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Flowering Dolly:Bamboo Surprise その②

ビーストは目の前の壁を尾の打撃によって粉砕しながら、直線移動で建造物の反対側まで駆け抜け、勢いのままに壁を破壊して屋外へ飛び出す。そのまま向かいに建つ廃墟の壁に着地し、足に生えた鋭い鉤爪を突き立てながらその屋根まで駆け上がる。
その様子を、ビーストが開けた穴から見届けていた少女は、しばらく顎に手を当てて思案してから、その場を後にした。
それについて知る由もないビーストは、屋根も上を軽々と跳躍移動しながら、より高い場所を目指していた。
走り、そして跳びながら、ビーストは思考していた。
あの少女、外見上はまだ齢十にも届かないであろう小さくか弱い生き物は、物陰から顔を出しては、まるで子供同士が脅かし合うような軽い口調と構えで脅かしてくる。それだけであればビーストであるソレにとっては、何の脅威にもならない。
しかし。
ビーストの失われた左腕の傷が鈍く痛む。
最初に遭遇した時も、あの少女は軽く脅かすように物陰から現れた。ビーストの存在意義は人類とその文明の破壊にある。それ故に、生物学的本能として、ソレは左の拳を振るった。振るおうとした。瞬間、彼女の抱いていた桃色のテディベアが牙を剥き出しにして笑い、操り人形よろしく少女が持ち上げていた片手が巨大化・伸長し、先端に具わった鋭い爪が、ビーストの左腕を引き裂き破壊したのだ。
そして気付いた。彼女の襟元、左の鎖骨の上、衣服の下に隠れて見えにくくなっていた場所に、獣の爪を模したような文様が浮かんでいることに。
少女は“ドーリィ”であった。そのことに気付き、距離を取る。ソレは“ビースト”の中でもひときわ小さく、近接戦闘のみに特化した肉体構造で、『伸びる攻撃』との戦闘には不向きである。そして、少女本人との体格差。自分に対して少女はあまりにも小さく、少女に対して自分はあまりにも大きすぎる。それ故に、ソレの有効射程の『内側』に滑り込まれれば、攻撃は逆に届かない。相手の射程の『更に外』に出ることが、最適解だと判断したのである。

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Flowering Dolly:Bamboo Surprise その①

廃墟群の中を、1つの影が走っていた。
背の丈は大柄な成人男性程度。やや筋肉質な体つきをしたソレは、しかしてたとえ遠目から見ようとも人間では無いと分かるような特長を有していた。
最も明確な特徴は、長く太く平たい、ある種のサンショウウオが具えているような尾である。その他にも、頭部は大型爬虫類のような顎以外のパーツを持たず、皮膚全体は粘液に覆われてぬらぬらと光っている。
付け根から切断された左腕の傷口を水かきのついた右手で押さえながら、尾でバランスを取りつつ器用に全力疾走を続けるその影、“ビースト”は、どす黒い血痕を足跡のように垂らしながら、一心不乱に駆け続けていた。
“逃走”のためではない。生体「兵器」とはいえ、ビーストは1つの生命体である。1つの明確な意志を持って、ソレは駆け続けている。
“追跡”のためではない。ソレはたしかに戦闘の只中にあるが、敵対存在を追っているわけでは無い。敵はソレから逃げているわけでは無く、追っているでも無く、敢えて表現するのであれば、“隠れて”いる。しかし、発見しようという意志も無い。
そのビーストが求めていたのは、“状況の打開”。現在地はソレにとってあまりにも不利で、敵にとってあまりにも有利な環境だった。
がらり、と左前方から瓦礫の崩れるような音が聞こえてくる。反射的に、音から離れるように後方に跳躍し、右腕を戦闘のために構える。その時だった。
「わっ」
近くの物陰から現れた少女が、脅かすように声を上げ飛び出してきた。そちらに尾を叩きつけるが、少女は既に身を伏せ、その場から消えている。
ビーストがよろめくように少女の現れた物陰から離れると、ソレの頭部ほどの高さを通っていた剥き出しの配管にぶら下がった先程の少女が、テディベアを抱えた両手をソレに向けて突き出した。
「ばぁっ」
ビーストは咄嗟に大きく跳躍し、手近な廃墟の2階、その割れた窓から屋内に飛び込んだ。少女は配管からぼとり、と落下し、その後を追って1階から建物に侵入する。

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魔法をあなたに その⑪

『ところで怪物クンよ?』
別に、本当にあのバケモノに呼びかけてるワケじゃあない。タダの独り言だ。
『さっさと叩き潰して他のヤツブッ壊そうと思ってたら、目の前のチビが思ったより粘る。ソンナ状況でテメエならどうする?』
怪物は不意に攻撃の手を止め、【フォーリーヴス】を放置して別のやつらを狙おうと歩き出した。瞬間、【フォーリーヴス】の展開した巨大な障壁が、結界のように怪物とアイツを取り囲みやがった。
『あの馬鹿、怪物を閉じ込めヤガッタ!?』
外側に被害を出さないタメか! 畜生め、コレで完全に一騎打ちになったってワケだ。
『……ッキヒヒ。けどなァ【フォーリーヴス】。コレはテメエにとって圧倒的不利だゼ。テメエの魔法がどンだけ強かろうがなァ、この戦いがテメエの“1発目”だからこそ、断言できる』
そうだ。ヤツには絶対的な弱点が1つだけある。ヤツがマトモに人間社会で生きてきたからこそ、断言できる“弱点”だ。
怪物の叩きつけを躱し、【フォーリーヴス】が大きく跳び上がった。跳躍は怪物の頭ほどの高さにまで届き、そのまま障壁刀を振るう。
『無理ダ』
【フォーリーヴス】。テメエの過去を100パー知ってるワケじゃあねェが、マトモな道徳教育を受けて育ってきているはずだろ。
『そしてェ! テメエがマトモな道徳を持っている以上! デケェ“動物”への攻撃には!』
ヤツの攻撃を、怪物は軽く仰け反って容易に躱した。そりゃそうだ。遅すぎる。
『必ず“躊躇”が入る』
怪物のカウンターの裏拳が見事に直撃し、【フォーリーヴス】は勢い良く地面に叩きつけられた。

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五行怪異世巡『きさらぎ駅』 その③

2人が入った車両には、他に乗客が4、5人ほど座席に座っていた。2人も乗降口の近くの席に座る。
程なくして、青葉がこくり、こくりと舟を漕ぎ始めた。
「……ねぇねぇアオバちゃん」
「…………はぃ?」
小声で問いかけられ、青葉も呟くように反応する。
「ずいぶん眠そうだね?」
「まあ…………はい……」
「夜更かしでもした?」
「昨日は別に……」
(他の日はしてることもあるのかなー)
考えているうちに、青葉は再び寝息を立て始めた。
「あらら、また寝ちゃった。子供は体力が切れるとすぐ寝ちゃうもんなー」
苦笑しながら、白神は青葉をつつき回す遊びを再開した。

「……ーぃ、おーいアオバちゃん」
どれほど経った頃か、白神に揺り起こされ、青葉は目を覚ました。
「ん……もう、着きました?」
「いやー? なんか変な感じ。でも、そろそろ停まりそうだよ?」
白神が指す先、車窓の外を見ると、日が暮れた後なのか既に真っ暗になっていた。
周囲を見回すと、車両内の人数は乗車直後とさほど変わってはおらず、どの乗客も座席に深く座り込んで居眠りをしているようだった。
「もうこんな時間ですか……わぁっ⁉」
まだ眠たげに目をこすっていた青葉が、突然座席から飛び出すように倒れた。
「え、アオバちゃん? そんなに揺れた?」
「いえ、そういうのじゃ……」
青葉が立ち上がろうとしたとき、電車が急ブレーキをかけて止まり、慣性で青葉は再び床上を転がった。

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Flowering Dolly:魂震わす作り物の音 その④

「えっ」
「危なかったぁ……私に感謝してよね」
「それはまあ毎度のことしまくってるけど……いやマジでありがとう」
「どーいたしまして。今日の晩御飯を豪華にすることで手を打とう」
「そのための台所が今削ぎ飛ばされたんだよ」
「そうだった」
取り敢えず抱えていた腕を離し、台所を破壊した憎き敵が何者なのか、それを確認することにする。
台所があったところを確認すると、巨大な『顎』が木材の破片を牙の隙間からはみ出させながら咀嚼していた。
「む……あの口の中に、私のご飯が…………!」
簡易魔法で身体強化を施し、思いっきりビーストの顎を殴りつける。ヤツは大きく仰け反り、家から少し離れてくれた。
「けーちゃん! アイツブッ飛ばそう!」
「いやそれには賛成だけど俺呼ぶか、普通?」
文句を言いながらも、あいつは隣に立ってくれた。2人で破壊された家の穴から外に出る。
ビーストの姿をよく見てみると、なるほど理解ができた。
「こいつ、多分さっきの襲撃の主犯だよ」
「は? 八つ裂きにされたんだろ?」
「まあ話を聞いてくださいよ」
目の前でのたうっているビーストは、頭部の上顎より上、両前脚、下半身全体を切断されて欠損しており、その切断面は焼き固められたように焦げ付いている。
「高熱の刃物で切り刻まれたみたいな見た目じゃない」
「たしかに……そういやさっきのニュースでやってたな。っつーかなんでこんなデケぇ塊が放っておかれてたんだよ」
「担当の子が雑な性格してたんじゃない? しかしあいつ、ダメージの回復のために何でも食べるつもりみたいだね」
「ああ……アリー、大丈夫か? ちゃんと契約してるドーリィが来るまで無理しない方が……」
あいつの言葉に、思わずため息が出る。勿論、籠った感情は呆れ一択。
「私がやる気ない時は無理に叩き起こすくせに、私がやる気出す時は無理するなとか変なこと言うんだから……」
ビーストが首をこちらに向けてきたので、身体強化で殴り飛ばし、距離をさらに広げる。

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五行怪異世巡『きさらぎ駅』 その②

ホームに設置されたベンチに並んで腰かけ、青葉と白神は世間話をしていた。
「……あ、そういえばアオバちゃん」
「何です?」
「今日はあのカタナ持ってないんだね?」
「持ってるわけ無いでしょう……電車に乗るのに」
「それもそっかー」
その時、人身事故によって電車が遅延する旨のアナウンスがホームに流れた。
「む……縁起が悪いですね」
「そうだねぇ……人が死んだり怪我したりするのは嫌だよ。……ん、何?」
青葉からじっと見つめられていることに気付き、白神が尋ねる。
「いえ……メイさん、結構人間に思い入れあるんだなぁ……って」
「そりゃあそうだよー。だってわたし、もう20年も人間として生きてたんだよ? ココロもカラダもすっかり人間さんだよぅ」
一度会話が途切れ、2人は電光掲示板に目をやった。電光掲示板に表示された次の電車の到着時刻の横には、15分の遅延と表示されている。
「まだ来ないねぇ……アオバちゃん?」
返事が無いために青葉を見ると、彼女は白神の腕にもたれかかり俯いた形で動きを止めていた。
「……寝てる? おーい、アオバちゃーん? 体力無いのかな?」
青葉をつついて遊んでいた白神がふと顔を上げると、いつの間にやって来たのか、電車がホームに停まっていた。
「わぁ、15分って意外とはやーい。ほらアオバちゃん、いくよー?」
青葉を揺り起こし、2人が車内に早足で入った直後、ドアが閉まり電車が動き出した。

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Flowering Dolly:魂震わす作り物の音 その③

あいつの家に先に入って食卓について数分、あいつも遅れて帰って来た。
「おかえりぃ」
「ただいまー……っと。ちょっと待っててな。っつーか揚げ物って地味にダルいんだよなぁ油の処理とか……」
台所で調理の準備を進めるあいつをしばらく眺めていたけど、暇になってきたので卓上のラジオの電源を入れることにした。
ちょうどオーケストラの音楽が終盤に入ったところで、それも終わると次の枠のニュース番組が始まった。それくらいのタイミングで、台所のあいつが包丁を操る音が聞こえてきた。
「…………けーちゃぁーん、さっきのビースト騒ぎのニュースやってるー」
「そうか。じゃあ音量上げてくれるか?」
「はいはい。……けど、アンタも物好きだねぇ。どうせ何もできないくせに」
「分かんねーだろ。もしかしたら俺と相性のいいドーリィがいるかもじゃん」
「無い無い」
あいつと笑い合い、ラジオの音量つまみを操作した。テーブルで聞いているには少しうるさいボリュームになったので、立ち上がって料理中のあいつにちょっかいを出しに行くことにした。
ラジオからは、刀身が燃えるナギナタを操るドーリィがビーストを八つ裂きにしてしまい、現在も破片の回収作業が続いているって話をアナウンサーが読み上げていた。
「武器かぁ……憧れちゃうなぁ……」
独り言を口にしつつ、あいつの脇の下から調理の様子を覗き見ると、あいつは付け合わせ用の葉物野菜を切っているところだった。何故か手が止まってるけど。
「どしたのけーちゃん。早く進めなよ」
「そうしたいのは山々なんだけどなー、フィスタがそこにいると危なくて進められないからなー」
あいつの脇腹を軽く小突いてから、台所を離れて窓から何とはなしに外を眺める。
住宅地のど真ん中だから、大した景色も見えないけれど、あの家々の向こう側では、今も倒したビーストの死骸処理が進んでいるんだろうか。
「私もビースト退治やりたーい」
「やりゃ良いだろ。別に最低限戦うくらいはできるんだろ?」
「武器とか派手な魔法つかって豪快に戦いたいのー」
「じゃあさっさとマスター探すんだな」
「ん……」
瞬間移動で台所に移動し、あいつを抱えて再び移動する。直後、台所周囲がまとめて『削り取られた』。

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魔法をあなたに その⑩

何ァーんか、話の流れがおかしくねェか? 今テメエは、人外領域の力と、ヤツの生殺与奪の権利を握っているんだぞ? オイラ手ずから態々用意した『名前』で、魂にも“復讐”を染み込ませて、ソレなのに。
「その後、ちゃんと話し合おう。だから……今は逃げて!」
「!」
イジメッ子が逃げ出しやがった。怪物が追おうとするが、そこに【フォーリーヴス】が立ち塞がりやがる。
『…………オイ。クソガキが…………おかしいだろ』
【フォーリーヴス】に向けて、怪物が前脚を叩きつける。長く太いそれの先端に具わった鋭い爪は、しかして【フォーリーヴス】が魔法によって展開した、エネルギーの障壁に阻まれ受け流された。
『ッ……! な、クソ……クソッ!』
今気付いた。あいつの出した「刀身」。ありゃァ「刃」じゃねェ。形状が違うだけの「障壁」だ。
『あンの女郎……! フッザけるなよ! 俺はテメエに“復讐者”の名を与えたンだぞ! ソレをテメエ、「四つ葉」なんて名前で、本気で自分が“幸運の象徴”にでもなったつもりか⁉ テメエ、名付け親への冒涜だぞ⁉ 侮辱罪ダ! ふざけやがって! 本気で善人のツモリか⁉ 相手はテメエを散々傷つけたゴミクズだ! 怪物被害で簡単に人が死ぬこのご時世で1人や2人死んだところで、誰も何も思わねえ木ッ端だ! 見捨てれば良い! 良いか! テメエ如きが善人ぶって何人救おうが何十人守ろうが! 人間の悪意は変わらず人間を傷つけ! 手の届かないどこかで必ず誰かが死ぬ! 魔法少女なんざ本質的にエゴイストでしかねェんだぞ! それをテメェ……! 心の底から善人でありたがってるってのかよ! フザけるな! オイラの計画が全部パァじゃねーか! 何のためにテメエを魔法少女にしたと思って……!』
オイラが喚いている間も、ヤツは、【フォーリーヴス】は障壁の魔法を駆使して、自分の数倍も目方のある化け物と互角に渡り合っている。あの女郎、マジに初陣かよ?

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Flowering Dolly:魂震わす作り物の音 その②

「ま、どうせお役所もすぐに適当なドーリィ派遣してくれるでしょ」
「いやABSSって別にそういう所じゃなくねーか?」
「けどドーリィならあそこにもいるじゃん。それで見ないふりはそれこそおかしいでしょ? あんたの理屈なんだけど」
「ぐ……いやまぁ…………」
遠くの方から破壊音が聞こえてくる。ビーストの仕業か、ようやく来たドーリィの仕事か分からないけど、少なくとも私の出る幕は無いってことだ。
「ほらけーちゃんも、只の人間がそんなピリピリしてないで、一緒にお昼寝でもしようよ。今日は気温も風もちょうど良いよ」
「いや別に……もう良いや。行かないならせっかくだから何か1曲やってくれよ」
「お代は?」
「飯作ってやる。良い鶏が手に入ったんだ」
「お、良いねぇ……揚げ物が良いな」
「了解」
交渉成立。ハンモックを吊るしていた木に立てかけておいたクラシックギターを足で引き寄せ、適当に弦の調整をしてから、思いつくままに爪弾く。今日はこんなのしか無いし、ボサノバっぽい雰囲気で雑に流していく。
ちょうど1曲終わったところで、破壊音も収まった。事態は無事に片付いたみたい。
「終わったみたいじゃん。良かった良かった……それじゃ、こっちも終わったから行こ? ご飯ご馳走してもらわなくちゃ」
「分かったよ」
家路につくあいつの後ろをついて行く。ふと、あいつが立ち止まってこっちに振り返った。
「どしたのけーちゃん?」
「いや、言っとかなきゃと思って」
「何を」
「アリー、今日の演奏も最高だった」
「…………知ってる」
あいつを追い越す勢いで足を速め、あいつの家へ向かった。

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魔法をあなたに その⑨

僅かに遅れてヤツに追いつくと、【フォーリーヴス】は怪物の目の前に立ち止まり、目を見開いて何かを凝視していた。怪物を、じゃねェな、どっちかってーと、その足下、の……。
(オイオイマジかよ!)
最高だ。怪物が今にも踏み潰そうとしていたのは、【フォーリーヴス】、いや、千代田ツバメを普段イジメてた主犯のガキじゃねえか!
『なァツバメちゃんよォ』
魂への囁きを、【フォーリーヴス】に差し向ける。直接ヤツの魂に触れることで、その「欲望」を剥き出しにさせる、生物学的標準技術だ。
『コイツはどうしたことか、最高のシチュエーションじゃねェか。目の前にはテメエを虐めてるクソガキが、化け物の手で殺されそうになっていやがる。喜べ、テメエの願いは叶うぜェ? しかも、テメエが手を汚す必要も無ェ』
「っ…………」
【フォーリーヴス】が硬直していると、ヤツが、あのイジメッ子がこっちに気付いた。
「なっ、千代田……!」
イジメッ子の目は如何にも「助けて><!」って言いたげだ。
『キヒヒ、テメエの願いを言えよ。イヤ、言う必要も無ェ。ただ願え。心の底に眠る願いを。己を取り巻く悪環境の終結を。何たってテメエの名は【フォーリーヴス】』
“幸運の四葉”? いいや違うね。 テメエのその名に与えた意味は、“復讐の白詰草”。
『名は体を表す』、テメエらの諺だ。体を表せよ。
復讐に堕ち、人道を外れたその瞬間! 昏く鈍く擦り減り切った魂は、最ッ高に上質の“魔力源”となる。
さあ。
さァ!
『サアァッ!』
ヤツが徐に歩き出した。それに応じて、手の中のブローチも輝きを放ち始める。
学校制服はやや和風の衣装に、学校鞄は刀身を持たない日本刀の柄に、陰気な黒髪は若草色のツインテールに、ヤツの姿が魔法少女のソレに変身する。
「………………ごめん」
ヤツがそう呟き、柄を握る手に力を込めると、そこに光の刀身が現れた。何だ、マサカ自らの手でヤるつもりか? 思ったヨカやるじゃねーの。
「色々、話したいけど……全部終わって、2人とも生きて帰って、その後」
『……ァン?』

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Flowering Dolly:魂震わす作り物の音 その①

「フィスタぁー! どこだー!」
私を呼ぶ声が、正確には『あいつが私を呼ぶときの名前』が聞こえる。
「………………」
寝ていたハンモックから身を起こし、あいつの姿を遠くに確認してから自分の身体を隠すようにぬいぐるみの山を崩し、だんまりを決め込む。
「フィスタぁー? おいフィスタ!」
声がだいぶ近付いてきた。多分もう何mも無い。
「やっぱりここにいたか……おいフィスタ、いるなら返事しろよな」
ぬいぐるみバリアが崩されて、光が差し込んできた。
「フィス……」
「だっかぁらあっ! そう呼ぶなっつってんでしょうがぁっ!」
不用心に覗き込んできたあいつの顎に蹴りを食らわせてやる。
「痛っ…………てえなぁフィスタてめえ!」
「私のことは『アリー』って呼べっつってんだろクソガキ!」
「てめえも外見はクソガキだろうが!」
いつものやり取りを済ませ、渋々ハンモックから抜け出す。
「それで? どうしたのさ」
「あぁ、ビーストが出たんだよ。“ドーリィ”の出番なんだろ?」
「そんなのお役所に任せとけば良いじゃん……」
「おま、せっかく“ドーリィ”の力があって、見ないふりするってのかよ」
「『力』っていってもねぇ……」
再びハンモックに仰向けに倒れ込み、掌を太陽に向ける。ちょうど私の方に向いた手の甲には、契約済みの紋様が…………。
「浮かんでれば、考えたんだけどねぇ……」

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魔法をあなたに その⑧

フヨフヨ移動で【フォーリーヴス】を先導する。爆心地はアイツの通う学校から徒歩15分ほどの大型ショッピングモール。建物の前に広がる駐車場で、体高5mほどのクマとトカゲとチョウチンアンコウをまぜこぜにしたような化け物が暴れている。
手近な自動車を片手で持ち上げ……逃げ惑う市民に向けて……いや特に目標は定まってねェな、テキトーに投擲。壁に衝突した車両が爆発し、金属片やガラス片が市民に降り注ぐ。オイラには痛覚とか無いから分からんが、多分痛そう。【フォーリーヴス】の方を見ると、ヤツもこの光景にショックを受けているようだ。
『ウカカ、最近怪物の出る頻度も増えてきてるからなァ……“魔法少女”の需要と供給はトントンだぜ』
「……? さっきも言ってた『それ』って……」
『ンー? アー……まァ……雑にいうと…………テメエら人間が言うところの……正義の味方?』
テキトーに答えたが、ヤツは聞いちゃいなかった。オイラの「ンー」の辺りでヤツは既に歩き出していた。
『…………オイオイ、マジかよ……』
ウソだろ? 人間ってのァもうちょい弱くて臆病で自分がカワイイ生き物のハズだろ。
たしかにアイツには“力”をくれてやった。だが、「使い方」までは知らねェはずだ。
慌ててヤツの後について行く。

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魔法をあなたに その⑦

予想外。突拍子も無ェ。まさかの即断即決。その間約1秒。流石にビビった。これイジメ問題がどうこうとか言う感じじゃなさそうだな?
『おまっ、なん……いや』
何故とか野暮は聞かぬがアレよ。双方合意が取れたところで、イヨイヨ待望のご対面といこうじゃねェか。
空中をフヨフヨと進み、ヤツの眼前へ進み出る。
『ハァロォー、ツバメ=チャンよォ』
「は、はじめ、まして……」
リアルのオイラを見て、ヤツはそれなりにビビッているようだった。ま、見慣れない生き物に警戒すンのは正しいぜ。
『このタビは、ご契約いただき感謝感謝だゼ。そいじゃァ早速、テメエにプレゼントだ、千代田ツバメ』
ヤツにブローチを1つ、投げて渡す。危うげながらも無事に受け止めたところで、説明を開始する。
『ドーダ、なかなか洒落た意匠だろ?モノホンの翠玉と白金を使った、四ツ葉のクローバーさ』
「へぇ……あ、ちゃんと葉っぱがハートじゃなくて丸い……」
細かく気付くなこの女郎。
『キシシシシ、四つ葉はラッキーのお守りだからなァ。テメエの“魔法少女”としての名だって既にあンだぜ? 名付けて【フォーリーヴス】』
「はぇ……ありがとうござ……ん、魔法少女?」
ヤツが疑問を浮かべたところで、遠くから爆発音が届いてきた。
『キキッ、コイツは間が良いというベキか悪いというベキか……ついて来い、【フォーリーヴス】』

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Flowering Dolly 〈設定〉 その1

この書き込みは企画「Flowering Dolly」の〈設定〉書き込みです。
企画の概要は〈企画要項〉を参照すること。
それでは設定です!

・ドーリィ Dolly
異界から来たる敵“ビースト”によって存亡の危機に立たされた人類の前に現れた、少女の姿をした“何か”。
人間と未契約でも身体能力強化や狭い範囲での瞬間移動、軽いケガの治癒、ドーリィ間でのテレパシーなどの魔法を使うことができるが、適正のある人間と契約することで固有武器の召喚などより高度な魔法の使用が可能になる。
適正のある人間がドーリィに対し契約を承認すると、マスターと同じ身体の部位(手・腕・脚が多くそれ以外はまずない)に固有の紋様が現れる。
花の学名の属名部分(詳細は長くなるので割愛)を名乗っており、その名にちなんだ華やかな容姿・服装を持つ。
空間中の魔力を取り込むことでその身体を維持しているため、基本食事はいらない上不老。
しかし首と心臓が弱点のためこのどちらかを破壊されると死ぬ。
最近は古代遺跡から発見されることも多く、古代文明との関係性が指摘されている。
その正体は、超古代の魔法文明でビーストと戦っていたいわゆる生体兵器。
契約しないとロクに戦えないのは不用意に人間を傷つけないためである。
だが彼女たちとビーストの激しい戦いによって魔法文明は崩壊、ドーリィたちは来たる次の脅威に備えて長い眠りについていた。

・マスター Master
“ドーリィ”と契約した人間のこと。
正称はドーリィ・マスター。
特定のドーリィに適正のある人間のみが契約することでなることができる。
ドーリィに対し契約を承認すると契約したドーリィの身体の同じ部分(手・腕・脚が多くそれ以外はほぼない)に固有の紋様が現れる。
契約したドーリィの(一応の)管理者であり主人…なのだが、ドーリィの尻に敷かれるマスターも少なくない。
ドーリィと違って無力な存在なので戦闘に巻き込まれて命を落とすこともある。
でも基本的にドーリィはマスターを守ろうとしてくれるのでそう簡単には死なない(はず)。
地域にもよるが英雄視されることが多い。

その2に続く。

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魔法をあなたに その⑥

ようやく『入り込めた』。
「手助け……って……?」
『言葉通りサ。オイラの誘惑に乗っかるってンなら、テメエのイジメを何とかする手を用意してやっても良い。安心しろ、犯罪にゃならねェ。現行法に魔法を裁く手段は無いからな』
「ま、魔法……?」
『ソソ、魔法。メァジク。良いか、コイツはオイラとテメエの“対等な”契約だ、千代田ツバメ』
ヤツの身体がまたビクッとなった。そりゃ、名乗ってもいねェ名前当てられりゃ驚くか。
『言ったろ、オイラは情報ツウってな。ンでだ。オイラはテメエに“魔法”をくれてやる。どんな魔法になるか、悪いがそれは断言できねェ。ソレはヒトエにテメエの精神性にかかってるからだ。……だが』
「……だが……何ですか?」
チョット勿体ぶると、見事に食いついた。勝ったな。
『テメエが本気でこの“イジメ”、何とかしたいと思ってんなら……安心しな、ソイツは叶うぜ』
ヤツはオイラの言葉にかなァり引き付けられているようだった。何かあと一押しでもあれば、コロッと堕ちるな。
「えっと……1つ、質問なんですけど」
あン?
「その、“契約”…………なん、ですよね?」
『オ、そうだな』
「じゃあ、私は何を払えば良いんですか?」
チクショウ鋭い。マァ、ここは嘘はつかないようにして……っと。
『まァ……コレを受けて後、万が一テメエが何かあって死んだとする。テメエにくれてやった分の魔力……マァ魔法エネルギーみたいなモンだ、それとツイデに魂ってヤツも回収させてもらうぜ』
ドーセ“魔法少女”なんざ早死にする人種だろうし、嘘は吐いてねェやな。
「死んだ……後…………」
ヤツが考え込む。ま、即決されなくても構わねェよ。営業は数が命だ。
「分かりました」
『へ?』

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魔法をあなたに その④

『よしオーケイ、そんじゃァ早速本題に入らせてもらうぜェ』
「あ、あの、一つ良いですか?」
『ア? 何でェあと周りに人の姿が無い場所で大声で話すのはオススメしないぜ』
「え、あ、はい……」
ヤツが声を潜める。よしよしと頷き、話を再開しようとして、ヤツの方からこっちに問いかけてきやがった。
「それで、さっきの質問なんですけど。あの、あなたは一体……?」
『アァン? ンなこたァどうでも良いんだけどよォ……まーいーや。オイラのこたァ小悪魔とでも呼びやがれィ』
「あ、はい……え、あ、悪魔?」
『ソソ、悪魔タン。オイラのビジュアルがテメエらでいうところの如何にも悪魔でヨ。まァテメエらが想像するほど恐ろしい代物でもねーから、気楽に付き合おうぜ?』
「は、はい……」
『そんじゃ、自己紹介が終わったところで本題に入るか。あァ、ソッチの名乗りは要らねーゼ? オイラは小悪魔だからナ、情報ツウなんだヨ』
「そ、そうなんですね……」
ヤツの戸惑っているサマは少し愉快だったが、いい加減本題に入らねェとオイラの身体にも悪い。ここは敢えて、使い古された伝統的文句で攻めさせてもらおうか。
『なァ嬢、お前さん、“力”が欲しくないか?』

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五行怪異世巡『こっくりさん』 その⑦

「皆さん、終わりました。もう目を開けても良いですよ」
4人の生徒は、平坂の言葉に恐る恐る目を開けた。霊感の無い4人には、目に見えた変化は確認できない。
「お疲れ様でした。これで脅威は去ったと思いますが……念のためにこれを持っていてください」
そう言って、平坂は4人に1つずつ、真鍮製の小さな鈴飾りを渡した。
「あの、これは?」
女子生徒の1人が尋ねる。
「お守り代わりの品と思っていただければ。常に肌身離さず……とまでは言いませんが、しばらくの間、可能な限り身近に置いておくことをお勧めします」
「はーい……神主さん、今日はありがとうございました」
その生徒の言葉に、あとの3人も感謝の言葉を続けた。
「リホちゃんも、呼んできてくれてありがとうね」
「良いの良いの。私は今回のことについてこの人と少し話さなきゃだから、みんな帰って良いよ」
犬神が追い返すように手を振りながら言うと、4人の生徒は頭を下げながら教室を出て行った。
「……お疲れ、『神主さん』」
「とどめを刺したのはお前だろう」
2人だけ取り残され、平坂と犬神は軽く拳を突き合わせ互いを労った。
「あ、砂返すね」
「要らん。持っていろ。あって困るモノじゃ無いだろ」
「うーい」
犬神が能力で砂を操作し、巾着袋の中に一粒残らず納め、口を締める。
「そういえば『アレ』、何だったんだろうね? こっくりさんってキツネじゃないの?」
「分からん。凡そ四足動物のようではあったが……あの生徒ら、何を呼び出したんだ?」
「分かんない。やってるところ実際に見てたけど、大体普通の『こっくりさん』のやり方だったよ?」
「……そうか。俺はもう帰るから、結界の片付けを手伝え」
「ほいほい」

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五行怪異世巡『こっくりさん』 その⑥

それからも数度、短刀による刺突を放ったが、影はその尽くを回避する。
ゆらゆらと蠢く影を、跪いた姿勢のまま睨み続けていた平坂の背中を、不意に犬神が軽く叩いた。
平坂が振り向くと、犬神は既に巾着袋の口を開け、中の砂を掌に空けている。それを見て、平坂は数秒逡巡してから、結界の中の4人に声を掛けた。
「……そのまま目を閉じて、決して見ないように」
そして、犬神に手でゴーサインを出す。犬神は小さく頷き、手の中の砂を宙に向けてばら撒いた。砂は落下することなく空中に留まり、犬神の手の動きに合わせて波打つように動き、刃の形状に固まった。
犬神が影を指差すと、砂の刃は高速で射出され、影の胴体を切断する直前で回避され、床に衝突した。それによって粉砕された刃は、6本の棘に再形成され、うち4本が影に向けて再び発射され、そのうちの2本が命中し、影の身体を空中に持ち上げた。
(ふー、ちょろちょろとよく動いたけど、やっぱり『数』は『強さ』だよ)
口の中で呟き、外した2発、撃たずにいた2発の棘を構成していた砂を、1つの弾丸の形状に変形させ、空中で回転させながら照準を定める。
(吹っ飛べ)
砂の弾丸が発射され、影の胴体に命中し、その全身を衝撃によって破裂させた。

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五行怪異世巡『こっくりさん』 その⑤

瞑目して集中していた平坂は、開始の宣言と共に目を開いた。
4人を囲う結界の周りを、一つの小さな影が蠢いている。
生徒の方に注意を向けると、4人とも恐怖からか目を固く閉じているようだった。
平坂が隣に立つ犬神に目をやる。犬神は、先程平坂から受け取った砂の入った小袋を持ち上げ、小首を傾げて見返していた。
(使おうか?)
目だけでそう問う犬神に、平坂はまだだ、という意味を込めて首を横に振る。
再び影の方に視線を戻すと、その影は四足にて結界の周囲を歩き回りながら、蝋燭や盛り塩に触れては身体を仰け反らせていた。
平坂はその様子をしばらく眺め、徐に1枚の御札を床に落とした。
影は歩き回る軌道をそのままにそれを踏み、何事も無く通り過ぎる。
「…………」
黒く変色した御札を拾い上げて鞄に放り込み、代わりに取り出した金属製の円盤を床に置く。影はそれも問題無く踏みつけて通り、金属板は中央から真っ二つに割れてしまった。
(……奇妙な霊だ。結界を破る力は無いにも拘らず、いざ殺そうとすると高い耐性で抗ってくる。力が強いのか弱いのか……)
続いて短刀を鞄から取り出し、ゆっくりと影に突き立てようとする。影は急に動きを止め、身を捩り短刀を回避した。

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魔法をあなたに その③

サテサテ待つこと時計の長針1周分。
よーやっと好みの人材が出てきやがった。見るからに陰気臭せェ女生徒が1人、周囲を気にしながらそそくさと出て敷地外目掛けて一直線ってなワケですよ。
『……当ォー然、声かけるよなァ、えェ?』
ヤツの背後をついて行きながら、ひとっ気の無い場所に入るのを待つ。
辛抱強く待つこと10分チョイ、遂にチャンスが訪れた。ヤツが団地の中に入っていった。
そのまま不気味なほど静かな細い道に入り込んでいったタイミングで、声を掛ける。
『よォ、そこの陰気なお嬢ちゃん』
たしかに魂が足りてねェせいで大それたマネはできねェが、人間の頭に直接声を届けるくらいはオイラ達の生物学的標準機能だ。
オイラの声に気付いたあの娘は、仰天したみてーに足を止め、キョロキョロし始めた。
『今はテメェの頭ン中に直接語り掛けてるンだよ』
「だ、誰⁉ 誰なの⁉」
『えェイ落ち着け! テメェ今、周りから見りゃ完全にヤベェ奴だゼ』
「ぅっ……」
『よォし良い子だ落ち着け落ち着け。深呼吸しろシンコキュー』
ヤツがそれなりにリラックスするのを待ってから、会話を再開。
『安心しろヨ、今テメェに語り掛けるこの声は幻聴でもイマジナリー・フレンドでも何でも無ェ、純然たるマジモンだぜ。まずはソコを受け止めてもろて』
ヤツはおずおずとって感じで頷いた。これで先に進める。

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五行怪異世巡『こっくりさん』 その④

「みんなお待たせー、神社の人連れてきたよー」
犬神が力強い足取りで入っていくその教室の中には、男子生徒2人、女子生徒2人が既に待機していた。
「皆様初めまして。私、隣町の爽厨神社にて神職を務めております、平坂と申します」
平坂が4人に恭しく頭を下げ名乗る様子を、犬神は横目で笑いを堪えながら眺めていた。
「さて……この度はどうやら、厄介な霊障に巻き込まれたようで」
4人の生徒が何か言う前に、訳知り顔で言葉を続ける平坂に、生徒たちは息を呑んだ。
「そ、そうなんです! 俺達、終業式の日に、こっくりさんやって……それからずっと、誰のところでも変なことが起きてて……!」
男子生徒の1人がまくし立てるのを、平坂が片手で制止する。
「ええ、皆さんに憑いているモノについては視えておりますが……あまり『ソレ』について話さないように。『縁』が強まってはいけませんから」
「う、は、はい……」
平坂は説明を続けながら、携えていた鞄を床に下ろし、中の道具を取り出し始める。
「皆さんに憑いたモノは……言ってしまえば決して強い存在ではない。しかし、ある種の『儀式』の形で呼び出してしまったことで、存在が強まり皆さんとの縁で完全に現世に固定されてしまった」
平坂は話しながら、4人の生徒の周囲に糸と蝋燭で方形の結界を作成した。蝋燭に1本ずつライターで火を点け、結界の四隅に並ぶ蝋燭同士のちょうど中間の位置に円形の鏡を1枚ずつ、計4枚置き、更に四隅に盛り塩を施した。
「ね、ねえ神主さん、リホちゃんは入らなくて良いんですか……?」
女子生徒の1人が、犬神を指しながら恐る恐る平坂に尋ねた。
「別に私は何にも来てないもーん」
「……実際、彼女に『良からぬモノ』が近付こうとしている様子はありませんから。優先すべきはあなた方4人です。ここからは、私が良いというまで一言も話さないように」
生徒4人が頷いた。
「……では、始めます」

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ロジカル・シンキング その⑫

怪物は暴れ続けるうち、足下の瓦礫に躓き、横倒しに倒れ込んだ。建物の残骸はその質量に押し潰されて容易に崩壊する。
「ホタ! 目隠し!」
「はいはーい!」
アリストテレスの声に答え、フレイムコードが指揮棒よろしくスタッフを振り上げると、炎の渦はうねるように変形し怪物の頭部周辺を取り囲んだ。
(破壊力を意識した〈CB〉とはずらして、硬度と弾速に割り振った貫通力特化型のプリセット)
「〈Preset : Wedge Bullet〉。ホタ、目隠しと外壁一瞬消して!」
「うえぇ? い、いややるけどなんで……」
炎の壁が一瞬分断され、外の空気が流れ込んでくる。それと共に、弾丸のように一つの影が飛び込んできた。ドゥレッツァだ。
「そおおおおおおおおお、りゃああっ!」
勢いのまま、炎の覆いが取り払われた怪物の頭部にドロップキックを直撃させ、跳ね返る勢いで真上に跳躍する。
「カウント3!」
ドゥレッツァの合図に頷き、アリストテレスは〈WB〉と〈CB〉を連続で怪物に向けて射撃した。〈WB〉の着弾と同時に、ドゥレッツァの魔法によって衝撃が炸裂し怪物の頭部が大きく揺さぶられる。その揺り戻しと同時に、銃創を正確に〈CB〉が貫いた。
魔法弾は怪物の体内でその破壊力を発揮する。頭部、ひいては脳という生命と行動管制を司る器官を、外皮装甲の無い内側から直接破壊されたことで、怪物はその身を一度大きく痙攣させ、やがて脱力し動かなくなった。

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五行怪異世巡『こっくりさん』 その②

「……私用か?」
「まあね。同級生が馬鹿やったっぽくて」
「お前やあの鬼子でどうにかできない問題なのか?」
「んー……ほら、『こういうの』で被害者の子たちに大事なのってさ、『形としての安心』なわけじゃない?」
「……『こういうの』とは?」
「うちの学校の馬鹿共がやったのがさぁ、“こっくりさん”なんだよ。分かる? 霊とか神様とか、そういうの絡みなの。だからさぁ、私、知り合いに神社の人がいるって言っちゃって」
犬神の話を聞いた平坂は溜め息を吐き、やけに重い犬神の財布を突き返した。
「身内の頼みだ、金は要らん。日時と場所だけ教えてくれ、こっちから向かう」
「わーい。じゃあ明後日。10時くらいが良いな。場所はねぇ……ね、スマホ持ってる?地図見せるから」
「言われれば自力で調べるが……」
言いながら、平坂は自分のスマートフォンを取り出し、地図アプリを起動してから犬神に手渡した。
「ありがとー。えっとねぇ…………、ん、出た出た。ここ、この中学校ね」
犬神から返却されたスマートフォンを見ると、画面には隣町の中学校の位置情報が表示されている。
「……それなりに遠いな。電車を使うか」
「キノコちゃんなら10分で走って来れるのに?」
「あれと一緒にするな」
「あ、そうだ。何か良い感じの衣装とか着てきてくれると嬉しいな」
「……それで電車に乗れと?」
「たしかにそれは恥ずかしいか。じゃあ何か良い感じの小道具だけ持ってきてよ。あるんでしょ?」
「……まあ、必要な道具を用意すれば、自ずと様になるだろう」

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ただの魔女:キャラクター②

・中山サツキ
年齢:15歳  身長:155㎝
魔法少女の1人。使用武器は長さ130㎝程度の短槍。得意とする魔法は2種類の空間転移能力。
1つは「自身を対象とした最大射程3mのショートワープ」。
もう1つが少し複雑。「①対象を『3つ』選択する(それぞれ対象A、対象B、対象Cとする)②対象Bを中心として、対象Aと対象Cが点対称の位置にいる時のみ発動できる③対象Aと対象Cの位置を入れ替える」というもの。かなり使いにくい。
基本的に悪いことをした人にもそれなりの事情があるはずだから、寄り添って理解して、更生してもらおうというスタンス。こいつに「殺すしか無ェ!」と思わせる奴がもし現れたら、そいつは誇って良い。そして死ね。ヒカリは寄り添った結果本気で殺し合うのが最適解だっただけだから例外ね。
ちなみに魔法少女としての通り名は【アイオライト】。名付け当時、ヌイさんは天然石にはまっていたらしい。

・中山ヤヨイ
年齢:13歳  身長:150㎝
魔法少女の1人。サツキの実妹。姉のことは普段は「姉さん」呼びだが気の抜けているときや動揺した際には昔からの「お姉ちゃん」呼びが飛び出す。
使用武器はライトメイス。得意とする魔法は対象の外傷治癒。その外傷に負傷者の意思が干渉しているほど、治癒の際の痛みは強く鋭く重くなる。たとえば極めて浅いリスカの治癒と事故によって起きた複雑骨折の治癒では、前者の方が圧倒的に痛い。
身の回りの誰にも傷ついてほしくないし誰にも死んでほしくないという善良で無邪気な望みが反映された魔法。でも勝手に傷つこうとする馬鹿にはお仕置きが必要だよね。気絶してたから良かったものの、ヒカリの腕と背中の傷は治す時滅茶苦茶痛かったと思います。
ちなみに魔法少女としての通り名は【フロウライト】。