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CHILDish Monstrum:CRALADOLE Act 6

「#{;;“}*}$=[€‼︎」
火炎をもろに食らったインバーダは喚き声を上げながら燃えていく。
「*{’;“;%]<<;|‘+]$>[+\{$|‼︎」
他のインバーダはイフリートに飛びかかろうとするが、イフリートが撃つ火炎で次々と焼かれていく。
イフリートはあっという間に4体のインバーダを屠ってしまった。
「これで雑魚共は片付けたぜ」
さぁこの先にいる大物を…と言いながらインバーダの亡骸の傍を通り抜けようとした時、ふと殺気を感じた。
「?」
イフリートが顔を上げると、先程倒したものと同型のインバーダが近くの建物の上から襲いかかってきていた。
避けきれない、そう思った瞬間イフリートの目の前に光のバリアが展開した。
「‼︎」
インバーダはバリアに弾かれそのまま地面に落下する。
「イフリート!」
大丈夫?と長髪のコドモがイフリートの所に駆け寄った。
「お、おう」
ありがとう、とイフリートは長髪のコドモ…デルピュネーに向かって言う。
「デルピュネー!」
デルピュネーの後を追いかけていた二つ結びのコドモことビィも2人に走って来る。
「どうしたのビィ」
デルピュネーが尋ねると、ビィはあ、あそこ!と先程バリアで弾いたインバーダの方を指す。
インバーダは唸り声を上げながら3人の方へ近付いていた。

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ちょっとした企画:ピッタリ十数字

どうも、ナニガシさんこと何かが崩壊している者です。またもやちょっとした企画をぶん投げようと思います。
その名も「ピッタリ十数字」。今回はポエムの企画ですね。

ルールは簡単。企画名の通り本文の文字数がぴったり十数字のポエムを投稿していきましょう、というもの。
ただし、別に10文字台なら何でも良し、というわけでもありません。今回のレギュレーションで許された文字数は、「10字」「13字」「15字」「19字」の4種類のみ。
また、英数字や記号は全角、半角に拘らず1字にカウントします。句読点も1字。
「!」や「?」も単体で1字になります。「⁉」の場合は2字ってことになりますね。「!!!!!」なら当然5字にカウントされますが、字数調整が簡単になり過ぎちゃうので、できれば気軽にそういう真似はやらないでくれた方が嬉しいなー……。

期間は2月1日~2月29日まで。
参加者は、タグに「ピッタリ〇字」と入れて投稿してください。〇の部分には自分のポエムの文字数を入れてください。だから「ピッタリ13字」とか「ピッタリ15字」とかそんな感じ。
ちなみに、企画期間より前や終了後に投稿しても良いんですが、その場合は企画の指定タグの後ろに、前なら「習作」、後なら「遅刻組」と入れてください。
つまり1月中に出すなら「ピッタリ19字習作」みたいな、3月以降に出すなら「ピッタリ10字遅刻組」みたいな、そんな感じになります。
簡単なような面倒なような、そんな企画ですがどうぞ奮ってご参加ください。

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CHILDish Monstrum 〈企画要項(再掲)〉

どうも、テトモンよ永遠に!です。
1月も折り返し地点に達したので企画「CHILDish Momstrum」の要項の再掲です。
まだ企画の存在に気付いてない人がいるであろうこと、企画投票で1番の票を獲得したのに参加者が自分以外1人しか確認されていないこと、などから要項だけ再掲したいと思います。
要項を読んで、参加してみたい!と思った方はぜひタグから世界観・設定などを探して作品を作り、投稿してみてください。
では要項です。

タイトルは「CHILDish Monstrum」。
異界からやって来る侵略者“インバーダ”に対抗するために作られたヒトの形をした怪物“モンストルム”たちの戦いと日常の物語を皆さんに描いてもらう企画です。
開催期間は1/1(月)15:00から1/31(水)24:00まで。
ルールは設定と公序良俗を守り、投稿作品にタグ「CHILDish Monstrum」を付ければそれでOK!
作品形式・長さ・数は問いません。
皆さんのご参加楽しみにしております!

この手の企画は難しいので「読み手」で参加する方が多いと思われますが、書き手がいないと読めるものは出てきません。
「文章が下手くそだから」と投稿を控えている方もいるかもしれませんが、下手でも企画者は嬉しいし誰かに見てもらわないと文章は上達しない(多分)なので良かったら投稿してみてください。
再度になりますが、皆さんのご参加楽しみにしております。

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CHILDish Monstrum:アウトロウ・レプタイルス キャラクター紹介

・サラマンダー
性別:男  外見年齢:15歳  身長:159㎝
特殊能力:自身に干渉するエネルギーを反射する
主な使用武器:なし
〈アウトロウ・レプタイルス〉のリーダー。壮絶なじゃんけんの末にこの地位を勝ち取った。元々はとある政令指定都市に配備されたモンストルムの1体だったが、その都市のインバーダ対策課がインバーダの襲撃により早々に壊滅し、流れで自由の身になってしまった。今は自分たちの意思で都市を守っている。渾名は「サラちゃん」。
・ラムトン=ワーム
性別:男  外見年齢:16歳  身長:165㎝
特殊能力:あらゆる事物が己にとって害とならない
主な使用武器:鉈
〈アウトロウ・レプタイルス〉のメンバー。能力の影響で外的要因による死がほぼ起きず、〈アウトロウ・レプタイルス〉の当初の目的に最も近いモンストルムであるため、パーティ内ではリーダーの次に偉い。ただし「害にならない」だけであって首が落ちれば神経の切断によって体は動かなくなるし、完全に炭化したりすれば細胞が使い物にならなくなるので、決して無敵では無い。けど怪物態になると回復力まで手に入れちゃうので、暴走したらちょっと手が付けられないので何も起きないことを祈るしか無い。ちなみに害にならない方法を用いれば、殺すことも可能。そんな方法があるのか? 僕は知らない。渾名は「ラムちゃん」。
・ククルカン
性別:女  外見年齢:12歳  身長:130㎝
特殊能力:大地をかき混ぜ、変形する
主な使用武器:折り畳み長槍
〈アウトロウ・レプタイルス〉のメンバー。神格存在の名なので実質一番偉い。僕も気付かなかったが人から褒められたり感謝されたりするのが好き。『勤め先』が壊滅して最初に「自分達の意思でこの街守ろうぜ!」って言い出したのがこの人。渾名は「くーちゃん」。
・蛟(ミズチ)
性別:女  外見年齢:14歳  身長:150㎝
特殊能力:あらゆる有機物を調理し、高い効果を持つ料理に変える
主な使用武器:包丁
〈アウトロウ・レプタイルス〉のメンバー。メンテナンスをしてもらえない分この子が頑張ってるおかげでどうにかなってるので、パーティ内でも別格に偉い。調理するという能力の特性上、行程で必要なら火も出せる。水や油や調味料は別途必要。渾名は「みーちゃん」。

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CHILDish Monstrum:怪物報恩日記 1日目

時、15時25分。壁掛け時計に表示されていた。場所、知らない民家の一室。
目を覚ますと、見知らぬ部屋の風景が目に入った。身体中の切り傷や擦り傷の上には絆創膏やガーゼ、包帯で手当てが施されており、わたしは床に敷かれた布団の中に寝かされていた。
全身はまだ痛んだけれど、上体を起こして手足を軽く動かしてみる。幸いにも骨折したりはしていないようだった。ただ全身の筋肉をひどく傷めていて、大量に出血していただけだった。これなら動ける。自力でも帰ることができる。
掛け布団をどかし、立ち上がろうとする。脚には全然力が入らず、立ち上がるのには失敗したので、一応動かすことのできる両腕を使い、這うようにして部屋を出ると、板張りの廊下に出た。廊下の先には外に続いているであろう引き戸が見えたのでそこに向かう。
その途中で、右手にあった扉が静かに開いた。そちらに顔を向けると、老人が立っていた。よく見ると、あの小さな漁船に乗っていた老人では無いか。信じられないものを見るような目でこちらを見ている。会釈して出て行こうとすると、老人に抱え上げられた。抵抗する間もなく——隙があったとして何かできた訳も無いけれど、元の部屋に連れて行かれ、また寝かされる。
何故そんなことをするのか、老人に問うた。老人は、自分が拾った以上、治るまで放り出すわけにはいかないと言っていた。
『自分が拾った』? それは違うだろう。わたしが勝手にあの船に乗り込んだのだから。
彼は面倒な荷物でしかない、殆ど死にかけだったわたしをそのまま海に捨てても良かったのに。きっと彼は善人なのだろう。可能な限り早く、動ける程度に回復し、迷惑にならないように出て行くことに決め、わたしは睡眠による回復に努めることにした。

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CHILDish Monstrum:CRALADOLE Act 5

「何かあったら隊長の自分が責任を取る」
だから行ってこい、とゲーリュオーンは呟く。
「…分かったわ」
デルピュネーはそう言ってビィと目を合わせると、バッと店外へ飛び出していった。
「…いいのか、そんなこと言って」
どうなっても知らんぞ、と羽岡はゲーリュオーンの方を見ずにこぼす。
「ああ」
自分は隊長だからな、とゲーリュオーンは店のガラス戸に映る自分を見つめた。

インバーダの急襲に、意外にもクララドル市中心部は落ち着いていた。
「シェルターはこちらでーす‼︎」
落ち着いて避難してくださーい!と警官が人々を誘導する中をイフリートは駆け抜けていった。
上空を見上げるとワイバーンが自らの特殊能力で空を飛んでいる。
「しっかしずりぃなぁワイバーン」
飛行能力とか羨ましいよとイフリートがこぼした所で、おっとと足を止める。
イフリートの目の前には成人程の大きさの昆虫のようなインバーダが4体向かって来ていた。
「お出迎えか」
イフリートはそう呟くと、右手で拳銃の形を作った。
そして向かって来るインバーダたちの内1体に向けて銃を撃つように手を動かすと、人差し指の先からまるで火炎放射器のように炎が吹き出た。

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視える世界を越えて エピソード5:犬神 その③

混み合う電車に揺られて約30分、8駅先で一度下り、更に乗り換えて40分ほど、ようやく目的駅に着いたようだ。
「随分な郊外まで来ましたね」
駅を出て周囲を見回すが、ほとんど山と畑しか見えない。
「まあ、周りに何もない場所じゃなきゃ迷惑がかかるからねェ」
「周りに迷惑がかかるようなことするんですか……」
「まーね」
更に1時間ほど徒歩で移動し、山中に分け入り、かなり足が痛くなってきたところで、ようやく種枚さんが足を止めた。
「到着ですか?」
「うん、結構昔の採石場跡地」
「はあ。入って大丈夫なんです?」
「さあ? 少なくとも立ち入り禁止の看板は見た事無いねェ」
話しながら奥へと踏み入り、少し開けた場所に出る。座り込んで地面をいじっていた小柄な人影がこちらに気付き、立ち上がってこちらに駆け寄ってきた。
「やっと来たなキノコちゃーん! 待ちくたびれたよ!」
人影、その少女は駆け寄る勢いのまま種枚さんに抱き着き、種枚さんは全く動じずに受け止めた。それより『キノコちゃん』か。あの名前を聞いてそれを連想するのは自分だけじゃなかったみたいで少し安心した。
「私も会いたかったぜィ犬神ちゃん」
2人して一頻り盛り上がった後、少女の方がこちらに顔を向けた。
「誰それ?」
「ああ、こいつは最近見つけた霊視の才の持ち主だよ」
「霊感は?」
「まだ無い。だから顔くらいは覚えておいてやってよ。ついでに気が向いたら助けてやって」
「りょーかい。じゃあ早速やろっか」
「はいよ」

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視える世界を越えて エピソード5:犬神 その②

自分が住んでいる町には、3か所鉄道の駅がある。町名がそのまま駅名になった駅、『東』を冠する駅、『中央』と後ろにつく駅。そのうちの一つ、役所に最も近い位置にある『中央』の駅は周囲の施設の充実から人の出入りも多く、休日であったためか待ち合わせの30分前という早い時間でも駅前広場はそれなりに混雑していた。
この中で、決して背が高いわけでは無い種枚さんを探すのは苦労するかとも思ったが、その心配は杞憂に終わった。
不自然に人が避けて通る真ん中で、フードを深く被ってただ立っていた種枚さんに、恐る恐る近付いて行くと、彼女の方もすぐに気付いたようで姿が消えたと思ったら次の瞬間には自分の背後にいた。彼女のこの移動法にもいい加減慣れてきた。
「やァ、随分早かったじゃないか」
「ええまあ、待ち合わせには早く来る性分でして」
答えながら彼女の足元を見ると、今日は珍しくビーチサンダルを履いていた。この人が履物を履いているところなんて初めて見た。
「今日は裸足じゃ無いんですね」
「流石に公共交通機関でまで、ってのはねぇ……」
いつもその気遣いをしてください、という言葉は一瞬悩んだ末に飲み込むことにした。

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CHILDish Monstrum:カミグライ・レジスタンス その③

「脱走……ですか?」
信じられない言葉が聞こえてきて、思わず訊き返してしまった。
「うん、脱走。私にはやりたい事がある。この場所じゃ出来ないことが。だから、脱走」
「ベヒモス、お前はどうだ? 助けを求めたくらいだ、外に出てやりたい事があるんじゃねーの?」
フェンリルに尋ねられて、考え込んでしまう。たしかにこの場所は嫌いだ。ここを出て自由になりたい、そう思ったことは何度もある。
……けど、『ここを出た後』? ここを出て、私は何をしたいんだろう。たしかにここにいれば、“メンテナンス”もしてもらえる。外に私の戸籍なんて無いし、見方によっては、最高じゃなくても最低限、安定して生存できる。じゃあ、ここから逃げ出す意味って……?
「ああ悪かった。変に考えさせるようなこと言っちまったな」
フェンリルの言葉で正気に戻る。
「別に大したことじゃなくて良いんだよ。スレイプニルなんて『走りたい』ってそれだけだぜ? ここは狭すぎるんだとさ」
「そ、そうなんだ……」
「そう。だから私は、フェンリルとここを出たいの」
スレイプニルが言った。
「フェンリルと? 何故?」
「だって、フェンリルがいれば私の走るのを邪魔するような全部、残らず壊してくれるもの」
「へ、へえ……?」
それは、倫理とか道徳とか、そういうの的にどうなんだろう?

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CHILDish Monstrum:怪物報恩日記 前日譚

時、たぶん真夜中。場所、海の中。
海面から数m。月と星のおかげで思ったよりも暗くない、塩っ辛い水中で、わたしは動けないでいた。
全ては体感10時間くらい前に遡る。100体弱の大型インバーダの大群が、わたしの配備されている都市の近くに出現した。そのまま侵攻すれば、わたしの担当区域にまでやって来るし、出現地点周辺の軍隊やモンストルムだけじゃ対処しきれないってことだから、わたしや仲間たちも駆り出された。
戦況はひどいものだった。
向こうはただでさえ巨体のせいで破壊力があるというのに、その上熱線による射程戦までこなすというのだから、人間の軍隊にはまず勝ち目が無い。モンストルムですら、小さな人型で熱線を浴びれば一瞬で蒸発する。それで何人か死んだ。
怪物態で応戦した子も、格闘戦の末にひどいダメージを負った。3分の1は熱線で首を飛ばされるか心臓を貫かれるかして死んだ。3分の1は肉弾戦で急所を叩き潰されて死んだ。わたしを含めた残りは、辛うじてインバーダたちを押し返して、結局負傷がひどくて動けなくなった。わたしは人型に戻る中で海に落ちて、そのまま海流に押されてだいぶ沖までやって来てしまった。
わたしは泳ぎが得意だから、流血で染まった海水を辿って対策課の人たちが回収に来るまで浮いているくらいならできると思っていた。
けど、考えが甘かった。空が赤らんでも、陽が沈み切っても、月が昇ってきても、人間の気配の一つすら近付いてこなかった。
さすがに力尽きて、身体の力が抜けていくのにつれてどんどん沈んでいった。
別に鰓があるわけじゃないから呼吸もできないし、水面に上がりたくても、血を流し過ぎて動けないし、もう死んでいくんだと思った。
諦めて目を閉じたその時、遠くからモーターの駆動音が近付いてくるのに気付いた。再び目を開いて、音の方に目を向ける。あまり大きくない船がこちらにやって来ているようだった。
やっと回収に来たんだろうか。死に体に鞭打ってどうにか水面まで上がり、舳先にどうにか掴まる。死力を振り絞って身体を持ち上げると、知らない老人が三叉の銛をこっちに向けていた。どうやら対策課の人間では無いようだった。
けど、そんなことを気にしている余裕はこちらにも無い。現状唯一の脅威である銛を掴んでへし折り、船の上に身体を投げ出し、そのまま気を失った。

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CHILDish Monstrum:CRALADOLE Act 3

「そうねぇ…」
だって、とデルピュネーが言いかけた時、店の外でけたたましいサイレンが鳴り始めた。
「⁈」
店内にいるコドモたちはバッと顔を上げる。
「こんな時にお出ましか!」
イフリートがそう言いながら店の入り口に近付く。
「せっかくみんなで出かけてるっていうのに」
インバーダは空気読めないんかなとワイバーンも店のガラス戸から外を見る。
「羽岡(はおか)さん、インバーダの出現地点は?」
デルピュネーが店の入り口に立つ男に尋ねると、羽岡と呼ばれた男は手元のスマートフォンを見ながら答える。
「ヴィアンカ通り周辺…ここからすぐの所ですね」
彼がそう言うとイフリートはよし!と指を鳴らす。
「さっさと行って倒して来ようぜ!」
そう言ってイフリートは扉を開けようとするが、待ちなさい!と羽岡に止められる。
「武器が届いてないのにどうやってインバーダに対抗するんです?」
本部からの武器到着を待ちましょう、と羽岡は淡々と言う。
「なんだよそれ‼︎」
怪物態使えばすぐ倒せるのに!とイフリートは羽岡を睨みつける。
「そうだよ!」
さっさか倒して駄菓子屋さんでお買い物したいー!とワイバーンは頬を膨らませる。
それに対し羽岡はダメです、と真顔のままだった。

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CHILDish Monstrum:カミグライ・レジスタンス その②

扉の破壊で、埃が舞い上がる。その向こうから、鉄球が独房の天井の方に飛んでいって、監視カメラと機銃を叩き壊した。
「よォ、ベヒモス。ハジメマシテだな」
すぐに晴れた埃の煙幕の中から現れたのは、私より少し背の高いモンストルムの男の子と、その子よりももう少し背の高い、スレンダーな女の子だった。
「俺はフェンリル。こっちはスレイプニル。よろしくな?」
「ぇ……ぁ……」
答えようとしたけれど、動揺が収まっていなかったのと長いこと言葉を発していなかったのとで、上手く言葉が出ない。
「とりあえず、『ソレ』も壊してあげたら?」
「ン、そうだな。ベヒモス、動くなよ? 下手すりゃ死ぬぜ」
フェンリルがそう言いながら、わたしの両手、両足の枷を1つずつ指で軽く突いた。その瞬間、拘束具は全て砕け散り、私の身体は自由になった。長いこと立ちっ放しの姿勢で固定されて疲れ切っていた両膝からは力が抜け、床の上に頽れる。
「…………ぁ、ありがとう、ございました」
さっきは上手く言えなかったお礼の言葉を、改めて口にする。
「あー、礼ならスレイプニルに言ってくれよ。スレイプニルが仲間が欲しいっつーから出してやったんだ」
「……仲間?」
この疑問に答えたのは、スレイプニルの方だった。
「そう。この地下牢から脱走する、そのための仲間」

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CHILDish Monstrum:カミグライ・レジスタンス その①

近付いてくる足音に、目を覚ました。
兵隊が履いている重くて上質な軍靴のそれじゃない。科学者の革靴を引きずるようなくたびれたそれでもない。スーツ姿のDEM上層部の偉そうなそれでもない。
ぺたぺたと無警戒に鳴るそれは、例えるなら子どもが素足で歩き回るような……。
音はもう1種類。ごり、ごり、とコンクリートがむき出しになった施設の廊下を、何か硬くて重い金属塊でも引きずるような……。
ふと、一つの可能性に思い至り、足元を見る。
私の両脚の枷に鎖で繋がれた、鉄球の重り。もしかして、私と同じようにここに閉じ込められているモンストルムの子?
「……いや、あり得ないか」
そう呟き、首を横に振って希望めいた考えを打ち消す。その理由は、両手を戒め壁に固定している手枷にあった。両手両足を拘束されて、おまけに首にも鉄球付きの枷がはめられていて、独房には監視カメラと遠隔機銃があるから、脱走なんて考えたところでちょっとでもおかしな動きをしたらアウトだ。
足音が、私の独房の前で止まった。
「ここ、誰の部屋だ?」
「ベヒモス」
「へぇ。強いのか?」
「閉じ込めざるを得ない程度にはね」
分厚い金属扉1枚隔てた向こうで、男の子と女の子が話している声が聞こえる。今さっき否定したはずの希望が、再び頭の中に大きく広がっていく。
「っ、たすけて!」
殆ど無意識のうちに、掠れた声を振り絞って外の2人に助けを求めていた。馬鹿なことをした。撃たれてもおかしくないのに。
「……りょーかい。動くなよ?」
扉の向こうの男の子の声が答えた。直後、扉に放射状の亀裂が入り、砕け散った。