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座禅

 森の中、わたのような白髪に、これまたわたのような白いひげの男が、大木を背に座禅を組んでいる。
 真面目な人間の共通点は視野が狭いこと、長期的なビジョンがないことだ。変化の激しい時代に……いかん、また雑念が。
「あの〜、すみません。サンタさんですかぁ?」
 白いひげの男が顔を上げると、リュックを背負った若い娘。若い娘の後ろに、バッグをたすきにかけた若い男。
「違うよ」
「りょう君、違うってえ」
「ばかだなあ。本物のサンタが自分からサンタだって言うわけないだろ」
「カナ、ばかじゃないよ……そっか、そうだよね。……えっと、サンタさんにぃ、ききたいことがあるんだけどぉ」
「なんだね」
「サンタさんはぁ、どうしてプレゼント配らなくなっちゃったの?」
「いい子がいなくなったから」
「嘘だあ」
「国から助成金が出なくなったからさ」
「どうして助成金が出なくなったの?」
「さあな。外圧かな」
「がいあつってなあに?」
「彼氏にきけ」
「りょう君、がいあつってなあに?」
「外国からの圧力だよ」
「どうして外国からの圧力で助成金が出なくなるの?」
「そういうもんなんだよ。とにかく、金がなきゃあ話にならん」
「だよねー。でもまたプレゼント配ってほしいなー」
「君は今年、いい子にしてたかな?」
「即答はできない」
 しばし間。若い男が口を開く。
「もういいだろ。行こうぜ」
「ちょっと待って……写真いいですかぁ?」
「いいよ」
「やった。友だちに自慢できる。今日友だちとディズニーランド行く約束してたんだけど、りょう君が有給取れたから急きょ予定変更したんですぅ」
 若い娘と若い男去る。どこからともなくトナカイが一頭現れる。白いひげの男、大木のうろからソリを引っ張り出しトナカイにつなぐ。まずはスポンサー探しだな。
 今年は本物のサンタさんが、あなたのもとにやってくるかもしれません。どうぞお楽しみに!

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妖精たちの反乱(飯テロ)

「もしもし、」と夕ご飯のとき電話に出たのはママで、どうやら相手は清水のおばちゃんらしい。話が盛り上がっているのを良いことに、僕は小さくごちそうさま、と言って席を立つ。食器を片付けるフリをして、アスパラガスを生ゴミと一緒の袋に詰めてしまう。ばれませんように、と願いつつ、背すじがぞわぞわしてるのをごまかすために、ごちそうさまー、と大きな声で。
はーいとママの返事が聞こえた。

僕が妖精たちに会ったのは、そんな日の次の日で。楽しみにしていた給食の揚げパンが、妖精になっていた。いや、揚げパンだけじゃなくて、おわんやお皿に1匹ずつ、アルミのおぼんにのっているもの全部。そして僕の方を見て口々にこんなこと言うんだ、「きみ昨日アスパラガスを捨てたね。」
「捨ててない」「いや捨てただろう、ボクたちは見ていたよ」「なんでよ、てか誰なの」「ボクたちは妖精、ところできみ、今日の給食は楽しみにしていた揚げパンだよね」「僕のはそれが妖精になってるんだけど、」むすっとしている僕をよそに、妖精たちは ははは、と甲高い声で笑い出す。「きみの分はボクがもらったよ。返して欲しけりゃもう食べものを捨てたりしないって約束するんだね」ふよよ、と僕の鼻先に浮かんだ揚げパンの妖精は、意地悪なことに揚げパンの匂いがうんとして。
「そんなのムリだって!」
「ねえサトシくんさっきから誰としゃべってるの」聞いてきたのは隣の席のアユミちゃんで、
あ。その手には揚げパン。
「アユミちゃんごめん、それ一口ちょうだい」「え」ぱくりと口の中に楽しみにしていた揚げパンが拡がって、キャーーッと妖精たちの黄色い悲鳴が教室に響いた。

だからと言って嫌いなものは嫌いだ。僕は相変わらずアスパラガスは残すし、妖精たちはキャイキャイ騒いで現れる。あと変わったことといえば、僕がアユミちゃんを、アユミと呼ぶようになったこと、だろうか。

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その時、トイプードルに電流走る!!(物理)

「俺ぁよ、アイツに会ったときに死を覚悟したんだ。」
愛知県某所在住のトイプードルさんは、噛みしめるようにゆっくりと語り始めた。
「最初に目に入ってきたのは、黄色い毛並みに赤い真ん丸ほっぺさ。赤いとこがバチバチ音をたてて放電してやがった。戦闘準備万端って訳だ。こっちはボール追っ掛けながら公園走り回った後でぐったりしてんのによ。洒落にもならねえ。」
ふわふわの茶色い毛に覆われた小耳を上下させながら、トイプードルさんは小柄な身を小刻みに震わせる。
「勝敗は最初から決まってたんだ。そこへさらにあの声が聞こえた訳よ。『ポ○モン、ゲットだぜ‼』甲高い声だ。ヤツの背後から聞こえてきやがった。こいつが聞こえちゃ、もうどうにもならねえ。俺のこの愛くるしい尻尾も、一気に臨戦体制に入る。」
彼は、その愛くるしい目を閉じて、真ん丸の尻尾をピンとさせた。
「だがそのときだ、愛しのご主人が投げた緑色のボールが、俺とヤツの間を横切ったんだ。俺ぁ思わずそのボールを目で追っちまった。その隙にヤツは、俺の全身に電気ショックを食らわせやがった。俺ぁ毛並みが良いからよ、電気の通りも良い訳だ。身体中がちぎれるように痛んだ。あまりの痛みに俺ぁ、そのまま気を失っちまった。」
再び開かれたその愛くるしい目には、微かに涙が浮かんでいた。
「気がついたときには、近所の今西動物病院のベットの上だった。完敗さ。俺ぁアイツに手も足も出なかった。可愛さでは負けてねえつもりだが、まだまだ修行が足りねえな。ま、ご主人と一緒に一からまたやり直しだ。」
トイプードルさんは深いため息を吐き出すと、どこか晴れ晴れとした顔で部屋から出ていってしまった。

2

ファヴァー魔法図書館 #38

『ノスタルジイ』

ぽたり......ぽたり......。

次の瞬間、ガラシャの顔にはガラシャが干からびてしまうのではないくらいのの涙が流れていた。
「ねぇ、ユリ。」
ガラシャは流れる涙以外は無表情で呟いた。
「ねぇ、これが正解だったのかしら。
全ての記憶を取り戻して、果たして幸せなのかしら。もしかしたら私酷い間違いを犯してしまったのかもしれないわ。いや、きっとそう。」
ユリはゆっくりと言った。
「そんなことまだわからないさ、それはこれからの君次第だよ。ただひとつ言えることは、君はこの図書館の外の国のお姫様で君はここに連れ去られてきたってことさ。」
ガラシャはまだ流れる涙を拭いて言った。
「一気に思い出してしまったの、怖いことを。
私、どうしたら良いんだろう。
でも一つだけわかるわ。私、あそこには帰りたくない。帰ってもどういう顔をすればいいかわからないよ。」
ユリはまたゆっくりと、今度は言い聞かせる様に、
「ガラシャ、今決めなくてもいいんだよ。ゆっくりとゆっくり決めればいいから。
今日は疲れたでしょう。一旦寝なさい。心を落ち着ければ見える景色も変わるよ。」と言った。

ガラシャが寝てしまった後、ユリはアパルトマンの外へ出て柄でもなくののしった。
「鵺ェェェッ!!貴様聞いているかァァァァッ!!
貴様だけは、貴様だけは絶対に許さんぞォォッ!!
この虚構を壊してもなッ!!」
その声は、無機質の空に虚しく響くだけである。

To be continued #39 第4章最終話↙
『虚構の崩壊、ロマンチック逃避行』

P.S.あとがきだけでもほっこりとしていって。
暇な時になんとなく意味わかんないタイトルを思いつきます。
だいたい使えませんけど。少しここで吐き出しておきます。良ければ使って頂いても結構です。
・その時、トイプードルに電流走る!!(物理)
・樹海ロスト
・着メロしかないオーケストラ
・ベラルーシのおとなたち
・妖精たちの反乱(飯テロ)
他にももっとあるんですけどこの使えそうなお(か)しいものたちを供養しときます。
これを文章化してくれる人が出てくる事を祈って笑

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ファヴァー魔法図書館 #31

『シュガァリィスノォ』

「ねぇねぇユリ、シュガァリィスノォって何?」
「うーん、私は言葉が苦手だからねぇ...自分で見た方が早いと思うな。今日がその日だから見に行くかい?」
魔法都市ミコトには1年に1度特別な日がある。
その名も『シュガァリィスノォ』、
甘い雪が降ってくる日である。
空までもが無機質のこの街には雪どころか天気の概念もない。
それ故この街の住人にとってこの日は1年の中で5本の指に入るくらい特別な日となる。

ユリと少女はコートに着替えて外に出た。
アパルトマンのドアを開けた瞬間、少女はたまらず「ほわぁぁぁぁ...」と声をあげた。
一面の銀世界、
魔法の光に照らされ輝く魔法都市ミコト、
街から聞こえてくるパレードの音色、
全てが少女にとって新鮮であった。
「甘いよ、食べてご覧。」
ユリは雪を食べながら少女に言った。
少女は恐る恐る雪を食べてみた。
「......甘い。」
ユリは微笑みながらそれを見ていた。

ユリは暫く雪を食べていた。
雪を食べ終わってからユリは少女に話しかけた。
「ねぇ、こっちにおいで。こっちに来て目を瞑って。」
少女は言う通りにユリの近くに立って目を瞑った。
少女は何が起こるのかどきどきしていた。
ユリは唇で少女の唇にそっと触れた。
刹那、眩い光が少女を包んだ。

「どうかな?少しは何か思い出した?」
少女は少し考えてこう言った。
「......私の名前は、宝条ガラシャ。それ以外は分かんない。」
ユリは少し目を細めて、
「じゃあこれからはガラシャくんと呼ばせてもらうよ、よろしくねガラシャ。」
少女は笑って「うん」と応えた。

To be continued #32 ↙
『ガラシャのたぶんはじめてのお使い』

P.S.首都圏で雪が降ったって言うニュースを見る度に雪国の人間としましては不思議な気分がします。
「なんでたった数cmの雪でここまでなるんだよ」って。
慣れてないし、スタットレスに履き替えたりもしないから仕方ないんですけどね。




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ファヴァー魔法図書館 #23

『婚前の段 o:@yP3 ハートウォッチ京都』
列車でまた数時間、
着いたのは京都であった。

法帖は京都駅で下車した。
気が向かなかったので法帖は路面電車に乗らずに歩いて行く事にした、時間は沢山ある。
列車に乗っている最中、法帖はあるひとつの事をずっと感じていた。
それは京都独特の雰囲気である。
京都の否応なく発せられる雰囲気は、その地が元々都であった事を伺わせる。
何を隠そうここは50年前迄は「千年の都」だったのだから。

そのような事を考えながら暫く法帖は八坂神社の石段に座り込んでいた。
法帖はふと自分を見る視線に気がついた。
視線の先に目をやると見た目齢7歳程度の少女がこちらを見ている。
法帖は話しかけてみる事にした。
「お嬢さん。どうしたんだい?迷子かい?」
すると少女は少しだけ眉間に皺を寄せてこう言った。
「いきなりなんだい人間の小僧。吾は貴様の心の中身が面白くて見ていただけぞよ。」
傍から見ればただの頭がおかしい小娘である。
しかし法帖の耳には驚くほどすんなりとこの言葉が受け入れられた。
「そうかい、じゃあ君は何者なんだい?」
すると少女は答えた。
「気に入った。
吾は覚(さとり)。妖怪だ。飛騨から参った。」

To be continued #24 ↙
『婚前の段 o:@yP4 ハイカラ少女と古風な婚約者』

P.S.こんばんは、以下略のKey-towerです。

実は、はじめにファヴァー魔法図書館の構想を建てた時に、はじめに出来たのがこんな感じの話でした。
てか知識ちゃんの設定がはじめこんな感じだったんだよな。
そう言う事を考えると、この話が一番書かれる事を望んでいたんだと思います。