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口裂け女4

あれから逃げに逃げて、ある月極駐車場に辿り着いた。これ幸いとそこに停まっていたトラックの下に滑り込み、やり過ごすことにした。
その直後、『奴』が駐車場に現れた。少しきょろきょろとしながらも、何故かこちらに真っ直ぐ進んでくる。どうしてこういう『追いかけてくる怪異』って奴らは、逃げる奴の場所が分かるんだろうか。
そして隠れていたトラックの前で止まり、その下をバッ、と見た。
しかし、そこに既にこちらの姿は無かった。こうなることを見越して、トラックの陰を利用して、こっそりと移動していたのだ。
『奴』がこちらを探しているうちに、フェンスを乗り越えて逃げようとする。
しかし、うっかり音を立ててしまった。もちろん『奴』はすぐそれに気付く。急いでフェンスを越えるも、バランスを崩して転んでしまった。
これは詰んだか、と半ば諦めながら『奴』を睨みつけていると、不思議なことに『奴』は憎々しげに睨んでくるだけで、こちらに来ようとはしなかった。まあ、それも僅かの間のことで、すぐにフェンスを回り込んで追おうとしてきたが。
(しかし、なぜ奴はフェンスを越えてこなかったんだ?そうすれば簡単に捕まえられただろうに。……まさか、いや、それより早く逃げよう。奴が来てしまう。それに、攻略法も思い付いた。)
そんなことを考えながら、まだ少し遠い我が家に向けて、逃走を再開した。

※この話の設定は、一部こちらで作っている部分があります。そうしないとポマードが唱えられない状況じゃちょっと勝てないので。(『メリーさん』の防御と瞬間移動と流し雛も同じです)万が一口裂け女に遭遇しても、ここに書かれているような方法を試そうとは決して思わないように。素直にポマードするかべっこう飴を差し出しましょう。

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口裂け女

ある日の夕方の事だった。
外出先からの帰り、ちょうど進行方向が西向きだったので、夕日の光を避けるために、地面に目をやりながら歩いていた。
ふと気付くと、目の前の地面に人の影が差していた。どうやら誰かが目の前に立ち止まっているようだ。そして、目を上げてしまった。今思えば、なぜあんな事をしてしまったのだろうか。ほんのちょっとだけ、進路を右か左にずらすだけで、それ以降の出来事を全て回避できたかもしれないのに。
そこには、一人の女性が立っていた。今の季節には合わない、真っ赤なコートを着て、顔の下半分をマスクで覆っている、やけに背の高い女性が。自分も決して背が高い方ではないが、それを鑑みても、185cm以上はあった。
『私、キレイ?』
「ポマ……」
しかし、そこより先を言うことはできなかった。『奴』の隠し持っていた草刈鎌の冷たい刃が、首筋にぴたりと当てられたのだ。
『私、キレイ?』
『奴』が再び訊いてきた。その笑っているようにも怒り狂っているようにも、はたまた泣きそうにも見える不気味で狂気的な目つきは、『普通』だの『まあまあです』だの、そういう中途半端な答えは一切受け付けない、という強い意志を感じさせた。
『私、キレイ?』
『奴』が少しいらいらしたように、再び訊いてきた。先程より首筋に当てられた鎌を持つ手に力が入る。どうやらよく手入れされているらしく、このまますっと刃を引けば、流血沙汰は避けられないだろう。
もはや猶予は無い。
「………答えは『NO』だ」
そう言いながら、『奴』が動き出す前に、持っていた鞄を『奴』の顔面目がけて、思い切り投げつけた。『奴』が咄嗟に空いている左手で顔を覆ったそのタイミングで、首に当てられた鎌の刃を避けて、元来た方向に全力で駆け出した。

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メリーさん4

あれからまた、しばらく走った。もうすっかり疲れ切って、足の感覚も鈍くなってきている。その上、今走っている場所は足元の状態も悪くて走りにくくて、『奴』との距離が離したくても離せない。まあどちらにしても『奴』は一瞬で距離を詰める術を持っているわけだが。
「もしもし、私メリーさん。」
来た。ここまで来てようやく『奴』をどうにかする作戦の準備が整った。この作戦のためにわざわざこんな場所を走っていたのだ。
「今、あなたの」
それと同時に最後の力を振り絞って、前に向かって跳びながら、『奴』のいる背後を振り向く。
「後ろに居るの」
『奴』がその『台詞』こちらの背後に移動する。『奴』と自分が着地したとき、「バシャッ」と水が跳ねる音がした。
そう、今、自分と『奴』が居るのは、川の水際ぎりぎりの場所だったのだ。
「モシ、モシ……、私、メリーさん……」
『奴』が攻撃をしようとするが、足を取られて上手く動けないようだ。
「なあ、『メリーさん』。『流し雛』ってものを知ってるかい?雛人形に厄を乗せて厄払いに川に流して廃棄する、日本に古来から伝わる反エコロジーな伝統文化だよ」
『奴』は川の流れに負けて少しずつ下流の方に流されていく。
「『メリーさん』ってのは、元が『人形』な上に捨てられた怨念で動くというまさに『厄の塊』だろう?川に流すにはぴったりだと思うんだよ」
「今、あな…タノ……アアアァァァァァ………」
「それに貧乏神を川に流して祓うのは毎月晦日でなければいけないって話だ。『メリーさん』を川に流すのにこうもパーフェクトな日はそうそう無いだろう」
『奴』、『メリーさん』は、力尽きたのか倒れ込み、そのまま流されていった。
それを見届けた後、川に飛び込む前に咄嗟に掴んでおいた皮技師に生えていた葦の茎を手繰り寄せながら川を上がる。
(……ふぅ、危ないところだった。これ掴んでなきゃ僕も流されてたな。腰までしか無いとはいえ川の流れ馬鹿にできんな。しかし、ほとんどこじつけの理論で撃退したものの、どうにかなるもんなんだな)
その後は疲れた体に鞭打って、どうにか家に帰った。目下考えなければいけないことは、割ってしまった窓ガラスの修理についてだ。

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メリーさん3

あれから『奴』の攻撃をぎりぎりで躱しながら、夜の町を素足で逃げ回り続けていた。驚いたことに、『奴』は先程自分が投げ捨てた包丁を拾い、それで斬りかかってくるのだ。
「今、あなたの、後ろに居るの」
その『台詞』を聞くと同時に、転がるように避けてそのまま走る。足裏に感じるじっとりと気持ち悪い湿り気は冷や汗か、はたまたついに出血しだしたか。
しかし、いくら命がかかっていると言っても、体力には限界がある。一度立ち止まり、息を整えながらそこで『奴』を迎え撃つことにした。
「もしもし、私メリーさん。今、あなたの」
タイミングを合わせて自分の後ろに向けて回し蹴りを放つ。
「後ろに居るの」
『奴』は自分に向けて振るわれる蹴りを防ごうと腕を出した。しかし、その腕の出し方が以前とは若干異なるように見えた。
(ま、まずいッ!)
こちらが足を引っ込めてしまった。その直後、『奴』の手がそのままなら確かに『奴』に当たっていたであろう脚を掴むように空を切った。
慌てて距離を取る。
(何故だ……、包丁の攻撃は二撃とも腕を直撃した。逆に言えばそれらは『受けるしかなかった』攻撃なんだ。……まさか!)
今度は右手で殴るふりをして、当たる前にさっと引っ込める。やはり、この攻撃も『奴』は捕らえにきた。今度は道端に落ちていた石ころを投げると、また腕でガードした。
(なるほど。どうやらその攻撃が『人間の』、いや、恐らく『標的の体を直接使ったものの場合』はこちらを積極的に捕らえにくるが、それ以外は防御するだけなのか。避けたりはしないのか。しかし……)
それが分かったところで、今の自分にできることはひたすら逃げることだけである。

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メリーさん

ある日の夜、電話がかかってきた。
『もしもし、私メリーさん。今、あなたの家の近くの墓地に居るの』
どうやら先日捨てた人形が化けて出たらしい。供養の仕方が足りなかったか。素直に神社に頼めばよかった。今更後悔しても仕方が無いので、包丁と電話を手に、壁を背にして次の電話を待った。
『もしもし、私メリーさん。今、あなたの家の前に居るの』
いよいよ来た。さあ、次の電話が来た、その瞬間が勝負どころだ。
『もしもし、私メリーさん』
しかし、壁を背にして陣取る自分に、負けは無かった。無いはずだった。しかし、
「今、あなたの、後ろに居るの」
その声は受話器ではなく、確かに自分の後ろから聞こえてきた。
咄嗟に前に跳びながら背後に向けて持っていた包丁で斬りつけた。何か硬いものに当たる感触があった。
そこには、壁を通り抜けるようにして、何か人の形をしたものの腕が突き出ていた。腕には、包丁が当たったと思われる場所に欠けたような傷跡が見える。あと少し長くそこに居たら、恐らくあれに掴まれ、想像もしたくないような恐ろしい目に遭っていたのだろう。
「もしもし私メリーさん。今、あなたの」
『それ』が再びあの台詞を吐きながら、こちらに進み出てきた。そして、
「後ろに居るの。」
そこで『それ』の姿が消え、声は背後すぐ近くに移った。これにも後ろに向けて斬りつけながら回避。『それ』はまた腕で防御したらしく、先程と同じ感触が腕に伝わった。

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十二支のお話

神様が動物たちにこう言いました。
「元日の朝に最初に挨拶に来た動物十二種類を一年に一種類、十二年周期でその年のボスとする」
牛は歩くのが遅いので、前日の夜から家を出ました。鼠はその背中にこっそり乗りました。
まだ日の昇らない薄暗い頃にに牛が神様の家へ着くと、既に家の前には多くの動物が並んでいました。
牛が前に居た動物に尋ねると、
「俺も驚いたよ。だって四時起きしたのに既にこの行列だぜ?」
その前に居た動物に聞くと、
「俺なんか徹夜で日付が変わった瞬間にダッシュしたってのにこの順位だぜ。全く、家が遠くなきゃもう二十は上の順位だったぜ」
その更に五つか六つ前の動物に聞くと、
「馬鹿だなあ、いや、牛か。こうゆーのは前日から並んどくに決まってんだろ?」
そこに神様が現れ、言いました。
「徹夜組は駄目。そこより前は全員退場。」
大方の動物は残念そうに去っていきました。
「え、俺が一番っすか?恥ずかしいなー……。そうだ兎!お前に前譲ってやんよ!」
虎が言いました。
「いやいや、アジアン百獣の王様の先を行くなんてとてもとても」
兎がやんわり断りました。
「いや……すぐ後ろにドラゴン連れといてそりゃあねーだろ……」
「それは許したって。我も怖い」
すると前から四番目に居た蛇が叫びました。
「げえっ、このままだとわちき四番目!?嫌だ嫌だ。四って数は縁起が悪いんだ。そうだ牛、せっかくだし俺の前行って良いぞ。それでも俺ランクインするし」
「四が無理な割に四時起きだったのか……」
「げえっ、そういえばそうだった」
「何ならわしの前もドゾ」
「マジすか。あざっす龍の旦那」
「ああ、虎さん、ちょうど良い奴がやって来ましたよ」
「おお、牛よ!俺の前に行ってくれないか?流石に一番は……」
「あ、ありがとうございます」
そして牛が緊張子ながら門をくぐろうとすると。
「グズグズしてんなら先行かせてもらうよ」
鼠がその背中から飛び降り一位になりました。

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なんか書けたお話。

そんな昔でもない、むしろ最近のある時、某所山奥に化け物が住んでおりました。化け物と言っても、姿は殆ど人間と変わりません。ただ指先や目や肌や纏っている雰囲気の僅かな違和感が、それを人間ではないと感じさせる程度のものです。
そんな化け物の住んでいる山奥の小屋に、一人の人間が迷い込んで来ました。化け物は名状しがたい不思議空間に住んでいるので、普通なら人間は入って来ないのです。そういうわけで、化け物は何世紀かぶりに会った人間と接触することにしました。
「もし」
「……何でしょう」
「あなたは何をしにこんな山奥まで来たのです」
「死にに来ました」
「何故」
「将来というものに希望が見出だせなくなりましたゆえ。……あなた何者?」
「見て想像がつく通りの者ですよ。まあ、こんな所で立ち話もアレですし、もうすぐここらは暗くなります。私の家へ案内しませう。といっても目の前のあばら家がそうですが」
化け物は人間を家へ招き入れました。
「……さて、先程将来に云々と言ってましたな」
「言いましたな」
「何があったので?」
「最近職を失いまして」
「また探せば良かろうて」
「今の時期家の外に出るのは、私のような日陰者にはとてもとても」
「なんだ。ただの意志薄弱か」
「言わないでくれ。自覚はしている」
「だからって死ぬほどのことかね?」
「私にとってはね」
「ふむ。質問を変えよう。もしあなたが一度だけ苦しまず安らかに死ねる権利を得た時」
「そりゃあ死ぬのは一回きりでしょ」
「お黙る。権利を得た時、あなたはそれを今使いますか?」
「・・・・・・別に今じゃなくても…?」
「ならそれで良いじゃないか。今夜はうちに置いてやるから明日になったら帰んなさい。それでもし、また死にたくなった時は……またうちに来なさい。悩み事をする時間くらいはあげるから」

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ー誰かの規定した自分ー

自分らしさ

とはなんだろ
に対する俺の結論
それは結局自分しか知らないもの
という結論だ
「誰かの言うらしさは常に少しズレている」
分かりみが深い
というやつだ
ホントにその通りなのだ
だって誰の前でも自分らしい時間は歳を重ねれば限りなくゼロに近くなっていくからだ
なんでかなんて簡単な話で我々には学習能力というものが備わっているから
よく言う次男は長男が怒られてるのを見て育ってるからナントカ的な
まぁそれが嘘か本当かは今どうでもいい
誰かが怒られてる所を見かけそれが何故起こったのかを知っていたとして怒ってる相手を真の脅威と認識していれば
何をすればその脅威が自分に牙を剥くか知っていてわざわざ丸見えのトラップに自分から足を踏み出す奴は居ない
ということ
自分が安全でいるためには人はどうにだって変われる
そもそも生まれてから今日と言う日まである程度の時間を過ごせば変化をするのは当たり前の話
そしてその変化は往々にしてらしさを表から裏に追いやる変化である
生みの親が子供のらしさを間違えている
なんて不思議なことでもなんでもないだって親と子の関係は血縁関係を取り除けばただの他人対他人なのだから
人なのだよどちらも
人は自分以外の者に無自覚に理想を押し付けている
それが当人にとって偽りの自分であるなんてこと
あるあるなのだと思う
そして チラチラ見えて来る知らないあなたに違和感を感じる
そこで人間は2種類に分かれる
拒絶者 適応者
だから誰かのらしさはその誰かと数少ない希少種である適応者
しか知らない

ここでもうひとつ 自分らしさなんて僕私は分からないというそこのあなたは
実に単純な回答しかなく
あなたがあなたに大した興味が無い
というだけの話なのだ
人はどんな人種だろうが興味のないもののことは知らない
そして知らない物を嫌う
だからいつまでも知りたいと思わない
だって自分の知らない自分がいるかもしれないから
まぁそれでもいいじゃないか
どうせいつか向き合うように世界は人は作られてるような気がするから

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緋い魔女 Part 9

彼女の視界に何かがうつり込んだ。
ばさっ、と音を立てて現れた”それ”が、手に持った黒鉄色の大鎌(デスサイズ)を目の前の精霊に振りかざす。
突然の乱入者に驚いた精霊は、振り下ろされた刃が当たる前に姿を消した。
「…」
大鎌を抱えた”それ”は何もいなくなった雪原を見つめて立っていた。
「…お前、」
グレートヒェンはぽつりと呟く。
「…勝手に戻ったんじゃないのね」
”それ”は無言で振り向いた。
「…別に」
”それ”ことナツィは視線を逸らしながら答える。
「ただ…気になっただけ」
「ふーん。何それ」
グレートヒェンは鼻で笑う。
「まぁ良いわ、助けてもらったんだし…にしても」
彼女はナツィが持つ大鎌に目をやった。
「蝶がかたどられた鎌、ね…やっぱり、”黒い蝶”と呼ばれるだけあるわ」
それを聞くと、ナツィの手から大鎌が消えた。
「…なぁに、隠さなくたっていいのよ。お前の武器なのだから…とりあえず、帰るわよ」
もう寒いでしょう、と言って、グレートヒェンは元来た方に向かって歩き出した。
少し経ってから、ナツィは黙って彼女の後を歩き始めた。


「…という訳で件の精霊を見つけられたのだけど」
「…撤退した、と…」
まぁ仕方ないのよ、とグレートヒェンはテーブルの上に紅茶のカップを置きながら言う。
「もう辺りも暗くなり始めていたし、第一こちらもまだ準備が整っていなかった。―下手に抵抗するよりはマシだと思うのだけど」

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