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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 9

「アカ‼︎」
近くでレヴェリテルム“Reginae Gladio”を構えていたトログがそう声を上げると、先ほどアリエヌスを両断した人物ことアカはちらと彼の方に気付いて、刀型になっているレヴェリテルム“Aurantico Equus”を握り直す。それを見たクリスは「おい」とマシンガン型に変形させたレヴェリテルム“Caeruleum Diadema”を担いでアカに近付いた。
「アカ、一体どこ行ってたんだ」
「心配したんだぞ」とクリスはアカの襟首を掴んで尋ねる。アカはなにも答えず、それを見ているトログは「ちょっとクリス落ち着いてよ〜」と慌てる。
「ボクたちも出撃命令があったのに上に上がるまで時間がかかっちゃったから……」
「そうじゃない!」
トログの擁護に対し、クリスはそう声を上げる。トログは一瞬驚いて動きを止め、モザやロディも驚いたような顔をする。クリスは続けた。
「勝手な行動で死なれちゃ困るんだよ‼︎」
「もしそうなったらどうするんだ……!」とクリスはアカの目を見る。アカは相変わらず無言のままだ。
「俺は、俺たちは……もう仲間を失いたくないんだ」
「だから1人で勝手に行かないでくれ」とクリスは声を震わせる。トログ、モザ、ロディはその様子を静かに見ていたが、アカは「……そんなの」とポツリと呟く。
「自分には関係ない」
「そんなの!」
「関係ないものは関係な……」
クリスの言葉をアカが遮った時、「危ないっ!」とトログの叫び声が聞こえた。2人がハッとして辺りを見回そうとした時、そばで甲高い金属音が響く。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 8

アリエヌス襲来の一報から約5分、パッセリフォルムズの壁から都市を覆うように光でできた障壁——天蓋が完全に展開したころ。
パッセリフォルムズの壁の中のエレベーターで壁の上に昇っていったトログ、クリス、モザ、ロディは、手持ちのケースから既に取り出したレヴェリテルムを携えて、戦場に飛び出していた。
「ったく、あいつどこ行ったんだ……?」
「勝手に飛び出しやがって」と大太刀型から大砲型に変形させたレヴェリテルム“Viridi Canticum”を撃ちつつモザは呟く。
周囲では天蓋の上で同じカテルヴァ・サンダーバードの仲間たちが飛び道具型に変形させたレヴェリテルムで空から迫り来るアリエヌスを撃ち落としており、上空には既に出撃しているアヴェスたちが宙を舞いながらアリエヌスと戦っていた。
「まだおいらたち、仲間になってから日が浅いのに」
「なぁロディ?」とモザは近くで2つの銃器型レヴェリテルム“Rosea Choro”を空に向けるロディに尋ねる。
「そーだねー」
「でもアカもアカで色々事情があるんだと思うよー」とロディは返す。
「どんな事情だよ」
「そりゃ“戦うこと”しか考えられなくなる事情だよー」
「ふわっとしてんな!」
モザとロディはそう言い合うが、途中で「モザ! ロディ!」というクリスの声が飛んでくる。2人がハッと顔を上げると、上空から体長1メートルほどの蝙蝠のような姿をしたアリエヌスが突っ込んできていた。
2人は咄嗟にそれぞれのレヴェリテルムを構えるが、その瞬間アリエヌスは飛んできた何者かによって真っ二つにされる。モザとロディが驚く間もなく、その人物は天蓋の上に降り立った。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 7

「ボクたちの人生は本当に限られたものだから、やっぱり有意義に使お?」
「ね?」とトログはアカの腕に手を伸ばす。しかしアカはその手を振り払った。
「……人生をどう使うかは、個人の勝手だ」
「ただ、自分は戦いのためにこの命を使う、それだけ」とアカは呟き、トログの横を通り過ぎる。トログは思わず「待って!」とアカに後ろから声をかけた。
アカは思わずぴたと足を止める。
「どうして……どうして、アカはそんな考え方するの?」
「もしかして、前にいた要塞都市でなにか……」とトログは言いかける。しかしその言葉は不気味なサイレンの音によって遮られた。
「⁈」
5人は思わず顔を上げる。すると彼らが手首につけている端末に通信が入った。
『こちらドムス司令部、先程パッセリフォルムズ近傍にアリエヌス出現を確認した』
『出撃対象カテルヴァは以下の通りである』と司令部にいる司令の緊迫した声が続く。
『ルッフ、コカトリス、ハルピュイア、サンダーバード……以上の4隊は直ちに出撃せよ』
『繰り返す!』と通信機の向こうの司令は出撃対象者を宣言していく。“サンダーバード”と自分たちの部隊名が読み上げられたことを確認したアカは、レヴェリテルムの入ったケースの取っ手を握り直すと壁の方へ向けて走り出した。
「あっ待てアカ!」
アカが駆け出したことに気付いたクリスは、「先に行くなっ‼︎」と声を上げて彼を追い始める。それを見たロディも「モザ、トログ!」とあとの2人の方を見た。
「ロディたちも行こう!」
「おうよ!」
ロディの言葉にモザは威勢よく答え、トログもうんと静かに頷く。そして3人は壁に向かって“橋”の上を走り出した。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 6

「ねぇねぇ、クリスとモザはどう?」
「みんなで遊びに行こうよ!」と提案するロディを見て、浅黒い肌のアヴェスことモザは「そうだな!」と頷く。
「おれたちアカのことそんなに知らないし、せっかくなら仲良くなりたい!」
モザの言葉にロディは「でしょでしょ〜?」と明るく続ける。しかしクリスは「どうだかな」と不意に呟く。
トログ、モザ、ロディの3人は思わず不思議そうな顔をした。
「お前ら、アカのことそっちのけにしてるだろ」
クリスはそう言って自身の後ろにいる橙色の詰襟に白い和袖の外套を羽織ったアヴェス、アカの方を見やる。アカはトログたちの方を気にせず“橋”の欄干から見える風景に目をやっていた。
「……」
モザとロディは思わず沈黙し、トログは「アカ」と仲間に近寄って話しかける。
「今度みんなで遊びに行こうよ」
「この街には面白いものがいっぱいあるんだ」とトログは笑いかけるが、アカは「そんなどうでもいい」と帽子深く被った。トログは「どうして?」と首を傾げる。
「アカは世界最大の要塞都市・パッセリフォルムズには興味ないの⁇」
「別に」
トログの質問に、アカは短く答える。
「自分のやることはこの街をアリエヌスから守ることだけだから」
「それに関係ないことは、興味ない」とアカは淡々と答える。その言葉にトログは「それじゃ寂しくない?」と尋ねる。
「確かにボクたちは要塞都市を守るために生み出され、そのために戦ってる、でも……」
「戦うだけの人生じゃ、つまんないよ」とトログは俯く。トログのその様子にアカはちらと目を向けたが、気にせずトログは続ける。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 5

防衛組織・ドムス総本部の中層階からは、要塞都市を囲む壁に向かって放射状に“橋”が伸びている。
要塞都市の壁の上部には有事の際に都市を守る天蓋を展開するための回路が張り巡らされているのだが、それだけでなくドムス本部から有事の際に出撃していくアヴェスたちが天蓋の外に出るための出入り口も存在している。そのため人類の敵・アリエヌスが襲来してきた際は、その“橋”を経由してアヴェスたちは天蓋の上へ向かうのだ。
もちろん平常時も許可を得られれば壁の上に出ることは可能なので、アヴェスたちは訓練などを目的に“橋”を渡っていくことは多い。そういう訳で、アカたち5人は各々の武器・レヴェリテルムの入ったケースを持ちつつ“橋”を渡って壁の中へと向かっていた。
「ねぇねぇ、今度の休日、みんなで街を散歩しようよ〜」
“橋”の上を歩きつつ、黒と桃色のジャケットを着たアヴェス、ロディが後ろを歩く仲間たちの方を振り向いて言い出す。それに対し、空色の地に黒いストライプの入ったジャケット姿のアヴェス、クリスが「どうしたんだ急に」と聞く。
するとロディは「えー」と笑った。
「だってアカはまだここの要塞都市のことよく知らないだろうし」
「ロディたちで案内してあげようよ!」とロディは飛び跳ねる。クリスは「お前なぁ……」と呆れたような顔をするが、ベレー帽のアヴェスことトログは「それいい‼︎」と手を叩く。
「ボクたち最近そんなに遊んでなかったし、これをキッカケにカテルヴァに入ったばかりのアカと仲良くなりたい!」
「ロディあったまいい〜!」とトログはロディに近付く。ロディは「えへへ〜」と照れ臭そうにした。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 4

午後3時半、午後の暖かな光が燦々と窓から降り注ぐころ。
要塞都市・パッセリフォルムズの中心部にある高層建造物——防衛組織・ドムス総本部の、アヴェスたちの居住フロアのラウンジにあるエレベーターの扉が開く。エレベーターの扉からは、3人のアヴェス……クリス、トログ、そしてアカが降りてきていた。
「あ、来たきた」
ラウンジに備え付けられた椅子に座って他愛もない話をしていた2人のアヴェスが、3人に気付くと椅子から立ち上がった。
「待ってたよー」
「クリスたち〜」と2人のうちの一方、リボンのついた黒と桃色のジャケットに白いシャツ、そして桃色のバルーンパンツのアヴェスは飛び跳ねながら3人に近付く。それを見て「すまんなロディ、モザも」とクリスは返す。
「普段待ち合わせに遅刻ばかりするおれらより、クリスたちの方が遅刻するとは思わなかったぞ?」
椅子に座っていた2人のうちのもう片方……若草色の開襟シャツに暗灰色と黄緑色のストライプ柄半ズボンを身につけ、暗灰色のジャケットを腰に巻いた浅黒い肌のアヴェスは、「どうしたんだ?」と腰に手を当てつつクリスの後ろに立つトログとアカの顔を覗き込む。トログは「ごめんってばモザ〜」と手を合わせて申し訳なさそうにしたが、アカは真顔のままなにも言わない。
「ボクがアカとお喋りしに行ってたら約束忘れそうになって〜」
「もう、トログはドジっ子だなぁ」
「モザだってやらかしたりするじゃーん」
トログと浅黒い肌のアヴェスは暫しそう言葉を交わしていたが、やがてクリスが「トログ、モザ」と声をかける。
「さっさと自主練始めるぞ」
クリスはそう言うとまたエレベーターの方へ向かう。それを見て、アカたちは荷物を持って彼のあとに続いた。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 3

「なに考えてたの⁈」
「放課後のこと? 今日の晩御飯? それとも……」とベレー帽のアヴェスは矢継ぎ早に尋ねる。しかし橙色の詰襟のアヴェスは「そんなんじゃないし」と外を見たまま呟いた。
ベレー帽のアヴェスは相手の言葉を気にせず話を続けていたが、その途中で「トログ! アカ!」と廊下の方から声が聞こえてきた。二人が廊下の方を見やると、空色の地に黒いストライプが入ったジャケットとズボン、白い立ち襟シャツを身につけたメガネのアヴェスが立っていた。
「あ、クリス!」
「どうしたの〜?」と、ベレー帽のアヴェスは手を振る。クリスと呼ばれたアヴェスは、どうしたのじゃねぇしと教室内に入ってくる。
「今日は放課後にみんなで訓練するんだろうが」
「お前が提案したんだろ、トログ」とクリスは腰に手を当てる。それを聞いて、トログと呼ばれたベレー帽のアヴェスは「そうだった!」と手を叩いた。
クリスは「忘れんなよ」と呆れたように呟く。
「とにかく、荷物まとめてさっさと行くぞ」
「トログ、アカ」とクリスは言って教室から去っていく。「今から準備するから待っててよー」とトログは声をかけると、橙色の詰襟のアヴェスに「行こう! アカ」と笑いかけた。
アカと呼ばれたアヴェスは、「まぁ、うん」とぎこちなく頷いた。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 2

「それでは、本日の授業はここまで」
「みんな、宿題はちゃんとやっておくように」と言って、教室から教官が去っていく。それを見届けてから、教室内にいる色とりどりの服を着た少年たち…アヴェスたちは椅子に座ったまま近くの席の者と会話を始めたり、荷物を鞄にまとめて教室から去っていったりと、思い思いに動き始めた。
そんな中、教室の窓際の列の一番後ろの席で橙色の詰襟にバルーンパンツを履いたアヴェスは窓の外に広がる青空を見つめていた。
「……アーカ‼︎」
どんっ、と机を叩く音で橙色の詰襟のアヴェスはハッと我に返る。彼が思わず机を叩いてきた人物が立つ自身の左側を見ると、茶色と鳶色の千鳥格子模様のケープと白いパフスリーブシャツ、そして茶色いバルーンパンツとベレー帽を身につけたアヴェスが机に手をついていた。
「……」
橙色の詰襟のアヴェスは、相手に黙って冷たい目を向ける。しかし相手のベレー帽のアヴェスは、気にせずニコニコ笑っていた。
「どうしたの? ずぅっと外眺めちゃって」
「授業がつまんなかった?」とベレー帽のアヴェスはその場にしゃがみ、机に頬杖をつき始める。橙色の詰襟のアヴェスは「別に」とまた窓の外を見る。
「ただ物思いにふけってただけ」
「へぇ〜! 物思い‼︎」
ベレー帽のアヴェスはなぜかきらきらと目を輝かせる。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 1

「ねぇ、要塞都市の外へ行きたいって思ったことある?」
近代的なレンガ造りの要塞都市中心街から離れた丘の頂上に座りつつ、橙色の詰襟ジャケットとバルーンパンツ、帽子に黒い和袖の外套を羽織った少年が、同じようなジャケットとバルーンパンツに帽子、そして白い和袖の外套を羽織った少年に尋ねる。白い外套の少年は「どうした?」と訊き返す。
黒い外套の少年は「え〜いいじゃーん」と遠くを見る。彼の視線の先にはこの要塞都市を守る高い壁が小さく見えていた。
「何気なく思ったんだしー」
黒い外套の少年はそう言って笑う。白い外套の少年は「ふぅん」と頷いた。
「コマは思ったことすぐに言えるよね」
「?」
白い外套の少年がそう呟くと、コマと呼ばれた黒い外套の少年は左側を見て首を傾げる。白い外套の少年は「いやだって」と続ける。
「コマは誰とでも話せるし、自分より話すのが上手いから」
「うらやましい、な」と白い外套の少年は膝を抱える。それを見て「もーしょげないでよアカ〜」と隣に座る白い外套の少年の肩を叩いた。
「アカにはアカなりのいいところがあるんだからさー」
「そんな顔しないの〜」とコマは笑う。アカは「そうかな……?」と照れくさそうにした。
そしてコマは思い出したように、アカに尋ねる。
「それでさ、アカは要塞都市の外に行きたい⁇」
その質問に、アカは少し考えてから答える。
アカの答えを聞いて、コマはアカらしいねと笑った。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 23.オウリュウ ⑲

「えーすごいじゃーんれーいー」
ネロはそう言って黎にくっつく。
黎は静かにネロの頭を撫でた。
一方それを見る耀平は少し不服そうな顔をしている。
「お、耀平嫉妬してる?」
ネロがかわいくて仕方ないんだな~?と師郎はそんな耀平の肩に手を置く。
すると、そ、そんな訳ないしと耀平はその手を払った。
その様子を見て霞さんはふふふと笑うが、ここでわたしはさっき思ったことを思い出し、彼に尋ねる。
「…そういえば、霞さんって異能力者だったんですね」
わたし、全然気付かなかったです、とわたしが言うと、霞さんはまぁねと頭をかく。
「君が一般人だから言わなかったけど、ネロちゃんが堂々と異能力を使っているのを見て大丈夫だと思ったからさ」
だからあの通り使ったんだ、と霞さんは一瞬両目を菫色に光らせた。
「ちなみに僕のもう1つの名前は”オウリュウ”だよ」
霞さんの言葉に対し、わたしはそうなんですねと答えた。
「…まぁ、そんなことは置いといて」
そろそろ駅へ向かおうぜ、と師郎が手を叩いてわたし達の注目を集める。
「そろそろ霞も帰らなきゃだろ?」
師郎がそう言うと、霞さんはそうだねとうなずく。
わたしと黎もうなずき、ネロは耀平に近付き、行こうよーと彼の腕を引っ張る。
耀平はちょっと不満そうな顔をしていたが、うんとうなずくと駅に向かって歩き出した。
辺りはもうすっかり日が暮れ切っていた。

〈23.オウリュウ おわり〉

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 23.オウリュウ ⑰

「じゃあ、異能力を解除して」
黎の言葉に耀平は、え、と驚く。
「それじゃおれ達は…」
「いいからお願い!」
霞‼と黎が声を上げた時、分かった!と霞さんが言った。
その途端、辺りの霞がなくなり、元の通りの細道が現れた。
元のように周囲を見ることができるようになったヴァンピレスは、にやりと笑っていつの間にか出していた具象体の白い鞭を振るおうとする。
しかしそんな彼女に向かって中身が入った状態のペットボトルがわたしの後方から真っ直ぐに飛んできて、ヴァンピレスの額に直撃した。
「あうっ」
ヴァンピレスはそううめくと、額を手で押さえながらその場にしゃがみ込む。
「だ、誰ですの…?」
わらわにペットボトルなんて…とヴァンピレスは顔を上げる。
わたしも彼女が目を向ける方を見ると、紺色のパーカーのフードを目深に被った少年、黎が立っていた。
「まさか、貴方…」
ヴァンピレスはふらふらと立ち上がると、黎に向かって具象体の白い鞭を向ける。
黎はかすかに後ずさり、ヴァンピレスは思い切り具象体を振り上げようとした。
しかし、そんな彼女の後ろから、させるかぁーっ‼という叫び声が聞こえた。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:告鳥と悪霧 その⑧

アリエヌスの拳が、3人に向けて振り下ろされる。
「クソが! “カルチトラーレ=ウングラ”!」
カズアリウスの履いていた金属製脚甲の脹脛に仕込まれた加速用ブースターが一斉に起動し、超高速の蹴りが拳を迎撃する。
「この……ッ! だらあァッ!」
ブースターの出力を上げて跳ね返し、足裏の噴射機構からエネルギー砲を撃ち出して反撃する。
「この野郎ォ……俺のレヴェリテルム“Calcitrare ungula”は、ただの機動用ブーツじゃねェぞ」
カズアリウスが右脚を上げ、足裏をアリエヌスに向ける。
「出力を調整すれば、こうしてビーム兵器にもなれる」
研究者の男はビデオカメラを構え、戦闘の様子を撮影観察していた。
「なるほど。しかしまぁ……可哀そうな能力だね。その”蹴爪”という名のレヴェリテルム……その程度の出力で得られる機動力は、レヴェリテルムの標準性能で得られるだろう?」
「うっせ、俺ぁこいつが一番性に合ってんだよ。大体、動力も翼も無しに空飛べるわけ無いだろうが。常識でものを言え常識で」
「始めて見たね、『常識』なんてものを語るアヴェスは。君達は想像力の傀儡だろう?」
「生憎と人格もありゃ教育も受けてきた生命体だ。そこまで目出度い脳味噌はしてねぇよ」
「興味深いな。これからも実験に協力する気は?」
「お断りだ!」
“カルチトラーレ・ウングラ”の足裏から放たれたエネルギー砲を、アリエヌスの腕が受け止めた。ビームは腕部装甲に弾かれ、ダメージを与える事無く内壁に衝突して終わる。
「出力はあまり高くないのだね?」
「高くある必要が無いからな」

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生まれ変わって撞波再くん

ガンガンガンガン…
はぁはぁと僕は息をしながらもこの長い鉄でできた階段を登っていく。
ふと顔を上げると陽の光が入ってくる。さっきまで雨が降っていたのになと思いながら最後の階段を登る。
〜第一章〜
 ここは、この街にある結構高めのビル、と言ってもどこもかしこも錆びていて、誰もいないので時々空き巣が入ることもあるのだが、ここにはもう一つ噂があるそれは、「自殺の名所」とも呼ばれている。
僕は大空 撞波再(おおぞら つばさ) 17歳。家は母子家庭だったけれど小学生の頃突然母は姿を消してしまった。そこからはおばあちゃんの家で過ごしている。
僕は、屋上のはじまで行きふと下を見下ろした。
…やっぱり高いなぁ
でも、こんなバカみたいな世界と今日でおさらばできるんだと思うと、もう何も考えられなくなった僕は目を閉じた。
この世界で最後に言うことは?
…バカだな。こんなこと聞いても対して答えることがないのに。
まぁ、一つ思うとしたら…。
母さんにもう一度会いたかったよ。おばあちゃん今までありがとう。
僕は最後にこう思い、飛び降りることにした。
って言っても高いなぁ。本当に飛び降りたら死ねるのかな?
あぁ覚悟が決まんない。ここで出てくる僕の優柔不断はクソみたいだ。
さっさと死ねるんだぞ、次の地平線へ飛んでいけるんだぞ。さぁ、早く降りろ!
「これでもう、何も感じない そんなこと思っていませんか?」
「うわぁぁぁぁぁ!」
声が聞こえた。そんなはずはない。だって足音もしなかったから。
僕はぎこちなく後ろを向く、そこには綺麗な瞳をした男の子が立っていた。

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プロ野球物語〜タイガース編〜②

国際情勢がきな臭くなり、中国との戦争という暗い影が日本国民に忍び寄りつつある時代に帝都・東京に続いて商工業の中心地大阪でも球団が産声をあげた。
そんな大阪のタイガースが生まれた後も名古屋や東京をはじめ全国各地にプロ野球(当時の名前では職業野球)のチームが生まれた。
そうして合計8球団で春秋の2部でシーズンを戦い抜いたのが日本初のプロ野球だ。

余談だが、そんな大阪タイガースにも巨人やドラゴンズの前身となる名古屋軍と同様に球団を応援する専門のテーマソングが開幕前後の時期に生まれた。
しかし、他球団のテーマソングはチームの運営会社や時代の変化に応じて曲そのものが変わったが、このタイガースの球団歌は約90年経った今でも冒頭の1番の歌詞の最初の単語から六甲おろしという名で親しまれて歌い継がれているのだ。

閑話休題、そんな生まれたばかりの球団を初年度から支えた主力選手の一人に藤村という男がいる。
彼は野球王国・広島県出身でのちに記録することになる数々の功績からプロ野球選手最大の名誉と呼んでも過言ではない永久欠番という特別扱いを受けることになるのだ。
この永久欠番とは、特定の背番号を過去につけた特定の選手の偉業を讃えてその選手以降にその背番号を使わせないという制度で、その背番号は球団によって異なる。
しかし、タイガースではこの制度により欠番となっているのはいるのは10、11、23だ。
ところが、この藤村選手の背番号10を除くといずれものちに日本を覆う悪夢の様な戦争が終わった後の平和な時代で活躍した2人の選手のものであるのだからプロ野球黎明期のタイガースを支えた藤村選手の功績の大きさは計り知れない。
藤村は投手と野手の二刀流という、のちの令和の世では世界的に有名な日本人選手しかやっていないけれど当時としては当たり前のプレーを通じて、日本プロ野球に残る初めての記録をほぼ総なめする形で球界を沸かせた。
藤村が打撃の人ならばタイガースを支えた投手のエースに景浦という選手がいる。
しかし、のちに起こった戦争に軍人として参加するも生き残って戦後も野球界の発展に向けて最善を尽くした藤村とは対照的に、その戦争で亡くなった景浦は平和や命の尊さを教える貴重な存在として戦後も語り継がれている。

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プロ野球物語〜タイガース編〜①

大正から昭和に時代が移ってまだ然程時間が経っていない横浜の港に野球の母国・アメリカのプロ野球選手団が日本の学生野球選手と親善試合をするために日本プロ野球の歴史は始まった。。
当時から野球が盛んで有名、かつ東京の学校ということでのちに東京6大学という独自のリーグを構成することになる6校からそれぞれの代表と全日本代表が交互にアメリカ代表と対戦した。
結果は、日本代表の全敗。
米国から取材に同行した新聞記者を中心に発行された新聞記事を通じて日本の学生選手のプレー能力の高さが明るみに出たことで日本側は学生とお金に絡むスキャンダルが起こることを危惧して海外からのプロ選手との試合を禁止する規則を設けた。
しかし、そんな規則ができるのと同じ頃当時の主要メディアの新聞会社を中心に「日本にも職業野球を」という声が高まった。
そうして当時から有名な新聞社の一つを中心に発足したのが日本初のプロ野球チーム、東京野球倶楽部と日本初のプロ野球リーグだ。
この東京のチームこそがアメリカへ遠征試合をしに行った際、最初の試合で対戦相手の監督から球団名が分かりにくいと言われてチームの英語名を「ジャイアンツ」とし、それから90年以上が経ったこの令和の世でもジャイアンツやその日本語訳の巨人という名前で親しまれているあの球団の前身だ。
ジャイアンツの遠征は日米選手の実力の差を如実に現したけれど興行としては大成功を収め、当時から「大学野球の聖地・明治神宮野球場」と対になる学生野球のもう一つの聖地とも呼べる「阪神甲子園球場」を抱える関西でも職業野球チーム発足を求める声が高まった。
そうしてジャイアンツの1年後、西暦で言うと1935年に大阪で生まれた日本プロ野球第2号のチームがこの物語の主人公だ。
その名は大阪野球倶楽部、英語での愛称は「タイガース」でのちに親会社の名前を冠したチーム名に改称されるも90年と言う歴史や伝統を誇り続ける日本屈指の人気球団、阪神タイガースだ。
関西の猛虎、タイガースの90年の歩みを振り返ってみよう。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 23.オウリュウ ⑪

「あの子は昔から明るくて、何だかこんな僕にも良くしてくれるから、すごく嬉しかった」
だから僕も、人が怖くなっていったんだろうね、と霞さんは言った。
わたしや師郎は黙ってそれを聞き、隣のベンチに座るネロと耀平は静かにこちらを見ている。
黎もちらと霞さんの方を見る。
「ま、そういう訳で僕は変われたんだ」
霞さんは微笑んだ。
わたし達はそんな霞さんの事を見ているばかりだったが、やがて彼はさて!と呟く。
「そろそろ日も暮れてきているし、帰る事にしようか」
霞さんがそう言ってわたし達に背を向けると、え~もう帰るのー‼と耀平が不満気に声を上げる。
霞さんはそうだよ~と振り向いた。
「君達だって、そろそろ帰り始めないと親に心配されるでしょ?」
「まーそうだけど…」
耀平は不満気な顔をするが、霞さんはじゃーあー、と彼に近付き顔を覗き込む。
「僕の事、寿々谷駅まで送ってくれない?」
その言葉に、耀平の顔がパッと明るくなる。
「え、いいの?」
「うんもちろん!」
ギリギリまで一緒にいたいし~と霞さんは続けた。
「やったぁ!」
耀平はそう言って嬉しそうに立ち上がる。
霞さんはふふと笑った。

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