私は本屋に住みたい
昔読んだ物語の主人公は今も仲間に囲まれて
私の知らない新しい物語を紡いでゆくのだろうか
寝る間も惜しんでベッドの横に積んだ本たち
電気を消されてからランプの灯りを頼りに
こっそりと追った活字を思い出す
視力と引き換えだなんて思わないけれど
性懲りもなく活字を追う
なによりも楽しかったんだ
背表紙に指を掛けたとき
ページを開いたときの匂い
よく見つけたあの落書き
もういちど蘇ればいいのに
最後にああしたのはいつだったろう
でも例え同じ場所で同じ本を手に取ろうとも
もう二度と蘇りはしないのです
不可逆な時空を恨まないようにそっと目を逸らす
重みに耐えきれなくなった瞼はそっと下りてゆく
どうかなにも恨まないように
そっと目を逸らす見ないふり
瞼を閉じてひとりおやすみ
だれも絵本のページをめくりやしないよ