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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:告鳥と悪霧 キャラクター③

アヴェス:ガッルス・ガッルス
モチーフ:セキショクヤケイ(Gallus gallus)
年齢:16歳  身長:170㎝
所属カテルヴァ:以津真天
説明:対大型敵対存在特攻先遣部隊“以津真天”のメンバー。トウゾクカモメ先輩より誕生日が4か月ほど遅い。仲間がいないと何もできないクソザコ。逆に言うと仲間がいるととても怖い。今回は残念ながら登場しませんでした。
レヴェリテルム:フェロクス・プエル(Ferox puer) 語義:野生児
説明:変形コンパウンドボウと蓋付矢筒。矢のストックは24本。一度に6本まで同時に矢を番えることが可能で、射出した矢は極細の導線で右手と繋がり、導線伝いに自由に操れる。複数本を同時に装填する際は、弦に専用装填補助具を取り付け、そこに矢を並べる必要があるので、連射は無理。一度射出してしまえば、いくらでも好き放題できるんだけどねぇ。

アヴェス:エクトピステス・ミグラトリウス
モチーフ:リョコウバト(Ectopistes migratorius)
年齢:7歳  身長:120㎝
所属カテルヴァ:迦陵頻伽(非公式)
説明:とある研究者の手によって密かに生み出された、本来禁じられているはずの『女性のアヴェス』。感情の不安定さを爆発力として発揮してくれることを期待されているようだが、教育不足のせいで随分と好き放題しているようで。ちなみに“迦陵頻伽”は彼女を生んだ研究者が便宜的に彼女に与えた所属先であり、彼女以外の構成員は存在しない。
レヴェリテルム:プリンセプス(Princeps) 語義:支配者
説明:大量のナノマシン。アリエヌスの体内に侵入し、操り人形のように支配する。最終的には侵入したナノマシンはアリエヌスを体内から破壊する。ちなみにナノマシンの総量は大体、大型アリエヌス10万体を同時に支配してもまだ余る程度。普段は周囲のありとあらゆる『隙間』に潜ませ、自らに追随させている。

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Specter children:人形遣いと水潜り その①

8月中旬。時刻は18時過ぎ。“逢魔時”とも呼ぶべき薄暗がりの中、とある山間の集落に続く未舗装の細い道路を、一人の少女が歩いていた。
その集落に住む数少ない少年少女たちの通っているいずれの中学・高校の指定制服とも異なるデザインの、黒い長袖のセーラー服に身を包んでいながら、僅かに露出した素肌には汗の一筋も流しておらず、人界から隔絶しているかのような奇妙に仄暗い雰囲気を漂わせている。
少女は厚いスニーカーで石ころや木の根を踏み越えながら、歩調を乱すことなく歩き続けていたが、集落が目視できる距離にまで到達すると立ち止まり、溜め息のように長く細く呼気を吐き出した。
「……思ったより、距離あったな。タクシーでも使えば良かった」
その場で両脚を上げ下げしながら疲労を誤魔化していた少女は、不意に背後の木々の奥に広がる暗闇に目を向けた。
「ふむ…………“怒”」
呟いて少女がスカートのポケットから取り出したのは、掌に収まる程度の小さな人型のぬいぐるみだった。ジンジャーブレッドを立体的に膨らませたような、クリーム色の人型の頭部には、単純な丸型の小さな両目と半月型の大きく笑ったような口だけが縫い留められている。
「行っておいで」
少女が手の中に囁きかけると、人形は小さく震えながら立ち上がり、短い両腕で力こぶを作るようなジェスチャーを決めると威勢よく地面に飛び降りた。そのまま少女が元来た方向へ短い脚を精一杯回して走り、地面に盛り上がった木の根に阻まれあっさりと転倒した。
次の瞬間だった。暗闇の奥から風のように現れた大型の野犬のような生物数頭が一瞬にして人形に飛び掛かり、鋭い牙と爪によって無数の繊維片へと解体されてしまった。
破壊された人形の残骸が少しずつ崩れて消滅する様子を眺めながら、少女は溜め息を吐いて道端の木の根元に慎重に座り込んだ。
(……送り狼、かぁ…………。何か途中から気配がついて来るとは思ったけどさぁ……)
木の幹に寄りかかる少女の周囲を、送り狼たちはしばらくうろついてから、小さく鼻を鳴らして再び闇の奥へと消えた。
「……ま、あの村までの安全は担保されたってことで」
少女は立ち上がり、服に付いた土埃を手で払うと、再び集落へと歩き出した。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:告鳥と悪霧 キャラクター②

アヴェス:ピトフーイ・ディクロス
モチーフ:ズグロモリモズ(Pitohui dichrous)
年齢:12歳  身長:152㎝
所属カテルヴァ:以津真天
説明:対大型敵対存在特攻先遣部隊“以津真天”の新入り。戦績は上々。最近の悩みは前歯が抜けてしまったこと。ご飯が食べにくい。大人になりたくないので、立派に戦って殉職したい。
レヴェリテルム:ソルス=ヴェネヌム(Solus venenum) 語義:唯一の毒
説明:口を開けた毒蛇を模した、全長3mほどの金属製の杖。首が自由に動き、顎も開閉する。内部に仕込まれた腐食液を毒牙部分を通して射出可能で、相手に食いつかせてから注入すれば確実にぶつけられる。何故か火炎放射も可能。舌下の穴からぶわって出る。特に意味も無く目も光る。思いの外やりたい放題。

アヴェス:ステルコラリウス・ポマリヌス
モチーフ:トウゾクカモメ(Stercorarius pomarinus)
年齢:16歳  身長:173㎝
所属カテルヴァ:以津真天
説明:対大型敵対存在特攻先遣部隊“以津真天”の副隊長。高校生なので結構忙しい。一番の年上なので何かと頼られがちだが、他人のサポートはかなりド下手クソ。1人で戦うか、周りが合わせてくれるのが一番やりやすい。
レヴェリテルム:ポラリス=カエルム(Polaris caelum) 語義:極地の空
説明:長さ150㎝程度の短槍と、縦横150㎝×45㎝程の大盾。大盾は浮遊させ、飛行ユニットとして利用可能。小型無誘導ミサイルも撃てる高性能大盾。短槍の方は馬上槍形態と大刀形態に変形可能。短槍形態は投擲、馬上槍形態は刺突、大刀形態は斬撃の威力をブースターユニットによって強化可能。更に、大刀形態の武器と大盾を変形合体させることで、大型戦斧にもなる。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:告鳥と悪霧 キャラクター①

アヴェス:カズアリウス・カズアリウス
モチーフ:ヒクイドリ(Casuarius casuarius)
年齢:15歳  身長:165㎝
所属カテルヴァ:以津真天
説明:対大型敵対存在特攻先遣部隊“以津真天”のリーダー。好戦的だがその暴力性はアリエヌスにしか向かないので意外と安全。ただ、戦闘時の様子が恐ろし過ぎるので、よそ様からは怖がられている。趣味は対戦型ゲーム。
レヴェリテルム:カルチトラーレ=ウングラ(Calcitrare ungula) 語義:蹴爪
説明:両脚の膝近くまでを覆う脚甲。爪先と踵部分にはブレードが、両足裏と脹脛にはブースターが仕込まれており、爆発的加速を乗せた蹴りでブレードを叩き込む。ブースターを利用することで、短距離の飛行も可能。ブレードを格納することで打撃武器として使ったり、ブースターの出力を射程武器(エネルギー砲)として利用することも可能。『足を覆っている』こと以外に欠点が無い。

アヴェス:サジタリウス・サルペンタリウス
モチーフ:ヘビクイワシ(Sagittarius serpentarius)
年齢:14歳  身長:158㎝
所属カテルヴァ:以津真天
説明:対大型敵対存在特攻先遣部隊“以津真天”の一員。密かな自慢は『両利きなこと』。どちらから攻められても同じように受け、押し返せる対応力の高さが売り。
レヴェリテルム:チェレリタス=フルグル(Celeritus fulgur) 語義:雷速
説明:一節辺り約1mある、大型三節棍。各節部分は鎖状に変形可能で、疑似的二刀武器や鎖付き武器としても扱える。また、各節は部分的に側面を刃状に変形させられる。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ あとがき

どうも、テトモンよ永遠に!です。
まだ投稿中の人もいるだろうけど、とりあえず書くって言ったので企画「空想少年要塞都市パッセリフォルムズ」の一応のあとがきです。
どうぞお付き合いください。

今回の企画は前回開催した企画「魔法少女学園都市レピドプテラ」と対になる世界観…のつもりで作りました。
「レピドプテラ」は女の子が主役で戦う物語だったので、次は逆に男の子が主役で戦う物語を作ろうと思ったのがきっかけです。
しかし「レピドプテラ」の魔法少女たちみたいに、一般人がある日突然特別な力を手にして…みたいな話にするのは二番煎じ感が否めないので、都市の外から攻めてくる敵を倒すために製造された人造人間のお話にしました。
ただ、世界観を構築している最中は「どこにもないオリジナルの世界観だ〜ヒャッハー‼︎」とノリノリだったのですが、あとから考えてみると要塞都市って某進撃の巨人っぽいし、参加者さんからの指摘によるとレヴェリテルムは某BLEACHに登場する斬魄刀みたいとのことなので、やっぱりなにかの二番煎じみたくなっちゃったな〜と感じてます。
あと設定が山盛りすぎたかもしれない(笑)
ちなみにモチーフを「鳥」にしたのは以前没にした物語でモチーフが「鳥」で、いつか再利用したいなぁと思ってたからです。
また、レヴェリテルムが可変武器なのは自分の好きな「アサルトリリィ」に登場する武器「CHARM」が変形武器なので、そのアイデアを自分が作るものでも使いたいと思ったからですね。
まぁ自分が色々なところから無意識のうちに影響を受けているかもしれないことを実感した企画でした。

さて、今回はこれぐらいにして。
開催期間を撤廃してもこんな調子だしそもそも忙しいので、もう大規模な企画を開催するのは終わりにしようかなと思います。
ただ手元にオリジナルの世界観の物語がまだいくつか残っているので、機会があれば自由に使っていいアイデアとしてここに出すかもしれません。
あとお題だけ設定した企画はやるかもしれない…?

長々書きましたが、参加者の皆さんには感謝でいっぱいです。
あと「あとがき」以降の作品投稿も大歓迎です。
それではこの辺で。
テトモン永遠に!でした〜。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:告鳥と悪霧 その⑩

「見えたぜェ、リーダー後輩。お前の上げた“狼煙”がよォ……」
粉塵の舞い上がる中から、刺々しい声が楽し気に響く。
「それで? コイツをブッ殺せば良いのか? 遅刻した分働くぜェ……!」
薙ぎ払いが粉塵を吹き飛ばす。高校制服姿のアヴェスが、大盾と大刀で武装して立っていた。
「よく来てくれたぜゾッさん。テストの出来はどうだった?」
「現文駄目だった!」
「ドンマイ! じゃあ頼む!」
「りょーかいィ」
“ゾッさん”と呼ばれたアヴェス、ステルコラリウス・ポマリヌスはレヴェリテルムを変形合体させ、一つの大型戦斧を完成させた。
「叩き斬れ……“Polaris caelum”!」
全長約3mもあるそれを大きく振りかぶり、大型アリエヌスの正中線に照準を定める。
「せェー…………のォッ!」
渾身の振り下ろしが炸裂する。その破壊力はアリエヌスが構えていた両腕を破壊し、剣圧の余波を体幹部にまで到達させ、その巨体を完全に両断した。
「ふゥー……大型アリエヌス何するものぞ。俺が本気出しゃぁこんなモンよ」
レヴェリテルム“ポラリス=カエルム”の合体機構を解除し、ポマリヌスは研究者とクミを睨みつけた。
「で? 何なのお前ら。マッドサイエンティスト?」
「似たようなものだね」
研究者の男が答える脇でクミが片手を振り上げると、大型アリエヌスの残骸から黒い霧が吹き出し、彼女の足下に吸い込まれて消えた。
「うおっ、何あれ」
「ゾッさん。あのおチビちゃん、アヴェスらしいぜ」
カズアリウスの言葉に、ポマリヌスはカズアリウスとクミを交互に見た。
「えっマジで? 女の子じゃん」
「あのマッドが作ったんだとよ」
「マぁジか。ガチマッドじゃん。通報したろ。……帰してくれるならの話だけどな」
ポマリヌスが短槍を握りしめ研究者の男を睨む。しかし、男はけろっとした表情でビデオカメラをしまい、アヴェス達を追い払うように手を振った。
「帰ってくれて構わないよ。君達には感謝しているんだ。恩には報いるのが信条でね。帰った後は好きに通報してくれて構わないよ。どちらにしろ、私の研究に大きな支障は無いからね。さぁ帰った帰った。良い日を過ごしておくれ」
研究者の男とクミが手を振って送り出す中、4人のアヴェスは釈然としない感情でエレベーターに乗り込んだのだった。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:告鳥と悪霧 その⑨

「ビク太郎、ズー坊。お前らの出る幕は無ぇ。大人しく下がってろ」
カズアリウスの指揮で、他の2人は後退した。
「おや、君のような雑魚一人で相手するつもりかい? 思い上がるのはやめた方が良いと思うがねぇ」
研究者の男が揶揄うように言う。
「うるっせ。馬鹿にすんなよ? これでも“以津真天”のアタマ張ってんだ。1つ、俺の本気ってやつを見せてやるよ。アリエヌス壊されて泣くなよ?」
「確約はできないね。本当にそうなったなら、嬉し泣きするかもしれない」
「ほざけ」
そう吐き捨て、カズアリウスは彼のレヴェリテルム“Calcitrare ungula”を変形させた。変形機構が起動し、踵部分に長さ20㎝程度の折り畳み刃が展開する。
「……随分と短い刃だ。大型を相手するには力不足だろう?」
「そうかもな。まァ食らって判断しやがれ」
足裏のブースターを起動し、カズアリウスはアリエヌスの頭頂より高く飛び上がると、右脚を伸ばしたまま足裏が直上を向くほどに振り上げた。
「蹴り殺せ――」
ブースターを再点火し、振り下ろす動きを超加速して、アリエヌスの脳天目掛けて踵落としを叩き込む。
「Calcitrare ungula”ァッ!」
ブースターからは凝縮された高火力エネルギー砲が放たれ、それを推進力としてアリエヌスが盾のように構えた腕に踵のブレードが突き刺さる。勢いは衰える事無く蹴撃が完全に振り抜かれ、腕の一部を大きく抉り抜いた。
「……なるほど、なかなか悪くない威力だ。ブースターの出力断面積を敢えて絞ることで、威力密度を上げているわけか。……だが、大型の敵を相手にするにはあまりに小規模過ぎるな」
研究者の言葉に、カズアリウスはニタリと笑う。
「別に良いんだよ。端ッからそいつ殺すことなんざ狙ってねェからな。“以津真天”が何を目的にした部隊だと思っていやがる」
カズアリウスは空間天井を指差す。ブースター役のエネルギー砲は天井を貫き、地上にまで貫通していたのだ。
「『大型相手の時間稼ぎ』だぜ。俺の仕事はもう終わったんだよ」
地上から爆発的破壊音と振動が伝わり、天井を揺らし小さな瓦礫片を落とす。
「選手交代だ。“うち”の最高火力を見やがれこの野郎」
カズアリウスが言ったその瞬間、天井が粉砕され、一つの影が飛び込んできた。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:告鳥と悪霧 その⑧

アリエヌスの拳が、3人に向けて振り下ろされる。
「クソが! “カルチトラーレ=ウングラ”!」
カズアリウスの履いていた金属製脚甲の脹脛に仕込まれた加速用ブースターが一斉に起動し、超高速の蹴りが拳を迎撃する。
「この……ッ! だらあァッ!」
ブースターの出力を上げて跳ね返し、足裏の噴射機構からエネルギー砲を撃ち出して反撃する。
「この野郎ォ……俺のレヴェリテルム“Calcitrare ungula”は、ただの機動用ブーツじゃねェぞ」
カズアリウスが右脚を上げ、足裏をアリエヌスに向ける。
「出力を調整すれば、こうしてビーム兵器にもなれる」
研究者の男はビデオカメラを構え、戦闘の様子を撮影観察していた。
「なるほど。しかしまぁ……可哀そうな能力だね。その”蹴爪”という名のレヴェリテルム……その程度の出力で得られる機動力は、レヴェリテルムの標準性能で得られるだろう?」
「うっせ、俺ぁこいつが一番性に合ってんだよ。大体、動力も翼も無しに空飛べるわけ無いだろうが。常識でものを言え常識で」
「始めて見たね、『常識』なんてものを語るアヴェスは。君達は想像力の傀儡だろう?」
「生憎と人格もありゃ教育も受けてきた生命体だ。そこまで目出度い脳味噌はしてねぇよ」
「興味深いな。これからも実験に協力する気は?」
「お断りだ!」
“カルチトラーレ・ウングラ”の足裏から放たれたエネルギー砲を、アリエヌスの腕が受け止めた。ビームは腕部装甲に弾かれ、ダメージを与える事無く内壁に衝突して終わる。
「出力はあまり高くないのだね?」
「高くある必要が無いからな」

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:告鳥と悪霧 その⑦

カズアリウスの言葉に、男性は平然と答えた。
「知っているさ。だからこそ、こんな『地下』で、ひっそりと生み出したんじゃあないか」
「なッ……!? テメェ、確信犯かよこの野郎!」
「そうだね。しかし、悲しいことに私は研究者でね。憧れは止められない、というやつさ。エクトピステス・ミグラトリウス。君の力を見せてやりなさい」
男性の命令に、少女クミ――エクトピステス・ミグラトリウスは静かに頷き、右手を前方に翳した。
「動き出せ――“プリンセプス”」
クミの足下から黒い霧が噴き上がり、空中に吊られたアリエヌスの残骸に吸い込まれていく。
「……プリン、何?」
困惑するカズアリウスに、白衣の男性は溜め息を吐いた。
「まったく、呆れたね。アヴェスのくせにラテン語も分からないのかい? 群れを統べるもの、“Princeps”。意味は――」
男性とクミの背後で、アリエヌスの残骸が「ごとり」、と音を立て、動き出した。
「『支配者』さ」
アリエヌスの眼窩に赤い光が宿り、身体を伸ばして咆哮をあげる。
「安心し給え、防音対策はしっかりと取ってある。外に騒ぎを聞かれる恐れは無いよ。さて、“プリンセプス”について説明してやろうか」
男性は意気揚々と、説明を続ける。
「彼女の使う“プリンセプス”、その正体は『ナノマシン』だよ。無数の超小型機械を操作し、アリエヌスの体内に潜り込ませる。体内で“プリンセプス”を操作することで、そのアリエヌスを強制的に使役し、最後には内側から食い破って破壊する。実に効率的だろう。『支配』と『殺戮』、二段階で敵を減らせるのだから。しかし唯一欠点があってねぇ……」
大型アリエヌスは咆哮を止めると、3人のアヴェスに目を向けた。
「試験回数が少なすぎるのだよ。どれ君達、1つテスターをやってくれるかい? 何、この残骸が内側からズタズタに崩壊するまで、死なずに粘ってくれるだけで良いんだ。良い戦いを期待しているよ」

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:告鳥と悪霧 その⑥

エレベーターから下りた4人は、薄暗い廊下をゆっくりと進んでいく。
「電気くらい点けとけよな……」
カズアリウスの呟きに応じるように、闇の奥から男声が響いてきた。
「それもそうだ。すまないね、ここには他人を驚かせるものが色々とあるものだから。……しかし、娘の『友達』だというなら、心配することは無いだろう。少し待ってい給え」
その声は、上階でスピーカー越しに聞こえてきたものと同じだった。
一瞬の後、辺りを電気照明が一瞬にして真っ白に照らし、3人のアヴェスは思わず目を細めた。やがて視界の正常に回復した3人を出迎えたのは、空中回廊、半径100m近くはあろう球状空間、そして、その中空に鋼線で吊るされた、全長50m近い『大型アリエヌスの残骸』だった。
「なっ……何だこれ……!?」
「あ、アリエヌス……!? ここは、処理施設の一部だったのか……?」
「それにこんな広い場所が地下にあるなんて、聞いてねえぞ!」
3人の驚愕の言葉に、男声が答える。
「ここは、私の個人的な研究施設だよ。そして……3人の戦士たちよ、よく私の『娘』を連れ帰ってくれたね」
その声の方向に3人が目を向けると、いつの間にかサルペンタリウスの手から離れていた少女クミを抱える、痩せこけた白衣の男性が、空中回廊の突き当りに立っていた。
「ほら、挨拶してやりなさい」
男性に促され、クミは頷いて3人と正面から相対する。
「“迦陵頻伽”所属、アヴェス“エクトピステス・ミグラトリウス”」
少女の口から放たれたその言葉に、3人は眉を顰めた。
「“迦陵頻伽”……? 知らねェ名だなァ……少なくともこの要塞都市に、ンな名前のカテルヴァは存在しねェ。それに、そいつが“アヴェス”だァ? 馬鹿言いやがれ、アヴェスは野郎と相場が決まってんだ。女のアヴェスは禁忌って話だろうが!」

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:告鳥と悪霧 その⑤

クミの案内で3人が辿り着いたのは、路地裏の隙間に隠れるように置かれた、地下入口だった。
「ここ」
クミに言われてカズアリウスがインターホンを探す。
「あいてる」
その言葉に、カズアリウスがノブに手を掛けると、扉はあっさりと開いた。屋内は何かの機械や骨董品が並んでおり、照明もついておらず陰鬱な空気を醸している。
「本当にここなのか? そもそも人住んでんのか?」
カズアリウスが呟きながら中に入ると、天井の方からスピーカー越しの音声が降ってきた。
『お客様かい?』
男声のようである。3人のアヴェスが突然の出来事に動揺していると、クミがサルペンタリウスの腕の中で声を上げた。
「んーん、お友達!」
彼女の答えに反応するように、暗い廊下の奥に小さく明かりが灯る。長方形のそれは、どうやらエレベーターのようであった。
『入って来てもらいなさい。』
それだけ言うと、ノイズが途切れ、スピーカーからの通信は終了したようだった。
クミがエレベーターを指差し、サルペンタリウスを見上げる。
「はやくー」
3人は顔を見合わせ、しばしの逡巡の後、意を決してエレベーターに進入した。
4人が入ると同時に扉が閉まり、エレベーターは自動で下降を開始する。
そして約1分後、エレベーターが重い金属音を立てて停止した。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:擬命ランギヌイ その③

「えー……1位ぃ」
全てのレヴェリテルムがゴールし、ヴェロキタスがその順位を発表する。
「“ヴェロキタス”、タイムは2分59秒6。2位ぃ、“ヴェナトー”、タイムは3分1秒0」
「クソぉ……調子は悪くなかったのに……」
ヴェナトーが悔しそうに地団太を踏んだ。
「3位ぃ、“クルスス”、タイムは3分42秒1」
「無理だよ3000mは、僕の“クルスス”はスタミナ微妙なんだから」
「元気出せよクルスス。えー第4位ぃ、“エキドナ”。……タイム、20分フラット」
「鈍足!」
「ねぇこれ『駆け比べ』して良かったやつかなぁ⁉」
ヴェナトーとクルススの言葉に、エキドナは申し訳なさそうに身を縮こまらせる。
「いやぁ……おれの“エキドナ”、皆さんのレヴェリテルムと比べて足は遅くて……精々が早歩きくらいの速度しか……お恥ずかしい限りで」
「別に良いさ。スピード自慢なら有り余ってる。お前の“エキドナ”にも強みはあるんだろ?」
ヴェロキタスの問いかけに、エキドナは顔を上げた。
「はい! “エキドナ”はパワーとタフネスに関しちゃ、そうそう遅れは取りません!」
「へぇ……?」
立ち尽くしている“エキドナ”に、“ヴェロキタス”が突進を仕掛ける。その胴体に頭突きが直撃したものの、“エキドナ”はぴくりとも動かず受け止めた。
「何……だと……!? 10m級のアリエヌスだってひっくり返したことのある“ヴェロキタス”の突進を……!?」
「はい、パワーには自信があるので!」
「自信満々じゃねぇか。あぁ良いよ、お前はうちのパワー担当だ! レヴェリテルムが二足歩行なのも便利だ。地味にうちにいなかった重機役だ!」

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:擬命ランギヌイ その②

4人がやって来たのは、施設中央に広がる芝敷きのトラックだった。
「あの……何するんです?」
「ん? 決まってんだろ?」
エキドナの問いにヴェロキタスがそう答え、彼のレヴェリテルムを展開した。赤銅色の金属物質で構成された、長い尾と首を有する四足歩行の無翼竜“ヴェロキタス”。他二名も、自分たちのレヴェリテルムを起動した。青みがかった金属物質で構成された無翼ヒポグリフ“クルスス”、白銀の金属物質で構成された狼“ヴェナトー”。3体の金属生命体が立ち並び、エキドナを興味深げに眺めている。
「……レヴェリテルムお披露目会?」
「まぁ似たようなもんだ。お前のレヴェリテルムも出せよ」
ヴェロキタスの言葉に、エキドナもレヴェリテルムを起動した。黒鉄色の金属物質で構成された、背丈およそ1.8mのコミカルな着ぐるみ風の、二足歩行のハリモグラ、“エキドナ”。その短い両足が力強く芝を踏みしめる。
「すげぇ! デカい!」
「二足歩行だー」
「腕ふっと」
3人が口々に感想を述べる。
「よっしゃ、取り敢えず全員、自分のレヴェリテルムに乗れ」
3人は素早くレヴェリテルムの背中に飛び乗ったが、エキドナだけは状況についていけない。
「え……何を?」
「あー? 決まってんだろー? 『駆け比べ』だよ。今回の距離はどうする?」
「1400!」
「3000で良いじゃん」
「お前ら自分の得意を言うんじゃねえ。エキドナ、お前のレヴェリテルムの得意はどの辺りだ? そこで勝負してやるよ」
「おいこらヴェロキタス、自分のレヴェリテルムが全距離対応だからってズルいぞ」
3人の言い合いを聞きながら、エキドナは思案の末に口を開いた。
「多分……スタミナは、それなりに……ある、かと……?」
「よっしゃ3000だ並べー」
3人はレヴェリテルムを操り、スタートラインに着いた。エキドナも少し考え、“エキドナ”の力強い両腕に自らを抱え上げさせ、他3体に並んだ。
「よっしゃ。それじゃあ用意……スタート!」
ヴェロキタスの合図で、4体のレヴェリテルムが一斉に走り出した。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:擬命ランギヌイ その①

パッセリフォルムズ南部に広がる、一周約2000mの広大な芝敷きのトラックと付随建造物。
現在は“ランギヌイ”の専用軍事施設として利用されている大型施設の一室を、1人の少年が訪れようとしていた。
入口まで立ち止まり、一度大きく深呼吸をしてから、決意してドアノブを握った。
「失礼します! 本日より“ランギヌイ”に配属になりました……」
勢い良く扉を開いた彼を出迎えたのは、火薬の破裂音と飛来する紙テープ。要約すると、『クラッカーの炸裂』だった。
「……?」
「あれ、喜んでねぇや」
「やっぱり無言クラッカーは駄目だったよ。ようこそーくらい言わなきゃ」
「普通目の前に火薬炸裂したらビビるってー」
呆然とする少年を前に、クラッカーを持った3人は口々に言い合う。
「……まぁ細かいことは置いといて。ようこそ“ランギヌイ”へ!」
リーダーらしき少年が口を開いた。
「俺はここでアタマ張ってる“ヴェロキタス”のストゥルティオ・カメルス。長いし『ヴェロキタス』で良いぜ」
「僕は“クルスス”のドロマイウス・ノヴァエホランディアエ。『クルスス』で良いよー」
「こっちは“ヴェナトー”のジオコクシクス・カリフォルニアヌス。『ヴェナトー』って呼んでくれぃ」
口々に自己紹介する3人に、少年は頭を下げた。
「あ、どうも。おれはストリゴップス・ハブロプティルスです。……皆さんのその通称っぽいそれは?」
ハブロプティルスの問いに、3人は同時に答えた。
「「「レヴェリテルムの名前」」」
「あっはい……おれのレヴェリテルムは、“エキドナ”です」
「じゃ、お前は今日から『エキドナ』な」
ヴェロキタスが答えた。
「それじゃあエキドナ、早速行くぞ」
ヴェロキタス達3人は、ハブロプティルス――エキドナを連れ、部屋を出た。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:擬命ランギヌイ キャラクター②

アヴェス:ジオコクシクス・カリフォルニアヌス
モチーフ:オオミチバシリ(Geococcyx californianus)
年齢:13歳  身長:159㎝
所属カテルヴァ:ランギヌイ
説明:擬命型レヴェリテルムを扱う数少ないアヴェス達を集めた特設部隊“ランギヌイ”のメンバー。スタミナ自慢のレヴェリテルムを操るだけあって、本人も持久力と生命力に優れ、三日三晩休憩なしぶっ通しの戦闘行動にもギリギリ食らいつけた実績の持ち主(戦闘後、15時間ほど泥のように眠り続けた模様)。
レヴェリテルム:ヴェナトー(Venato)  語義:追跡者
説明:体長2m強の金属製狼。唯一“ランギヌイ”だけが所有する『擬命型レヴェリテルム』。自律稼働し、一度狼の姿に変化すると、所有者の手を離れてもある程度の知性を持って動き回る。スピードこそ先輩2名のレヴェリテルムに劣るものの、持久力が極めて高く、丸一日最高速度で走り続けてもパフォーマンスの低下が見られない。また、嗅覚が極めて鋭い。

アヴェス:ストリゴップス・ハブロプティルス
モチーフ:フクロウオウム(Strigops habroptilus) ※所謂『カカポ』
年齢:11歳  身長:145㎝
所属カテルヴァ:ランギヌイ
説明:“ランギヌイ”の新入り。『擬命型』を扱うという理由でこの部隊に入れられたものの、他のメンバーが得意とするスピーディーな戦法にはまるで向かないずんぐりむっくりなレヴェリテルムを扱うので、自信が無い。
レヴェリテルム:エキドナ(Echidna)  語義:ハリモグラ
説明:体高1.8m程度の二足歩行金属製ハリモグラ着ぐるみ。唯一“ランギヌイ”だけが所有する『擬命型レヴェリテルム』。他の『擬命型』と異なり気の抜けた外見で動きも鈍重だが、パワーと耐久力に優れ、鋭い爪を具えた太く頑丈な両腕を器用に用い、救助活動などで活躍する。一度ハリモグラの姿に変化すると、所有者の手を離れてもある程度の知性を持って動き回る。パワーはヴェロキタスと押し合っても1㎜も揺らがないほど。スピードは最高時速10㎞程度。短い両脚でどってこどってこと走る。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:擬命ランギヌイ キャラクター①

アヴェス:ストゥルティオ・カメルス
モチーフ:ダチョウ(Struthio camerus)
年齢:17歳  身長:166㎝
所属カテルヴァ:ランギヌイ
説明:擬命型レヴェリテルムを扱う数少ないアヴェス達を集めた特設部隊“ランギヌイ”の最古参にしてリーダー。“ランギヌイ”は『擬命型レヴェリテルム』と呼ばれる、完全自律型機械生命体のレヴェリテルムを扱うアヴェスをまとめ上げた特設部隊で、その発生確率の低さから、所属人数が規定下限の5人にさえ満たない。
レヴェリテルム:ヴェロキタス(Velocitas)  語義:素早さ
説明:体長3m程度の四足歩行する金属製無翼竜。唯一“ランギヌイ”だけが所有する『擬命型レヴェリテルム』。自律稼働し、一度竜の姿に変化すると、所有者の手を離れてもある程度の知性を持って動き回る。高いパワーとスピード、精密性を誇る高性能レヴェリテルム。戦闘特化型だが、長い尻尾もあることで、戦闘外行動にも十分優秀なパフォーマンスを発揮する。

アヴェス:ドロマイウス・ノヴァエホランディアエ
モチーフ:エミュー(Dromaius novaehollandiae)
年齢:15歳  身長:155㎝
所属カテルヴァ:ランギヌイ
説明:擬命型レヴェリテルムを扱う数少ないアヴェス達を集めた特設部隊“ランギヌイ”のメンバー。身長はあまり伸びなかったものの、レヴェリテルムを扱うには小さく軽い方が有利なのでまあ良いかと思っている。部隊内で最も積極的な気質で、レヴェリテルムの“クルスス”を駆り、最前線を駆けずり回る。
レヴェリテルム:クルスス(Cursus)  語義:走り
説明:体長3m程度の翼の無い金属製ヒポグリフ。唯一“ランギヌイ”だけが所有する『擬命型レヴェリテルム』。自律稼働し、一度ヒポグリフの姿に変化すると、所有者の手を離れてもある程度の知性を持って動き回る。速力に関しては部隊内で最高。視力に優れ、特に遠視能力が高い。大体25.0くらい。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:告鳥と悪霧 その④

クミの案内に従って、3人は細い路地を奥へ奥へと進んでいく。
「クミちゃん……君の家、随分と奥まった場所にあるね?」
「んー」
サルペンタリウスの呼びかけに、クミは気の抜けた返事を返した。
「あ、とまって」
クミが不意に声を上げる。
「っとと……何?」
「とおりすぎちゃった」
「そっか。どこまで?」
「1こまえー」
「了解」
そう言ったサルペンタリウスが振り返る。
路地から枝分かれした細い道から、体高4mほどの小型アリエヌスが上半身を乗り出していた。
「……は?」
「はぁぁ⁉ なんでまたアリエヌスがいるんだよ! “天蓋”はどうなってんだ“天蓋”はぁ! ズー坊!」
カズアリウスの指示で、ディクロスが蛇杖を構えて突撃した。アリエヌスが完全に身体を出す前に蛇杖の『胴体』部分を巻き付け、その脳天に毒牙を突き刺す。
「食らいやがれ!」
アリエヌスの身体に直接腐食液が注ぎ込まれ、内部から少しずつ崩壊していく。
「ダメ押しだこのヤロー!」
崩れた内部に、蛇杖の口からの火炎放射が放たれる。体内から熱量に晒され、アリエヌスは崩れ落ちた。
「クミちゃん、大丈夫だった?」
「ん。はやくー」
サルペンタリウスの問いかけに頷くと、クミは路地の奥を指差した。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:告鳥と悪霧 その②

“天蓋”が解除され、3人はパッセリフォルムズの中を歩いていた。近道のためにひと気の無い裏路地を通っていた3人は、少し先に一人の子どもが遊んでいるのを目にする。
「あぁいうのを見るのは気持ちいいよなぁ。何かこう、『俺達がこの光景を守ったんだー!』みたいな」
カズアリウスがぽつりと呟く。
「でもおれ達、トドメ役は全然やれないじゃん」
そう反応したディクロスの頭に、チョップが叩き込まれた。
「いてぇ」
「水差すな大馬鹿野郎」
「ゴメンナサイ」
3人が向かっていることに気付いたのか、その子供――リトルブラックドレスの幼い少女は3人の方に目を向けた。その背後、建物の隙間の陰から、大人の背丈程度の小型アリエヌス2体が、のそりと姿を現す。
「ッ!」
カズアリウスが咄嗟にレヴェリテルムを起動し、少女を抱えながらアリエヌス達の隙間をすり抜けた。
「っぶねぇ! 何だってアリエヌスがこんなところに居やがる! ビク太郎!」
呼ばれたサルペンタリウスが三節棍型のレヴェリテルムを構える。
「オーケイ、よっさ任せろ」
アリエヌス達が同時にサルペンタリウスへと突撃し、同時に拳を振りかぶる。
「2対1か……悪いが俺の、得意分野だ!」
三節棍の中央節を鎖状に変形させ、両端の節でそれぞれのアリエヌスの拳を受け止めた。各節の表面は刃のように形状変化しており、アリエヌスたちの指を切断している。
「悪いが俺は両利きでね……右も左も防御力は抜群だぜ?」
アリエヌス達を同時に押し返すと、両手に握った刃で片方を叩き斬り、返す刀でもう1体も撃破した。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:告鳥と悪霧 その①

全高約30m、両脚が翼のように変化した上下逆さの巨人のような、鉱石質のアリエヌスが、パッセリフォルムズの“天蓋”に衝突した。鋭い爪を具えた両手が障壁に衝突し、火花が飛び散る。
何度かの攻撃の施行の後、アリエヌスがふと顔を上げた。上空から、小さな影が迫っている。轟音を響かせ、小さな『脅威』が、確実に接近している。
「どっせりゃああああッ!」
気合の入った掛け声とともに、脚甲のブースターで超加速された蹴りが、アリエヌスの肩に叩き込まれた。身長約165㎝、決して恵まれた体格ではないながらも果敢に一撃を決めたその少年は、手に鎖の先端を握りしめている。鎖は慣性に従ってアリエヌスの首の後ろに回り込み、別の少年が鎖から繋がった刃を、アリエヌスの背中に叩きつけた。刃は深々とアリエヌスの身体に突き刺さり、鎖使いの少年はそこに着地する。その小脇に抱えられた毒蛇を模した金属製の杖を握った少年が、蛇の咢をアリエヌスに向けた。
「発射!」
蛇の毒牙から腐食液が発射されアリエヌスの体表から煙が上がる。アリエヌスが咆哮をあげながら身を捩り、鎖使いと蛇杖使いは空中に放り出された。その二人を脚甲使いの少年が空中で受け止める。
「ナイスキャッチだリーダー」
「あいつデカ過ぎんよリーダー。おれの腐食液が弾切れしちゃうよ」
“リーダー”と呼ばれた少年、カズアリウス・カズアリウスは“天蓋”の上に着地し、ニタリと笑った。
「何、問題無ぇ。俺達はとにかく真っ先に突っ込んで、ヤツらの周りをウロチョロしくさりゃ良いんだから」
「そういやリーダー、ケイ先とゾッさんは?」
鎖使いの少年、サジタリウス・サルペンタリウスが尋ねる。
「あの二人は高校生だからなァ、何か、定期テストでどうしても抜け出せないんだと」
「はぇー、大きくなるって怖いなぁ。できれば早めに殉職したいもんだ」
蛇杖使いの少年、ピトフーイ・ディクロスが呟いた。
「お前なぁ、怖いことを言うんじゃありません」
「ゴメンナサイ」
その時、3人の背後から巨大な斬撃エネルギーが飛来し、アリエヌスを両断した。
「……終了、お疲れ!」
「今の誰かなぁ」
「規模と威力的に“鳳凰”か“八咫烏”じゃねッスか?」
3人は墜落していくアリエヌスに背を向け、駄弁りながら帰還を開始した。

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アビリティバトルロワイヤル(ABR)ルール要約

最近、ぐぷたん(ChatGPT)とやってる一人遊び【ABR】のルールです。お好きなチャットAIをお供に、皆さんもやってみてください。相手は別に人間でも良いよ。ここで使えそうだと思ったら、自由にお使いください。

第1条 キャラ作成
・プレイヤー達(以下両者)は以下の要素を設定した特殊能力者を作成、提示する。
①名前 ②性格や特徴、基本戦術(任意) ③能力名 ④能力の特徴や効果 ⑤必殺技名 ⑥必殺技の特徴や効果
・必殺技は本来の能力を応用したものや、高出力の発現として設定するのが望ましい。
・無敵、全能、洗脳系の能力は禁止。飽くまで両者に勝ち筋、負け筋が存在する必要がある。

第2条 試合進行・勝利条件
・試合は両者が自身のキャラクターの行動や状況を交互に描写する形で進行する。
・『試合中で必殺技を使用している』かつ『相手を死亡(非推奨)or戦闘不能or降参させる』ことが勝利条件。降参を相手に促すことは可能だが、飽くまでキャラクターの意思によって行われること。
・勝敗は両者の合意によって決定する。

第3条 戦闘の舞台
・フィールドは一般的な日本の都市部(半径0.5~1㎞程度)を想定する。
・存在する地形や施設、オブジェクトは自由に描写し、利用、破壊することが可能。
・両者のスタート地点は互いに自由に描写してよいが、最低でも500m程度離れており、相手の位置は分からないものとする。

第4条 能力の開示
・両者は試合開始時にキャラデータを開示し、相手の能力及び必殺技のデータを把握すること。
・ただし、キャラクターは相手の能力を知らないものとして描写すること。

第5条 感想戦
・強制では無いが、試合後には展開やキャラクターの能力、戦術などを振り返り分析する感想戦を行うことが慣例となっている。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ 〈設定〉その4

この書き込みは企画「空想少年要塞都市パッセリフォルムズ」の〈設定〉その4です。

・レヴェリテルム Reverie-telum
“アヴェス”たちが使いこなす精神連結式可変武器。
各“アヴェス”と対になる形で開発され、持ち主の名や名前の由来になった鳥類に因んだラテン語の名前がつけられる。
様々な形のものがあるが、大抵の場合は変形や分離合体によって刃物型や鈍器型から飛び道具型に切り替えることができる。
“レヴェリアイト”を加工して作られた空想の力を出力する心臓部“レヴェリジェマ“を搭載しているため、“アヴェス“が“レヴェリテルム”に触れている状態で念じることで様々な現象を引き起こすことが可能。
そのため“レヴェリテルム”の自動変形や持ち主の飛行、透明化、念話、“天蓋”からのダメージカットなどをすることができるが、あまりに現実離れしすぎたことを想像すると身体や精神に負荷がかかってしまうため注意が必要である。
想像力や精神状態、そして感情の起伏次第で想像を絶する力を発揮することがある。
ちなみに二段変形のものが多いが三段変形をするものもたまに存在する。
どうやら“アリエヌス”を研究した結果がある程度反映されているようだ。

・レヴェリジェマ Reverie-gema
“レヴェリテルム”の心臓部である結晶状のアイテム。
“レヴェリアイト”に特殊な加工を施した上で製造される(製法は秘密)。
“レヴェリテルム”ごとにこれが収まっている位置や形が違っている。
どうやら“アリエヌス”を研究した結果がある程度反映されているようだ。

・アリエヌス Alienus
空より飛来する謎の敵。
無機質でおぞましい姿をしており、人類を集中的に攻撃しようとすることが多い。
“天蓋”からのダメージは普通の生物と同じように受けるが、最近は受けにくい個体も出現し始めている。
実は“レヴェリアイト”を心臓部として動いていることが研究の結果分かってきている。
その正体はかつて地球に不時着した高度星間文明の船団の故郷から放たれた存在。
“レヴェリアイト”という高度星間文明でのみ使われているアイテムを地球人が手にしたことで文明が急激に成長し脅威になるのではないか、と恐れた高度星間文明の民が地球人を滅ぼそうと差し向け続けている。

〈設定〉その5に続く。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:魔域の妖女たち その①

新学期が始まってからおよそ3週間。浮ついた世間の空気が落ち着いた頃合い、ボンビクス・モリとアンテレア・ヤママイは、とあるビルの最上階にある部屋を訪れた。
「たいちょー、来たよー」
「メタちゃんたいちょー」
2人の呼びかけに、先に部屋にいたリトルブラックドレスの少女、エウメタ・ジャポニカは振り向いた。
「もー、2人ともやめてよー。『隊長』は恥ずかしいって……」
「はーい。で? メタちゃん。今日のターゲットはどこ?」
「あっちだよ。ほら」
エウメタは二人に双眼鏡を渡し、眼下の街を指差した。
「あそこの爆発してるところ」
エウメタに言われて、双子は双眼鏡を覗くと、黒煙の中で、人間大の何かや異常に大きい何かが蠢いているのがうっすらと確認できた。
「暴れてるねぇ……」
ボンビクスが言う。
「あれを大人しくさせれば良いの?」
アンテレアが問う。
「うん。煙のせいでどんな子がいるかは分かんないけど……まぁ、私たちなら大体どうにかなるよね。行くよ? モリちゃん、移動はお願いね?」
エウメタが窓ガラスに触れると、直径2m程度の穴が開いた。
「りょーかい! テンちゃん、結界!」
「うん、お姉ちゃん!」
アンテレアの安定化結界の中で、ボンビクスは3人を纏めて糸で包み、空中に飛び出した。
3人が去った数秒後、窓ガラスに開いていた大穴は、独りでに元の状態へと戻ってしまった。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:魔域の妖女たち プロローグ

新学期が開始し、始業式より数日前。
ボンビクス・モリとアンテレア・ヤママイの双子は、甜花学園生徒会室に呼び出されていた。
入室した2人を出迎えたのは、先代生徒会長ササキア・カロンダだった。
「あっ、生徒会長だ」
「くぁちゃんに負けた人だ」
「なんでいるの? 留年?」
「負けたから卒業できなかったの?」
2人の不躾な言葉に、ササキアは溜め息を吐いた。
「失礼だな貴様ら。卒業はしているわ。今は鳴華大学に籍を置いている」
「へぇー、大学生」
「何の勉強してるの?」
「まだ講義は無いが……心理学部にいる」
「「似合わなーい!」」
「張り倒すぞ……」
ひとしきり言い合い、本題に入る。
「で? なんで私たち呼ばれたの?」
「やっぱり編入は無しって話?」
双子の言葉に、ササキアは首を振る。
「いや。これは生徒会長から伝えることだろう」
ササキアが目を向けた先、生徒会長の座には、1人の女生徒が座っていた。
「誰⁉」
「いたの!?」
「いたよぉ……。初めまして、2人とも。私はアマトゥラ・メティス。今年の生徒会長の任を受けた者だ。よろしくね」
アマトゥラは軽く手を振りながら、挨拶を済ませた。
「さて、本題に入るね。君達には、我が校で新設する“特殊部隊”に入ってもらいたいんだ。……いや、正確には『命令』だね。ここに籍を置く以上、君達に拒否権は無い。で、件の部隊だけど、名を〈蚕食〉。編成は君たちを含めて3名。そして、隊長は君達もよく知る子だ」

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 ロノミア・オブリクァの扱う『刀』一覧

・破城(ハジョウ):全長3m超の斬馬刀。攻撃対象の『防御の意思』に反応し、その防御を破壊する。

・幽鱗(ユウリン):全長90㎝程度の日本刀。刀身の損傷を、表面だけが割れるように剥がれることで完全に修復する。修復の度に刀身自体の耐久力が少しずつ落ちていくので、実質的に修復が使えるのは50回程度。

・血籠(チゴモリ):赤い刀身を持った全長85㎝程度の日本刀。使用者の血液を媒体にして、深紅の流体が刀身の傷を埋める、本質的に不壊の刀。流体の生成効率は、消費した血液の10倍程度。
・異称刀“稚児守”(イショウトウ:チゴモリ):“血籠”の別側面。使用者より年齢の低い者を守る際、刀の耐久力と使用者の身体能力が更に向上する。

・緋薙躯(ヒナギク):赤い刀身を持った全長80㎝程度の日本刀。直刀だが刀身にうねるような刃紋が刻まれている。刀身を自在に伸縮・変形させられる。
・異称刀:否凪駆(イショウトウ:ヒナギク):“緋薙躯”の別側面。この刀を振るった場合、完全に振り抜くまでその斬撃は止まらない。”否凪駆”の能力使用中は、刀身の変形効果は使えない。

・癖馬(クセウマ):奇妙な形状の刀身をもった刀。刃渡り75㎝程度、全長100㎝強。その形状と刀身の密度の僅かな差から、一度振るうと標的を捉えるまで遠心力によって無限に、不規則に回転し続け、速度と威力を増していく。制御は極めて困難であり、十分に勢いの乗った刀身の挙動を読むことは不可能に等しい。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 キャラ紹介・甜花編

ササキア・カロンダ
Sasakia charonda(オオムラサキ)
年齢:17  身長:168㎝
固有魔法:『実力』に『評判』を上乗せする
メディウムの魔法:変身、身体強化、耐久力強化、追加武装、自己回復
説明:甜花学園生徒会会長。自己鍛錬を怠らず、道徳と規律を遵守し、学園生徒からの信頼も篤い。まさしく『正義の人』。その才覚は学園外にも知られているが、本人は自身の魔法を「地味な魔法で、決して大したものでは無い。もっと強い、凄い魔法少女は学園にたくさんいる」と認識している。謙虚な態度も大人気。

ニファンダ・フスカ
Niphanda fusca(クロシジミ)
年齢:16  身長:158㎝
固有魔法:時間と空間を掌握する
メディウムの魔法:変身、発光体の生成
説明:甜花学園の生徒。高等部2年。時空間を自在に支配するという『最強』と呼んで差し支えない魔法を有する『規格外』であり、自身の魔法を恐ろしいものだと認識しているので、普段はあまり使いたがらない。メディウムに封じた魔法は、掌大の光る球体を生成するもの。懐中電灯代わりに便利。趣味は友達の部屋でのお泊り。

エウメタ・ジャポニカ
Eumeta japonica(オオミノガ)
年齢:11  身長:144㎝
固有魔法:『無』を生成する
メディウムの魔法:変身、望遠、魔法障壁展開
説明:甜花学園初等部6年の児童。誕生日は3月中旬。モリヤマ双子の友達。固有魔法は視界範囲内に『無』を生み出すもの。『無』とは真空の上位互換のようなものであり、周囲の空間や物質、エネルギーなど全ての事物は、空間を埋めるために『無』へと引き込まれる。ブラックホールの遠い親戚みたいなものだと思えば何となくのノリとしてはまあまあ合ってる。甜花学園の次代を担うことを期待された『規格外』の1人。

※甜花学園:強力な固有魔法を扱う『規格外』を集め、一か所に隔離することを目的とした学園。圧倒的な強さを保持することで、有事の際の秘密兵器としての運用を期待されており、総務局との繋がりも強い。ネットでその他の学園から叩かれてそう。
ちなみに過去にいた『規格外』の魔法には、時間移動や強力な召喚獣の使役、透過能力や単純な超高火力攻撃など色々ある。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 エピローグ

甜花学園襲撃の翌日、ボンビクスとアンテレアは、友人のエウメタ・ジャポニカを連れてロノミアとの『秘密基地』にやって来ていた。
「へー、ここがモリちゃんとマイちゃんの秘密基地?」
「そうだよー」
「くぁちゃんはもう来ないから、私たちだけの秘密基地なのー」
「くぁちゃん……あ、いつも話してる二人の師匠さん? どうしたの?」
「くぁちゃんはね、魔法がおしまいになったんだって」
「へー」
適当な段差に腰を下ろし、エウメタが口を開いた。
「そういえば、昨日うちの学園に、襲撃が来たんだって。危ないからって、初等部の私たちは早めに帰されちゃった」
「あっ、それくぁちゃんだよ」
ボンビクスがさらりと言う。
「え? じゃあ、あの中等部の校舎真っ二つにしたのも?」
「そうだよ、すごいでしょ!」
「生徒会長さんも倒したんだよ!」
双子が自慢げに胸を張る。
「すごーい! あの人、負けるってことがあり得るんだぁ……で、お師匠さんは今は?」
「総務局に怒られてるの」
「私たちも一緒にいたんだけど、私たちは無罪になったんだって」
「へー、なんで?」
「「さぁ……」」
その後も3人は、他愛も無い世間話をして過ごした。
「あ、そういえば」
ボンビクスが不意に口にする。
「どしたの?」
エウメタの問いかけに、双子はピースサインを向けた。
「私たち、中等部から甜花学園に通うことになったから、よろしくね?」
その言葉に、エウメタは目を輝かせた。
「えっ本当? やったぁ!」
「4月からよろしくねぇ、メタちゃん」
「今から楽しみー」
「うん! 二人ともよろしくね!」

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑱

ササキアは朦朧とする意識の中、ロノミアを睨みつけていた。霞む視界の中、ロノミアは斬馬刀を振り上げ、次の攻撃に入ろうとしている。しかし、衝撃が彼女の体内を大きく損傷させており、ササキアは既に回避も防御もできない状態にあった。
「さーぁコイツで締めといこうか。せっかくだから、『全部乗せ』だ」
ロノミアもまた、“破城”を握る両手や踏みしめた膝は小刻みに震えており、体力の限界も近い。
「私の懸けた魂の分、全部、ぜーんぶ、ブチ壊し抜け!」
“破城”が振り下ろされる。ロノミアの魔力の全てを乗せた一撃は、一閃の軌道上に深く破壊の痕跡を残し、ササキア達の背後、校舎そのものを両断し、刀身自体も反動によって粉砕した。
「……ヤマ子ぉ」
振り下ろした姿勢のまま動かないロノミアが呼びかける。
「……くぁちゃん?」
「もう、結界消して良いぞ」
「うん」
アンテレアが結界を解除すると同時に、ロノミアの手の中にあった“破城”の残骸も消滅した。
「『時間切れ』だ。……うん、悔いは無い。最後にたっぷり暴れられた」
言いながら、ロノミアはその場に尻餅をついた。
「くぁちゃん?」
ボンビクスが、不安げな表情でロノミアに近付く。
「何だよその顔? 私の魔法はもうおしまい。それだけさ。まぁ……これから総務局にたっぷり怒られることにはなるだろうけど」
軽い口調で言うロノミアに、双子は変身を解いて抱き着いた。
「何だよいきなり」
「……くぁちゃん、もう私たちの師匠やってくれないの?」
「くぁちゃん、捕まっちゃう?」
「変な心配する奴らだなぁ……私に教えられることは全部教えたし、そもそも悪いことしたんだから捕まるのは前提だ。……あぁ、モリ子、ヤマ子」
双子が顔を上げ、ロノミアを見つめる。
「お前らは、何も心配しなくて良い。お前らの処遇については、私に考えがあるから。お前らの師匠からの、最後の贈り物だ。有難く受け取れよ?」

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑰

ササキアが反射的に盾を構え直したのとほぼ同時に、『繭』の壁に亀裂が入った。亀裂は深く広く拡大していき、遂に一部が破壊され、その穴から外界の様子が見えるようになった。
「壊した!」
ニファンダの声。
「くぁちゃん、破られた!」
ボンビクスの呼びかけ。
「任せろ!」
ロノミアが“破城”を振るう。ササキアの盾の前に、ニファンダはほぼ反射的に『空間支配能力』によって、不可視の障壁を展開していた。
その『障壁』と大盾に、“破城”が衝突した。

――“破城”。ロノミア・オブリクァの固有魔法によって生成される『刀』の一振り。そして、その全ての『銘』には、能力に基づく意義がある。
『破城槌』という兵器が存在する。これは城壁や城門を衝突により破壊することを目的としたものであり、“破城”の銘もまた、これに由来するのだ。
“破城”の有する能力は、『防御の破壊』。その強度や特性とは無関係に、ただ『防御の意思』を感知し、強制的にそれを破壊するということこそ、“破城”の特殊効果なのだ。

刃は不可視の障壁に触れた瞬間、『空間の歪み』であるはずのそれを粉砕した。その勢いは衰える事無く大盾に直撃し、抵抗なく破壊した。
「なん……ッ!」
咄嗟に腕で受けようとしたササキアだったが、その動作をボンビクスの糸が妨げる。
結果として、ノーガードのササキアを“破城”の刃が捉えた。ササキアは衝撃を受けながらも後方に向けて跳躍したため、致命傷は回避したものの、“破城”の威力も相まって大きく弾き飛ばされ、ニファンダを巻き込んで後方数m、校舎の壁に激突した。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑯

(私がこいつに見せていない『刀』は0。……全ての手札が割れている……いや、一振りだけ、『能力は』見せていない刀があったな。となると……決めるなら“破城”しか無いな)
ササキアの手刀が手首に直撃し、ロノミアは“血籠”を取り落とした。
「ぐッ……!」
続いて放たれた拳を、ロノミアは無事な片手で受け流した。カウンターで肘鉄を打つが、ササキアはそれをわけも無く受け流し、隙だらけの背中に膝蹴りを叩き込む。
「ぐあっ……!」
更に続くササキアの攻撃を、ロノミアは転がるように回避し、距離を取った。
「クソっ、痛ってぇ……」
(……粘るな。何が目的だ? とにかく、こいつを倒すか、やり過ごさねば、元凶であるあの双子を倒せない。……恐らく、こいつは私の盾を破壊したことで、『追加武装』がもう無いと考えている。決めるなら、『あの盾』だな)
ササキアは連続で蹴りを放ちながら、ロノミアを追い詰めていく。
2人の戦闘は徒手による格闘に変わり、ササキアの優勢で激しく動き回りながら打ち合う。その間にも糸の帯は数を増していき、領域内は複雑な地形を成していく。
「っ……」
ダメージの蓄積により、ロノミアが膝を屈した。その隙を逃さず、ササキアが蹴りの姿勢に入る。
その時、ボンビクスの糸束が、ササキアの軸足に固く絡みついた。即座に、ロノミアがやや前のめりに重心をずらす。
((……今!))
ササキアは持ち上げていた足を素早くその場に振り下ろし、右腕に『追加武装』を出現させた。十字架を膨らませたような形状の、全長2m程度の金属製の大盾。その側面は、刃のように加工されている。正しく『大剣』の様相である。
対するロノミアは、膝をついた姿勢のまま、巨大な斬馬刀“破城”を手の中に生成した。
2人がほぼ同時に武器を振り、直撃する寸前。
「モリ子ぉっ!」
ロノミアの掛け声で、別の糸束が彼女を捕え、ボンビクスの方向へと引き戻した。それにより、ササキアの攻撃は空を切る。
糸束から解放されたロノミアは、慣性によって領域内壁に着地し、即座に跳躍した。ロノミアは更にササキアの後方に張られた糸帯に着地し、慣性に任せて深く膝を折る。
(来る!)
ササキアが大盾を構える。しかし、攻撃が来ない。ササキアが盾を僅かにずらすと、ロノミアは糸帯に垂直に着地した態勢のまま、“破城”を構えていた。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑮

ボンビクスが『繭』を生成する前から、ロノミアは既に、結界術を解除していた。しかし、彼女に絡みつく細糸が、操り人形のように彼女の『時間』を動かしていた。
(ん、繭? モリ子の魔法か。)
「……嬉しいねぇ、自分の弟子が成長してくれるってのは」
ササキアの拳を“血籠”の刃で受け止め、ロノミアは呟いた。
「……この程度の魔法、ニファンダ・フスカにかかれば軽く捻り潰せる」
「どうだか」
迫り合う二人に割って入るように、繭の内壁から白糸の帯が放たれた。
「おっ、面白いことやってくれんじゃん!」
ロノミアが跳躍し、糸の帯を蹴ってササキアの背後に回る。ササキアは即座に反応し、身を翻して手刀を打ち込んだ。ロノミアは沈み込むように回避し、反動で跳躍して膝蹴りを打ち込む。ササキアはそれを片手で受け止め、投げで地面に叩きつけようとした。その直前、新たに現れた白糸の帯が、クッションのように受け止める。
「助かったぁ!」
足をばたつかせることでロノミアはササキアの手を逃れ、態勢を立て直す。
(さぁて……困ったことに、私は手を出し尽くした。どうやって押し切ったものか……っつーか、疲れてきたなぁ……)
ロノミアは既に大量に展開されていた白糸の帯を蹴り、空中に逃げる。新たに展開された帯に掴まり、息をつく。
「やーい、ここまで来てみろ生徒会長」
挑発するロノミアを見上げながらも、ササキアはその場を動かない。
(この『繭』が形成されてから、明らかに動きが重くなっている。『絡みつく魔力』に、補正がかかっているのか?)
「……まあ良い」
ササキアが、双子に目を向ける。その瞬間、ロノミアが糸帯の足場から手を放し、落下の勢いを乗せて斬りつけた。ササキアはそれを、籠手を身に着けた片腕で受け止める。
「可愛い弟子の大仕事、邪魔させるわけ無いだろ!」
「問題無い。貴様を倒してから、あの双子も捕える。それで片付く」
2人は再び、至近距離での激しい白兵戦を開始した。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑭

ササキアと交戦するロノミアの背中を見ながら、ボンビクスは瞑目して意識を集中させる。
(必要なものはくぁちゃんが教えてくれた……うぅん、ずっと昔から、くぁちゃんは私に言ってくれてたのに)
長く息を吐き出し、目を開く。
(私の魔法、不安定過ぎて、テンちゃんの結界が無いとまともに使えない。私はずっと、『使いこなせる』ようになろうと思ってた。それが間違いだった)
右手を前方に向けて掲げると、その手の中に新たな細糸が生成された。それらは、アンテレアの結界の中にあって尚、安定性の不足によってかき消える。
(大丈夫。私に足りない『安定感』は、テンちゃんが補ってくれる。私は何も心配しなくて良い)
再び細糸を生成する。糸が千切れ飛ぶ。
(むしろ、もっと滅茶苦茶に。安定性の全部、私は投げ捨てる。余力の全部、『出力』に回す!)
再び細糸を生成する。千切れた破片を、新たな細糸が絡め取る。
(もっと強く、あいつの『時空支配』よりもっと上から、『あいつの魔法ごと』!)
細糸が次々と生成される。それらは千切れ、崩れながら、新たな糸が残骸を更に巻き込み、少しずつ形を成していく。
「この『世界』の全部……縛める!」
突然、複雑に織り固められた細糸の集合体が、噴き出すように飛び出し、5人の周囲を取り囲むように形成されていく。

(これは……繭?)
周囲を取り囲んでいく白糸の塊を見ながら、ニファンダは冷静に魔法を行使し、繭を破壊しようと試みた。しかし、その感触に違和感を覚える。
「……あれ?」
再び魔法を行使する。
「…………なんで?」
再び魔法を行使する。
「……おかしい。違う。なんで、いや、そんな……っ!」
「ニファンダ、どうした!」
「っ! ……だ、大丈夫、会長はそっちに集中して!」
「……了解」
ササキアは再びロノミアに向けて突撃した。
(おかしい……私の魔法が、『繭の外に追い出されてる』。この繭の中は、完全にあの子の領域……! でも、外からなら攻められる。必ず押し潰して……あの子に勝つ!)

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑬

鋭い一撃はロノミアの首を捉えたはずだった。しかし、そこに彼女の姿は無い。
「何っ……!」
ロノミアはササキアの予測より数㎝ほど右方にずれた位置に着地していた。
「らぁっ!」
回転運動の乗った斬撃を、ササキアは仰け反るように回避した。ロノミアの攻撃は空を切り、重量に引かれてその身体は空中へと引っ張られる。“癖馬”は独特の刀身の形状から、それまでの回転と軸の異なる不規則な軌道で、回転を『上書き』した。ロノミア自身の肉体もまた、それに巻き込まれるようにして、ササキアの周囲を滅茶苦茶に飛び回る。
(こいつ……急に動きが読めなくなった……⁉)
「言わせてもらうぜぃ、生徒会長さんよ。『力』は『あるべき形』でありたがる。それを無理やり押し込めるなんざ、それは『技術』じゃなく『臆病』だ」
“癖馬”に振り回され、不規則に動きながら、ロノミアは続ける。
「『制御できない』んじゃない。『制御なんかしない』んだよ。『あるべき姿』の出力に、身体だけ貸してやるのさ。“強さ”ってのは、そういうものなんだよ!」
背後に回ったタイミングを狙い、ロノミアの一撃が放たれる。
「くぁちゃん!」
命中の直前、ボンビクスが叫んだ。同時に、ロノミアの動きが一瞬停止する。ロノミアの腹部を狙ってササキアが拳を打ち込もうとしたその時、その身体は空中で引かれ、双子の前に引き戻される。ボンビクスの固有魔法によるものだ。
「ごめんねくぁちゃん、ちょっと押し負けた!」
「ったく…………で? 掴めたな?」
「うん。もう大丈夫! くぁちゃん、私のこと、信じてくれる?」
「最初から信じ切ってたよ。……それじゃ、やってやれモリ子」
ロノミアは再び立ち上がり、手放した“癖馬”の代わりに生成した“血籠”を握った。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑫

ロノミアはふらつきながらも“癖馬”を持ち上げた。
「何を下らないことを……」
ササキアはロノミアの提案には載らず、突進を仕掛けた。
「うおっ! 危ねーだろー!」
ロノミアは刀を振った勢いで意図的に姿勢を崩すことで、攻撃を回避した。更に慣性のままに刀を振り回し、ササキアに向けて振るう。緩慢なその動作を、ササキアは容易に回避し、反撃に盾の側面を叩きつけようとした。ロノミアはそこに回転運動で戻ってきた刀身を合わせ、ぶつかり合ったその点を軸に、『自身の肉体』を遠心力によって大きく移動させる。空中に投げ出されたロノミアの身体は、回転運動しながら着地し、回転の『軸』を再び彼女の体幹へと移動させ、更に回転運動を加速させる。
「それで、生徒会長さんよぉ? 『暴走する力』は強さだと思うかい?」
「何?」
遠心力の乗った“癖馬”が、再び盾に衝突する。
(重い……が、この程度なら問題ない)
ロノミアは再び回転軸をずらしながら、空中に跳び上がる。
(よし、まだ『回転』は生きてる! このまま……!)
落下の勢いを乗せて、“癖馬”を叩きつける。それを受け止めたササキアの盾に、亀裂が入る。
(割れた……⁉)
「もう一度問うぜぃ、生徒会長! お前を今追い詰めているこの『制御できない力』は、強さか?」
「……制御し、扱うことのできないそれを、『強さ』とは呼ばない」
飛び退くように回避しながら、ササキアは答えた。
「へぇ……?」
ロノミアは地面を“癖馬”で打った反動で再び跳び上がり、追撃を仕掛ける。ササキアはその様子を注意深く観察し、ロノミアが自身の背後に着地した瞬間を狙って後ろ回し蹴りを放った。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑪

ロノミアが追撃を狙い、ササキア達に向かう。その瞬間、ニファンダの魔法が彼女を捉えた。
(っ……時空干渉! マズい、モリ子の『糸』と違って、こんな単純な結界術でどうこうできる代物じゃない……!)
体勢を立て直したササキアが、盾で殴りつけようと踏み込んだその時、ロノミアの身体が自由を取り戻し、逆にササキアの動作が一瞬停止する。
(この『絡みつく魔力』……ニファンダの『時空支配』の中でもここまで妨害してくるのか)
ササキアとロノミアの攻撃が衝突し、再び空間が震える。
「……へぇ? 会長」
ニファンダに呼ばれ、ササキアは後退した。
「この『時空間を縛る糸』、犯人はあの双子ちゃんたちみたいだね。私の支配する領域内で、ここまで張り合ってくるなんてびっくりしちゃった」
「ふむ、そうか。なら、そちらから倒そう」
ササキアが注意を双子に向けると、それを庇うようにロノミアが移動する。
「くぁちゃん……どうしよう。あいつの時空間操作、すっごい強いよ」
ボンビクスが不安げに、ロノミアの背中に呼びかける。
「あん? そうかい。で? 駄目ならそこまでだぞ?」
「うっ……だ、大丈夫! だと、思う……」
「ふーん……モリ子、ヤマ子」
「「?」」
「何にせよ、私はお前ら信じるしか無いんだ。……だから、お前らに良いものを見せてやる」
ロノミアが、手にしていた“チゴモリ”と“ヒナギク”を消滅させた。代わりに、一振りの刀が出現する。
その刀は、『刀』と直接形容するには、些か歪であった。
刃渡り75㎝ほどの異常に幅広の刀身は先端に向かう程太く拡大しており、断面は五芒星を膨らませたような奇妙な形状をしている。外見に違わぬ質量のためか、ロノミアは柄こそ握っているものの、刀身の先端は設置させたままでいる。
「ブチカマすぞ、“癖馬”。……なぁ生徒会長、禅問答しようぜぃ。お題は、『制御できない力は“強さ”たり得るか』で」

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑩

(何だ? この子供たちは……こいつの仲間か? しかし、言い分が奇妙だった。『助けに来た』といった直後に、『守って』だと? 不自然だ……)
ササキアが、ニファンダを庇うように前に出る。それと対になるように、ロノミアも双子を後方へ押しやりながら前進した。
「クキキッ、何となーく察してるとは思うがよぉ……生徒会長さんよ?」
「どんな魔法を使おうが、勝つのは“甜花学園”だ」
「どうだろうなァ? あんたなら知ってると思うが……」
ロノミアとササキアが、同時に攻めに入る。ササキアの盾とロノミアの“チゴモリ”がぶつかり合い、静止した空間に火花が飛び散る。
(この威力……これまでの打ち合いと比べて、明らかに『重い』)
「クカハハッ! びっくりしてんな? 生徒会長さんよぉっ!」
ロノミアが“チゴモリ”を振り抜き、ササキアを押し返す。
「あんたなら知ってるはずだ。『守るものがある奴は強い』ってな。そういう能力」
ロノミアの構えた“チゴモリ”の赤い刀身が、どこか神聖さすら感じさせる清らかな輝きを放つ。
「異称刀、“稚児守”」
ニタリと笑い、ロノミアが更に斬撃を叩き込む。ササキアはそれを大盾で受け止めた。その衝撃の余波で、ボンビクスとニファンダによって縛められているはずの空間がビリビリと震える。
「なっ……これも防ぐのかよ!」
「『この程度』で……私は折れん!」
ササキアの啖呵に、ロノミアは再び口角を吊り上げる。
「へェ? そんなら……こっちはどうだ?」
大盾に向けて、ロノミアは更に“ヒナギク”を叩きつける。
(両手で打たれようが……待て、何故『変形効果』で直接狙わない?)
「敵に届くまで、この『生きた刃』は止まらねぇ」
“ヒナギク”の一閃は大盾に衝突して尚停止する事無く、少しずつ前進していく。少しずつ、その一撃の成立を目指して振り抜かれていく。
「異称刀ぉっ!」
遂に、その斬撃は完了した。防御技術により、直接的な殺傷こそ起きなかったものの、ササキアは弾き飛ばされ、後方に控えていたニファンダに受け止められる。
「“否凪駆”」

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魔法少女学園都市レピドプテラ -small cabbage white- 3

「……キミも迷子?」
ポニーテールの少女の言葉に、ラパエはついずっこける。
「き、キミ“も”?」
ラパエが聞き返すと、ポニーテールの少女はうんと頷く。
「だってボクも迷子だし」
「えええ⁈」
そう、なんですか……?とラパエが近付くと、ポニーテールの少女は苦笑いする。
「実はボク、今日からこの学園に所属することになってさ、まだ校舎の構造が頭に入ってないんだよね」
「だから迷子に……」とポニーテールの少女は言いかけるが、ラパエは「えっ、あなたも転入生なんですか⁈」と驚く。ポニーテールの少女はあぁ、うん……と答える。
「もしかしてキミも転入生なの?」
「はい! 中等部2年1組のピエリス ラパエですっ‼︎」
ポニーテールの少女の質問に、ラパエは姿勢を正して明るく答える。その様子を見てポニーテールの少女はそんなにかしこまらなくていいよと笑ったが、ラパエは「いえ! 先輩相手に失礼なので‼︎」と背筋を伸ばしたままだ。それを見てポニーテールの少女はふふと微笑む。
「……ボクはグラフィウム サルペドン、高等部2年3組だ」
ボクのことはサルぺと呼んでとポニーテールの少女が言うと、ラパエは「じゃーサルぺ先輩!」と声をかけた。
「一緒にこの校舎から脱出しましょう!」
ラパエは元気よくサルペの両手を取る。サルペはあぁ、そうだねと言ってちらと真横にある教室の扉に目をやった。それに気付いたラパエは「……どうしたんです?」と首を傾げた。

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魔法少女学園都市レピドプテラ -small cabbage white- 1

よく晴れた春の朝。
白い外壁が特徴的な校舎の学園・櫻女学院の中等部2年1組の教室では、転入生の紹介が行われている。教室の前には桜色のセーラーワンピースの制服を着て、髪を二つ結びにした少女が担任の教師の隣に立っていた。
「えー、今日からうちのクラスで勉強することになったピエリス ラパエさんだ」
みんな仲良くするようにと言ってから、女教師は少女に目くばせして自己紹介するよう促す。少女は「ピエリス ラパエです!」と明るく名乗り、こう続けた。
「あたし、ずっと魔法少女学園都市に憧れてたので、ここに来れてすっごく嬉しいんです‼︎」
「だからよろしくお願いします!」とラパエはおじぎをする。それを見てクラスの生徒たちはどよめいた。
というのも、この櫻女学院がある人工島・レピドプテラは“魔法少女学園都市”とも呼ばれるように、世界各地から“魔法”と呼ばれる一種の特殊能力を発現させた少女たちが集められ、魔法を失うまで隔離される場所なのだ。魔法を失うまで、一度レピドプテラに隔離された魔法少女はまず出ることはできないため、大抵の人間にとってはあまりいいイメージのある場所ではないし、ここにいる魔法少女の多くは自ら望んでここに来た訳ではない。
しかしこのラパエという少女は“魔法少女学園都市に憧れていた”と言うのである。自らの意思でレピドプテラに来た訳ではない多くの魔法少女たちにとって、違和感でしかない発言だった。
「はいはい、騒ぐのはあとにして」
教師は手を叩き、「ピエリス、あなたの席は窓際の1番後ろだからな」とラパエに声をかける。ラパエははーいと返事をして言われた座席に向かった。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑨

「……テンちゃん、まずい」
ビルの屋上で、ボンビクスが呟いた。
「どうしたの、お姉ちゃん?」
「糸を逃れる人がもう1人出てきた。多分、私より『上』から時空を握られてる。どうしよう……くぁちゃんの結界術は私の糸からしか守れないから、やられちゃうかも……」
姉の言葉に、アンテレアは一瞬考え込んでから口を開いた。
「お姉ちゃん、くぁちゃんと初めて会った日のこと、覚えてる?」
「うん。怖い先輩に絡まれてた時に、くぁちゃんがその人をボコボコにしてくれたんだよね!」
「その時にね、くぁちゃんが言ってたの。『お前らがいて都合が良かった』って」
「そういえば言ってたね? でもなんで?」
「私も気になって、あとで聞いたの。何か、くぁちゃんの刀の中に、2個の能力があるやつがあるんだって。『イショートー』だっけ?」
アンテレアが、にぃ、と笑う。
「くぁちゃんの刀の中にね、私たちみたいな子を守ると強くなれるのがあるんだって。だから、お姉ちゃん」
アンテレアの言葉に、ボンビクスは目を輝かせた。
「テンちゃん、行こう! くぁちゃん助けに行くよ! 結界お願い!」
「りょーかい!」
アンテレアが、新たに双子を範囲内に収める小さな結界を生成する。ボンビクスの魔法の発動と同時に、2人は屋上から飛び降りた。
ボンビクスは糸をクッションにして着地し、そのまま甜花学園を覆う結界に突入する。
「これで……自由に糸を使える!」
ボンビクスは双子の身体を糸でまとめ、校舎に向けて糸の先端を射出した。外壁に接着した糸を引き、伸縮性を利用して一気に跳躍する。
「お姉ちゃん、くぁちゃん見つけた!」
「分かった!」
糸を操り、双子はロノミアの前に着地する。
「くぁちゃん、助けに来たよ!」
「くぁちゃん、守って!」
突然の双子の出現に、場が一瞬固まる。
「お……お前ら、何つータイミングでで出てきてんだよ……最悪だ」
ロノミアの言葉に、双子は不安げに振り返る。ロノミアは頭を抱えながらも、口元には笑みを浮かべていた。
「……最高のタイミングだ……!」