがとう」
「お礼はもう聞いたよ」
「何度でも言うさ」
「……そうか」
陰陽師は式神を式札に戻す。
「せっかく式神になれたんだ。何度だって連れてってやるからあんまり落ち込むなよ」
女の子はもういない。

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陰陽師と夜の夏祭り②

「陰陽師、これはなんだ」
「手持ち花火だよ」
「花火……なんだそれは」
「きれいな火花を出す棒、かな?」
「ますますなんだそれは」
陰陽師は手持ち花火のパックを購入した。レジは無人なので、さっきと同じく代金はカウンターの上に置く。
「はいこれ。ここをこっちに向けて持ってね」
「こうか?」
「そうそう。じゃ、いくよ」
「え、いくって何ぃぃいいいおおおおおっ!?」
女の子の握っていた手持ち花火に陰陽師が着火すると、火花が勢いよく噴き出した。
「おお、おお、おおー! 慣れてくると、これすごくきれいだな」
「うんうん。……あやめて楽しいのは分かるけどこっちに向けないで」
「?」
無邪気な女の子は、火花がきれいなのが楽しくて危うく先端を陰陽師の方に向けそうになった。花火は人に向けてはいけないと言うのを怠っていた。
「こういうのもある」
陰陽師は次に小型の打ち上げ花火を取り出す。女の子に少し下がるように指示すると、陰陽師はためらいもなく着火した。
どーん、という破裂音とともに、夜空に散らばる焔が浮かび上がる。
女の子は最初こそその音に驚いていたが、すぐに花火の美しさのとりこになったらしい。
しばらくの間、無人の通りに破裂音とパラパラとはじける音が響いた。
「そして締めはこれ」
取り出したのはは線香花火だ。
「さっきのと比べて一段と地味だな」
「むしろその地味さこそが最大のとりえ」
「そういうものか。……あ、また落ちた」
女の子は次の一本に手を伸ばした。手元のほとんど焼けずに終わった線香花火三本に、新たに一本が追加される。
「そして難しい。なんで陰陽師のはそんなに長生きなんだ」
「なんでだろうねぇ」
男の手元には最後まで焼けた線香花火の残骸が一本だけある。現在二本目に挑戦中らしい。じぃっと見つめて、女の子は長生きさせるための技術を盗もうとした。結局は集中してじっとしていることくらいしか分からなかったが。
先ほどは地味とは言ったが、ささやかに表情を変える線香花火の焔も少女の眼には好ましく見えた。自分の眼にも同じ色を輝かせながら、女の子は自分の線香花火に集中しだす。
「……あ、また落ちた」

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陰陽師と夜の夏祭り①

「陰陽師、これは何というものなのだ?」
「それ? それは“りんご飴”ってやつだよ。食べてみるかい?」
「いいのか? 売り物らしいぞ。勝手にとっていっては悪いのではないか?」
「お金は払うさ。……ほら、これ」
「……。どうも」
女の子は陰陽師からりんご飴を受け取るとしげしげと眺めはじめた。
「陰陽師、……これ本当に食べれるのか?」
こつこつ、とりんご飴の表面を軽くたたくと、女の子は困惑したように尋ねてくる。
女の子は棒に刺さった赤くて硬い球体が食べられることを知らない。
「食べられる、……というより飴だから舐める、かな。おいしいよ?」
陰陽師は自分の分の代金をカウンターの上に置くと、台からりんご飴を一本抜き取り自分の口へと運んだ。
「中には姫りんご。ほら」
舐めるのではなく齧ったそれの中身を見せる。陰陽師の歯形に沿って、白い果肉が覗いていた。
それを見て女の子も意を決したようにりんご飴を舐め始める。
「……甘い」
「君の時代では結構貴重なんだっけ、甘味って」
「貴族はともかく、庶民がたやすく口にできるものではなかった」
「よかったね」
「うむ、よかった。感謝する」
「どういたしまして」

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酒売りの男

今宵は妖怪たちの祭日…

いつも悲しい顔をした心優しき気弱な妖怪
優しさゆえか、はたまたその顔のせいか
いつもいじめられていた

なりたい自分になれる酒を売る男が現れた
奴らに仕返しをしようと酒を買う
明るく強くなった妖怪
自らがされたことも忘れ、奴らを酷くいじめた
その姿をたった一人の友人に見られ、失望された
やがて、妖怪は自分を見失っていく…

気が付けば元の自分
酒を飲むのも忘れ、眠りについていた
そのままの君がいい
男はそう呟いた…

今宵は妖怪たちの祭日…