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どんなもんだい

安売りしよう 君への想い
どうだい 少しは 照れてくれるか

どれだけ売り捌いても
溢れ あまって しかたない

末端価格も狂いだす だって夏がくるから

君のまつげに一曲 君の小指に一曲
君の腰つき一曲 君のくちびる一曲

そのうちゴージャスなフルアルバム
そしてリリースツアーでハネムーンだろ

コード進行乱れだす だって夏が来るから

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地中からお届けします

恥ずかしすぎて穴があったら入りたい
って、言うけれど
穴がなくても この恥ずかしさを原動力に
いくつも穴が掘れそうな今日です

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明日

明日なんて来なきゃいいのにと思う今日だって昨日の明日なんだから。

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鉄路の魔女:夢破れてなんちゃら その①

電信柱の上で蹲るように眠っていた鈴蘭は、朝の眩しさに目を覚ました。
凝り固まった手足を解すために大きく伸ばし、そのままバランスを崩し地面に落下する。
「ぶげっ…………いたい……」
強かに打ち付けた後頭部をさすりながら立ち上がり、鈴蘭は歩き出した。ガードレールをひょいと跳び越え、未だ始発も動かない早朝のBRT専用道路の上を進む。
目的地は、とある踏切跡。最近は毎朝通う、ある種『お気に入り』となったそのスポット。その遮断機の上に腰を下ろし、右手首を見る。
普段はポンチョ風の衣装の下に隠れている機械の右腕。その装甲の下は、部分的な廃線によって不完全に幻影化している。BRTへの移行が無ければ、影響はこの程度では済まなかっただろう。
そう考えながら右腕をしばらく眺め、鈴蘭は再びその腕を衣装の下にしまった。これまで生きてきて、人間を観察して得た知識によると、彼らは時間を知りたい時に手首を見るらしい。それが『腕時計』という外部装置を必要とするところまでは気付けないまま、小首を傾げてただ時が過ぎるのを待つ。
数十分後、始発バスが真横を通り過ぎた。
「や」
短く呼びかけつつ右手を挙げる。当然答えが返ってくるはずは無く、鈴蘭は周囲を眺め始めた。
時間の経過とともに、少しずつ、本当に少しずつではあるが、人通りも増えてくる。
そして、1つの軽いエンジン音が近付いて来るのに気付き、鈴蘭は表情を輝かせてそちらに目を向けた。
そちらからは1台の原動機付自転車が近付いて来て、1度減速してから踏切跡を通過する。
「やぁ、少年!」
その運転手に、先ほどよりも明るく呼びかけ、右手をひらひらと振る。気付かず去っていく後ろ姿を見送り、一瞬の思案の後、鈴蘭は遮断機から飛び降りた。

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視える世界を超えて エピソード8:雷獣 その⑤

落葉の厚く降り積もった地面を踏みながら、種枚は人の目の届かない公園の最奥で立ち止まった。
「……私、この場所好きなんだ。落葉って踏んでると楽しいだろ?」
「わぁ感性が幼児」
「うっさい」
「まあ、わたしもこのガサガサの感触は好きだけども」
「お前もじゃねーかシラカミメイ」
2人の会話は、何でも無い雑談から始まった。
「あ、そういやシラカミィ」
「何だいねクサビラさん」
「お前、歳はいくつだい?」
2人の周囲の空気が張り詰める。
「んー? メイさんは大学1年生だから、お酒も飲めないピチピチの19歳ですよー」
「嘘が下手糞だな」
2人の放つ殺気が一層色濃くなる。
「……ウソとは?」
「人に化けられる『妖怪』が、たった2桁の年齢なわけ無エだろうがよ。なァ、“雷獣”?」
「ありゃりゃ…………バレちゃってましたかー」
「ああ、一目見て分かった。なんでそんな奴がただの人間の『お友達』なんかやってンだ?」
「……人外は人間と友情を育んじゃ駄目だと思ってる派の人?」
「まあ、そうだね。人間の居場所に踏み込んだ奴らは全員死んじまえと思ってるよ」
「荒っぽいなぁ……。じゃあわたしも?」
「察しが良くて助かるよ」
種枚の姿が消えた。

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たぶん悪夢

「起きたばっかりなのに何か疲れた……」

                  「寝汗ひどいよ。シャワー浴びてきたら?」

「うん行ってくる……」

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唯一の活路

「みんなで力を合わせてハッピーエンド」なんてのは、別に架空の物語でも絵空事でも、綺麗事でも何でもない。
無知で馬鹿で脆弱で愚かな人間って生き物が少しでもマシな道を掴むためのただ一つのやり方なんだ。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20.エインセル ⑭

「…あ」
不意に雪葉が声を上げたので、わたし達は顔を上げる。
立ち上がる雪葉が目を向けている方を見ると、見慣れない小柄な小学生位の少年がこちらに近付いてきていた。
「榮(えい)」
雪葉はそう言って彼に駆け寄ろうとするが、榮と呼ばれた少年は気まずそうに立ち止まる。
「あれ、どうし…」
雪葉が不思議そうに呟いた時、榮は両目をエメラルドグリーンに光らせた。
「!」
雪葉が驚いたような反応を見せた瞬間、榮の姿は見えなくなった。
そしてわたし達の目の前から走り去るような足音だけが聞こえた。
「エインセル‼」
雪葉はそう叫んで走り出す。
「追うわよ、ネクロマンサーとコマイヌ!」
穂積も立ち上がって走り出す。
「ボクはネロだっつーの!」
ネロは両目を赤紫色に光らせると、同じく両目を光らせた耀平と共に駆け出す。
わたしや黎、師郎もそのあとを追った。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20.エインセル ⑮

榮を追い始めて暫く。
わたし達はあの少年を追って路地裏を走っていた。
「それにしても何なんだよアイツ」
急に現れたと思ったら消えやがって…とネクロマンサーは呟く。
「まぁそれより雪葉を追わなきゃいけねーだろ」
呼び出した張本人がどっか行っちゃ意味ねーよとコマイヌはネクロマンサーに目を向ける。
ネクロマンサーはそうなんだけど…と口を尖らせた。
「…」
暫く走った所で、先を走る足音が止まる。
するとその場に先程の小柄な少年、榮が現れた。
「榮…」
先頭を走る雪葉が思わず呟いて立ち止まると、榮はゆっくりとこちらを振り向く。
「榮、急に異能力を使って逃げるとか反則だよ」
皆困るじゃんと雪葉は榮に近付く。
「特に君は…」
雪葉がそう言いかけた時、榮は黙って彼女に手に持つスマホを見せつけた。
その画面は電話番号を入力する画面になっていた。

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鉄路の魔女:夢破れてなんちゃら その②

“鉄路の魔女”は基本的に、子どもにしか感知できない。鈴蘭が腕を失う原因にもなった大災害の頃、少年期にあった人間でも、十数年を超えた現在、社会人になった者も少なくない。ただ不老不死の魔女である鈴蘭には、時間経過による変化が理解しきれず、かつて交流し共に遊んだその人間が自分を無視している理由が理解できなかった。
専用道路の上をぽてぽてと歩き、2駅分ほど歩き続けたところでふと足を止める。
「………………や」
目の前の黒い影に、右手を挙げながら声を掛ける。人間の赤子の頭部程度の大きさだったそれは、鈴蘭の声に反応して全高数mほどにまで膨れ上がった。
「駄目だよ。こんな風に道を塞いじゃ。迷惑になるんだよ」
幻影は首を傾げるように変形し、目の前の魔女に突進を仕掛けた。
鈴蘭は右手だけでそれを受け取める。幻影の質量と速度が生み出すエネルギーは破壊力として機械腕を軋ませ、装甲の随所からは損傷によって火花が飛び散る。
「む…………」
空いた左手を大きく後ろに引き、軽く握った形に固定する。その手の中に、六連装グレネードランチャーが生成される。
「そー……りゃっ」
射撃では無く、銃器そのものの質量を利用し、幻影を殴りつける。
幻影を引き剥がし、煙の上がる右手を開閉する。
「まだ……動くかな。よし」
その手を強く握りしめ、それと同時に機械腕が爆発し、装甲が弾け飛んだ。

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他人様の企画を勝手に紹介していく

先月から始まりましたテトモンよ永遠に!さんの企画『テーマポエムを作ろうの会』。

ルールは簡単。しかし二陣営が必要です。
まず設定原案側。投稿作品の登場人物でも、外部で書いてるキャラクターでも、今回即興で作った子でも良いのでキャラクターの設定を書いて投稿します。
この時タグに『テーマポエムを作ろうの会』『〇〇の設定』の2つを入れる。「〇〇」の部分はそのキャラクターの名前ですね。
次にテーマポエム制作側。好きな設定を選んで、その子のテーマとなるポエムを書いて投稿します。この時タグに『テーマポエムを作ろうの会』『〇〇のテーマ』を入れる。「〇〇」はお察しの通りキャラクターの名前です。

期間は6月いっぱい。ナニガシさんは先月までの時点でかなりの量設定を投下しているので、誰かテーマ書いてくれないかなー……。チラッチラッ

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廻るは因果、故に舞い散る桜の刃 後書き

光「一旦終わりだねぇ、出番少なくて寂しかったな...」

『大丈夫です。続編では活躍して頂きます。あと光さん主人公のサイドストーリーも用意してます。(出すとは言ってない)』

桜音「本人来た!」

光「ちょっと意外...それにしても、サイドストーリーとか作ってたんだ...」

葉月「題名関係ないし長くないですか?」

『はぅっ』

桜音「やめな、多分図星。」

『ぐはぁっ』

光「二人とも傷抉らないの。まぁ続編の伏線みたいなもんだって、やたろう言ってたし。」

葉月「はぇー」

桜音「続編は6月予定だそうです。」

光「遅くない?」

桜音「なんか、他のもの投稿するらしいです。」

葉月「⁈桜音様を待たせるとは何たる不敬!ちょっとぶっ○しに...!」

光「はいはい、やめてやめて。じゃあ、長々お付き合い頂き、ありがとうございました!」

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鉄路の魔女 〈企画要項〉

どうも、テトモンよ永遠に!です。
突然ですが企画です。
タイトルは「鉄路の魔女」。
人々の鉄道に対するイメージから生まれた少女たち「鉄路の魔女」が人間のイマジネーションを餌とする存在「幻影」と、時に人間たちを巻き込みつつ戦ったり日常を過ごしたりする物語をみんなで書いていこうという企画です。
端的に言えば「鉄道(萌え)擬人化バトルファンタジー」と言った所でしょうか(難しい)。
ルールはこの後投稿する設定と公序良俗を守ってさえいればなんでもOK!
もちろん投稿形式・長さ・数は問いません。
開催期間はこの書き込みが反映されてから5/31(金)24:00までです(フライング・遅刻投稿も大歓迎)。
次は〈世界観〉です!

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廻るは因果、故に舞い散る桜の刃 最終話

ありがたいことに、
葉月は放課後まで大人しくしてくれていた。

「あの、御宅の方はどちらに...」

若干申し訳なさそうに聞く葉月。

「いいよ、今日家に来て。そこで話すから。」

夕焼けの中、二つの影が校門を潜り抜けて行った。

to be continue...

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視える世界を超えて エピソード8:雷獣 その⑨

「ああクサビラさん、最期にお友達とおしゃべりする時間をもらうよ?」
「……好きにしろ」
白神さんの問いかけに答え、種枚さんが1歩退いた。一息ついて、白神さんの方に向き直る。
「ねえ千葉さんや。1個だけ、正直に答えてほしいんだ」
「……何でしょう」
白神さんの質問が何なのかは、既に察しがついていた。深い藍色の虹彩に縦長の瞳。微笑を浮かべた口から伸びる鋭い牙、さっき攻撃を受けた際に身体を庇ったのか、上着の袖の破れた穴から覗く、滑らかな栗毛の毛皮。パチパチと音を立てて、彼女の身体の周りに目視できるほどはっきりと流れている放電。
「千葉さんや。わたしのこと、怖いと思う? 正直に答えてほしいんだ。『怖い』って、そう言ってくれたら、わたしは人間に混じっているべきじゃない。大人しくクサビラさんに殺されるよ。それが正しいことなんだから、わたしは気にしない」
「…………」
正直に答えるとしたら、たしかに『怖い』と言わなくちゃいけない。ヒトじゃない存在の恐ろしさは、実体験として知っている。友人として接していた人が、『人』ではなかった。その事実に戦慄するなという方が無茶な話だ。
「…………全く怖くない、とは言いませんよ。妖怪だっていうなら」
「そっかー」
「でも、それでも白神さんは自分にとっては大事な友人です。そんな白神さんを失いたくない。……それに」
種枚さんに目を向ける。
「白神さんなんかよりよっぽど恐ろしいモノ、自分は見慣れてますから。だから大丈夫、白神さんは怖くなんかありません。可愛い可愛い私の友人ですよ」
「ち、千葉さぁん……!」
種枚さんがどんな反応を示すのか、注意を向けてみると、種枚さんは後方の自身の足跡を眺めていた。少しずつ火の手が広がりつつある落葉に向けて適当に腕を振るうと、落葉が大きく舞い上がり、火もかき消された。

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鉄路の魔女 〈設定〉

この書き込みは企画「鉄路の魔女」の〈設定〉書き込みです。

〈設定〉
・鉄路の魔女
鉄道路線へ対する人々のイメージから生まれる少女の姿をした“なにか”。
大抵子どもにしか認識・接触できないが、稀に大人でも認識・接触できる者がいる。
自らのイメージ元の路線へ対する人間のイマジネーションが少しでもあればその姿を保つことができる。
同じく人間のイマジネーションを糧とする“幻影”には敵対的。
自らのイメージ元の路線に対する人間のイマジネーションを消費することで様々な行動が可能で、戦闘時には固有の武器の生成が可能。
名前としてイメージ元の実在・現存する鉄道路線のラインカラー/車体カラー名を名乗り、二つ名として「〇〇(モチーフとなる実在・現存する路線名)の魔女」を名乗る。
イメージ元の路線のラインカラー/車体カラーにちなんだ華やかな衣装・容姿を持つ。
イメージ元の路線が同じ会社の“魔女”は互いのことを“姉妹”と認識する。
イメージ元の路線が通る街に出現することが多い。
人間のイマジネーションが尽きない限り不老不死。
なぜ少女の姿をしているのかなど謎が多いが、彼女たちはほとんど語ろうとはしない。

・幻影
“鉄路の魔女”たちの敵。
そのどれもが禍々しい姿をした巨大な怪物。
“魔女”たちと同じく人間のイマジネーションを糧にするが、それを欲するあまり人間のイマジネーションを根こそぎ奪ってしまい、彼らを廃人化させてしまうことがある。
そのため“魔女”たちからはよく思われておらず、討伐の対象となっている。
多くの人間が住む都市部に集まりがち。
その正体は、廃線になった路線のイメージから生まれた“鉄路の魔女”の成れの果て。
廃線になったことで人々から忘れ去られ、自らのイメージ元へ対する人間のイマジネーションを失うことで姿を維持できなくなると彼女たちは“幻影”化する。
幻影になってしまえば元の人格は失われるし、本能の赴くままに人間のイマジネーションを何へ対するものなのか見境なく喰らうようになる。
これに対抗できるのは“魔女”のみである。

という訳で設定集は以上になります。
何か質問などあればレスをください。
では、皆さんのご参加楽しみにしております。

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鉄路の魔女 〈世界観〉

この書き込みは企画「鉄路の魔女」の〈世界観〉書き込みです。

〈世界観〉
舞台は我々の住む世界とほとんど変わらない世界。
人々の生活を支える鉄道の傍にはいつも不思議な“少女”たちが存在する。
人々の鉄道へのイメージから生まれ、“鉄路の魔女”を名乗る彼女たちは、人間たちのイマジネーションを糧に暮らしていた。
しかし、人間のイマジネーションを糧にするのは彼女たちだけではない。
“幻影”と呼ばれる怪物たちもまた、人間のイマジネーションを糧としていたのだ。
イマジネーションを欲するあまり人間を廃人化させてしまう”幻影“に対し、”魔女“たちは自分たちの糧を守るために戦い続ける。
これは“鉄路の魔女”たちの戦いと日常の物語。

お次は〈設定〉です!

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視える世界を超えて エピソード8:雷獣 その⑥

種枚さんと白神さんは、自分が鎌鼬くんと出会ったあの場所まで入っていき、そこでしばらく何か言葉を交わしていたようだった。
いつ入っていったものか、そもそも割り込んで良いものか。そんなことを考えていると、突然種枚さんの姿が消えた。
そして一瞬の後、白神さんの斜め後ろに倒れ込むようにして現れた。普段の種枚さんからは想像もできない、まるで走っている途中で躓いて転んだみたいな……。
「……ああクソ、キツいなコレ……。熱なら平気なんだが、電気か?」
「いやぁ、実はわたし、静電気を結構溜め込みやすい体質でして」
「へえ、特異体質どうし、お前が人間なら仲良くできそうだったものを」
「メイさんとしては人間じゃなくても仲良くしてほしいなー、って」
「ハハ、ほざけ」
種枚さんがよろよろと立ち上がり、右手を大きく振りかぶる。以前見せてもらった、遠距離から幽霊を吹き飛ばしたあの技だ。
「触れちゃマズい、ってんならさァ……距離とって殺す技も、揃えてあンのよこっちはァ!」
種枚さんが右腕を振り下ろし、技の余波で白神さんが吹き飛ばされる。
流石に目に見えて問題が起きている以上、もう放ってはおけない。足が半ば勝手に動き出し、自分は二人の方へ駆け寄っていた。
「ちょっと待ってください種枚さん!」
2人の間に割り込むようにして、次の攻撃を放とうと右手を振り上げた種枚さんを制止した。

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視える世界を超えて エピソード8:雷獣 その⑦

「なッ、射線に入ンな馬鹿!」
自分が割り込んできたことで、種枚さんの攻撃は止まらなかったものの、姿勢を大きく崩して攻撃は外れたようだった。顔のすぐ横を強烈な風圧が通り過ぎる。
「君、なんでソイツを庇うんだ! ソレは『人間』じゃあない。『妖怪』だぞ!」
白神さんが妖怪? 白神さんとは決して長い付き合いだったわけじゃないけれど、それでもこれまで接してきた限りでは他の『普通の人間』と変わったところはあまり無かったように思う。……けれど。
「およ、千葉さんだぁ…………。ねえ千葉さんや? まさか、そのお友達の妄言を信用するわけじゃないよね?」
声をかけてきた白神さんの方に目を向ける。白神さんは身体を起こし、こちらに縋るような視線を向けている。
「…………自分の知る限り、種枚さんは『そういう嘘』を吐くような人間じゃありません」
「千葉さん……」
泣きそうな顔をする白神さんには申し訳なく思いながら、種枚さんに向き直る。
「それでも彼女は、自分の大切な友人です。人間でないことが、彼女が殺されるのを黙って見過ごす理由になりますか!」
「ち、千葉さん……!」
白神さんに何か言葉をかけてあげたい気持ちはあるけれど、今はそれができない。種枚さんから目が離せないのだ。
今、目の前に立つ種枚さんは凄まじい殺気を放っており、足下の落葉からは彼女の体温によるものか、黒い煙が薄く立ち昇っている。
間違いなく、種枚さんは白神さんを殺す気だ。自分がここにいることで場の緊張が保たれている。自分が少しでも動けば、種枚さんはその隙を逃さず白神さんに迫るだろう。実力で彼女を止めることができない以上、自分はこの緊張状態を維持することでしか白神さんを守れないのだ。

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鉄路の魔女 〈企画要項(追記)〉

どうも、テトモンよ永遠に!です。
昨日から企画「鉄路の魔女」が始まりましたが、要項に書き忘れていたことがあったので追記します。

・参加作品にはタグ「鉄路の魔女」を付けてください(あとでまとめる際に役立つので。もちろんまとめられたくない方は付けなくて結構)。
・参加したいけどどうしても内容が思いつかない方はキャラクター設定だけ作った上で、(一応)開催中の企画「テーマポエムを作ろうの会」のタグ「テーマポエムを作ろうの会」を本企画のタグと一緒に付けて投稿してくだされば誰か(企画者かもしれない)が作品を作ってくれるかもしれません。よかったらどうぞ。

ちなみにこの企画でぼくはこの手の企画開催を最後にしようかなと思ってます。
もうネタがあんまりないし…
なので今まで見る専だった方!
参加するなら今しかないですよ‼︎
未完になっても設定だけしかなくてもいいのでよかったらご参加ください!
よろしくお願い致します!

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20.エインセル ⑱

「彼はあんたを足止めするために別行動してたみたい」
それをうちが利用しただけ、と雪葉は言った。
師郎はそれを聞いて、利用されちまったなぁと頭をかいた。
「…と言う訳で、”目の前の人間と同じ姿に化けているように見せる”能力の”エインセル”こと瀬登 榮(せと えい)くん」
雪葉はしゃがみこんで榮の肩に手を置いた。
「事情聴取をお願いできるかな?」
雪葉はそう言ってにっこりと笑った。
「ひいぃぃぃ」
榮は思わず後ずさった。
そして雪葉は榮を立たせると、腕を引いてその場から去っていった。
「…なぁ、どうする」
おれ達置いてかれてるけど、と耀平がふと呟く。
「アイツに付いて行くしかなくない?」
ボクらも被害受けているんだし、とネロは言う。
「あたしは行くわよ」
雪葉の親友なのだから、とこぼして穂積は歩き出した。
「…じゃ、おれ達も行くか」
穂積の様子を見た耀平がネロに目を向けると、ネロはうんとうなずく。
「行くぞ、黎、師郎…お前も」
耀平はわたし達3人を促すと歩き出す。
黎と師郎も2人のあとに続き、わたしも彼らのあとに続いた。

〈20.エインセル おわり〉

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少年少女色彩都市・某Edit. Outlaw Girls Duet その④

触手は筐体を破壊することなくただ理宇だけを執拗に追跡していく。理宇はゲームコーナーの中をひたすら逃げ回り、格闘ゲームコーナー、メダルゲームコーナー、再びクレーンゲームコーナーと走り続けたところで、前から襲い来る触手に挟撃され、再び拘束を受けた。
首、両手首、両足首を絡め取られ、完全に身動きができない状態で空中に持ち上げられる。
「うげっ……! た、たすけて先輩……!」
身じろぎして抵抗するが、エベルソルの力はかなり強く、全く歯が立たない。そのうち胴体にも触手が巻き付いていき、更に締め付ける力が少しずつ強くなり始めた。
「せ、先輩……どこ……? ロキ、先輩……」
首の触手も締め上げられ、意識が遠のいていく。完全に気を失う直前、ロキの光弾が触手の拘束を吹き飛ばし、理宇の身体はそのまま床に落下した。
「リウ、変に逃げ回るからサポートが遅れたよ。ごめん」
「ぁぅ……それは、ごめんなさい」
「謝らないで。立てる?」
駆け寄ってきたロキに助け起こされ、理宇は再びスティックを生成した。
「すみません、まだ戦えます。ロキ先輩は下がってください」
「ん、頑張れリウ」
再び始まった触手の猛攻を捌き始めた理宇を置いて、ロキはゲームコーナーからひとまず脱出した。

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2/12

笑顔と言う名の武器を纏って
青春とか言う不完全を
いっその事楽しんでやる

それで君に殺されようと
走馬灯が増えて万々歳だ
そのくらいの気概で居よう
将来後悔したくないから

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夢シリーズ、「江戸で叱られた夜」パート1

私は大学二年の者だ。
ここのところ、大学の授業でうまくいかないことがあり悩んでいた。
「自分に足りないものは何なのか?」「何が不安なのか?」
そう考えるうちに、自分が苦しくなっていた。
そんな日を繰り返していた時のことだ。

その夜、早めに寝ることにした。まずは、日ごろの生活リズムから整えようと思い、
二三時に寝ることにしたのだ。
寝床に入り目を閉じた。

すると、こんな夢を見た。ここからは、夢の中での話だ。

なんと私は、江戸に帰っていた。夢では、今までもたまに江戸に帰っていたのだがこの日は違った。
時の治世者は、8代将軍、徳川吉宗公であった。江戸では、たまに「徳田新之助」
として会うことが多いのだが、この日は、会わなかった。
私は、武士の姿で江戸の町を歩いていた。刻限は、子(ね)の刻(現在の夜11時)
だった。
考えていることは、ただ一つ。己の大学生活のことだった。好きな事だけ取り組み、苦手なことは、後回し。自分の将来を必死で考えているつもりが、結局行動に移さず、考えただけで満足していた。そして大学に入ったときの志を忘れかけていた。
ただただ、悔しい気持ちで学生新聞を見ていた。この時間ということもあり、
人は誰も出歩いておらず、歩いていたのは私一人だった...(続く)

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深夜の迷子 宵

せんちゃんに手を引かれ、歩きだすこと10ちょっと。不意にせんちゃんが振り向いた。
「…そういえば、怪我とかしてない?腹減ってない?」
ゆずは「えっ」と声をあげ、困惑して目を逸らす。
「えっと、」
ぐるるる…次の言葉を続けようとしたとき、お腹が鳴った。
「…お腹空いた」
「なにか食べるか…食い物持ってくる」
「んーん、それは大丈夫!お菓子持ってるの」
「そか。じゃあとりあえずそこで食べな」
せんちゃんに誘導されるまま脇道に逸れ、ゆずはちょこんと座りこむ。
お菓子を取り出しつつ、ちらっとせんちゃんを見上げると、鋭い視線で辺りを見回していた。
「…せんちゃん?」
せんちゃんがゆずを見下ろす。その目に先ほどの鋭さはない。
「んっ?」
「…いや、なんか怖い表情してたから…」
「それは…気にすることないよ」
「そう?」
不審に思いながら、お菓子を口に運ぶ。
_その一口と、せんちゃんの手がゆずの腕を掴むのは同時だった。

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崩壊世界見聞録 2

「う〜ん...」

バスッ、と言う音とともに、藍色のテントが開く。
カナはそれを地面におろし、
それをハンマーとペグで固定する。
相変わらず、周りは異様な程静かで、ペグをハンマーで打つ音のみが響いていた。

何故、年端もいかない少女が、
崩壊したビル群の中で野営をしているのか。

理由は1つ。

数年前、世界は崩壊した。

戦争によって。
争いに発展した訳は至って簡単、資源の不足。
資源の奪い合いが激化した結果、机上に収まらなくなった、ということである。
様々な兵器の登場、民間人への無差別攻撃。
平和条約、その他諸々のルールは
意味を成さなくなった。
食糧難、治安の悪化、戦災孤児の増加。
そんなこんなで紆余曲折あり、呆気なく世界は崩壊した。
こんなに簡単に崩壊するものだとは、誰も思っていなかっただろう。
いつか戦争が終わって、いつかいつも通りの日常がかえってくる。
そう、信じて疑わなかった筈だ。
世界の崩壊。
言ってしまえば、原始時代に戻った様なものである。

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深夜の迷子 宵_3

ゆずの身体が曲線を描いて飛ぶ。…こんな感覚は人生初のバンジージャンプ以来だ。喉が痛むほどの叫び声をあげたのはちょっと前のお化け屋敷以来だ。
「痛っ」
混乱状態のゆずを正気に戻したのは、ゆずの身体をせんちゃんが受け止めたときの痛みだった。
「雑に扱ってすまんな。"あれ"は光が苦手だから、ゆずが月の光を受けてれば追ってこないだろうと思ってつい」
「ついって…」
せんちゃんが見下ろす先には、こちらを見失ったのか『神隠し』が忙しなく動いていた。
「木の上を移動するのは疲れるから、やっぱり普通に逃げた方が良いな」
「それ大丈夫なの?」
「正気、あれ以外にも面倒なのはたくさんいるから…運だな」
「ええ…」
「夜明けまでには山を出よう」
「うん」
ゆずがせんちゃんの手を握ると、向こうも握り返してきた。

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幻想を抱く

なつかしい過去の影に
恋してるように錯覚する
ってことがあるとおもう

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深夜の迷子 宵_2

「きゃっ!?」
素っ頓狂な声を上げたゆずを、せんちゃんはそのまま背中側に隠す。
「なっ…なに、なに!?」
「あれ見える?」
せんちゃんが指を指す先には、顔のない巨大な六本足の蜥蜴らしき生き物がいた。頭と思われるところには大きな口、背中と思われるところには墓が生えるようにいくつも建っている。
「うぇえぇええ…なにあれ…」
「あれは、なんというか…神隠しそのものというか…多分、ゆずのことを迎えにきたんだな」
『神隠し』は尻尾をずるずる引きずり、段々と速度を上げて近づいてくる。
「ひっ…」
「くっそ…なんで目も鼻も耳もないくせにこっちの場所が分かるんだか…」
せんちゃんはゆずを抱きあげ、木の上に素早く登った。
「私にちゃんと捕まっといて」
ゆずは何度もこくこく頷く。と同時に、『神隠し』が木を這い上がってきた。
「あ、やっぱ嘘」
「えっ」
せんちゃんは立ち上がり、ゆずを文字通り振り回す。
「あわわわわ…」
「そいっ!」
せんちゃんはゆずを、投げた。
「きゃああああああ!?」

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見える世界を超えて エピソード8:雷獣 その⑩

「…………ああクソ、おいシラカミ」
種枚さんが白神さんに呼びかける。その声色に、先ほどまでの純粋な殺意は感じられなかった。
「あれ、どしたのクサビラさん」
「お前、その子に感謝しろよ。私が目ェ掛けてる人間がこんなに意地張るから、仕方なく折れてやるんだからな」
「もちろん!」
「それから、君」
種枚さんの恨めしそうな視線が、こちらに向けられる。
「な、何でしょう」
「後悔することになるぜ。妖怪に気に入られやがって……私だって君にずっとついていてやれるわけじゃ無いんだからな」
「いや、別に……」
「お前、分かってないな?」
何を、と問い返そうとして、それは白神さんに遮られた。後ろから抱き着かれ、その上急に高く持ち上げられたのだ。
「し、白神さんやめて」
「千葉さあああん! 千葉さんはわたしの命の恩人だよ! 本っ当にありがとう! この御恩は一生かけてでも返すよ!」
「白神さん、痛い……」
白神さんの力が、ではなく、溜め込んだ静電気が。
「だから言ったのに。怪異に気に入られたんだ。タダじゃ済まないぜ?」
種枚さんが呆れ顔で言ってきた。
「……後悔、しないよう努めます」