LOST MEMORIES ⅡⅩⅣ
ふと先生を見ると、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
まるで、嫌な予感を感じ取ったことを露骨に表したかのような顔。
「まったくお前たちは……」
大人とこんな付き合い方も出来るのかと、半ば感心する瑛瑠。自分は とてもじゃないけれど、こうした関わり方は真似できそうにはない。
人と同じようにしようとは思わない。けれど、そんな関係もまた、瑛瑠の目に魅力的に映ったのも確かで。
学校の魔力、だろうか。
一言。鏑木だ、改めてよろしく。
そう言った先生が、自己紹介という名の質問攻撃にあったことは言うまでもない。
生徒たちが満足し、疲れたような先生がさようならと号令をかける。明日からは委員長が言うからなと、今日は代打で先生。
初めてのことばかりの驚きと魅力に、瑛瑠は精神的に疲れていた。明日からの生活が、心身ともにもつか疑問である。
帰ろうと鞄に手をかけると、祝、と声がする。一瞬、自分だと気付くのに遅れた。