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LOST MEMORIES ⅡCⅡⅩⅣ

「クッキーありがとう。」
寝る前、ふと思い出してチャールズに声をかける。例にならって、チャールズは眼鏡をかけて本を読んでいた。
「使うべき時が、ちゃんと来たでしょう?」
顔をあげてこちらを見るその碧は柔らかく優しい。
察してくれて良かったですと微笑む彼は、ついでに、さすがに持ち帰ってこられたらふたりの立ち居振舞いを疑ってしまいますからね,なんて辛辣な言葉も添えて寄越したのだが。
「でも、どうして?」
野暮な質問であることに気付くべきだった。お嬢さま,とたしなめるような声の調子に、困ったような呆れたような笑みを貼り付けるも、チャールズは答えてくれる。
「きっと払わせてくれないと思ったから。そう言って、渡されたことがあるんです。」
チャールズは続ける。
「こちら側としては相手に払わせる選択肢は存在しないのですが、さすがに当たり前のような顔をされてしまうのは癪でしょう?」
さも可笑しそうに言う。
経験があると見た。
「だから、それが嬉しかったんですよね。
まあ、彼がどう思ったかは図りかねますが、嫌だと受け取られることはないでしょう。」
思い起こすが、嫌悪感はなかったはずだ。
「10年の差って大きいのね……。」
チャールズの話を聞き、違いを分かりやすく突きつけられ、改めて感心する瑛瑠だった。

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LOST MEMORIES ⅡC

「さて、可愛いお顔が台無しのお嬢さま。」
はっと顔を上げるも、言葉の意味を飲み込んでむっとする瑛瑠。
「どうせ私はあなたほど女性を絆すような顔はできませんよ。」
「こら。」
そう言いつつも、チャールズは輝き割り増しの微笑みで続ける。
「その事に関しては心配無用です。お嬢さまは自覚がない分さらにたちが悪いので。
――それよか、明日のデートは何を着ていくんです?」
すごく失礼なことを言われた気がするが、流しておこう。
デートではないけれど。
立派なデートです。
不毛なやり取りを交わして瑛瑠は尋ねる。
「誰かと出掛けるときは、どんな服を着たらいいの?」
さて、万能人チャールズの出番である。
「お任せください。」
恭しくお辞儀をしたかと思えば、リビングから出ていってしまった。
瑛瑠は考える。
コーディネートしてくれるのだろう。クローゼットを開けるのは必須。とすると、部屋に入るのも必須。
何もないけれど。何も、ないけれど。
「ちょっとチャールズ!?待って!」
看病時は特例だ。慌てて瑛瑠も立ち上がるが、チャールズは既に姿を消している。
顔を赤くした瑛瑠が部屋に入り、仕事の早いコーディネーターの並べる服を見て驚くという一連の流れまで、あと5秒。