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Trans Far East Travelogue52

俺達を乗せた高崎行き気動車が高麗川を出てすぐ、スマホに一件の通知が届く。
その通知はあのロンドンの幼馴染からの動画付きのメッセージで「おはよう。まだ僕はヨーロッパにいるよ。日本はもう午後かな。実は、君が何年も前にイギリスまで来てくれた後ヨーロッパを旅行した当時の行程全て再現できてその後個人的にヨーロッパを周遊しているんだけど、昨夜ドイツのとある街で年に一度のお祭りがあって,そのクライマックスのイベントの映像が撮れたので送るね」と書いてあった。
まず俺がその動画を確認すると、「日本の夏の風物詩であるが,夏には南太平洋のどこかを船で航行しておりいて見られないもので,海外と日本では文化が異なり、国によっては安全上の観点から法律で市販や使用そのものが禁止されていたり,夏では無くて何かのお祭りか国の独立記念日,あるいは年の瀬のクライマックスにしか見られないのだが渡航先では時期が合わなくて今年は見られないはずのもの」が映っていた。
それを見て、俺は思わず頬を緩めており、次の瞬間嫁が「何があったの?」と訊いてきたので「ロンドン行ったのは覚えてるだろ?その時に一緒だった俺の幼馴染がドイツで昨夜、まぁ向こうの時間だから数時間前に撮ったという映像なんだ。
にしても、もうこんな時期なのか」と言ってその映像を見せると嫁が「これ、日本じゃないのに日本みたい」と言って笑っている。

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Trans Far East Travelogue51

遅延して品川止まりになっているサンライズエクスプレスを横目に六郷川を渡り,川崎に着いて乗り換えのために東海道線から降りた。
「この電車だと…東神奈川で乗れるのは横浜線快速か。そして、町田で乗り換えれば淵野辺は何とかなるな」そう呟きながら俺は後続の京浜東北線普通磯子行きに乗り込んだ。
一方その頃、嫁を乗せた東海道線普通電車は京浜急行快特と両者一歩も譲らぬ並走バトルをしていて間もなく新子安を通過する頃だろう。
その後、嫁は桜木町,関内,茅ヶ崎の順に俺たち夫婦の両方に課された発車メロディ録音のタスクをこなしてゆきもう海老名に着いたそうだが一方の俺はというと,そのタスクをこなすために既に淵野辺に着いていたが、こちらが録音できないほど短く切られる為ここで合計30分も時間を無駄にしてしまい、ようやくまともに録音できて各駅停車に乗り換えて橋本に着いたら向かい側のホームの相模線から降りて来たという嫁が合流して来た。
そして、八王子で嫁にも件のうどんを奢り2人で八高線出発の5分前に出る中央線快速で立川に行き,かなりギリギリのタイミングで青梅行きの各駅停車に乗り換えて拝島で降り、乗り換えた八高線の電車が箱根ヶ崎のあたりに差し掛かったから在日アメリカ軍の心臓部とも言える横田飛行場から練習機が連続で離陸するのが見えた。
そして、高麗川に着いた。
高崎までの気動車の旅が間もなくスタートするが、まさか時期外れの花火の映像が見られるとはこの時はまだ予想もしていなかった。

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Trans Far East Travelogue50

横須賀・総武快速線の列車が発着する地下ホームに下りたは良いものの東京湾周辺の強風により京葉線と内房線がどちらも運転見合わせになり,また佐倉での安全確認の影響で成田方面にも抜けられず、更に8時1分発君津行きも途中の千葉止まりになるという旨のアナウンスを聞き頭を抱えるが、時間がもったいないのでひとまずコンコースに戻ってプランを練り直す。
今の所行ける選択肢は2つで,まずは上野東京ライン常磐線直通の電車で一気に友部まで行き,そこから小山,高崎と出て八王子に抜けるルート,もう一つは東海道線で川崎・東神奈川経由の横浜線ルートないし茅ヶ崎経由の相模線に乗り換えて橋本、八王子経由で高崎から小山に出て小山から湘南新宿ラインに乗り換えるルートだ。
嫁も同じ考えだったのか、上野東京ラインへの乗り換えに便利な新幹線乗り換え改札の前に立っている俺を見つけるなり駆け寄って来て「あなたも知ってる通り選択肢2つあるけど、一緒に行こ?」と提案してきた。
「そうだな…でも、この必須のチェックポイントどうするよ…この調整は厳しいぞ」と呟き返すしか無く暫く考えているとどうやらもう京葉ホームとの往復の間に調べてくれていたのか「それなら、私は桜木町と関内のチェックポイント通って茅ヶ崎経由ね。あなたは淵野辺行ってチェック受けた後八王子でマストイートって書いてあるうどん食べたら豊田でも録って立川経由で拝島行ってくれる?私は八王子に着いたらすぐに出る八高線に乗ると八高線の本数は少ないから私のヤツと拝島で合流できるよ」と嫁が言ってくれたので「つまり、その先は高崎,小山,友部、我孫子、北千住、日暮里、赤羽、新宿というルートかな」と確認すると嫁が無言で頷く。
「そうだ!念の為駅弁2食分買い込んだけど食べるか?」と訊くと「それなら、グリーンで食べればちょうど良いかも」と返ってきたので思わず「そうだな。でも、時間の関係でたまたま目の前に出てた人気の高いヤツしか買えなかったから俺は自腹チャージせんと帰りしんどくなるべ」と自虐的に笑うと「グリーンは私が出すから安心して」と返ってきたが「Suicaで2人分は物理的に無理な筈や」と笑って返し、東海道線ホームの上の券売機で即行チャージしてすぐにやってきた熱海行きに乗り込むと偶然にも平屋で並びの座席が空いていたので天井にICカードをかざして座るとすぐに発車して一路、西に向かう。

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Trans Far East Travelogue49

俺達2人を乗せた西船橋行きの総武線各駅停車が御茶ノ水駅3番線に入線して発車メロディが鳴る寸前までの約30秒の間に偶々路線図を見ていて衝撃の事実が発覚し、急遽この電車を降りることになった。
その事実というのは、同じ駅を2度通過しない一筆書きのルートでかつ途中下車しないという条件付きであればJRが定めた特定の大都市近郊区間の範囲内完結の切符に限り始発から終電まで好きなルートで鉄道を利用できるという制度を利用するこの旅で、まさか言い出しっぺのはずの俺が利用予定の常磐快速線で一度通過した駅を数時間後にその駅に接続する武蔵野線で通ることになり、それもJRの会社が定めた特例区間では無いため不正乗車扱いになるのだ。
流石に焦って作戦を練り直そうとしたが、ターミナルの東京駅の方が選択肢が多いため発車メロディが鳴り響く中慌てて飛び降りて来た俺の異変に気付いた嫁が声をかけてくれたのだが、ここでもとんでもないやらかしが露呈した。
なんと、定期的にあるダイヤ改正の存在を忘れていて最新の時刻表を見ておらず一世代前のダイヤで旅程を考えており、蘇我方面の京葉線快速はホームが離れている東京駅の乗り換え時間を除いても1時間ほど待たされる8時53分の上総一ノ宮行きまで無いのだ。
しかも、この電車も停車駅の都合で乗り通すことができない。
言い出しっぺの俺の行程がほぼ壊滅したことを受けて絶望していると嫁がありがたいことを言ってくれた。
「私は長旅でも大丈夫。あなたも覚えてるでしょ?それより、前にあなたが言ってたの覚えてるよ。房総行きたいって。だから、房総行きなよ。私もさっきJRの公式アプリで最新の時刻表見たけど総武線で君津って所まで行く電車が8時1分にあるからそれ乗って行けば?私なら大丈夫やから。」とのことだ。
そして、嫁に礼を言って一緒に東京行きの中央線快速に乗り込み俺も最新の時刻表を見ると君津から先少々乗り換えの間隔は空くが高崎迄は予定通りの路線を確実に使えることになった。
ところが、高崎でも八王子でも新宿まで行く終電が終わっている時間に着くため高崎には行けず、小山で宇都宮線に乗り換えて新宿に向かって引き揚げるのが賢明だと悟った。
暫くして東北線の高架が下りて来てこちらの目線が高くなってゆき東京駅に到着し、駅弁の確保にも成功して準備が整った。
さあ、気を取り直して再出発だ!

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Trans Far East Travelogue48

朝7時過ぎで睡眠時間2時間弱にも関わらず嫁がICカードをチャージしてくれている間に予定が全て決まり、出発する旨を連絡する。
そして、嫁と合流してJRの飯田橋駅まで移動する間に他の旅仲間からも連絡が入り、修学旅行の要領でチェックポイントを設けたとのことだ。
そのリストを見て暫く考え込んだが、嫁の提案のおかげで途中二手に分かれて市ヶ谷で、もし一方が遅くなったら我が家で合流することが決まった。
俺たちの大回りのルートは以下の通りだ。
使用する切符は飯田橋〜市ヶ谷の片道乗車券で、同じ駅を2度通らない一筆書きルートになる。
中央・総武線で東を目指す所までは嫁と一緒だが、俺は御茶ノ水で乗り換えずに秋葉原経由で上野に行き常磐線系統の上野東京ラインで我孫子へゆき唐揚げを食べる。
その先は常磐線で友部、水戸線で小山、昼食の後レモン牛乳買って両毛線で高崎、八高線で八王子、7分の待ち時間で名物のうどんを堪能した後橋本経由で相模線に乗り換え茅ヶ崎、東海道線横浜経由で東京、京葉線の通勤快速に乗り込み蘇我経由で千葉、千葉から武蔵野線で武蔵浦和、埼京線で新宿経由で中央線に乗るというものだ。
嫁は東京駅から先は京葉線快速で駅メロを録音しつつ蘇我まで行き、蘇我で総武本線に乗り換えて佐倉経由で一足遅れて成田を目指し、成田から我孫子、我孫子で唐揚げ休憩の後常磐線で友部、水戸線で小山、嫁もレモン牛乳買って八高線で八王子、すぐに出る横浜線確定で淵野辺、そこで駅メロ録音してそのまま東神奈川、川崎、立川経由で中央線で市ヶ谷に戻ってくる。
ルート説明の間に、高校時代に流行った感染症で外出できず知らぬ間に建っていた飯田橋の新西口駅舎が見えてきた。
「過酷な道のりになりそうだけど、お互い頑張ろうな」
そう嫁に声をかけるが、1分1秒のタイムロスや電車一本の接続ミスが命取りとなり行程が全て崩壊しかねない旅なので嫁に現在時刻を確認しながら急いでマルスを叩いて発券し、改札に入る。
幸い、乗る予定の1本前の電車が来たのでホームで見送ってる間にICカードグリーン券の使い方を説明し、説明が終わると乗る予定の電車が来たので乗り込む。
およそ5分後、ついに分岐点・御茶ノ水に着いた。ここからは二手に分かれて関東を股にかけた壮大な旅が始まるのだ。

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Trans Far East Travelogue47

荷物をまとめ、仮眠を取った後いきなり嫁が「竹芝ってどこ?寄港地が博多だから本州らしいことは分かるんだけど」と言うので「東京の海の玄関口だね。有明は瀬戸内海方面,竹芝は東京の離島への出口なんだ」と返す。
「話変わるけど出航明日でしょ?じゃあ、今日はどうする?」と今度は嫁が訊くので「希望があるならそれに沿うよ」と返すと「確か、韓国にはバナナ味の、栃木にはレモン味の牛乳売ってるんでしょ?それ飲んでみたいし、タピオカも飲みたい。あと、グリーン車っていうのにも乗ってみたい。でも、貴方には無理して欲しくないからなるべく安い方法で良いよ」と返ってきた。
念の為「なら、今日は電車ガッツリ乗るし昼食とか駅弁駅そばで済ませるけど大丈夫?」と訊くと「大丈夫よ」と返ってきた。
そして、おもむろにスマホを手に取り「これだと接続悪いなぁ…待てよ?ショートカットするか」と呟くと嫁が「何か調べてるの?」と尋ねるので「君の要望に沿える方法で合法的に長時間電車に乗れる方法を知ってるんだけど,列車の本数が極端に少ない地域も経由するから極力待ち時間を減らせるルートで探してるんだ。」と答えると「その間にそこの地下鉄でパスモの残高チャージしてくるね。FTずつで良い?」と頼もしい返事が来た。「助かるよ。確認だけどFTって5000円ってこと?」と訊き返すと「そうよ。なんぼか分かんないから」と返ってきたので頷きながら「万が一に備えて、そのまま電車乗れるような格好にしといて。結果出たら電話するから」と返すと向こうも無言で頷く。
今度は慣れ親しんだ関東大回りの旅が始まる。

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Trans Far East Travelogue46

荷造りの途中で月見をしていたことに気付き荷造りを再開するとすぐ、今度はスマホに着信が鳴り響き思わず「今度は何だよ!荷造りしてる時に勘弁してくれ」と呟くと船に乗っているはずの兄貴からの連絡であることに気付きすぐに応答する。
「すまない。定期航路のフェリーやクルーズ船を使うはずがフェリーの会社が不景気で倒産したり国際情勢の変化で営業停止したり高速船が導入されて車が積み込めなくなってしまい、皆の行程の線が切れて到着の目処が立たなくなった。だから、船はチャーターしないといけなくて寄港地増えるけど大丈夫か?」と焦ったような声で言われ、それを聞いていた嫁は大丈夫と耳打ちするので「俺達は構わないが、具体的にどの辺がダメなん?」と訊くと「まず、君達の場合はソヘが情勢悪化で運航休止、それから高砂両岸も同様の理由でバツ、ルソンからサンボアンガ経由でヒェネサンまでは港周辺の情勢悪化で寄港できないことに伴う需要が急降下で運航停止、サンボアンガから先はボルネオまでの船で車が積めず、その次が繋がってても進めない。」と言われて思わず絶句する。
そして、「チャーターするなら起点はどこ?鹿児島か?」と訊くと「博多発の予定で会社と交渉してたが、港湾管理局と折り合いが付かず結局竹芝発で国内の寄港地は博多だけになった。竹芝出航は明後日で寄港時間は8時間の予定だ。」と返ってきたので「嫁には悪いけど、それなら仕方ないな。じゃあ、JRとフェリーの払い戻し受けてできることやるよ。」と返して電話を切る。
すると、すぐに寄港地のリストとかつてのセブ留学生仲間からのメッセージが送られてきたので両方に目を通して一言,「懐かしい街に行ける上にみんなに会えそうなのか。こりゃ楽しみだな」と呟く。
知らぬ間に雲一つない東の空が藍色がかった紫からオレンジに変わった色にライトアップしていた。

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Trans Far East Travelogue45

慣れ親しんだ都を離れ南に向かう前夜、荷造りをしているとスマホに写真が届く。
思わず「いや〜懐かしいなぁ」と笑うと嫁が「何?昔のお友達?」と訊いてきたので「そうだね。君に恋してすぐ,受験に失敗してフィリピンへ留学行ったことがあるんだ。その時の日本人の同級生からね。皆俺と同じで当時は18、19の年でしかも皆首都圏出身でさらに着いた日が1番早い奴が1人,その1週間後に俺ともう1人,そして俺達の翌週に色々あって他の学校に途中で移った奴が着いた。俺と先に来てた奴が同じコースでクラスメイトになりその後2人も合流して歳の近い男4人仲良くなった。一番最後に着いた奴が相性良くて休みの日はいつも一緒だったんだ。ソイツが初めての休み、向こうじゃもう酒呑める歳ってことで近所のバーに連れて行ってもらう筈の先輩に置いて行かれて俺と2人翌日呑み行ったのから始まり、2人でサンセットクルーズツアーに行き引率のスタッフで日韓両語に堪能な人が主催者含めほとんど韓国人ということで韓国語で説明したのをハーフでどちらも分かる俺が同時通訳して通訳いらなくしたり、3タテ不幸4連発事件を目撃させちゃったこともあったな。先生の異動で俺達のキャンパスに集まっていた先生がもう一つの方に行ってしまって枠が残ってなかったソイツは他の学校に行ったんだ。でも,関東4人組の帰国のタイミングが同じことを知って送別会に誘ってその思い出のバーで集合したんだ。そしたら、同じタイミングで帰る日本人が大勢いてみんなで飲みながらその日のナイターの経過を話し合っていたんだ。すると、遅れて合流してきたその別の学校にいた奴が着いた瞬間、巨人はサヨナラホームランで試合終了となり興奮して追加のボトル5本1人で空けてサービスで出た強めのカクテルも飲み干したんだ。その寮で過ごす最後の夜だったし俺以外の3人は皆日付変わってすぐの便で帰国だったから俺が校門前でみんなを見送り、中東の学生と紅茶飲んでデーツ食べて月を見ながら語り明かした。コース違いで接点がなかった日本のJDもその話に交じってたんだけどその人が撮ったその晩の写真が他の3人に来て俺に回ったらしいな」と答えると「思い出話、明日の夜聞かせてよ」と返ってきたので無言で頷く。
そしてベランダへ行き当時と同様に唱歌『ふるさと』の一節を口ずさむ。
当時の晩と同じ、十三夜の朧月が濡れて滲んで見えていた。

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Trans Far-East Travelogue㊹

兄貴達の姿が見えなくなってすぐ,嫁に「君,また勘違いしてるよ。まぁ,九州の人なら有明海があるから海と有明で有明海をイメージしちゃうか〜」と声をかける。
すると,嫁が「海で有明って有明海以外に何があるの?」と訊いてきたので「有明って東京だとお台場の近くのエリアの地名だよ。西日本に向かうフェリーの定期便の出発地さ」と返す。
すると「つまり,私が勝手に勘違いして怒ってたってこと?」と返ってきたので「そういうことになるな」と言って笑い返す。
すると嫁が恥ずかしそうな顔をしていたのでちょっと笑わせようとして謎かけを出してみる。
「両片想いだけど,お互いに意識して緊張しちゃってなかなか話を切り出せない10代の男女とかけて,有明から船で博多を目指す旅人と解く。その心は?」と切り出すと「バカな私には分からない」と返ってきたので「どちらも,こくらない(告らないと小倉をかけた)と遠回りになるでしょう」と言って正解を出すと嫁が一呼吸置いて「今の貴方とかけて,故・星野監督と解く。その心は?」と切り返してきたので「これほどまでにファンに愛されて幸せな男は俺以外にいないと自負しています」と少し照れながら返すと嫁がゲラゲラ笑いながら「次は、巨人軍とかけて,何と解く?」と訊いてきた。
そこで,「君への愛と解く。その心はどちらも,永久に不滅であります。」と返すと今度は嫁が照れながら「今の貴方とかけて,私と解く。その心は?」と返してきたので「大切なパートナーから浮気されずに愛され続け,それでいて自分のことを知ろうとして貰えるので本当の幸せ者です」と返すと「それは私のセリフ」と言って嫁が拗ねてしまった。
「可愛いヤツめ。これだから俺は君に首っ丈なんだぜ。さあ,帰ろうか」と声をかけると嫁も「私も貴方に首っ丈なんだからね」と言って笑いながら2人で寄り添って歩き出す。
明日,ついに俺は生まれ育った東京と暫し野別れを告げ、サンライズ号に乗り込んで四国・高松と徳島を経由して嫁の地元,福岡を目指してまた旅立つのだ。

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Trans Far-East Travelogue㊸

「兄さん,皆はどうなってる?」そう俺が口を開くと兄貴は「俺たちが風呂入ってる間にエルサレムに着いて別働隊とも合流したそうだ。アイツらはおそらく群山で泊まるんだろうな」と言うので頷くと,嫁が「皆まだ日本にいるのよね?エルサレムと群山って日本だとどこ?」と口を挟む。
そこで,俺が「平和はエルサレムのあるイスラエルの言葉,所謂ヘブライ語ではシャロームと言う。エルは確か冠詞だけど都という意味もあったはずだから,エルシャロームは平和の都,つまり平安京と言い換えられる。もう分かると思うけど,京都市のことなんだ。群山は韓国の都市なんだけど,西に向かって流れる大きな川が海に注ぐ所にあり,また日本が占領した時代には米の積出港として朝鮮半島全域から米が集まり,日本全国に出荷された歴史があり、今でもその地方では有数の港街さ。またその街の海,厳密には河口部には、更に前の時代からある古戦場もあるんだ」とまで解説していると嫁が「まるで大阪みたいな街ね。大阪も江戸時代には天下の台所で米が集まり,また淀川という西に向かって流れる川の河口がある。更にその前の時代は石山本願寺との合戦があったり織田信長が水軍と戦った古戦場もあるのって大阪みたい」と言うので「よく気付いたね。流石は俺の妻だ。君の言うとおり,群山と大阪市は似ている。だから,日本の群山=大阪市なんだよ」と言って締める。
すると,腕時計を見ていた兄貴が「海に,有明に行かないと厳しいのでもう行くわ」と言い、俺は兄貴の言わんとすることを察して頷き,彼女さんも兄貴に続くのでここで分かれることになった。
一方,嫁は1人,「私は玄界灘の方出身なのに,なんで有明海なの?」と言って不服そうに頬を膨らませていた。

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Trans Far-East Travelogue㊷

兄貴達は無事に仲直りして手を繋ぎ、俺達を呼びに来て「調印式しようか」と耳打ちするので「白の二の舞は踏むなよ」と返して兄貴について行くと嫁は「白の二の舞ってどういうこと?」と訊いてきたので,「旧ソ連圏で一時期対立が深刻化した地域が多いことは知ってるか?」と返すと「ナゴルノ=カラバフ・アルツァフ紛争とかグルジア・ジョージア紛争のこと?」と返ってきたので「それも旧ソ連圏で起きた歴史の悲劇だけど,俺が言いたいのはロシアとウクライナの争い,いわゆるドンバス戦争のことさ」と返すと「一度ミンスク合意で停戦してたよね?あの後数年で反故にされて色々あったけど」と返ってきた。
そこで,「そのミンスクの街があるのは何ていう名前の国?」と訊き返すと「ベラルーシよね?ルーシは確かロシアって意味で…ベラは白ね。もしかして,白の二の舞って…」と返ってきたので「その通り。白の二の舞はミンスク合意の二の舞,つまり一度仲直りしたのにそのことを反故にしてもう一度いがみ合うことさ」と返すと兄貴が「ブラウヴォルフ,早く来い」と怒鳴るので「卒アルで俺のクラスが世界史選択でなぜかモンゴルの紙幣にあるチンギスハンの肖像画を差し替えられて俺がチンギスハン扱いになったからって,チンギスハンをはじめとするモンゴル遊牧民の伝説にある蒼い狼呼ばわりかよ…しかも,ドイツ語だし」と笑っていると兄貴が4人分冊子とペンを用意し出してそれぞれの冊子にサインした後お互いに冊子を回し合うので本当に国際会議のようになった。
「卒アルの寄せ書き交換会かよ!」と言う俺のツッコミの声と多摩川のせせらぎだけが田園調布の街に響いていた。

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Trans Far-East Travelogue㊶

午後5時,多摩川の駅に着いて女性陣と合流した
その後は兄貴が提案したように河原に行くと兄貴の言う通り,ちょうど沈みゆく太陽が輝いている
それを見て思わず「昔っから代々木のドコモタワーとかその他新宿の高層ビル群をバックに沈む夕陽を毎日のように観て来たけど,コイツは凄え。今までとは格が違う」と呟くと嫁が「そろそろ2人きりにしてあげない?」と訊いてくるので「そうだな。新幹線の写真でも撮るか」と返して歩き橋を潜り始めてすぐに頭上から轟音が響き,早く鳴り止んだ
橋の下を抜けて見上げると新幹線が新横浜方面に抜けているのを見て嫁が「あの新幹線,幕が黄色なのは見えたけど、行先表示は2文字でもよく見えないね」と言うので時刻から逆算してその列車が「のぞみ51号博多行き」だと気付き咄嗟にその新幹線に向けて「昔の俺みたいに関門海峡越えて離れた場所にいる人に恋した若者の夢を乗せてくれ!俺の希望は叶ったから次は他の人の望み叶えてくれ」と叫ぶと嫁が「あの列車,博多行きなのね」と言うので「君に会えなくて辛かったあの頃のように応援歌替え歌するか」と返して「想〜い届け!海越え君想う〜(実れ!)関門〜越えて想いは博多の君へ〜続く行け〜Mein liebe!あの娘に届いた〜♪」と歌うと嫁は「海越え〜貴方の為にやって来た〜♪」と外国人選手汎用応援歌の替え歌を歌っているので俺が「We are」とコールし2人で「married」と叫び,次に嫁が「I love」とコールしお互いの名前を呼び合い、そっと唇が触れ合った後に笑い出す
もう一組のカップルがそんな俺達を土手の上から見守っていた

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Trans Far-East Travelogue㊵

俺達を乗せたエアポート急行は定刻通りの16:25 横浜に着いた
そして,長い行列に合わせて行進する要領で階段を下りて改札を通り,もう一度長い階段で地下へと下りると目の前に東急線の改札口が見える
更に地下深くの東横線ホームに下りると16時32分発の通勤急行・和光市行きの電車が入線して来た
天下の大ターミナルであり世界有数の乗降客数を誇る駅,横浜では乗客は勿論降りるお客さんも多く,まだ帰宅ラッシュが始まっていないのに早くも混雑の影響で遅延が発生している
そんな中、嫁に「これから東急線に乗る。電車は通勤急行だから集合場所は多摩川でも田園調布でも自由が丘でも構わない」という1通のメッセージを送ると返事が来た
「多摩川駅集合でお願い。4人で話し合いたいから,河川敷が良いかも」とのことだ
その旨を兄貴にも伝えると「丸子橋の近くの河原が丁度いいな。夕陽が綺麗な筈だ」と返って来たので「了解。多摩川駅には5時頃着くよ」と返信してスマホを閉じると知らぬ間に電車は地下区間を抜けて白楽の駅を通過している
そして,その勢いのままに妙蓮寺の駅も通過して定刻通りに菊名のホームに滑り込んだ
菊名に着いておよそ5分後,大倉山を通過して綱島,日吉の順に止まり,元住吉を通過して早くも武蔵小杉の駅に到着した
次の新丸子を通過すると,待ち合わせ場所の多摩川駅はもうすぐだ

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Trans Far-East Travelogue㊴

「やっぱり,伊豆もいいけど温泉は関東の黒湯に限るな」「そらそうよ。俺の時は烏来がダメで代わりに行った北投が散々だったからなぁ…草津も合わなかったけど、黒湯との相性は抜群よ」
そう言って男2人,風呂から上がり談笑して帰り道,「俺は川向こうで嫁と合流するけど,兄さんはどうする?彼女さんと和解するもよし,昔の俺みたいに復縁拒否して新しい恋を探すも良し。そちらに任せるよ」と切り出すと兄貴は暫く黙っていたが「俺,アイツと話し合うよ。アイツがやったことは確かに許されないけど,中正の息子さんや岩里さんがなさった政策のように、和解に近づきたい」と言ったので俺は「台湾のことを引き合いに出すのも兄さんらしいな」と返す間に駅が見えた
「信号トラブルのため,八丁畷から京急川崎の間で京浜急行は運転を見合わせています」と言うアナウンスが聞こえる
切符の特性,もとい制約上逆方向に行くことはできないので,嫁は一駅隣の川崎でJRに乗り換えることができない
そのため,「蒲田で少し歩くけどそこから東急が出るので、多摩川か自由が丘で合流しよう」と一言送り,兄貴には「横浜で乗り換えて迂回するぞ。東横線乗れば多摩川か自由が丘で会える」と囁く

京急お得意の逝っとけダイヤが発動したな

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Trans Far-East Travelogue㊳

俺に遅れること5分,兄貴も弘明寺に姿を現した
「兄さん,呼び出してすまない。気持ちは落ち着いたか?」と訊くと「呼び出したのはこっちの方さ。でも,新幹線のおかげで落ち着けたよ」と返ってきた
ここからは歩きながら話すことに
「俺さ,どうしても知りたいんだよ」と言って兄貴が切り出すので「俺が今日の件についてどう思うか,ってこと?」と訊くと「その通りだ。俺はさ,台湾で日本時代の前から生活してきて日本語教育を受けた世代の人達やその子孫と仲が良いから彼らを傷つけたあの事件を知らずに爆弾発言をした彼女を許すことができない」と返ってきた
「俺は兄さんと違って,昔から台湾で暮らしてきた人々,本省人と俗に呼ばれる人々と縁が深い訳ではなくて、2・28は教育格差や偏見と言った根深い問題とその問題のせいで苦しんだ人々の不満があって,あの闇タバコ事件でそうした起爆剤に火がついて爆発した,歴史の悲劇だと思ってる。
ここからは完全に俺の話だけど,俺の母親は韓国人で,韓国で教育を受けた経験の持ち主なんだ。そして,母方の従兄弟も皆韓国で教育を受けた。韓国といえば反日教育で有名なだけに,俺は韓国にいる日本嫌い人達の身内じゃないかと言う疑念だけでイジメられて傷付いた。だからこそ,俺は対立の歴史を学ぶことで自分と同じように対立の渦中,特に歴史や政治といった根深い問題に関する対立の渦中で生まれ育って苦しむ人を救うための手伝いをしたいと思った。それ故,俺は台湾について霧社の悲劇も学んだ。だからこそ,嫁から事の顛末を聞いた時は憤ったよ。いくら無知でも,大勢の大切な命が失われた惨劇を生き延びた苦労とバレンタインデーのチョコ作りは大変さのベクトルが違うし,一緒にしちゃいけないってことは常識じゃないかな?」と返すと「やっぱりそうだよな」と返ってきた
「でも,パートナーに不満があって,それが積もりに積もって爆発したのならともかく、この一件だけでいきなり突き放すのもどうかと思う。『惚れた女を愛し続け,時には俺達にしか分からないことを口頭にしろ背中にしろ何らかの手段で示し,教えてあげるのが男の仕事だ』って言っていたのは誰だっけ?」と訊くと兄貴が黙り込んでしまう
このどんよりとした空気感を何とかするため「話が重くなったな。温泉入ってリフレッシュしようぜ」と提案すると「それもそうだな」と言って兄貴も頷いている

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Trans Far-East Travelogue㊲

「もうこんな時間だと?」そう呟き焦って風呂から上がるも2人とも長風呂してタイムリミットに間に合わずにバスを逃すという失態を犯してしまった
「どうしよう…この次のバスまでかなり時間あるよ」と嫁が心配そうに言うのに反応して「今,何分だ?俺、この先の坂を下りた先の集落のバス停から駅に戻れること知ってるから、時間が合えばそっち使おう」と声をかけると「今,45分ね」と返ってきたので「風呂上がりに汗かきたくないけど,仕方ない。走るぞ。10分以内にバス来るけど,坂が長いんだ」と返すと「分かった」と返ってきた
野球のベーランの要領で坂道を駆け下り、見えてきた集落のバス停に着くと俺の予想通りに三崎口行きのバスが来た
「これで引き揚げれば大丈夫さ。この先は三崎口の駅で考えようか」と声をかけると「何か鳴ってるよ」と嫁が一言言うので自分のスマホを手に取る
画面を見て思わず「え?兄貴,やってくれたな」と呟くと「どうかしたの?」と嫁が訊くので「新幹線,のぞみに乗りやがった。今さっき熱海通過だから、新横浜まで20分弱で着く。俺が待たせる格好になるな」と返すと「新横浜から弘明寺って近いの?」と返ってきたので「あの兄貴のことだから、1番早い地下鉄の優等で上大岡に出て京急で一駅だろう。それだと20分もあれば上大岡に行ける。今から15分だと俺たち,まだ久里浜線内だべ?そこから20分で上大岡までは行けないよ」と言って頭を抱えると「大丈夫。ほら、駅が見えたし時刻表だと2分で特急出るから、それ乗ろ?」と嫁が言ってくれたおかげでパッと動けて無事特急に乗れた
それも、コンセント付きの新型車両だ
「ボックス空いてて良かったな」と言って嫁に語りかけるが嫁はスマホを見つめて「ブルーラインは…信号トラブル?」と呟いている
「となると、兄貴は横浜線乗らないとな…ギリギリかなぁ」と俺も呟くと「上大岡でエアポート急行に接続するってさ」と嫁が言うので「助かるよ。そっちは川崎で乗り換えたら一駅さ。お互いの幸運を祈る」と返す
間も無く、俺達を乗せた特急は堀之内に着き、通過駅のある区間に突入する
一方、時刻表通りなら兄貴は横浜線を待っている筈
果たして、待ち合わせ場所の弘明寺に着くのはどちらになるのか

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Trans Far-East Travelogue㊱

駅に戻り、三崎口に着いてから3分の接続で乗り込んだバスの車内で少し先程の件を話すことにした
「何が原因だったか、訊いた?」そう尋ねると「名古屋で、彼氏さんが台湾にいる少し年配のお友達の親御さんに会ったんだって。そしたら、彼氏さんがその親御さんに日本語で『ホンショーのお二人が僕らくらいの頃は大変でしたよね。特に、2月のあの日は酷かったと聞いてます』と言って会話してるのを聴いて、彼女さんは『ホンショーって何?2月って何かあったの?バレンタインのチョコ作りが大変ってこと?』って言っちゃって、彼氏さん御立腹からの喧嘩別れだそうよ。でも,台湾で2月に大変なことあったの?昭南島占領しか知らないんだけど」と返ってきたので「2・28か…あれは気の毒だよなぁ…にしても、そんなセンシティブな話題をいきなり切り出すのもどうかと思うが、そんなボケかますかね…いくら無知でも、そんな反応されたら俺でも怒るよ。大勢の人の命が失われた悲惨な事件で生き延びることの大変さをバレンタインのチョコ作りと比べるのかよ…」と溜息混じりに返すと「2・28事件?2・26の間違いじゃないの?」と返ってきたので「2・26は日本の軍隊の暴走、2・28は終戦後の台湾で起きた事件で、立場によって見方が変わる、近現代の台湾を語る上で絶対に避けられない、非常にセンシティブな話だから避けるのが無難な話題さ。教育の大切さを教えてくれる歴史的事件でもある」と返す間にバスが目的地の温泉施設最寄りの停留所に着いた
「さぁ、降りるか。このことは後で兄貴とも話すよ。ここでは短時間で入って上がるけど、良いかな?」と声をかけると「そうね。私も彼女さんと話してみる。一応、持ち帰れるようならタオルはドライヤーで乾かすから、時間かかるかもね」と返ってきたので「なら、念の為今乗った奴の折り返しの2本後に乗ろうか」と返すと嫁も頷いている
バスの時間まで、タイムリミットは残り45分だ

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昼食をとった後、すぐ近くの三浦海岸の砂浜に降り立った頃に俺のスマホが、すぐに嫁のスマホも着信音を響かせるので互いに背中を向けて電話に出る
兄貴が泣きながら「おい、今どこにいる?」と訊いてきたので「神奈川県の三浦海岸だ。そっちは今…浜松かな?」と訊き返すと「名駅まで進んだが、トラブル発生。彼女と喧嘩別れだ」と返ってきたので「兄さん、運転は副長さんに任せて油壺来れそうか?油壺なら、温泉で話聴くぜ」と返すと「油壺?あの特典付きの切符使ってるって聴いたけど,俺が着く頃には日帰り入浴の入場時間過ぎるぞ。弘明寺にも温泉施設あるだろ?そっちで集合にしよう」と返ってきたので「分かった。新横浜着いた時に連絡して。ただ,地下鉄より京急側が近いから京急の駅で会おう」と返すと電話が切れた
同じ頃、嫁の方も電話が切れたらしく、「どんな内容だった?」と訊いてきたので「兄貴が彼女さんと喧嘩したんだとよ」と返すと「同じね。こっちは彼女さんの方から」と返ってきたので「どうする?俺は上大岡の次の弘明寺って駅で待ち合わせになったけど」と返すと「私達は六郷土手って所ね。六郷って何があるの?」と返ってきたので「六郷は…関東ではお馴染みの塩気がある茶色く濁ったお湯が特徴の温泉だね。俺が行く弘明寺の温泉施設にも黒湯はあるそうだ」と返すと「残ったこの一枚,どうする?」と嫁が訊いて来たので「近場で済ませるか…」と呟くと「あっ!ここ良いかも!温泉でタオルプレゼントって書いてある」と嫁が言うので「バスは…今から駅戻って三崎口行けばちょうど良いね」と返すと「決まりね。じゃあ,行こうか」と返ってきた
後に知ることになる
俺達のこの判断は正解だったと

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横須賀中央の駅に戻ると、運良く特急三崎口行きの電車が入線して来た
その車両を見て俺は驚きのあまり息を呑んだが嫁は
「見慣れない車両だけど,この白い車両ってそんなにビックリするようなものなの?」と訊いてくる「幼少期を象徴する車両の一つがこれなんだけど,もう引退間近でこの一編成しか残ってないんだよ。まさか、それが来てくれるなんて…」と返して乗り込み、「このモーター,音が大きいね」という嫁の一言に反応して「京急に直通してるけど地下鉄の車両さ。地下の駅ではめちゃくちゃこの独特な音が響いていて、昔は『白い悪魔』と呼んで仲間内でネタにしてたんだ。でも、それももう5、6年前のことで今はこの一編成しかない…浅草線ではほぼ置き換え済んだから世代交代の時代か…寂しいけど、仕方ないかぁ…もうこっちも世代交代か」と呟き「世代交代って?」という嫁の質問に「昔はさ、嬉しいことも辛い事も、夢も憧れも、希望も、挫折も全て鉄道が乗せてくれたから俺の心も負担が軽かった。文字通り、鉄道と苦楽を共にしてたと言っても過言ではないのさ。でも、幼少期の憧れと夢、日常を支えた車両は多くが引退した。地下鉄では唯一引退間近の車両なんだよ。でも、それも近いうちに無くなるけど、俺には長い間のお勤めだった鉄道車両の代わりに君と言うパートナーが来てくれた。つまり、これから俺と苦楽を共にする相手が昭和後期から平成初期にかけてデビューした、往年の車両達から君という平成後期生まれの若くて美しい妻に変わった。まさに世代交代と言うべきじゃないかな?」と返し、「じゃあ,巨人は?」という爆弾発言に「原監督と平均年齢30代のベテラン野手陣はまだまだ現役みたいだなぁ」と笑って返す間にも電車は進み続け堀ノ内、久里浜,野比、長沢,津久井浜と止まって行き遂に三浦海岸の駅に着いた
「砂浜,見たかったんだろ?ここから降りると見えるから行こうや」と軽く声かけると「愛し合う2人が砂浜に行く…まるで青春モノみたいね」と返ってきたので「かもしれないな。でも,俺にとっての青春は『鉄道の魅力再発見』かなぁ…」と返すと「私の場合は『貴方の魅力再発見』かなぁ…」と言って嫁が上目遣いで言ってるので「俺を惚れさせた責任,取ってくれよ?」と返すと嫁は「とりあえず,行こうか」と誤魔化している
潮風が高架のホームを吹き抜けていた

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Trans Far-East Travelogue㉝

世界三大記念艦の一つ、三笠の観覧を終え、公園に戻ると港を見ていた嫁が泣きそうな顔で「男同士で話してる時は生き生きとしてるのに、私と一緒にいると作り笑いしなきゃいけないほどしんどいの?2人きりの時は心から笑ってくれないから」と言う
その嫁の表情で現状を悟り、俺も正直に話す
「俺さ、ある漫画を見てショック受けたんだよ。君を見てると特に鮮明に思い出してしまってね」と返して「俺さ、本当はタメで話せるような親しい相手にはお前って呼びたいんだよ。親しい相手に対してお前って呼ぶことは相手が俺にとって特別な存在だっていうことは男同士なら難なく通じるんだけど、その漫画の主人公の女性は夫からお前呼びされるのか不満だし、恋愛系の記事読んでもパートナーから『お前』って呼ばれるのが嫌な女性は多いそうなんだよ…それ知って、大好きな君が相手でも親しみと敬意を込めるのはダメって言われて、俺のやり方を否定された気がしてショックだった。誇張じゃなくて、本当にイジメとか差別で自分を否定されたあの頃と似たダメージを受けて、君の顔を見る度にそれを溜め込んだ。君に嫌われたくなくて気を遣ってたけど、顔に出てたようだな」と続けると「『お前』って呼ばれるのは私も嫌かなぁ」という嫁の一言に「そうか」と返して黙ってしまう
「でも、もっと嫌なのは、大好きな貴方が傷付いてるのを見ることなの。だから原因を知りたかったけど、実は私が貴方にプレッシャーかけてたなんて知らなかった…気付けなくて、そして傷付けてしまってごめんなさい…」と言って俺を抱きしめながら泣いている
「バカ言え。お前に涙は似合わねえよ」
咄嗟に口から出たその一言のおかげで今まであった憑き物が取れた気がして、自然と笑みが溢れた
それを見た嫁が「やっと笑ってくれた…私、大好きな貴方の笑顔はもう2度と見れないと思ってた…」と言うので「気ぃ遣わなくて普通に笑ってられんの、久しぶりだな」と呟くと「私、『お前』って呼ばれるのはあまり好きじゃないけど貴方に呼ばれる分には悪い気持ちしないよ」と返って来たので「ありがたいな。お前みたいな一生モノの相棒にそんな風に言ってもらえるとこっちも気楽だよ。さぁ、次の場所行こうか。行きたい所あるなら俺、調べっから」と返すと「一生モノの相棒って、そりゃ夫婦ならそうなるでしょ」と言って嫁も笑ってる

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Trans Far-East Travelogue㉜

おおむね定刻通り、正確には30秒遅れで俺達を乗せた電車は横須賀中央の1番ホームに滑り込む
「懐かしいなぁ…高校の卒業旅行以来か〜」
思わずそう呟くと嫁が「高校の卒業旅行?そう言えば中学時代の卒業旅行は聞いたことあるけど高校時代は聞いたことなかった」と言って上目遣いになってるので歩きながら話すことに
「俺が君に恋しても会えなくて、一時期めちゃくちゃ苦しんだことは話したっけ?」と訊くと「それは聞いたよ。確か、あまりにも辛くて傷心旅行であの鉄道旅行ったんでしょ?」と返ってきたので「そうだよ。でも、話はあの旅の前に遡る。俺は元々福岡に行く予定だったんだけど、母さんがどうしても韓国の親戚に会いたがってて、それで韓国に行ったんだ。その時、韓国の南海岸に行くことになったから、釜山の港から福岡まで俺だけ船で行く予定を考えたんだけど、宿が取れなくて、高速バスも取れないし、なんなら新幹線はグリーン車しか空いてない、飛行機もダメで帰京できなくて諦めたんだ…それで、仕方ないから中学時代のメンバーで当時の場所を巡るというのを一気に前倒しして、2月のうちに、河津桜と菜の花が咲き誇る綺麗なうちに行くことを提案した。でも、メンバーの1人が勝手に先輩たちに呼びかけて3月に延ばすわ、他の1人は俺が韓国に飛ぶその日しか予定が空いてないって言われてヤケクソになって自分だけ行ったんだ」と言うと嫁は黙って聴いてる
続けて、「その時も今と同じ『みさきまぐろきっぷ』で横須賀中央で途中下車して三笠に行った。
そこのモールス信号打電体験ブースが空いてたから、長文だけど『キュウシュウノ,フクオカニイルアノコニアイタイ。ソシテ、アノコニアエタラ、イマデモダイスキダ。オレハキミノシアワセヲイノッテイルガ、モシコンナオレデモスキデイテクレルノナラ、カノジョニナッテクダサイ。ソノトキマデマッテマストツタエタイ。ハヤク、キミニアイタイ』と打ったんだ。そしたら、自分でも知らないうちに大好きな君と結ばれて、君は俺の彼女になるどころか今じゃ大好きな奥さんになってるんだ。全く、運命ってのは何があるか分からないな」と言って笑うと嫁が「伝えたいことはあるけど、直接じゃ恥ずかしいからモールス使うね」と囁くので何を言われるのかドキドキしながら記念艦に入ると嫁がモールスを早速打っている
その姿は陽の光を浴びる海面に反射して輝いている

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籠蝶造物茶会 あとがき

どうも、テトモンよ永遠に!です。
こちらは「籠蝶造物茶会」のあとがき…と言うかおまけです。
よかったらお付き合いください。

「造物茶会シリーズ」はぼくの高1の時の空想から生まれました。
ただ、元々は魔術が出てくるようなお話ではなく、人外達がいちゃいちゃ(笑)するようなお話でしたし、キャラクターもナツィとキヲンしかいませんでした(しかも当時は明確な名前がなかった)。
ただ空想の内容が少々えげつなく(お察しください)、空想している自分が辛くなってしまったために全然違うお話にしました。
それが「造物茶会シリーズ」の始まりです。
でも最初の内はキャラ名やそれぞれの設定がかなり違ったり、ナツィとセットなのはきーちゃんだったりしました。
この辺りは空想を続けている内に自分にとってよりしっくりくる方…現在の形へと変わっていきました。
ちなみにきーちゃんがナツィにくっ付いたりしているのは初期の名残りです(笑)

今回はこれくらいにしておきましょう。
いつになるか分からないけど、「造物茶会シリーズ」第3弾もお楽しみに。
また「ハブ ア ウィル」の新エピソードも絶賛制作中で、3月中の投稿を予定しております。
こちらもお楽しみに。

あと最後ですが、ぼくから質問です。
ポエム掲示板を出入りしているとここで自分以外にも小説を書いている人を度々目撃するのですが、皆さんどういうキッカケで小説を書いているのでしょうか?
ぼくはある人がここで長い長い小説を書いているのを見て、真似したくなって始めたのですが…
みんなはどうなのでしょうか?
よかったらレスから教えてください。

ではこの辺で。
テトモンよ永遠に!でした〜

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Trans Far-East Travelogue㉛

「下を見ると古い建物が多いね」という嫁の呟きに「京浜急行は神奈川まで、五街道の一つである旧東海道に沿ってるからね。そりゃ古い建物の一つや二つくらいはあるだろうよ」と返すと「神奈川って県じゃないの?」と訊いてきたので「幕末期の開港の話、覚えてる?」と訊き返すと「元々神奈川開港だったけど横浜になったんでしょ?」と返ってきた
「そこがミソなんだよ。神奈川は日本の大動脈、東海道の宿場町だから人が多くて京から江戸に向かう攘夷派や江戸から京に向かう攘夷派の人が多かった。そんな中に外国人居留地を設けたら紛争が起きてで国際問題になりかねない。だから、少し離れた田舎の横浜村を整備して開港場にしたのさ。でも、そんな事情を知らない他国は『神奈川開港の約束なのに横浜開港は話が違うだろ』と主張して怒った」と説明すると、「日本側は『横浜も神奈川の一部』って主張したよね?」と嫁が言うので補足して「その通りさ。でも、独立している村の名前をそれぞれ挙げて一方は開港場で、もう一方はその一部と呼ぶのは無理があったから、廃藩置県の時に神奈川県を作って『横浜は神奈川県の一部、つまり神奈川の一部だろ?』と主張して認めさせたという経緯があるのさ。そうした背景のもとで神奈川県に横浜市があるんだけど、後に鉄道を敷設した時に東海道線は神奈川の宿場の近くを通過するが駅がないから止まらないのに、駅がある横浜は貿易で栄えたものだから発展した横浜市が勢力を失った元々の神奈川を吸収合併した。そして、その名残は東神奈川とか京急の神奈川駅くらいにしか残ってないんだよ」と言うと嫁は納得したようで、「幕末の話って、私達の原点だね」と言って笑ってるので「その当時の名残を残す地域を走る鉄道で俺の原点とも、青春の集大成とも言える場所の1つに行くからね」と言って俺も笑う間に蒲田のホームに滑り込んだ
かつては帝都と呼ばれ、現在も愛する故郷、東京を防衛する為に置かれた海軍や海上自衛隊の施設の拠点であり、俺が10代になってからは俺には歴史を通じて様々な知識や教訓を与えてくれた大切な街、横須賀にはあと1時間程で着くだろう

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午前8時5分、予定通り品川に到着した
腕時計を見て「あと5分か…切符急いで買えば間に合うな」と呟くと「任せといて」と言って嫁が京急線改札口へ先に向かうのを見て少し呆れながらも遅れてついて行くと「ご所望の切符、私の奢りね」と言ってお目当ての切符を買っていてくれた
「2100か…先頭はキツイかなぁ」と呟くと「2100形ってどうして分かるの?」と嫁が訊くので「アナウンスで2つドアの当駅始発って言ってるだろ?京急って地下鉄やその先の京成にも乗り入れているけど、2100形は車両が直通に対応してない関係から、下り電車は隣の泉岳寺か品川始発の2択さ」と説明すると、お目当ての快特京急久里浜行きが入線してきた
「青いけど、アレも2100形なの?」と嫁が訊くので「男の子の夢と希望を詰め込んだ青い車両のブルースカイトレイン、通称ブルスカだね。横の窓の形からして、2100で間違いないよ」と少し興奮気味に返すと「貴方ってやっぱり電車好きなんだね」と言って嫁は笑ってる
「夢みたいだな…大好きな人と結ばれて、思い出と子供の頃からの夢が溢れる大好きな車両に乗ってまた思い出の1ページが上書きされるんだから」と呟き、乗り込むと数少ない運転席後ろのボックス席が2人分、それも右側だけが空いてるので2人でそこに座るともう興奮して心臓がバクバク鳴って前面展望どころでは無い
ふと我に返ると、もう気付いたらお気に入りの場所、八ツ山橋を過ぎていた
「よく分からない車両いたから撮ってみたよ」と言う嫁が差し出す写真を見て思わず「嘘だろ」と呟く
新幹線側には滅多にお目にかかれない観測車であり、レア車両として有名なドクターイエロー、そしてなんと在来線側には滅多にお目にかかれない上、お召し列車として利用されたことでお馴染みのE-655系の「和(なごみ)」の並走だったのだ思わず、「子供時代の俺が見てたら卒倒しそうだな」と呟くと嫁が「なんで?」と訊いてきた
「まず、こんなに可愛い嫁さんと一緒でしょ?それから、今乗ってるブルスカ含めて子供の頃から憧れてた車両のオールスターだからね。子供の頃には考えられない、夢のようなシチュエーションさ」と笑って返すと「私にとっても夢みたい」と言って嫁もうっとりしてる
もう間も無く、鮫洲を通過するようだ

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場所によっては鉄道大国である日本の心臓部、関東と言えど電車の本数が少ない関係で、明日の目的地を早く決めないと困るので嫁に訊いたら、「貴方の思い出の場所が良い」と言うので、電車のダイヤと相談して神奈川県方面へ行くことにしたが、時刻表を見て思わず「勘弁してくれよ」と叫んでしまう
ターミナル駅が身近な場所にある俺にとって、鉄道の利便性はどうしても目的地までの速達性とイコールになるので、ダイヤ改正で優等種別が途中駅にもガンガン止まるようになった小田急や東急線、JRは不便極まりないため湘南方面は論外だ
しかし、京急も日中最速達の「グリラピ」こと快特が思いっきり減便されている上に快特のほとんどが途中の久里浜止まりで、しかも久里浜での乗り継ぎも不便になっていて、終点までは特急ばかりであることに頭を抱えていると、路線図を見ていた嫁が「横須賀中央で降りて三笠見て、特急までの時間稼ぎすれば?」と提案してくれた
最悪、横須賀中央から各駅停車に乗る羽目になっても少し先にある堀之内という駅で乗り換えれば、特急で三崎口を目指せることは時刻表も過去の経験も示しているため嫁の提案を承諾し、お得な切符の使用を前提としてプランを練るが、ここで思わぬ障壁が立ちはだかる
特典付きか否かを問わず、切符がどれも以前よりも値上げしているのだから無理もない
思わずため息混じりに「俺の財布も京急か」と呟くと、嫁が「京急電車のメインカラーは赤、ナンバリングのイニシャルはKK…金欠(Kin Ketsu)のKKで赤字…つまり、財布も京急だとお金が無いってこと?」と訊くので「バレちゃったか…東京モンは金持ちだと思われてるから見栄張ろうとしてたんだけどなぁ…バレたモンは仕方ないか」と笑って返す
すると、嫁が「マレーから殆ど貴方の奢りだったよね…そりゃ金欠にもなるよ」と言って笑ってるので「君の前ではカッコいい男でいたいからな」と笑って返し、気付いた時には日付も変わってたので起床事故を起こさないようにする為にも消灯する
「ライアンの隣にはつば九郎」と言って嫁がいきなり俺の布団に入って来たのでお互いに抱き合うように寝るとなぜか予想以上にグッスリ眠れて予定通りに起きられた
さぁ行こう、俺の青春の集大成とも言える場所へ!

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Trans Far-East Travelogue㉘

朝食を済ませ、台湾のお茶を淹れて嫁と次に行く場所を話し合っていると俺宛に手紙が4通届いた
「住所的に、アイツらか?」そう呟くと嫁が「アイツらって知り合いでもいるの?」と訊いてきたので「国際郵便は元カノの地元からだけど、何故か国内便は新潟からなんだ」と返し、手紙を読んでみると、1通は松山の副長と付き合ってる元カノが新潟滞在時に書いたもの、他はロシアにいる元カノ達がそれぞれの地元から書いた手紙だった
「裏に和訳がある」と言って裏返して渡すと嫁が手紙を読み上げるが、途中から表情が変わる
「『私は貴方に振られた理由が分からず、また貴方の元カノ達と一緒になって貴方に会いに行っても何故避けられていたのか分かりませんでした。でも、今の彼氏を通じて教えてもらった話を聞いて納得しました。貴方とお付き合いしていた当時、私は日本語を学び始めてすぐの頃で貴方が苦しんでいることも貴方が意図的に早口の日本語で喋っていた理由も分からなかったです。試合後、彼が男友達と話した後で『アイツの元カノ達は誰1人として日本の事を知らなかったが故に、アイツは自らが抱えた悩みを話して、解決策になることを提示して要求したら皆傷付くことを知って気を遣ってあまり多くのことを語ろうとしないでいたのに、誰1人としてその配慮に気付かないで酷いことを言い続けたが故にアイツが耐えられなくて振った。それにしてもよく耐えたよなぁ…俺達なら無理だ』と言って男同士での話の内容を訳してくれて初めて知りました。それから、貴方のことを理解して受け入れてくれる優しい人と結婚したことも知りました。奥様は田舎の左遷先で僻地出身の割には頭が良い美人さんだそうですね。彼は辛いことがあると1人で抱え込むので、どうか優しくしてあげてください。お二人とも末永くお幸せに』だって。何故最後に私の故郷がボロクソに言われてるの」と言って嫁がフグのように頬を膨らませているので、「まぁ、東京人のイメージではモノレールが走るの遊園地や動物園かベッドタウンだけだからな。それで北九州も自動的に田舎認定なんだろう。まぁ、言葉は悪いが俺に言わせればまだ見ぬ土地、九州は想像もつかない僻地だから、強ち間違っちゃいない」と言うと「あんなに栄えてる福岡が田舎?そりゃないでしょ。まあ、流石に東京23区には敵わないけど」と言って嫁も笑い出す
知らぬ間に太陽は南から西へ傾き始めていた

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Trans Far-East Travelogue㉗〜この先も、2人で〜

地元を挙げて開催してもらった祝賀会も済み、無事入籍も済ませた上で嫁と2人、実家のベランダで夜景を眺めていると、突然携帯が鳴り響く
高雄の兄貴からだ
「日本の台中からかけてるんだが、聞こえるかい?」「もう清水まで行ったのか。早いな。んで、聞こえているが、どうした?」「一つ訊きたいんだが、良いかな?奥さんも一緒だとありがたい」「勿論、構わねえよ」
そう言ってスピーカーを起動すると嫁も寄って来た
「本題に入ろう。君は実家に帰ったんだろ?この先どうする?」といきなり直球質問が来た
「俺は…博多までは最低でも行こうと思ってる。俺だけ地元にいて、長旅続きなのに縁もゆかりもない東日本にずっといる嫁に悪いからな。故郷の土地でゆっくりして貰いたいし、鹿児島以北なら新幹線で行けるし、沖縄や桃園にいてもあの街は空港から近いんですぐにエアチケ取って飛べばなんとかなるっしょ」と返すと側で聴いていた嫁が「昨日の決勝、覚えてる?前日に何試合も登板した後『君に1人で背負って欲しくない』ってダブルヘッダー登板でもお構い無しに勝ちに導いてくれたでしょ?私も貴方に1人で背負って欲しくないの。貴方と一緒なら、私は故郷を素通りしてどんな所でも行く覚悟できてるよ」と言ってくれた
「君の意思は分かった。なら、俺も応えなきゃな」と覚悟を決めて言うと兄貴が「2人とも、やっぱり相性良いじゃねえか」と笑った後、続けて「流石に新婚夫婦に気ぃ遣わせたかぁねぇから、ルートを変えようと思う。俺達が沖縄着く日に博多を出て韓国経由はどうだ?大連で5時間待ちだけど、空路でアモイ行けるぞ」と言い、「アモイ…そこから金門、馬公経由の基隆で予定通りってことか」と呟くと「その通りだ。どうだ?行くか?」と訊いてくるので「どうする?」と嫁に訊くと暫く考え込んだ後、「彼と一緒なら何処へでも行きます」と言うので、「Port Arthur南北制覇ってことか。面白え、行かせて貰うよ」と笑って答え、俺も承諾する
博多までの手段を訊かれ、嫁に相談すると俺が決めた方が良いと返されるが、決めかねていると嫁が
「満足するまで首都圏の電車乗り回して、どこか新幹線出る駅から新幹線ならどう?」と提案してくれたので「なら、熱海から瀬戸で高松、徳島だな」と返し、全てのルートが決まった
新枕を交わす間に朝になり、地元の朝日も俺達を祝福してくれているようだ