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CHILDish Monstrum

いつかの時代、この世界は異界からの侵略者“インバーダ”によって脅かされていた。
街を破壊し人々の命を奪うインバーダによって絶滅の危機に瀕していた人類は、決戦兵器を開発する。
その名も、“モンストルム”。
人間を基に作られた、一見すると人間のコドモと変わらない姿をしたその兵器は、幻獣の名を持ち自らの意志で巨大な怪物の姿に変身する能力を有していた。
しかし、変身後の姿の恐ろしさや精神が不安定になると暴走する危険性から、人々に恐れられている一面もある。
それでも彼らは人類の最後の希望であることに変わりなかった。
『こちらヘリ、目標はクララドル市中心部に向かって侵攻中、モンストルムの追加派遣願います』
『こちら本部、“ゲーリュオーン”をそちらに向かわせる、それまで持ちこたえてくれ』
『こちらヘリ、了解』
クララドル市インバーダ対策課、通称CIMSの本部では、そんな通信が飛び交う。
『こちら本部、“ゲーリュオーン”、通信は聞いたな?』
「ああ」
長い茶髪を高い位置で束ねた”ゲーリュオーン“が、街中を槍片手に駆け抜けながら答える。
ゲーリュオーンが走る街中は、人々がすでに避難してすでにもぬけの殻だ。
「敵は市の中心部に向かって進撃中、対応に当たっている他のメンバーだけじゃ抑えきれないから自分を派遣した、それで合ってるか?」
ゲーリュオーンがそう聞くと、本部にいる司令は察しがよくてよろしいと返す。
『頼んだぞ、ゲーリュオーン』
司令はそう言って通信を終えた。
「…言われなくとも」
ゲーリュオーンはそう呟いて突然立ち止まる。
目の前にはこちらに向かって進む巨大な異形の怪物がいた。
「€_=]$;”*{!|^}><^‼︎」
異形の怪物ことインバーダはゲーリュオーンに気付くと立ち止まって、威嚇するように唸った。
「…お出ましか」
ゲーリュオーンはそう呟いてインバーダの目を見ると、右手に持つ槍を投げ捨てた。
そしてこう呟いた。
「…変身」

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理外の理に触れる者:怪異使い対怪獣使い

「やあ相棒。ちょっと助けてくれるかな?」
勢い良く足元に転がってきた水呼に求められ、亮晟は無言で彼女の身体を持ち上げた。
「どうした?」
「やー、あの子にちょっと絡まれてね?」
「ほう」
亮晟が見上げた先には、異形の腕と顎を具えた月がにたにたと笑いながら近付いてきていた。
「……お前何したんだ相棒」
「そう言わないでよ。君の相棒を胸張って名乗れるようになりたくてさ、私もそこそこ頑張ってたんだよ?」
「へえ」
「まぁー……その結果ちょっとだけ人の身を外れちゃったよね」
「それで、“総大将”に目を付けられたと」
「ははは。まー私は女王様に後見されてるし? いざとなったら助けてもらえるんだけどね? あんな小さい子に危険な目に遭ってほしく無いじゃん?」
「……だからフリーの俺に相手しろと?」
「そゆこと。ほらほら相棒、いっちょカッコよく決めちゃってよ」
水呼が亮晟の背中に隠れ、月の方を指差した。彼我の距離は既に5mを切っている。
「んぉー? “モンスター”やんけ。怪獣はまだ喰った事無かったからなァ……ちょぉーっとバカシ味見させて?」
「……やってみろ。『病霞』、来ませい。『装竜』……変身」

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再掲(3度目)企画投稿:蘇れ長編!

2度もの失敗を乗り越え、三度目の正直な企画投稿です。今度こそ反映されてくれ。

その名も『蘇れ長編!』。
ここに投稿している人の中には、かつて長編小説シリーズを書いていたor今現在長編シリーズを書いているって人も居るんじゃないかと思います(ナニガシさんは過去にやってた勢)。
今回の企画は、自分が過去に書いていた長編小説の『世界観』を使って、新たに小説を1エピソード以上書いてみようというものになります。

ここでいう「過去に書いていた長編小説」の定義ですが、皆さんが過去に、「①同シリーズで2本以上」「②ポエム掲示板に投稿していた」「③小説形式、或いは世界観を明確に同じくするポエム形式の作品である」ことが条件となります。
つまり、無事に完結したものでも、そこに至らず自然消滅した者でもOK。
登場人物や物語の舞台、時系列が原作に沿っている必要もありません。飽くまでも『同じ世界のいつか、どこかで起きていたエピソード』が欲しいのです。

ナニガシもやる予定だし何なら既に出来ているので、皆さんもこの機会に、自分が過去生み出した世界を再び引っ張り出し、振り返ってあげてください。
参加していただける場合は、タグに『蘇れ長編!』と入れてください。

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鏡界輝譚スパークラー あとがき

どうも、企画「鏡界輝譚スパークラー」の企画者です。
先週金曜日の24時をもって、当企画は“とりあえず”終了いたしました。
ご参加して頂いた皆さん、本当にありがとうございます。
今回は設定を詰め過ぎて難しめの企画になってしまったので参加してくれる人が出てくるか不安でしたが、「ここってどうなってるんですか?」と聞いてくれる参加者さんや自分なりに設定を解釈する参加者さん、設定の穴をオリジナル設定で埋めてくれた参加者さんなんかがいて、あながち難しい設定も悪くないんだなって思いました。

…で、今回は企画の裏話を語りたいと思います。
この企画は高3の時に思いついた物語がベースになっていますが、これには元ネタがあります。
それは、「アサルトリリィ」というメディアミックス作品で、自分が高校生の頃から好きな作品です。
「アサリリ」は謎の巨大生命体に可変武器で立ち向かう少女達の物語なのですが、出会って暫くして「アサリリライクな物語を作りたい!」と創作意欲が湧いてきた結果生まれたのが、この企画のベースでした。
ただ「アサリリ」と全く同じではいけないと思い、例えば男子も戦うとか、武器は変形しないとか、地名は実在のものではなく微妙に違うものを使うとか、色々変えました。
その結果生まれたのが当企画でした。
自分が「アサリリ」に出会わなければこの企画はできなかったので、「アサリリ」には感謝です。

あ、そうそう。
タイトルの「スパークラー」って企画者の造語のつもりだったんだけど、試しに「sparkler」って言葉を調べてみたら実在する言葉だと分かりました。
「花火」や「宝石」、「才人」と言った意味があるそうです。
「花火」のように命を散らして戦う「才人」達の物語…
そして「宝石」にちなんだ名前のスパークラー達。
大分適当に決めたとは言え、こうして考えるといいタイトルだったなと思います。

ちなみに今後こう言った企画を開催するかどうかは未定です。
正直これから忙しくなりそうだし。
でも他の人が企画開催したら参加したいな!

では今回はこの辺で。
遅刻投稿も大歓迎です!
あとまとめもその内作ります!
それでは、テトモンよ永遠に!でした〜

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憧憬に泣く 2



 和樹がカゲになった。
 和樹はSTIの基礎教育修了後一ヶ月もしない内に九州カゲ大規模出現のため遠征に行った。和樹は同級生たちの心配する声も真面目に聞かず(聞いたところで遠征メンバーから外れることはできないが)、憧れの一人前のスパークラーへの第一歩だと喜び勇んで輸送機に乗って行った。それももう先月のことだ。
 そして2日前、カゲになったという知らせが鏡都の同級生らのもとに届いた。
 今年の1年生の中では初めての殉死者であった。
 彼らの間に衝撃が走り、彼の友人や家族は静かに泣き崩れた。
 善もその中のひとりだった。
 ――善は和樹と小学生のときからの友人だった。2人は幼い頃から、命を賭して人々を守る若き勇士たちに憧れた。一緒に立派なスパークラーになって世界を守るのだという大それたことを誓い合った。そして2人は優秀なスパークラーを輩出していることで有名な地元のSTIに入学した。 基礎教育期間が終わると、善が鏡都宮下中隊第9自主結成部隊、和樹は第4自主結成部隊に配属されしばしの別れを告げた。その『しばしの別れ』が『今生の別れ』となるとは――
 善はその結果に至る度、頭を抱えて奥歯を割れるほど強く噛み低い唸り声を上げた。全身が震えて、何かを殺してしまいたいような気分だった。
 この2日間で何十回とこの思考回路を繰り返し、何十回と和樹が死んだという事実を否が応でも反芻し、もう善の頭はショート寸前だった。
 彼は寮の一室で、ベッドに潜り込んで縮こまっている。2日前から訓練にも巡視にも行かず、食事にも殆ど手を付けず。
 部隊のメンバーは、部隊長に放っておけと命じられているため何もせずにいた。それでもやはり弱りきった後輩の姿は見るに堪えない。9自成隊(自結隊は響き的に縁起が悪いためこの辺りではこう略す)のメンバー、去年入ってきた少年が部隊長に遂にそのわだかまりを打ち明けるため、彼を呼び出した。

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鏡界輝譚スパークラー Crystal Brother and Sister Ⅳ

STI側から提供された情報によると、今回襲撃してきたカゲ達は、小型のものがほとんどだと言う。
小型とは言え街を侵蝕することに変わりないのだから、早く倒さなければならない。
それでも出撃スパークラーの数から考えてみれば、あっという間に駆逐することは可能だろう。
そう考えながら水晶は刀型P.A.で次々とカゲに斬りかかる。
街を侵蝕しようとしていたカゲ達は避ける間もなく霧散していった。
「みあきちー!」
ふと呼ばれて振り向くと、弩型P.A.を携えた少女…紀奈が駆け寄ってきた。
「どう、調子は?」
「まぁまぁかな」
水晶は刀型P.A.で飛びかかるカゲを切り裂きながら言う。
「あたしもだよ!」
紀奈もまた、飛行型カゲを自身の武器で仕留めながら答える。
「今回は小型種がほとんどって聞いてたけど…」
この辺りはそんなにいないみたい、と水晶は呟く。
「うーん、じゃあここを片付けたら巴達の所へ行こっか」
巴達がいる所の方が大変みたいだし、と紀奈は笑う。
水晶は静かに頷いた。
…と、ここで耳に装着している通信機から聞き覚えのある声が聞こえた。
『加賀屋さん、聞こえる⁈』
「どうしたの呑海さん」
水晶は通信機に手を当てて答える。
『さっき大型種が出現したって情報が入ったわ』
方角は…と巴が言いかけた所で、紀奈が遮るように叫んだ。
「みあきち後ろ‼︎」
はっと振り向くと、そこには5メートルはある動く塔のようなカゲが光線を放とうとしていた。